文化・芸術

2009年5月10日 (日)

イベントに向けた改作いろいろ(6)-『風力モーターカー』

水陸両用の風力モーターカー&ハイドロプレーンです。今回の改作は、モーターと乾電池ホルダーの台を発泡スチロールのブロックにして部品を減らしたことと、タイヤを市販の発泡スチロール丸棒(直径4cm×高さ2cm)に変更して手間を省いたことです。タイヤを市販品に代えたため、タイヤとしての回転性能が向上しました。また、このタイヤは、水上ではフロートの役割をするので、高さ(厚さ)が2倍になって浮力が増したことにもなります。

Hydrocar

以前のブログで、風力用のプロペラは、扇風機と同じ向きに風を送るのに適した形状になっているので、プロペラは進行方向の逆向き(後ろ向き)に付ける、と書きました。今回も、子どもたちに同じことを言いかけて、プロペラをよく見ると、プロペラにはひねりが無くなっていて、ただの板状に変っていました。これならば空気力学的には向きはどちらでも同じです。プロペラにひねりが無いと推進効率は悪くなるはずなので、一種の改悪ですが、多分、顕著な差はないのでしょう。

実は、事前指導の際に、子どもたちから宿題をもらいました。陸上走行では直進するのに、水上航行では曲がるので、曲がりを補正する方法はないか、というものです。普通の船ならば、舵がその役目をしますが、ハイドロプレーンは浅底なので舵がありません。一般には、プロペラの向きを変えることで、方向を変えているようです。しかし、発泡スチロールの台なので、可動式にすると、台がすぐにダメになります。発泡スチロールには、釘やネジが利きません。結局、モーターを固定する際に、両面テープを貼り直してモーター(=プロペラ)の向きを変えることで、お茶を濁しました。この方法でも直進性の補正はできますが、本格的な方向柁にはなっていません。その後、いろいろと考えて、磁石を使う方法を思いつきました。

Hcarm2

やや大きめの角型磁石で鉄心付きが最適です。100円ショップで中型のマグネットハンガーを買ってきて、磁石を取り外し、発泡スチロールの台に両面テープで固定しました。モーターは、磁石に強力に吸い付きます。モーターの向きは左右に45度程度には振ることができるので、方向柁として十分に機能します。
Magnet Motorrig  
こんな簡単なことなら、すぐにでも気が付きそうに思いますが、そのときは気が付きませんでした。プラス100円ならばイベントでも実現は可能だったので、今さらですが残念に思っています。

*[風力モーターカー]改作テキスト「hydrocar.pdf」をダウンロード

2009年5月 9日 (土)

イベントに向けた改作いろいろ(5)-『ホバークラフト』

テキスト集では、発泡スチロールの容器の中に、小さい発泡スチロール容器を2重にしていました。これは空気の圧力を高めるためかと思われますが、今回は適当な容器が手に入らなかったので、試しに小さい方の容器を省略してみたところ、とくに問題がなさそうだったので、本番でも省略することにしました。1個ならばカップ麺を買ってきて、その容器を捨てずに使えば済むことですが、イベントではこの方法では数を揃えるのが大変です。科学館でも、リサイクル工作の場合には、地下のごみ集積所からペットボトルなどを拾ってくることもありました。家庭での工作と科学館やイベントでの工作は、このように事情が違います。逆に言えば、科学館やイベントでのテキストの通りに工作をしようと思うと、素材や部品の購入が難しいこともあります。科学館やイベントでは、大量の素材や部品を効率よく準備する必要があり、教材の卸から量をまとめて買うこともできるからです。

Aircar Fan
 
イベントでは、モーターはマブチモーターのFA-130を使用しましたが、単三乾電池2本では、やっと浮ぶ程度でした。バランスが悪かったり、容器の縁が平面的でなかったりすると、押しても滑るようには進みません。そこで、モーターをトルクの大きなミニ四駆用のアトミックチューンモーターに代え、電池を初期電圧が1.7Vと高いオキシライド電池に代えてみたところ、滑るように進んで、壁に当たると方向を変えるようになりました。なお、性能の向上を兼ねて、容器は発泡スチロールのドンブリから、浅めのプラスチックボウル(商品名:クックライトボウル、直径15cm、容量475ml)に変更しています。

Aircarm2

プロペラもいろいろと試してみましたが、模型飛行機用のプロペラが最も強力でした。ただし、模型飛行機用のプロペラは15cmが最小なので、ホバークラフトでは両端を切断して10cm程度まで短くする必要があります。そのため、本来の性能は出ませんが、それでも風力用の9cmのプロペラよりは、はるかに強力です。

Prop
 

ホバークラフトの工作自体はそれほど難しくはありません。しかし、動作させると、本体が回転します。これはプロペラが回転することの反作用なのですが、子どもたちには、「浮き上がっている証拠だ」といって納得してもらいました。本体の回転を止めるためには、プロペラを2重反転式にする必要がありますが、一般に風力用のプロペラは左ネジになっていて、逆ネジのプロペラは市販されていません。また、同軸反転にするには特別な伝達系を作らなければならないという問題もあります。そこで、もっと簡単で本体全体が回転しないホバークラフトに挑戦してみました。

ホバークラフトのプロペラは左ネジなので、通常はモーターを逆接続にし、左回転させて空気を前方に送るようにします。プロペラは下向きに取り付けるので、下向きの気流によって全体が浮き上がることになります。さて、同じプロペラを逆回転させたらどうなるでしょうか。空気を吸い込むのだから、容器が地面に吸い付くような気がしますが、そうはなりません。逆に、浮き上がるのです。それは、やってみると分かります。なぜ浮き上がるかというと、確かに気流は上向きなのですが、気流は容器に当たって下向きに反転します。その気流で全体が浮き上がることになります。部分的には上向きと下向きの気流が混在するのでしょうが、トータルでは下向きの気流が勝るようです。一説には、容器の形状やプロペラの取り付け高さなどによっては、下向きの気流でも中央部に上向きの気流が生じて、浮き上がらないこともあるそうです。その場合は、遮断のための整流板を入れる必要があります。

イベントの後で、プロペラの正転と逆転を組み合わせて反作用を打ち消した、ダブルのホバークラフトを試作してみました。ホバークラフトを2個用意して、一方は正転、他方は逆転とし、2個を板で接続しただけですが、一応、バランスを考えて、電池を共用にしたうえ、正転側の容器だけに載せてみました。大きな角型のトレー1個にモーターを正転・逆転の2個搭載したモデルでも試してみましたが、気流の吹き出しが不均一になるためか、あまり具合が良くありません。容器の形状は円形の方が良いようです。

Twinacar

*[ホバークラフト]改作テキスト「aircar.pdf」をダウンロード

2009年5月 8日 (金)

イベントに向けた改作いろいろ(4)-『ライトブーメラン』

これは、作りやすさを優先させた改作です。ハサミがやっと使える程度の幼児でも作ることができるというのが「ライトブーメラン」の触れ込みですが、テキスト集の原図には難点がありました。「ライトブーメラン」では、15cm×1.5cmの単翼を2枚切り抜くのですが、原図では単翼2枚が真ん中でつながっているので、中央を直線で切り離す必要があります。これが大人にも結構難しい。学童用のハサミは刃が短いということもあって、なかなか真っ直ぐには切れません。ブーメランの場合は、2枚の単翼が同じ形状で、かつ同じ大きさであることが望ましいのですが、原図では同じになりにくいという欠点があったのです。その後は、2枚の単翼の間を空けて、まず、2枚を切り離し、その後、それぞれをきれいに切り抜くように改良してあります。

Liteboo

また、2枚の単翼を中央で十文字に結合するのに、一番簡単なのはホッチキスで止める方法ですが、針が刺さると危険だ、という指摘もあって、科学館では両面テープを使用していました。糊付けでも構わないのですが、糊付けの場合は乾くまで待つ必要があるほか、濡れるので、紙が伸びたり、縮んだりして、歪みが出る欠点もあります。両面テープは簡単なのですが、子どもたちにやらせてみると、結構、大変です。まず、適当な長さに切る、という指示がダメです。必ず、これでいいか、と聞いてくるのでかえって手間がかかります。かといって、何センチくらい、という指示では、ものさしできちんと計りだすので、これも時間がかかります。その上、両面テープは、一人1個宛というわけにはいかない事情も、混乱に輪を掛けます。

結局、今回は徹底して簡素化するために、15cm×1.5cmの単翼を全数、カッターで切り出し、さらに一方の単翼の中央には、1.5cm×1.5cmに切った両面テープを貼り付けておくという事前加工をしました。工作は、両面テープの剥離紙をはがして、2枚の単翼を十文字に張り合わせるだけで、1分もかかりません。実際は、うまく飛ばすのが難しいので、慣れるまで時間が掛かることと、慣れてしまうと飛ばすのが楽しいので、いくらでも時間は使えます。そうは言っても、張り合わせるだけの工作では手持ち無沙汰なので、名前を書くついでに、クレヨンで適当に模様を描いてもらうことにしました。それでオリジナル・グッズに変身です。イベント会場は、大きなホールだったので、ブーメランを飛ばすのには好適でした。何しろ簡単で、しかも厚紙があればよいので、極めて安くできる上に、すぐに補充も可能です。「ライトブーメラン」は、イベントでの、いわゆる「(刺身の)ツマ」に最適ではないでしょうか。

*[ライトブーメラン]改作テキスト「boocardr.pdf」をダウンロード

2009年5月 7日 (木)

イベントに向けた改作いろいろ(3)-『ソーラー扇風機』

太陽電池でモーターとファンを回す扇風機ですが、太陽電池用のモーターを使えば、難しいことはありません。問題は、太陽電池が高価なので、割高な太陽電池用モーターを使わずに済ませたいという懐具合でした。太陽電池のカタログには、性能が最大1.7V、450mAで、普通のマブチモーター(RE-140)でも使用可能と書いてあります。手持ちの製品を電気スタンドで試してみると、大丈夫なようでしたが、事前の技術指導ではてこずりました。用意した実験用の照明は、照射面積は大きいのですが、全体に暗すぎてモーターが回転しないのです。しかし、窓際に持っていって、太陽電池を直射日光にかざすとモーターは回ります。その後のテストでも60W程度の電球では、ぎりぎりの性能だったようです。家庭でソーラー扇風機を作る場合は、迷わず太陽電池用のモーター(RF-500TBなど)を使うことをお勧めします。これならば、60Wの電気スタンドでも十分、扇風機が回ります。

Motor

また、テキスト集で使用した支柱のサイズの角材が手に入らなかったので、同程度の丸棒に代えてみました。そのため、テキスト集では支柱に取り付けていたスイッチと太陽電池の支持金具が取り付かなくなり、スイッチと支持金具は台に固定することにしました。配線はハンダ付けが望ましいのですが、工具が揃わないため、リード線をよじって接続することにしました。ハンダ付けをしないと解体が容易になるので、部品の再使用や転用に有利という理由もあります。しかし、これも、事前の技術指導の際に、スイッチの部分は細かすぎて、よじって接続するのが難しいと分かり、スイッチ部分だけは事前加工でハンダ付けするように変更しました。また、モーターを取り付ける小さい板も、直接、釘打ちをすると板が割れやすかったので、事前加工で下穴を開けておくことにしました。スイッチも、テキスト集では角材を添えて、木ネジで固定していましたが、今回は、1分硬化型のエポキシ樹脂接着剤で台に直接固定する方法に代え、部材と工具を省略して工程を簡素化しました。実は、これらの改造は手間を省くのが主眼で、必ずしも改良ではありません。家庭で作る場合は、テキスト集の方が正統な作り方と思います。

なお、このソーラー扇風機は、太陽電池と乾電池をスイッチで切り替えて使用できるようになっていますが、乾電池の部分をLEDで置き換えると、太陽光発電によるエネルギー利用(扇風機)と、風力発電によるエネルギー利用(照明)の両方の機能を持った自由工作になります。そういう発展もおもしろいと思います。

*[ソーラー扇風機]改作テキスト「solarfan.pdf」をダウンロード

2009年5月 6日 (水)

イベントに向けた改作いろいろ(2)-『ミニライト』

テキスト集では特別なキットを利用していて、このキットは市販されていません。そこで、今回は、ケースをスチロール板で自作することにしました。心得があれば誰でも作れるはずですが、小さいものなので、設計図どおりにハサミで切って、寸法どおりに折り曲げて完成させるのは、子どもには難しいと考えました。そこで、スチロール板の切断と、折り線のケガキは事前加工としました。LED(発光ダイオード)の接続は、テキスト集と同じホッチキス止めです。テキスト集では、ケースは開閉ができる箱でしたが、それでは工作が難しくなるので、両面テープで張り合わせるようにして簡素化しました。その代わり、リチウム電池の交換は(原則として)できません。アルミテープは、キッチンテープでは表面が樹脂加工されていて導電性がないため、使用できません。今回は、日曜大工店などで、建材用に市販されているアルミテープを使用しました。しかし、建材用のアルミテープは結構高いので、大量に作るのでなければ不経済です。少数ならば、家庭用のアルミフォイルを両面テープで裏打ちしても代用できます。

Minilite

注意点は、アルミテープとLEDのリード線のショート(短絡)を防ぐことと、LEDの極性を間違えないこと、です。LEDの極性の見分け方は3通りあって、リード線を切る前であれば、短い方のリード線がカソード(-)、リード線を切ってしまって長さが分からないときは、電極の大きい方、または、LED下部に切り欠きのある側が、カソード(-)です。カソードはリチウム電池のマイナス極に接続するようにします。分からないときは、LED単独でリチウム電池につないでみるとよいでしょう。

Ledak

点灯しなければ極性を逆にし、点灯する向きに接続すればOKです。なお、リチウム電池は、CR2032が指定されていますが、直径20mmであれば、CR2016でも構いません。ただし、容量が小さくても値段は安くならないようです。また、LEDの正統な使い方としては、保護抵抗を直列に入れますが、ミニライトでは省略しています。

さて、ミニライトで、LEDを、赤、緑、青と3種類用意すれば、3原色による加法混色の実験ができます。オリジナルでは、専用の筒を使用していましたが、白紙を用意して、ミニライトで照らすようにすれば、混色の実験ができます。ただし、色の濃淡(光の強弱)は白紙からの距離で加減します。なお、LEDの構造によっては、色の強さにムラができるので、均一になりにくいものもあります。実際、3原色の加法混色で白色を実現するのは、相当に難しいものです。

今回は、工作教室の本旨ではありませんが、工程に油性マーカーによる「お絵かき」を加えました。製作品がオリジナル・グッズになる楽しみと、誰が作ったものかを分かるようにするためです。

*[ミニライト]改作テキスト「minilite.pdf」をダウンロード

2009年5月 5日 (火)

イベントに向けた改作いろいろ(1)-子どもが主役

昨年(2008年)の暮れに、科学館で実施した実験教室や工作教室のテーマを活用したイベントがありました。とくに興味深いのは、小学生や中学生が実験教室・工作教室の「先生」になって、小学生や中学生を教えるという試みです。地元の教育委員会が主催して、小学校や中学校の先生方が支援をする形ですが、実験教室・工作教室の講師役そのものは児童・生徒がチームで当たります。学校が中心のイベントは過去にもあったとのことですが、これまでは学校の先生方がイベントの講師役で、児童・生徒は参加する側でした。今回は、チームで担当するとは言え、児童・生徒自身が講師役を勤めるというのが新機軸で、当初から、我々、裏方も大いに面食らった次第です。

Wakuwaku

イベントでのテーマ自体は、児童・生徒が科学館で実施したテーマの中からやりたいものを選んできて、所要時間や難易度を考慮しながら、主催者側と相談して決めたものです。結局、主として時間の都合で、比較的、易しい工作が選ばれています。以下で取り上げる改作に関連するテーマには、ミニライト(小5)、ソーラー扇風機(小5,6)、ライトブーメラン(小6)、ホバークラフト(小6)、風力モーターカー(中2)などがありました。

裏方の役割は、技術指導と教材の準備です。一応、実施の経験があるテーマですが、すべて熟練した講師が指導しています。子どもたちが先生となって実施したテーマは一つもありません。子どもたちが教えるとなると、熟練した講師が指導するのとは訳が違います。通常、工作が中心の教室では、道具の使い方も指導対象です。「ものづくり」の文化を重視する立場から、基本的なスキルを身につけることを通して、「ものづくり」に親しんでほしい、と考えています。そこで、スタッフを十分に配置して、安全に気を配りながら、カッターやハンダごてといった、ケガや火傷の可能性がある道具の指導にも取り組んできました。しかし、今回は、講師役の子どもたちも、他を指導できるほどのスキルがありません。さらに、支援のスタッフも少数です。そこで、必要に応じて原案を見直し、工具の使用を最小限に止めることにしました。また、従来の経験から見て失敗しやすい工程も除きました。その分、事前加工の範囲が拡大して、我々、裏方が苦労することになりました。そのほか、テーマの中には、入手できない部品が使用されているものもあったので、代替品に代えたものもあります。

以上のような事情で、改作は、部材・部品の変更や省略、工程の簡素化などが中心で、夏休みの自由工作にもお勧めです。また、改作に加え、子どもたちのチャレンジに応えて、後日、性能の向上や拡張を図ったものも掲載しました。もともとは科学館の実験教室として実施したテーマで、教室では科学的な解説や実験も併せて実施しましたが、今回は時間が短縮されたので、工作自体が主目的になりました。科学館のテキスト集は、
http://www.atomin.go.jp/atomin/data/pdf/book_src/exp_text.pdf
で、閲覧・ダウンロードできます。

2009年4月 6日 (月)

工作「DNA模型」(5)

製作に必要な工具は、細工鋸、ピンバイス、ドリル刃(φ3.0とφ1.8)、カッター、カッテイング・マットなど。積み木風に、彩色はポスターカラー(三菱鉛筆製ポスカ)で、塗装は水性のつやだしニスにしました。塗装にはハケも要ります。同じ形状の部品や工程が多くあるので、冶具を自作した方がよいでしょう。下の写真は、今回使用した切断用の冶具です。

Jig

製作上の注意点は、木材の場合、年輪があるので、年輪の硬い部分の加工は難しく、往々にして孔あけの精度が悪くなることです。ボール盤を使用しても、ドリル刃が細い場合はたわみで曲がってしまうので、事情は変りません。年輪の幅くらいのズレは仕方がないと割り切ります。それで不都合がある場合は、作り直すしかありません。また、ハンド・ドリルで垂直に孔をあけるのは困難なので、試作品では、比較的硬い木材にボール盤で孔をあけておいた冶具を使用して、孔加工をしました。冶具が木材なので、徐々に孔が拡がって精度は低下しますが、ないよりはマシに仕上がります。

構造上、上からの力には比較的耐えますが、上に引っ張ると、竹ヒゴが抜けてしまい、バラバラになります。そのため、展示用には、ケースか、支柱が必要になります。試作品では、台に2本のステンレス被覆鋼管を立て、それに横棒を渡して、らせん構造の上端部を横棒にタイラップで固定しました。

添付ファイルは、DNA模型の組立図と木工作の部品図です。その他の部品としては、1段(2ユニット)に付き、直径3mm×28mmの竹ヒゴが6本、直径1.8mm×45mmの竹ヒゴが、A-T対では2本、C-G対では3本必要になります。

添付ファイル:
*組立図(DNAview.pdf)「DNAview.PDF」をダウンロード
*部品図(DNAparts.pdf)「DNAparts.PDF」をダウンロード

2009年4月 5日 (日)

工作「DNA模型」(4)

二重らせん構造にするためには、一方のらせん構造の1段目の底部にある結合孔と、他のらせん構造の対応する結合孔との間隔を、
(9.51-0.7)×10×2÷9.51=18.5(cm)
にします。(なお、試作品ではこの間隔を20cmにしたので、試作品の部品寸法は比例的に大きくなっています。)また、この模型では、実際のDNAには存在する、メジャー・グルーブとマイナー・グルーブを表現できます。メジャー・グルーブとマイナー・グルーブができるのは、要するにらせん構造の位相のズレなので、上に述べた結合孔を、直径18.5cmの円周上で、大円以外に設定すれば、それを表現することができますが、この模型では、変形の余裕が水素結合部分にしかないので、せいぜい1塩基対分の位相差(36度)が表現できる程度です。その場合、メジャー・グルーブとマイナー・グルーブの間隔の差は、3.4cm程度となります。

さて、DNA模型と言うからには、塩基対を表す何らかの表現が必要です。試作品では、各塩基の頭文字を、ポスターカラーで手描きしました。文字に意味があるので、黒一色でも構いませんが、多色の方が親しみやすいので、色分けをしてあります。アデニン(A)は赤、チミン(T)は緑、シトシン(C)は黄、グアニン(G)は青、ついでに、糖(D)は橙、リン酸エステル基(P)は白で表記し、全体をクリア・ニスで仕上げたので、積み木のような柔らかな印象にできあがりました。塩基対の並びに特別なルールはないので、文字の並びは何でも構わない訳ですが、何か、面白い並びはないかと考えて、A,T,G,Cの組み合わせでできる英単語を探して、TACTAGAGACT(つまり、TACT,(T)AG,GAG,ACT)の11文字としてみました。この文字の並びは、mRNAに転写されたコドンとしては、AUGAUCUCUGAとなっていて、開始コドンのAUGで始まり、終止コドンの一つであるUGAで終わる形になっています。塩基対の反対側は、当然、対応から、ATGATCTCTGADとなります。

模型の組立て方は、らせん構造を構成する菱形部品と、塩基(+糖の一部)の部分を構成する長方形部品同士を竹ヒゴ2本で結合しておいて、最初に、台にあけた結合孔に竹ヒゴ(ここだけは、直径3mm×長さ2cm)を挿し込んで、各1段目を結合した後に、水素結合を構成する竹ヒゴを挿し込んで1段目を完成させ、下から順に積み上げていきます。らせん構造から鎖状構造にするには、らせん構造を完成させた後、上から順に水素結合を構成する竹ヒゴを外していけば直鎖的に変形できます。その後、菱形部品を結合している竹ヒゴを外して、全てを分解することも、再組立てすることも可能です。今回は、らせん構造に最小限必要な11段にしましたが、このままでらせん構造1.5回転の16段程度は可能と思われます。

Phase

2009年4月 4日 (土)

工作「DNA模型」(3)

らせん構造の線分となる部品は、側面から見ると、高さが3.4cmで、尖った方の稜の成す角度が28.8度の菱形をしています。幅3cmの板材を使用すると、菱形の各辺の長さは、
3.4cm÷tan(28.8度)=6.18cm
となります。この菱形の上辺と下辺を水平に保持し、板材の外側面同士が成す正10角形が直径20cmの円に内接するためには、厚さ1.4cmの板材の中心線上で結合するとして、菱形の上辺、下辺とも、鈍角側から結合点までの距離は、平面図上で、外接円の中心より正10角形の各辺に下した垂線の長さ、
10cm×cos(36度/2)=9.51cm
と、この垂線の長さから板厚(1.4cm)の中心線までの距離0.7cmを減じて三角形の相似則を適用し、
(9.51-0.7)×(6.18/2)÷9.51=2.86(cm)
と求められます。

しかし、このままでは、菱形の鋭角側が交差して外接円の外側に突き出てしまうので、平面図的に正10角形となるように、交差部分を切断します。そのためには、上辺、下辺とも、鈍角側から、6.18/2=3.09(cm)の位置を起点に、平面図上で36度の角度で、垂直に切り落とすことになります。その際、らせん構造が右巻きであることを考慮して、菱形の上辺を右側、下辺を左側とした場合に、左右とも、手前側に切断面を見るようにします。

塩基(+糖の一部)の部分の板材の長さは、水素結合の長さを、30nm×1000000=3cmとして、正10角形の辺に下した垂線の長さから、水素結合の半長3/2cmとらせん構造の部分の板厚1.4cmを減じた、
9.51-1.4-3/2=6.61(cm)
となります。今回は、糖の大きさや向きは考慮しないので、らせん構造を構成する菱形部品の中央部に水平方向に1cm間隔で、直径3mmの貫通孔を2個用意し、塩基(+糖の一部)を構成する部品には、対応する深さ1.4cmの孔を2個、板厚の中心線に沿って、1cm間隔で用意して、直径3mm×長さ2.8cmに切断した竹ヒゴを挿し込んで結合することによって、塩基が水平に保持されるようにしました。
この部分は接着剤で固定しても構いませんが、竹ヒゴで結合した方が丈夫にできます。

塩基(+糖の一部)を構成する部品の水素結合側には、塩基対の種類に応じて、アデニン(A)-チミン(T)対には2本、シトシン(C)-グアニン(G)対には3本の竹ヒゴで結合するように、直径1.8mm×深さ1cmの孔を、それぞれ、2個と3個を、各1cm間隔で用意し、直径1.8mm×長さ4.5cmに切断した竹ヒゴで結合するようにします。
Unit
Base

2009年4月 3日 (金)

工作「DNA模型」(2)

入手しやすく、加工も容易な素材と言えば、まず、木材でしょう。手づくりの素材としては、アクリルなどのプラスチックは高価であり、発泡スチロールは安価でも、丈夫さに欠けます。また、今回は、DNAからmRNA(メッセンジャーRNA)への転写を意識して、2重らせん構造から鎖状構造への展開が可能なように配慮しました。その結果、木材部品同士の結合には竹ヒゴを差し込むだけにして、分解・組立てや、構造の展開が可能になっています。

まず、らせん(ヘリックス)構造は、平面図的には、円に内接する正10角形とします。つまり、主として製作の都合から、らせん構造を等しい長さの10本の線分がつながった立体として近似することにしました。外接円の直径を20cmし、らせん構造の1回転の高さを34cmとすれば、この模型の倍率は、ちょうど100万倍となります。らせん構造の1回転には塩基対が10対あって、平面図的には、隣り合う塩基対の成す角度が36度となることから、平面図上での正10角形の1辺の長さは、
10cm×sin(36度/2)×2=6.18cm
となります。さらに、塩基対同士の面間隔が、34nm×1000000=3.4cmであることから、らせん構造を構成する線分が水平面と成す角度は、
arctan(3.4/6.18)=28.8(度)
となります。

Parts

木材は、幅30mm、厚さ14mmの板材です。試作品では、長方形の断面ではなく、長方形の角が丸くなったエゾマツの板材を使っています。塩基の構造は平板的なのが、その理由です。らせん構造も丸棒ではなく、同じ板材で統一します。丸棒は板材よりも高価で、平面部がないために加工や結合も面倒になります。板材の角が丸い場合は、丸棒に近い印象になる利点もあります。ただし、以下の説明では、便宜上、長方形断面の板材で説明します。結合部材は、直径3mmと1.8mmの、2種類の竹ヒゴを使います。直径3mmの竹ヒゴは、構造部分の結合に使い、直径1.8mmの竹ヒゴは、塩基対の水素結合を表現するものです。台には、直径200mm以上で厚さ9mm以上の木製または合板製円板を使用します。

2009年4月 2日 (木)

工作「DNA模型」(1)

最近、DNA鑑定の普及などで、誰でもDNAという言葉は知るようになりました。それと同時に、DNAが生物の遺伝に係わる物質であることも、何となく理解されるようになっています。DNA(デオキシリボ核酸)は、生命の発生から消滅に至るまでの間、生命に係わって、生命を守り育てることを目的とする、「生命の設計図書」とも言われる重要な物質で、DNAが担う、塩基配列という遺伝暗号の解析を通して、品種改良や医療分野への応用、生物の進化の解明などが進むと期待されています。

DNAという物質は、遺伝情報という側面が重視され、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という、4つの塩基の並び順を情報として取り出すこと(ゲノム解析)に注目が集まりがちですが、化学物質としてのDNAを見ると、2重らせん構造という、造形としてもみごとな美しさを持っています。そこで、高分子化学における優れた成果という観点から、ここでは、ノーベル医学賞を受賞した、Watson-CrickのDNAモデルの特徴を表現したDNA模型を作ります。

Watson-Crickモデルでは、以下のような特徴があります。
・1本の共通軸のまわりに巻いた二重らせん構造
・らせんは2本とも右巻き
・塩基はらせんの内側で、らせんの中心軸に対して垂直な平面内
・糖(デオキシリボース(D))とリン酸エステル基(P)はらせんの外側部分を交互に構成
・2本のらせんは、プリン塩基とピリミジン塩基が対になって水素結合で固定(アデニン(A)-チミン(T)対は2本の水素結合、シトシン(C)-グアニン(G)対は3本の水素結合)
・らせんの直径は200nm、塩基対平面の間隔は34nm
・らせんの1回転(360度)の軸距離は340nmで、1回転に10組の塩基対(塩基対は36度ごとに配置)
ここでは、これらの特徴に加えて、塩基対の間隔は約30nm、糖と糖の間隔は約110nm、という特徴を模型に反映させました。(参考文献:H.ハート著/秋葉欣也・奥彬共訳、基礎有機化学 改訂版、培風館)

Dnamodel

2009年1月31日 (土)

[番外編]我が家のコウモリ”フン”戦記(9)

最終的に、我が家で見付かったコウモリは、屋根の解体中に逃げ出した1匹と、この2匹だけでした。リフォーム工事の前にカウントした10数匹がその後もいたとすれば、その他は逃げ出していて、もういないかもしれないし、まだ、残って冬眠しているかもしれません。いずれにしても、冬眠から覚める春にならないと、この答えは出ません。

以下は、以上のような体験から得られた、イエコウモリの生態に関する仮設です。
(1) 木や紙などの軟らかい面には、爪を立てて止まる。
(2) 石膏ボードやプラスチックなどの平滑で硬い面には、止まることができない。
(3) 固い面でも、瓦など凹凸のある面には、つかまることができる。
(4) したがって、飛ぶことができない狭い場所では、這って移動する。

このように考えれば、押入れの内壁であるベニヤ板の面や、外壁側にある木の板の面は這って移動できたと考えられます。ガサガサと音がしたのは、断熱材の包装紙やベニヤ板が音源で、室内側からドンドンと叩いても、すぐに音が止まなかったのは、一生懸命に逃げている途中だったためと思われます。2階の天井を横切った音は、天井板と断熱材の間をコウモリが這って移動した際の音でしょう。また、京壁の裏や、雨戸の戸袋の部分など、石膏ボードの面には入り込めなかったので、フンがなかったと考えられます。下の写真は、京壁を壊した後の断熱材の表面です。

Kabed

2階の壁に止まっていたコウモリの写真を見ると、ドアの木枠から天井までの高さは約50cmなので、コウモリの足から両手の先までは約5cm、両足の幅も同程度なので、一般に、1.5cm×5cm程度の隙間があれば、そこからコウモリが入り込むことができると思われます。

Bat1w

瓦屋根の場合、ケラバの隙間や、瓦がずれたり、軒先の面戸に隙間があれば、その隙間から瓦の下に入り込み、瓦と桟木の間にできる空間を這って移動することが可能です。切妻屋根であれば必ずケラバがあるので、コウモリが棲みつく可能性は大きく、寄せ棟屋根であっても面戸の隙間から入り込む可能性はゼロではありません。とくにS字瓦の場合は、空洞が大きいので格好の棲家となると思われます。その場合でも、野地板やルーフィングに隙間がなければ、屋根裏には入れませんが、不注意な隙間があれば、その限りではありません。2階の屋根裏に入り込めれば、簡単に1階の天井裏に到達することができ、コウモリがその気になれば、1階の床下まで到達することは可能なはずです。なぜなら、従来型の木造建築であれば、壁には必ず通過できる空間があります。実際、電線や電話線は、そのような空間を利用して配線しています。

以上、我が家のリフォーム工事で分かった、イエコウモリの生態の一端をご紹介しました。工事関係者の方々も、意外とコウモリのことは経験がなかったようです。
最後に、施主の趣味に付き合って、いろいろとわがままを聞いていただいた、工事関係者の皆さんに感謝します。

[番外編]我が家のコウモリ”フン”戦記(8)

押入れの解体・復旧を始めてから4日目の朝、既に押入れは復旧していて、京壁の塗り直しの前工程である京壁の剥しが予定されていました。朝食を終えて、コーヒーメーカーに水を入れようとしてシステム・キッチンのコックから水を流し出したとき、排水口の蓋の切込みからせり出してきた物体があります。小型の動物の頭と両手でした。キッチンなので、最初はネズミかと思いましたが、両手の形が違うので、すぐにコウモリだと気が付きました。これには正直、驚きましたね。よりによって排水口の中とはね。

あわてて手近に合ったゴミ袋を被せて、コウモリをゴミ袋の中にいれ、そのまま外に出て、近くの草むらに放してやりました。しかし、水を被っていて、濡れネズミならぬ、濡れコウモリだったので、飛べないようでした。草にしがみついています。しばらく見ていてもじっとしたままです。はたと気が付いて、デジカメを取りに戻り、写真を撮ってみましたが、その間も様子は変りません。結局、そのままにして家に戻りました。

Bat2

シンクの排水口は、直径が約11cmで深さが約13cmの円筒形で、約4mmの孔が6.5mmピッチで格子状に等間隔に開けてあります。排水口の蓋は、普通はゴム製で放射状に切込みが入った、「菊蓋」ですが、我が家ではプラスチック製で、半分は平ら、半分は半球形にくぼんでいていて、中央部に半円形で最大高さ約4cmの開口部があるタイプに変えています。
Sink Cover  
コウモリは、何とかせり出してきたものの、出ることはできなかったようです。シンクには朝から何度も水を流していましたが、そのときまで気が付きませんでした。多分、夜間に排水口に入り込んでいたのでしょうが、コウモリの身長では排水口の底から立ち上がっても、蓋の口までは約9cmあって、そのままでは届きません。水に驚いて、パンチング孔を足がかりにして、あわててよじ登ってきたものの、頭を出すまでには時間がかかったということではないでしょうか。また、プラスチックの蓋はつるつるしているので、爪でつかまることができず、飛ぶこともできずに、逃げ出すことができなかったものと思われます。排水口が一種のコウモリ・トラップとして機能したわけです。

どうやって排水口に入り込んだかは謎ですが、排水口には上からしか入り込めないので、押入れと天袋の解体中の初日か2日目に、どこからか出てきて、どこかに潜んでいたコウモリが、台所のドアが開いているスキに、知らぬ間に排水口に飛び込んだものと思われます。コウモリが隠れるには格好の場所ですが、水が流れ込むとは知らなかったのでしょう。
結局、後で見に行くと、草むらのコウモリはいなくなっていました。

2009年1月29日 (木)

[番外編]我が家のコウモリ”フン”戦記(7)

結局、初日の押入れの解体中には、コウモリは出てきませんでした。出てきたのはゴキブリが3匹だけ。拍子抜けして、コウモリは既に退散したと安易に判断したのも当然でしょう。ところが、初日には、押入れの解体に先立って、畳と建具をすべて運び出しています。したがって、もしコウモリがいれば、2階の屋根裏から1階の天井裏までが出入自由で、戸のない部屋から出て、家中のどこにでも行ける状況が、まる2日間続いたことになります。しかし、こちらにはコウモリに対する警戒感はまったく残っていませんでした。びっくりさせられたのは、2日目の夜のことでした。

2日目の夜、夕飯が終わってそろそろ寝ようとして2階に上がったとき、階段の正面に当たる2階の壁に真っ黒な物体が張り付いているのを見付けました。

Bat1

2階の壁は、貼り替えたばかりビニール・クロスで、表面には凹凸があります。よく写真で見る洞窟コウモリのように逆さまではなく、頭を上にして、両手(かな?)と両足の爪で、壁の凹凸をつかんでいるようです。一見してコウモリと分かりましたが、さてどうするか。もういないと思っていたのが、なぜか残っていたということですが、元のところに戻られても困ります。外に追い出そうと思って、先ず窓を開け放ち、ほうきと塵取りを持って、追い出しにかかりました。追い出すつもりで、上から下にほうきで払えば飛んで逃げると思ってやってみると、そのまま、バッタリと下に落ちてしまったのです。ヒラヒラとではなく、バッタリと。廊下に落ちて、何やら鳴き声を立てています。チーチーと言う感じでしたが、悲鳴のようには聞こえず、何だか寝ぼけたような声でした。どうも壁に止まって寝ていたようで、起きて来ません。仕方がないので、ほうきで掃いて塵取りに移し、そのまま、窓から外の仮設足場の上に置いてみました。仮設足場の上でも、逃げる様子はなく、椎茸の笠くらいの大きさで、丸く、ぺったんこになっています。どうしようもないので、そのまま窓を閉めてしまいました。12月の中旬で外は寒く、大丈夫なのか気になるところですが、野生動物なので許可なく捕獲もできません。でも、心配するほどのことはなく、翌朝、窓を開けてみるといなくなっていました。

結局、この時期にはコウモリは冬眠しているらしく、鈍感にも熟睡していた1匹が遅れて出てきたのではないか、と、そのときは考えたわけです。3日目で押入れと天袋の復旧が終わり、2階の屋根裏との開口部はなくなりました。これまでの経緯から見て、屋根裏にコウモリがいたとしても、既に逃げ出したか、逃げ出し損ねたにしても解体した部分にはいなかったので、どこか、屋根裏で別の外壁と内壁の間に逃げ込んでいる可能性はありますが、屋根裏以外にはもう出ることができない状況になっています。まさか、2匹目がいるとは思いもしませんでした。でも、いたのです。それも、まったく考えられないところに、潜んでいたのです。どこだと思いますか?

2009年1月28日 (水)

[番外編]我が家のコウモリ”フン”戦記(6)

押入れの内壁を剥すと、やはりフンがありました。外壁と内壁の約10cmの間で、厚さ5cmの断熱材のない空間を通って、押入れの下部まで到達したようです。下の写真に見える穴は、1階の屋根裏です。

Osiire2d
 
フンのほかに、内壁のベニヤ板の裏には、コウモリの小便と思われる数cm程度の円形のシミが多数見付かりました。

Simi

断熱材を剥すと、外壁の内面には板が横方向にスノコ状に張ってあって、その板の上端や斜めの筋交いにはフンが積もっています。ところどころ、フンが富士山のように盛り上がっていて、そこでは同じ場所で繰り返してフンをしていたようです。

Big

中には、小振りのフンもあるので、これはコウモリの子どもだったのかもしれません。

Small

天袋の天井裏も、側面の壁の中も状況は同じでした。天袋の天井裏だけは、なぜか断熱材がなく、コウモリは自由に行き来できたようで、その空間を経由して、上部が露出している外壁と内壁の間に入り込んだと思われます。

さらに、押入れの床を剥すと、1階の天井にもフンが僅かにありました。1階の天井裏には断熱材がないので、天井の石膏ボードがそのまま見えていて、石膏ボード上にはほとんどフンはありません。よく見ると、押入れの下部は一部で1階の屋根裏につながっていました。そのルートをたどって、冒険好きなコウモリが、洞窟探検よろしく、奥へ奥へと入り込んでいたようです。一方、押入れに隣接する京壁の裏にはまったくフンが見当たりませんでした。京壁は内壁が石膏ボードでしたが、外壁側も雨戸の戸袋だったので、こちらも石膏ボードでした。この結果からは、ベニヤや木で囲まれた壁と石膏ボードではコウモリの移動に違いがあることが予想されました。

2009年1月27日 (火)

[番外編]我が家のコウモリ”フン”戦記(5)

この段階では、屋根裏への侵入口は見付からず、屋根裏への侵入は無理ではないかと考えていました。しかし、念のために野地板の一部を剥してみると、そこにも大量のフンが見付かったのです。

Noji1

下の写真は、野地板の間から、外壁の上部を撮影したもので、手前が天袋の斜め天井の裏です。

Nojiw

実際、よく見ると、我が家では軒先の破風板が傾斜しているため、ケラバでもその延長で破風板が傾斜していて、ケラバで野地板を打ち付けてある垂木と、その破風板の間に、手先が入るほどの幅で約半間の長さに楔形の隙間が見付かりました。下の写真は、元の野地板の上に合板を重ね張りし、その上に新しいルーフィングを張った後ですが、中央にその隙間が見えています。

Kerabas

これが一般的な構造なのかどうかは分かりませんが、コウモリは、たまたまあった、この隙間から、屋根裏に侵入していたと思われます。最初に、この隙間に気付かなかったのは、鳥の巣で覆われていたためです。鳥とコウモリが共存しているのか、競合しているのかは分かりませんが、この状況を見ると、微妙に共存していると思われます。

それからが大変でした。押入れの奥にコウモリがいる可能性があるので、屋根からの出入ができなくなる前にそのコウモリを救出するために、急遽、北側の屋根の出っ張り部分にある、押入れ+物入れと天袋を解体して、復旧することにしたのです。追加工事の着工は12月上旬で、既にコウモリの冬眠時期ですが、冬眠中でもコウモリが目を覚ますことを期待して、解体を始めました。

下の写真は、1間の押入れ+半間の物入れと天袋を解体して、中仕切りと奥の内壁と天井を撤去し、さらに断熱材を取り除いた後の様子です。(左が上部、右が下部)
Osiire1u Osiire1d

2009年1月26日 (月)

[番外編]我が家のコウモリ”フン”戦記(4)

内装工事がやや遅れ、予定より遅れて屋根工事が始まったのは11月中旬で、まだ、暖かい日の夕方には、コウモリの飛ぶ姿が見られました。しかし、1階の屋根から始まって、2階の大屋根の工事が始まる頃には、急に寒くなって、コウモリも飛ばなくなっていたようです。大屋根の瓦の撤去中に、棟瓦の土の中からコウモリが1匹飛び出したとのことで、結局、瓦の下にいたのはこの1匹だけでしたが、北側の屋根の出っ張り部分では、瓦の下から大量のフンが出てきました。ちょうど、コウモリが出て行くのを観察した北東側のケラバです。しかも、ケラバの空洞に止まらず、桟木に沿って横に広がっています。

Keraba1

下の写真は、瓦を除いた後のケラバ部で、上段左が下部、上段右が中部、下段が上部となっています。ケラバ部は瓦が3段で、その上は棟部に続いています。

Keraba1d Keraba1m

Keraba1u
  
S字瓦の空洞は上下につながっているので、上下に広がるのは理解できますが、横に広がるのは不可解でした。しかし、細かく見ると、S字瓦は野地板に張った防水ルーフィングに接しているわけではなく、桟木の高さだけ浮いていることが分かりました。桟木の高さは1.5cmあるので、それだけの隙間があれば、コウモリが入り込めるのは納得できます。つまり、コウモリはS字瓦に限らず、瓦屋根であれば、瓦の下に入り込めさえすれば、空洞のある上下方向だけでなく、横方向にも入り込むことができることになります。また、ケラバの瓦には側面下方の隙間に対する面戸がないので、コウモリは自由に入り込めて、上部に至れば、瓦の重なりの隙間からケラバの空洞部に達することができます。そこから、桟木に沿って、さらに横に入って行くことができるというわけです。でも、現実には、横方向でも奥になると入りにくくなるのか、フンの量は入口から遠いほど減っていました。また、フンは、水が浸入する場所ではないので、不潔感もなく、そのままの形状を止めていました。どれくらいの期間の蓄積なのかは分かりませんが、量としては建築廃材用のゴミ袋(昔風に言えば、「かます」)に2、3袋もありました。

一方、北西側のケラバでは、鳥の巣が見付かったものの、コウモリのフンは僅かでした。

Keraba2

下の写真は、瓦を除いた後のケラバ部で、左が下部、右が上部となっています。上部の上方に丸い鳥の巣が見えます。
Keraba2d Keraba2u

2009年1月25日 (日)

[番外編]我が家のコウモリ”フン”戦記(3)

出入口の見当は付いていました。例のフンがよく見付かるのが、北側の屋根に出っ張りがあって、その両端部でケラバと呼ばれる部分の真下でした。

Roof

上の写真で右端奥の部分がそうです。ケラバというのは、屋根の端部にあたり、他の瓦とは違って、下向きに折れています。下の写真は別のケラバですが、ケラバでは、瓦の一部が重なって、瓦1枚ごとに、瓦の厚さ(約2cm)×瓦が重ならない部分の長さ(約20cm)の三角形の隙間が下方に開いています。

Keraba

ケラバは北側に2ヶ所あって、東側の真下の地面と、西側の真下に当たる1階の屋根の上にフンがありました。雨漏りの後、雨樋の詰まりが気になって、その1階の屋根の軒樋を掃除すると、真っ黒い泥が塵取り1杯程も取れましたが、後で考えると、これもコウモリのフンだったのかもしれません。
さらに、この北側の出っ張りは、物音がした1間半の押入れ+物入れと天袋の部分に一致します。最初は、CCDカメラやUSBカメラで自動監視してみましたが、イベントは10数回検知されたものの、薄暗い時分なので我が家から出たのかどうかの判別が付きません。結局、日没後、屋根が見通せる道路に出て、カウンターを片手に目視で数える羽目になりました。夕暮れ時に、じっと動かずに空を見上げている姿は、通りがかった人から見れば不審に感じたかもしれません。

観察の1例をあげると、北東部のケラバでは、10月9日には17:30以降、暗くなるまでに14匹をカウントし、うち数匹はケラバではない屋根の軒先から飛び立っています。また、10月11日には同様に20匹をカウントし、うち2匹はケラバに続く大屋根の軒先から、1匹は手前の大屋根の軒先から飛び立ったのを観察しています。ケラバは3枚の瓦で構成されていますが、それぞれの隙間から、5分ほどの短時間に10数匹が次々と飛び出して行きました。暗くなりかけた空を見上げていると、隣の家の屋根からも出て行くのが見え、近隣の家にもコウモリが棲息していることが分かります。ケラバには、瓦の重なりに応じた隙間があるので、コウモリが出入しても意外ではありませんが、大屋根の軒先からも飛び立ったのは想定外でした。多分、瓦と面戸の隙間から出入しているのでしょう。
しかし、不思議なことに、10月12日には、いつもより長時間観察を続けたにもかかわらず、同じ場所でたった2匹しかカウントできませんでした。この数値の不一致の理由は分かりません。そもそもコウモリが、あるところに定住しているのかどうかさえ不明です。

コウモリがいることを前提に、そのコウモリを追い出すために、屋根裏に照明器具を持ち込んで明るくしたり、スピーカを持ち込んで音を立てたりすることを考えてみましたが、結構な大仕事になることが分かって、沙汰止みとなりました。結局、工事が始まれば、騒音などで居づらくなって、自発的に出て行くに違いない、と楽観的に考えたのです。でも、違っていました。

2009年1月24日 (土)

[番外編]我が家のコウモリ”フン”戦記(2)

近年になって、ご近所では切妻屋根の端部にある飾り格子に、コウモリ除けのネットを張る家も出始めました。夕方、意識して空を見上げると、相当な数のコウモリが飛び交っていて、我が家でも何度か、開いた窓から侵入されたことがあります。そこで、我が家の例の安眠妨害も、フン害も、コウモリが原因かもしれないと思ってネットで調べると、「コウモリは、1.5cmの隙間があれば入る。」とあります。でも、S字瓦の下ならばともかく、屋根裏に入れそうな隙間は見当たりません。

雨漏りの後、漏洩場所を特定するために屋根裏を点検したついでに、屋根裏にコウモリがいる形跡がないか調べてみました。

Attic2 Attic

天井板の上には断熱材が敷き詰められています。断熱材の上を点検すると、たった1ヶ所だけ、数個のフンが見付かりました。念のため、何ヶ所か断熱材の下をのぞいてみましたが、まったく形跡はありません。このことから、少なくともコウモリが屋根裏に侵入したことはあるが、棲息はしていないと判断できました。ただ、屋根裏は低く、外壁近くへのアクセスは難しいので、外壁と内壁の間の部分までは点検できません。以前から、夜中にガサガサと物音がするのは、外壁に面した押入れの壁と、天袋の天井、隣接する京壁の上部で、いずれも壁の中です。室内側から壁をドンドンと叩いても、ネズミと違って、すぐに静かにならないのが不思議でした。しばらくガサガサという音が続き、そのうちに静かになります。最初に疑ったのは、軒先の鳥の巣です。鳥が音を立てているのかもしれない、と思いましたが、朝、4時過ぎなら鳥かもしれませんが、夜中の2時、3時では、やや不自然です。外壁と内壁の隙間は約10cmありますが、厚さ5cmの断熱材が入っています。もしかして、コウモリだとしても、飛ぶことができない、この5cmの隙間を、コウモリがどうやって移動するのか見当もつきませんでした。

10月になってリフォーム工事の内容が固まり、着工は10月末と決まりました。コウモリ対策も特記事項として工事内容に記載されています。しかし、水周りの内部工事から始まるので、屋根工事は11月中旬からです。そこで気になったのは、コウモリの冬眠期間です。ネットの情報では、11月中旬から3月中下旬までは冬眠するという話です。屋根工事が完了すると、屋根裏には決して入れなくなる手筈です。コウモリをすべて追い出してからでないと、逆に閉じ込めてしまうことになります。工事が始まっても、冬眠中であれば、出て行かないかもしれない、いや、危険を感じたら、冬眠中でも逃げるだろう、とか、議論をしましたが、結論は出ません。何か、コウモリに自発的に出て行ってもらう手立てはないものか、と思案したあげく、先ずは、我が家にコウモリが棲みついているとすれば、何匹いて、出入口はどこなのかを探ることにしました。

2009年1月23日 (金)

[番外編]我が家のコウモリ”フン”戦記(1)

昨年(2008年)の暮れにかけて、築25年が目前の我が家のリフォーム工事をする羽目になりました。そのきっかけは、梅雨明けの頃、10分間雨量で10数mmという豪雨があって、我が家でも雨漏りの被害が出たことです。それが、屋根の雨漏り修理に止まらず、いつのまにか屋根を軽くすることによる耐震性の改善へ、さらには内外装の劣化を回復することでの耐震性の確保へと話が広がって、あっという間に大工事になってしまいました。
実は、以前から屋根や壁に手を付けるなら、やりたいことが別にもありました。それが、我が家のコウモリ対策だったのです。ついでとは言いながら、リフォーム工事をやったお蔭で、屋根や壁を壊さないと分からない、イエコウモリの生態の一端を知る機会となりました。折角の経験なので、その顛末をご紹介します。

さて、我が家は、千葉県市川市の北東部にあります。都心から約30分という便利な立地ながら、周辺には市街化調整区域が広がり、人工の調整池には、マガモや、カルガモ、カワウ、コサギ、アオサギ、バン、オオバン、カイツブリなどが棲みついています。冬には、海から上ってきたユリカモメや、コガモ、オナガガモ、ヨシガモなども加わって賑やかです。季節によってはカワセミも顔を見せ、望遠カメラが並ぶ風景もしばしば見られます。ここには30年前から住み続けていますが、いつからかツバメが増え、我が家でも10年前(1999年)に初めて、玄関ポーチの壁裏にツバメが巣を作りました。それまでは、大して気に止めなかったツバメでしたが、毎日見るうちに観察が面白くなり、ヒナが生まれ、巣立つまで観察日記をつけたりしたものです。

ツバメは、夕方、日没頃、ねぐらとなる葦原に集まりますが、ねぐらに入る前には、集団で空を乱舞します。日が暮れ始めて、あたりが暗くなるころ、次々と葦原に下りて、ねぐらに入り、ほんの一時、おしゃべりが聞こえますが、じきに静まり返るのが日課です。その頃、代わって空を飛び始めるものがいます。最初はツバメにしては飛び方が変だし、何だろうと思っていましたが、それがコウモリだと知らされました。もっとも、薄暗くなってからなので、はっきりと姿が見えるわけではありませんが、大きさや飛び方からコウモリと判断できます。それまで気が付かなかっただけで、以前からいたのかもしれませんが、我が家で夜中に壁や天井裏で物音がするようになったのは、この頃からです。ツバメ同様、コウモリもだんだんと増えてきたのかもしれません。そういえば、近年、蚊をたくさん見るようになりました。11月でも、暖かい日が続くと蚊柱が立つほどです。環境の変化、というよりは、河川などの富栄養化で、ツバメやコウモリの餌になる蚊などが増えてきた可能性はあります。また、この辺では瓦屋根でモルタル塗り壁の従来工法の家屋が多く、棲む場所が得やすいことも、関係するかもしれません。

我が家の屋根も、寄せ棟造りの瓦屋根で、洋風のS字瓦が載っていました。S字瓦の一部は内径が10cmほどの半円形の空洞になっています。一応、瓦の軒側の端部は「面戸」というプラスチック板でふさがれていますが、施工が悪かったり、瓦がずれていたりすると、瓦の空洞の中に入り込むことができるので、我が家の軒先は、スズメには格好の巣場所となっていました。
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さらに、これもいつからか、止めてある車の屋根や、軒下の特定の部分に小さな黒いフンが目に付くようになりました。ネズミのフンよりは小さく、鳥のフンとも違います。大した数量でもなかったので、それほど気にはなりませんでした。それがコウモリのフンだったのです。

2008年7月26日 (土)

また!平板ブーメラン(15)

 エクセルのマクロで今回のシミュレーション計算が簡単にできます。添付ファイルはエクセルのワークシート*と、ビジュアル・ベーシックのソース・ファイル**に分けてあります。ソース・ファイルはエディターで閲覧・編集ができます。

 使うときは、まず、[ファイル]→[名前の変更]で、ソース・ファイルの拡張子をtxtからbasに変更します。次に、エクセルを開いて、[ツール]→[マクロ]→[Visual Basic Editor]としてビジュアル・ベーシック・エディターを開き、[ファイル]→[ファイルのインポート]でソース・ファイルを選択します。その後は、ワークシートの初期条件を入力して、[ツール]→[マクロ]→[マクロ]→[実行]で計算します。

 初速を大きくしたり、迎え角の初期値を大きくしたり、逆にマイナスにすると、過大な初期条件となって発散します。また、時間ステップも大きくすると発散します。

 入力が必要なのは、迎え角の増大係数CA、揚力係数CL(3次式まで可能)、抗力係数CD(2次式まで可能)、時間ステップT、ブーメランの重量W、実翼面積S、重力加速度G、揚力倍率Fl、抗力倍率Fd、翼面積倍率でFs、初期値としては、迎え角αと面の法線角φのほか、表中の黒枠部分に、位置(x,y,z)と初速度(vx,vy,vz)を入力します。揚力倍率、抗力倍率、翼面積倍率は、通常は1のままで構いませんが、係数を変えて結果がおかしいときなどに、倍率を変えて様子を見ます。

Sheet1 Sheet2

 ワークシートには、平板ブーメラン用のflatと、回転揚力のあるブーメラン用のflapの2種類があります。flapの場合は、回転揚力Lfを入力する必要があります。

 計算結果は、時間ステップごとに表として出力されるほか、x-y断面とx-z断面、y-z断面、xn-yn断面とxn-zn断面で、軌跡が作図されます。表の出力は、時間t、位置成分(x,y,z)、速度成分(vx,vy,vz)、速度v、法線ベクトル成分(xn,yn,zn)、法線角φ、迎え角α、揚力係数CL、揚力L、抗力係数CD、抗力D、揚力成分(Lx,Ly,Lz)、抗力成分(Dx,Dy,Dz)、上限速度v0、速度比ce、座標変換角(θ、θ'、θ'')、位置増分(⊿x,⊿y,⊿z)、進行ベクトル原成分(x3,y3,z3)、法線ベクトル原成分(xn3,yn3,zn3)となっています。

 ソース・ファイルを書き換えれば、もっといろいろなことができるようになります。あるいは、自分の考えで、改造することも可能です。これをヒントにして、やりたいようにやってみてください。完成したプログラムではないので、いろいろと問題がでてきたり、バグがあったりするかもしれませんが、ご容赦ください。

添付ファイル:
*simulation3s6.xls「simulation3s6.xls」をダウンロード
**boo_sim3s6.txt「boo_sim3s6.txt」をダウンロード

2008年7月25日 (金)

また!平板ブーメラン(14)

 2005年12月から約2年半をかけて、一応、満足できる平板ブーメランの飛行シミュレーションが可能になりました。
 この、こだわりのきっかけは、ブーメランの飛行原理の通説に疑問を持ったからです。あちこちの科学館でも、「ブーメランはジャイロ効果で旋回する」と解説しています。ホームページでも、いろいろと解説されていましたが、難解との指摘があることも分かりました。一方、平板ブーメランは飛行原理そのものが不明だったので、新たに原理を構築する必要があります。平板ブーメランは、シンプルなので理論化が容易になるとも考えました。

 平板ブーメランの飛行原理を検討しているうちに、「平板翼では、気流の中では、面が気流に正対する性質がある」ことに気が付き、実験的に定式化して、飛行のシミュレーションができるのではないかと考えたのですが、シミュレーションの開発過程で、ジャイロ効果を表す式が、シミュレーションにはまったく役に立たないことが分かりました。飛行そのものは重心移動なので、ジャイロ効果が示す回転運動だけで旋回飛行の運動方程式は解けません。むしろ、ジャイロ効果を考慮しなくても、「面が気流に正対する」ことを定式化することで、シミュレーションが可能になりました。
Torque 
 このメカニズムが、平板ブーメランだけでなく、一般のブーメランに適用できることは自明です。ブーメランが旋回飛行をするのは、(自転によって等方化された)自転面に作用する揚力が作るトルクが支配的で、ジャイロ効果の影響は小さい、というのが今回の結論です。ブーメランが旋回するには、自転が不可欠なのはいうまでもありませんが、自転の効用は、主としてコマと同様な自転軸の維持というジャイロ効果にあります。つまり、ジャイロ効果は、ブーメランの飛行安定のための復元力として作用しているといえます。

2008年7月24日 (木)

また!平板ブーメラン(13)

 さて、このシリーズの(1)回で述べた、面白い現象とは、次のようなものです。ブーメランの自転落下実験を側面からではなく、正面から観測すると、ブーメランが水平方向にわずかに移動します。自転落下実験では、回転方向はすべて、正面から見て反時計回りに回転させています。
Run14yz 
 自転によって進行方向が曲がる現象では、「マグヌス効果」が知られています。例として挙げられる、野球のボールやゴルフボールの軌道の曲がりなどは、「マグヌス効果」では、揚力の方向は球の回転に一致する方向であるとして説明されています。つまり、上から見てボールが時計回りに回転すればシュートに、反時計回りに回転すれば(昔風の)カーブになります。ドライバーで打ったゴルフボールがホップするのは、縦に回転し、右側面から見た場合に反時計回りに回転するからです。

 しかし、観測されたブーメランの曲がり方は、「マグヌス効果」とは違って自転とは逆方向になっています。この解釈については、プリミティブには、落下の際に進行方向となる側での翼の「漕ぎ方」の方が、後方の逆向きの「漕ぎ方」よりも効果が大きくなるため、といった「後流効果」でも説明できそうですが、次のような解釈の方が、もっともらしいと考えています。
 翼は回転しているので、進行方向の速度に加えて、右の翼では自転による回転が速度として加わり、左の翼では、逆に、速度が減じます。迎え角は同じで、翼の断面形状も同じなので、翼の抗力係数が同じと仮定すれば、抗力は速度の二乗に比例することから、反時計回りの回転の場合は、正面から向かって左側の翼に働く抗力の方が右側よりも大きくなります。そのため、左右の翼に抗力の差が生じ、結果として向かって左方向に向かう力が働く、という解釈です。
 今回のシミュレーション改良版では採用していませんが、この効果を取り入れると、飛行初期の落下が抑えられるので、より現実に近づく可能性もあります。より現実に近いシミュレーションには、やはり、本格的な風洞実験が必要です。今回のような、簡易な自転落下実験には限界があります。

2008年7月23日 (水)

また!平板ブーメラン(12)

 さて、このように、手頃なツールができたので、いろいろと遊ぶことができます。そこで、前回と同様に、宇宙ステーションでブーメランを飛ばしたらどうなるか、を計算してみました。そのために、普通のブーメランと平板ブーメランとの違いは、面の法線方向に自転による揚力があるいかないかである、と考えてみます。普通の紙製ブーメランを模擬した「フラップ付き」の自転落下実験もやってみましたが、迎え角の増大も、揚力係数も、抗力係数も、平板よりは大きめに出てきます。傾向はほとんど同じなので、実験式を入れて計算してみると、なかなかうまく行きません。発散することが多いようです。そこで、実験式は平板ブーメランと同じにして、普通のブーメランの場合は、面の法線方向に一定の揚力を加えてみました。

 「フラップ付き」の計算例として、(11)回の旋回飛行のケースに準じて、高さ2mから、初速度をx軸の正方向に8m/s、迎え角の初期値を0度、面の法線の傾きを70度とし、面の法線方向に0.08Nの揚力を加えてみました。この0.08Nという値は自転落下実験のデータから見ても、無理な仮定ではありません。
Case5xyz 
 これは、(11)回で示したフラップなしの結果と比較して、一周して戻る傾向が強く出るようになりました。

 次に、面の法線方向に0.08Nの揚力を加えたうえに、面の法線の傾きを80度とし、宇宙ステーション内を模擬して重力加速度を0にしてみました。
Case6xyz 
 きれいに一周する結果となりました。前回のらせん状に上昇するシミュレーションとは異なる結果となりましたが、揚力の値を小さくすると、らせん状に上昇する結果にもなります。投げ方で変るということでしょうか。

 いろいろと条件を変えて計算することができますが、条件によっては発散したりします。また、時間ステップを変えると結果が微妙に変りますが、原因は不明です。
前回のシミュレーションでは、平板ブーメランでは重力による落下で迎え角を生ずるとしていましたが、今回は、迎え角の初期値を入力できるようにしたので、逆に迎え角の初期値を0とすると、なかなか旋回しない計算結果もあります。シミュレーションによれば、平板ブーメランでも迎え角を付して投げると、旋回性が良くなるようです。実際には、気付かずに迎え角を付して投げているのかもしれません。

2008年7月22日 (火)

また!平板ブーメラン(11)

 さて、平板ブーメランの飛行シミュレーション改良版の検証です。まず、典型的な例として、高さ2mから、水平に、初速度のx成分を8m/s、y成分を-1m/s、z成分を0.5m/sとして投げ、面の法線の傾きが70度、迎え角の初期値が4度の場合の、x-z断面とx-y断面の計算結果を示します。
Case1xyz 
 旋回直径が実態より小さめですが、飛行軌跡がほぼ再現できています。同じ条件での、y-z断面の計算結果では、
Case1yz 
中間部でやや降下が早いようですが、まずまずの結果と思います。

 次に、今回の目標の一つである、「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」の例としては、高さ3mから、面の傾きを65度(初期迎え角としては、25度に相当)として、x軸の正方向に初速度0でリリースした場合の計算結果を示します。
Case2xyz 
 これも、落下地点までの距離が短いようですが、傾向は再現されています。

もう一つの目標である、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」については、かなり微妙な結果になりました。現実もそうだ、ということの反映ではないかと思いますが、具体的には、ブーメランを旋回させるときよりも初速度を大きくする必要があり、わずかな条件の違いで、山を登ってから向こうに下りていくようなケースと、反転して戻るケースと、宙返りをするケースが出てきました。

 反転して戻る例では、初速度14m/sで、面の傾きをほぼ0度にして、迎え角の初期値を5.5度とした場合の計算結果を示します。
Case3xyz 
 宙返りをする例としては、初速度12m/sで、やはり面の傾きをほぼ0度にして、迎え角の初期値を4.5度とした場合の計算結果を示します。
Case4xyz 
 このほか、初速度が小さい場合は、山を登りきってから向こうに下るケースになります。

 同じ実験式のセットを適用して、目標とした3パターンのシミュレーションが良好に検証できました。まだ、満点ではありませんが、一応、合格点と考えています。

 ここで重要なことは、これらのシミュレーションでは、ブーメランの自転に、揚力などの外力がトルクとして加わった場合の、際差運動、いわゆるジャイロ効果をアプリオリには考慮していないということです。つまり、際差運動を考慮しなくても、ブーメランの旋回がシミュレーションできることから、ブーメランの旋回運動にとってジャイロ効果は主要な因子ではない、ということになります。

2008年7月21日 (月)

また!平板ブーメラン(10)

 エクセルのマクロ(VBA)でプログラムを組むときに注意しなければいけないのは、角度の作り方です。例えば、xyz座標系からx'y'z'座標系に変換するための角度θは、tanθ=⊿y/⊿xの関係があるので、プログラム上は⊿y/⊿xのアークタンジェント(逆正接)として算出します。ところが、VBAのアークタンジェントで算出した角度は、-π/2からπ/2の間で定義されているので、今回のように、-πからπまで変化させるには、⊿yと⊿xの組み合わせを考えて、物理的に意味のある変換をしないと、正弦や余弦の値(とくに符号)がおかしくなります。突然に、プラスからマイナスに飛ぶような変化や、その逆の変化が現れた場合は、その可能性を疑う必要があります。

Xyz

 今回は、角度θに関しては、次のような変換をしています。
    If x = 0 Then th = 0 Else th = Atn(y / x)
    If x < 0 And y > 0 Then th = th + Pi
    If x < 0 And y < 0 Then th = th - Pi
ここで、thはθ、xは⊿x、yは⊿y、に相当します。なお、Piは、Pi = 4 * Atn(1) として定義した定数です。

 同様に、他の角度についても、それぞれの考え方で変換を行っています。x'y'z'座標系からx''y''z''座標系に変換するための角度θ'については、
    If x1 = 0 Then th1 = Pi / 2 Else th1 = Atn((-z1) / x1)
    If x1 < 0 And -z1 > 0 Then th1 = th1 + Pi
    If x1 < 0 And -z1 < 0 Then th1 = th1 - Pi
としました。ここで、th1はθ'、x1は⊿x'、z1は⊿z'、に相当します。

 また、x''y''z''座標系からx'''y'''z'''座標系に変換するための角度θ''についても、
    If zn2 = 0 Then th2 = 0 Else th2 = -Atn(yn2 / zn2)
    If zn2 < 0 And yn2 < 0 Then th2 = th2 + Pi
    If zn2 < 0 And yn2 > 0 Then th2 = th2 - Pi
となっています。ここで、th2はθ''、yn2は⊿yn''、zn2は⊿zn''、に相当します。角度θ''だけは、通常、負なので、他とは扱いが異なります。

 また、本来は、抗力は、推進力と揚力の結果として現れる力のはずですが、シミュレーションでは抗力係数と速度から自動的に算出されるので、過大になる可能性があります。そのため、ステップごとの速度には、前のステップの運動エネルギーと、落下によって加わった位置エネルギーの和を超えないというエネルギー上の制限を設けています。

2008年7月20日 (日)

また!平板ブーメラン(9)

 ブーメランに作用する力は、揚力L、抗力D、重力-Wgだけで、与えられた初速によって推進します。運動方程式から導かれる差分は、
Alphan 
図の定義に基づいてxyz座標系に変換した後、
Dynameq 
などのようになります。これで、迎え角αに対する揚力L、抗力Dから、位置の差分⊿x、⊿y、⊿zと、速度の差分が求められます。

 実験式は、このシリーズの(6)、(7)で述べたように、自転落下実験のデータから、エクセルの最小二乗近似式で求めています。今回、採用した実験式は以下のとおりです。簡単な直線近似から始めてたどりついた、現状でベストと思われるセットです。
Parametr 
 揚力Lと抗力Dの和Fと時間ステップΔtから、迎え角の増分Δαを算出し、次のステップの迎え角αを決めます。迎え角αが決まれば、実験式から揚力係数と抗力係数が決まるので、既に求められている速度vを前出の式に代入して、次のステップの揚力Lと抗力Dが求められます。その後は、これらの操作を繰り返します。

2008年7月19日 (土)

また!平板ブーメラン(8)

 次は、計算シミュレーションの方法です。前回と同様に、エクセルのワークシートとマクロ(VBA)を組み合わせました。運動方程式の解法については、全面的に改めて、素直に座標変換を行いました。図のように、1軸の回りの座標変換を3回繰り返します。
Xyz 
 まず、xyz座標系をブーメランの進行方向に合わせ、z軸の回りに回転させて、x'y'z'座標系に変換します。次は、このx'y'z'座標系をブーメランの進行方向にx'軸が一致するようにy'軸の回りに回転させて、x''y''z''座標系に変換します。最後は、x''y''z''座標系を、ブーメランの面の法線方向を含むようにy''-z''面に一致させて、x'''y'''z'''座標系に変換します。その結果、x'''y'''z'''座標系では、ブーメランを側面から見た形となるので、その面とx'''軸がなす角度が迎え角となり、z'''軸の正方向に揚力が、x'''軸の負方向に抗力が作用することになります。また、面の法線ベクトルを単位ベクトルとすれば、法線ベクトルはx'''-z'''面内で、z'''軸から迎え角だけ傾き、xn'''は-sinαと、zn'''はcosαと表現できます。
Alphan 
 ブーメランの進行ベクトル、面の単位法線ベクトルの座標を、xyz座標系から、x'y'z'座標系、x''y''z''座標系、x'''y'''z'''座標系と変換し、αの増分によって揚力L'''と抗力D'''を決定し、点N'''を決定した後に、逆の手順でxyz座標系に戻して表現します。
 一例として、xyz座標系をz軸の回りに角度θだけ回転した場合の座標変換は、
  x'=xcosθ+ysinθ
  y'=-xsinθ+ycosθ
  z'=z
で変換でき、逆には、
  x=x'cosθ-y'sinθ
  y=x'sinθ+y'cosθ
  z=z'
で変換できます。このルールを、固定軸に一致させて、回転軸の対応を都度決めれば、同じ形式で全部の変換が可能です。ただし、座標系は右手系で考えます。また、式の定義では角度θの正負は問いませんが、座標から角度を決める際には、角度の正負を物理的に考慮する必要があります。

 なお、このような座標変換では、基本的にブーメランの進行方向をx'''軸に一致させています。したがって、ブーメランの進行方向が上下、つまりz軸方向を向く場合は、そのままでは無理があります。今回は⊿z=0となる場合は、便宜的に、ケースを仮定して角度を読み替える解決をしています。そのケースとは、今回の目標としている「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」と、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」の場合です。

2008年7月18日 (金)

また!平板ブーメラン(7)

 揚力係数は、検討の結果、単純な2次式で近似することにしました。
Clalpha 
 上の近似式はデータの最小二乗式ですが、αが0とπ/2で揚力係数が0となることを仮定して、最大値を合わせた2次式に換算してあります。この式ではαがπ/4で最大値となりますが、揚力係数の一般的な傾向からは、実際にはαが0.5以下で最大になると考えられます。その意味では、この近似式を高角で使用するには、注意が必要です。なお、αが負の場合は負号で表現し、αがπ/2以上の場合はπ-αをαと読み替えて近似式を適用します。

 また、抗力係数も2次式で近似することにしました。
Cdalpha   
 αが負の場合は、-αをαと読み替え、αがπ/2以上の場合は、π-αをαと読み替えて使用します。

 なお、これらは、回転速度が毎秒約2回転のデータによるものです。実際には揚力係数も抗力係数も回転速度依存があるので、ずれが生じてきます。元来、ばらつきの大きいデータなので、その中からある程度の取捨選択をした結果ですが、結果的には妥当な線と思われます。

2008年7月17日 (木)

また!平板ブーメラン(6)

 自転落下実験は、約1mの高さのほかに、約2mの高さでも実施しました。高さ1mでは最速3m/s、高さ2mでは最速7m/s程度になります。また、側面以外に、正面から撮影したケースもあります。側面の場合の傾斜角度は、0度から70度までの10度刻みと、90度で実施しています。回転速度は、毎秒約2回転と4回転を目標にしましたが、電池駆動のため、回転数の測定中に回転数が低下するなどの原因で、多少、ずれがありました。
 この2月と8,9月にかけて、トータルで16シリーズ264回の実験を行っていますが、途中の装置改良やデータ処理の見直しもあって、最終的に採用したデータは、4シリーズ36回分のデータに止まりました。しかし、1回の落下で動画のコマ数は10ないし20なので、それでも結構な数になります。その結論は以下のとおりです。

 まず、シミュレーションの際に、揚力係数や抗力係数を算出するには、迎え角を決める必要があります。迎え角の増大は、揚力が翼の揚力中心に作用し、一般に揚力中心は重心よりも翼断面の前方にあるために、トルクを生じて回転する結果、生ずる現象です。厳密には回転の運動方程式を解く必要がありますが、回転の運動方程式は回転角の2階微分が外力によるモーメントに等しいとするので、自転落下実験において、迎え角の増分⊿αを微小時間⊿tの二乗で除した値が、ブーメランに作用する揚力と抗力の和に比例すると考えました。揚力と抗力は直交するので、それらの和は揚力と抗力がつくる矩形の対角線に相当します。その結果が次の図です。
Alphat2 
図のFが揚力Lと抗力Dの和です。

2008年7月16日 (水)

また!平板ブーメラン(5)

 自転落下実験装置と実験の方法は以下のようなものです。

 まず、自転落下実験装置ですが、モーターの回転を遊星ギアで減速した軸に、ミシンのボビンにホルマル線を巻いたコイルと、それを囲む鉄心を固定し、コイルにはブラシで通電できるようにしました。モーターの回転制御はPICとモータードライバーICで行います。回転数は、フォトインタラプターで検出して、PICを介して8個のLEDで2進数として表示します。さらに、システム全体を板に載せて傾斜できるようにし、所定の角度で板を固定するための尺を付けています。
Head_2 
 平板ブーメランの試験体は、単翼長90mm×翼幅20mmの十字形で、厚さ0.66mmの板目紙から、切り抜いて製作しました。中央にはトタン板を直径20mmに切り抜いて両面テープで貼り付けてあります。落下の際に、翼端が変形するのを防ぐために、翼端は半径10mmの円形に切り落としました。その結果、翼面積Sは0.00811平方m、重量Wは0.00517kgとなりました。ブーメランは、視認性を高めるために、全面をマジックインクで黒く塗ってあります。
Equipmnt 
 自転落下装置を長机3段の上に載せて落下実験を行いました。高さは約1mです。クリーム色の模造紙に、10cm間隔の格子を描いたものを背景として落下実験を行います。正面前方から、動画撮影が可能なデジタルカメラで撮影し、撮影後は動画ソフトを用いて、PCディスプレイ上で、ものさしと分度器を使って測定します。ブーメランの側面からの測定が大部分なので、ブーメランが見えにくくなるために、精度は望めません。連続動画では見えるのに、動画1コマになるとほとんど消えてしまうこともしばしばです。その場合は、心眼(?)で測定することになります。

Experimt

2008年7月15日 (火)

また!平板ブーメラン(4)

 参考までに、前回掲載した模式図を再掲載しておきます。

Droptest
 自転落下実験の結果から、1/30秒の微小区間ごとに、x、zを測定して、x方向とz方向の速度を算出すれば、落下の運動方程式において、微小区間では揚力Lと抗力Dが一定と仮定することにより、揚力Lと抗力Dが求められます。

Equation

 ここで、添え字の0は前の区間の意です。揚力Lと抗力Dが求められれば、揚力係数と抗力係数は、前出の、
Clcd 
の関係式から求めることができます。この場合の速度vは、x方向とz方向の速度を合成した速度で、全移動距離dを時間で割ったものです。

 なお、前回のシミュレーションでは、落下距離の約1mを微小区間と考えて平均した揚力と抗力を採用しましたが、実際は、その間の速度や迎え角の変化量が過大になるので、今回は、1コマに当たる1/30秒ごとを微小区間として扱いました。

2008年7月14日 (月)

また!平板ブーメラン(3)

 ここで、ブーメランの揚力係数や抗力係数などを実験的に求める考え方を説明しておきます。基本的な考え方は、航空力学の考え方を準用します。

 航空力学では、翼に働く揚力や抗力を評価して、必要な推力を求めます。
Dynamics 
 複雑な流体力学の式を解かなくても、迎え角に対する揚力係数と抗力係数が分かれば、次式で必要な翼面積や飛行速度を算出することができます。
Clcd   
 したがって、揚力係数と抗力係数は、翼の断面形状が決まれば、迎え角の関数として求められますが、一般的には風洞実験や数値解析が必要です。

 そこで、設備がなくてもできる方法を、と思案して、考案したのが自転落下実験です。迎え角を設定し、所定の回転速度で、ブーメランを(電磁石方式で)リリースして、側面から動画撮影を行って、動画画面上で、面の角度の変化、落下距離、水平移動距離をコマ送りで測定する方法です。速度が一定でない、高速や高回転速度の試験が難しい、1/30秒以下の時間精度がない、など、欠点だらけの方法ですが、簡単にできるのが利点です。

 具体的には、重力を推力として、迎え角αに対して発生する揚力Lと抗力Dを、
Droptest 
落下距離-⊿zと水平移動距離⊿xから求め、上述の関係式から逆算して、区間平均値としての揚力係数と抗力係数を決定するものです。

2008年7月13日 (日)

また!平板ブーメラン(2)

 今回のシミュレーション法の改良に際して、「平板ブーメラン」の飛行を撮影した動画を分析して、回転直径や回転数、飛行速度などを再確認しました。その結果、前回使用した数値とは若干の違いがあります。狭い室内での撮影であり、しかもカメラは1台なので、正確な数値化は困難ですが、一応、コマ送りで動画を計測して、数値化を試みました。その例を、以下に示します。
 試験体は4枚翼の十文字形紙製ブーメランで、典型的な平板ブーメランです。作り方は、0.66mm厚の板目紙から、長さ20.5cm、幅2cmの長方形を2枚、カッターで切り抜き、この2枚をそのまま組み合わせて、中央部を十文字形に両面テープで貼り付けました。投げ方は、平板ブーメランの表裏と一翼を任意に選び、右利きの場合、右手の親指と人差し指で挟んで、そのまま右手を斜め上に挙げ、後ろから見た場合に、頭上から右、時計回りに約20度(面の法線の傾きとしては、約70度)傾けた状態で立てて、手首のスナップを効かせて前方にほぼ水平に放出した結果です。なお、前回と同様に、ブーメランを投げる方向をx軸の正方向、曲がっていく左手をy軸の正方向、上方をz軸の正方向として説明します。

 まず、x-z断面です。点と点の間隔は、1コマで1/30秒に相当します。
Case4xz 
 この図から、x軸方向の最遠点が3~4m程度、初速が8~9m/s程度、終速が2m/s程度であることが分かります。

 次は、別のケースのy-z断面です。
Case3yz 
 この図からは、旋回直径が4m程度、中間速が、4~5m/sであることが分かります。

 x-y断面は、天井が低いので撮影できませんが、上の2図を合成すると、x-y断面の大体の様子が分かります。
Case34xy 
 このようにして見ると、少なくとも「平板ブーメラン」の場合は回転による積極的な揚力がないので、「手元に戻る」といっても、離れたところに落下するのが通例のようです。シミュレーションの検証も、これを参考にしました。

 また、同様にして、投げた直後で、回転速度は毎秒3.5~4回転程度、ブーメランの面の法線がz軸の正方向からなす角度は75~80度であり、65度の場合には、最遠点付近で上昇することも分かりました。

 残念ながら、今回のシミュレーションの改良で目標とした、「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」や、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」は撮影していません。平板ブーメランを作るのは簡単なので、関心のある方は、試してみてください。

2008年7月12日 (土)

また!平板ブーメラン(1)

 2月に掲載した「平板ブーメラン(1)~(5)」の続編ですが、スマートになって再登場です。
Boo 
 前回のシミュレーションでは、「平板ブーメラン」の旋回飛行を計算するのが主目的だったので、2次元的な運動方程式による簡易な解法にしてありました。運動方程式は、一応、3次元で解いていましたが、上下方向は旋回に伴う落下だけを想定していました。落下とともにブーメランの面が徐々に水平に近づくと考えて、傾き角が移動距離によって減少するという関係式を仮定し、迎え角は傾き角から計算で算出する方法でした。

 それでも、「平板ブーメラン」が旋回して戻る軌道の計算は可能で、一般の(軽い)ブーメランを想定して、翼にひねりを入れた「フラップ付きブーメラン」での実験式を取り入れて、比較計算を行っています。その結果は、「フラップ付きブーメラン」では、「フラップなしの平板ブーメランと比較して、旋回範囲がより小さくなり、落下距離も小さくなっているが、旋回飛行の傾向が大きく変わることはないことから、フラップの有無、すなわち翼自体の迎え角の有無で旋回飛行のメカニズムが異なるものではない。」というものでした。また、ブーメランを宇宙ステーションで飛ばしたらどうなるかというシミュレーションも、重力加速度を0にして行ってみました。計算では、「平板ブーメラン」の場合は旋回せずに直進し、「フラップ付きブーメラン」の場合は、らせん状に旋回する、という結果になりました。簡易な解法でも、無重力であってもブーメランは旋回する、という予測ができたわけです。

 一方、課題として、例えば、ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて降下し、同時に回転軸が立ち上がっていくような軌道とか、ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道とかは、計算できないという限界を指摘しました。このような課題を解決するためには、揚力が起こす平板翼のトルクを扱う必要があるほか、きちんと3次元的に運動方程式を解く必要があります。

 今回のシミュレーションの改良では、この、「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」と、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」の計算ができることを目標としました。その過程では、従来は重視していなかった、高迎え角、例えば90度に近い迎え角での揚力係数や抗力係数についても実験式を拡張しました。このシミュレーション法では、航空力学の手法を取り入れています。一般の航空力学では、迎え角が20度を超えると翼の揚力が急減して、失速するので、高角度の迎え角は扱われない領域ですが、ブーメランでは、最終的に迎え角が90度に近づくので、どうしても考えておかなければならない領域です。もっとも、迎え角90度では揚力としては現れず、すべて抗力として扱うことになります。

 また、揚力係数や抗力係数を求めるために、ブーメランの自転落下実験を考案しましたが、今回の追加実験の中では、面白い現象にも気付きました。ブーメランを側面からではなく、正面から観測すると、ブーメランが水平方向にわずかに移動することが分かりました。自転によって進行方向が曲がる現象は「マグヌス効果」として知られており、野球のボールやゴルフボールの軌道の曲がりなどはそれで説明できますが、このブーメランの曲がり方は、「マグヌス効果」とは違って自転とは逆方向になっています。この解釈についても、後で述べたいと思います。

2008年6月 4日 (水)

実験教室のテキスト集が

 原子力・エネルギー教育支援情報提供サイト『あとみん』にアップされました。未来科学技術情報館で実施した、実験教室50選+工作教室16選+ちょこっとサイエンス16選を収録した「実験教室テキスト集(PDFファイル58MB)」が、閲覧・ダウンロードできます。このブログで扱ったタイトル以外にも、小学生から高校生まで、自由研究や自由工作に適したタイトルがたくさんあります。

 URLは、こちら (http://www.atomin.go.jp/atomin/data/pdf/book_src/exp_text.pdf) です。関心のある方は、ご覧ください。

2008年6月 2日 (月)

これまでのまとめ

 科学館で開発した実験教室のタイトルや展示物の解説を中心にブログを展開してきましたが、ほぼ、一段落しました。これまでに掲載したタイトルは次のようなものです。

 科学館の閉館で
1.逆(!)浮沈子
2.電動ヘリコプター
3.クッキング・サイエンス
4.電子サイコロ
5.平板ブーメラン
6.真空実験
7.電池と電気のあれこれ
(1)木炭(備長炭と活性炭)電池
(2)スライムとスライム電池
(3)水素自動車
8.風力モーターカー&
9.色の科学
10.雨の科学
11.花火の科学
12.空中コマ
13.ハノイの塔
14.ベンハムのコマ&
15.赤外線リモコン受信機
16.本(!)浮沈子
17.原子力と科学館

 ブログでは、開発の経緯を失敗談を含めて紹介してきましたが、テキストやレジメは別のホームページ (http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に載せました。ブログの一段落で、これまでのブログをタイトルごとにまとめてホームページに転載しましたので、自由研究や自由工作などにご活用ください。

 なお、このブログは、充電のため、しばらく休載します。

原子力と科学館(8)

 実習生に話す内容はもっと詳細ですが、要点はこの程度です。ところで、なぜ、放射線の話を最初にするかといえば、それが原子力利用にとって避けられない課題だからです。放射線の理解が進まなければ、原子力利用への真の理解はありえないと考えています。なぜ、理解が必要かといえば、賢明な選択のために必要だからです。

 科学館では、中学生や高校生に、「科学」とは、「なぜだろう(知りたい)と想う心が生み出す活動」であり、「技術」とは、「あるといいな(欲しい)と想う心が生み出す活動」であると説明してきました。目指すところは、いずれも「人類の幸せな未来」ではないかと思います。「未来」とは、これまでの「科学」や「技術」に満足しない心が生み出す時空であり、子どもたち自身のことでもあります。「未来の科学技術はどうなりますか?」という子どもたちの質問に、スタッフは「未来の科学技術は、なる、のではなくて、創る、ものです。皆さんが創りたいと念じて努力することで、実現します。」と回答してきました。

 既に紹介した「人類は、DNAだけでなく、知識を伝えることで進化した」というフレーズは、人類という生物の特徴が、知識の獲得と蓄積にある、ということを伝えています。「叡智」と言った方が適切かもしれません。考えることの重要性は当然ですが、考えるという活動にも一定の知識ベースが必要です。「宇宙と原子力」で述べたことも、常に前人の獲得した知識を踏み台にして新たな知識を獲得することの繰り返しの結果です。知識はますます高度になり、進化の速度はますます増大しています。今の子どもたちは、我々50年前の子どもたちよりも、ずっと難しいことを、できるだけ短時間に吸収することが求められています。同じレベルをぐるぐる回っていればいいのであれば話は別ですが、進化には、らせん状に上昇していくことが求められます。同じレベルに止まるのではなく、上昇を続けるためには、既存の知識の習得や考え方の獲得は以前よりも早く済ませる必要があります。また、考え方も知識の一種と考えれば、知識の獲得がスタートラインだ、と言えます。

 知識は学校だけで学ぶものではありません。科学館は、学校の枠組みを超えた知識の獲得に役立ってきたと確信しています。科学館で育った子どもたちと、その子どもたちが創る未来が楽しみです。

Photo_2

原子力と科学館(7)

 このようにして、放射線とはどんなものかが分かってきますが、次は、放射線が物質に飛び込むとどうなるか、ということです。放射線は高エネルギーの粒子です。極めて小さい粒子で、大きいものでも原子核サイズです。1個の原子を野球場の大きさとすれば、原子核はボールの大きさです。つまり、原子核の大きさである放射線から見ると、物質はスカスカに見えます。だから、電気を帯びていない放射線であるX線は、身体を通り抜けることができます。しかし、このスカスカの空間には、電子がある密度で分布しています。電気を帯びている放射線は、この電子と衝突してエネルギーを失います。さらに、原子の真ん中にある原子核と衝突する放射線もあります。結局、放射線は物質の中で電子や原子核と衝突して徐々にエネルギーを失う結果となります。

Photo

 さて、エネルギーを失ったら放射線はどうなるのでしょうか。α線はヘリウムの原子核なので、エネルギーを失うと、普通のヘリウム原子になります。β線は電子なので、物質の原子に取り込まれます。γ線はエネルギーそのものなので、エネルギーを失うと、消えてなくなってしまいます。放射線がエネルギーを失うと、放射線でなくなる、というのが答えです。放射線を遮る(遮へい)方法がありますが、ある厚さの物質で遮ることで、放射線のエネルギーや数を減らすことができます。大まかに言えば、この厚さは物質の原子の数と考えればよいので、その物質の密度が高ければ薄くてすみます。そのために、遮へいとして、密度が高い鉛(11.34g/cm3)や鉄(7.86g/cm3)が使われますが、逆に言えば、密度が低い土(2~3g/cm3)や水(1g/cm3)でも、十分な厚さがあればよいことになります。大雑把に言えば、厚さ10cmの鉛と、深さ1m強の水は、同程度の遮へい性能があるわけです。

 放射線が人体に飛び込んだ場合は、分子レベルでの損傷が発生します。放射線の強度が大きければ、損傷部位が広がって火傷のようになり、全身に広がれば、死に至ることがあります。一方、自然界にも常に放射線があるので、人体は放射線による損傷を受け続けています。それでも、健康が維持できるのはなぜでしょうか。それは、放射線の強度が小さいので、身体の修復機能が勝っているからです。人体には修復機能があります。例えば、火傷をしても、軽ければ跡を残さずに治りますが、重くなると治っても跡が残り、全身に火傷を負うと死ぬこともあります。放射線の場合も同様で、傷害の発生や程度は、放射線があるか、ないかではなく、放射線の強度が問題です。

 ところで、放射性物質はなぜ放射線をだすのでしょうか。それは、その原子がエネルギー的に不安定だからです。安定になるために、余分なエネルギーを放射線として放出するというわけです。つまり、放射性物質は放射線を出して安定な物質に変っていきます。この変る早さは物質によって異なりますが、放射性物質は減っていくものなのです。いずれ、時間が経てばなくなってしまうのが放射性物質の本質です。

2008年6月 1日 (日)

原子力と科学館(6)

 「はかるくん」と「ベータちゃん」の違いは、検出器、測定対象、測定目的、表示単位など、いろいろありますが、面白いことに、地上からトンネルに入ったときの応答が正反対になります。「はかるくん」ではトンネル内で線量率が増加するのに対して、「ベータちゃん」では逆に、計数率が減少します。これは、検出器が違うので放射線に対するエネルギー依存性が異なるためです。「はかるくん」は、ウランやトリウムなどの大地に含まれる比較的エネルギーの低い放射線に感度が高く、「ベータちゃん」の方は、エネルギーが高い宇宙線に感度が高いのが理由です。トンネルに入ると、周りの岩石から出る放射線は増えますが、岩石が宇宙線を遮るので、宇宙線は減少することになります。

 宇宙線というのは、地球外から飛び込んでくる高エネルギーの粒子(素粒子と原子核)です。その発生源は太陽と銀河系で、90%が陽子(水素の原子核)、残りがヘリウム以下の原子核となっていて、これらの一次宇宙線のエネルギーは、1MeV以下から10の20乗eV(10の11乗GeV)を超えるものまでが観測されています。宇宙線には、あらゆる元素の原子核が含まれていて、遠い宇宙で散った超新星爆発の残骸が、宇宙中を飛び回っています。また、宇宙には、これらの粒子を加速する機構もあるとされています。宇宙を飛び回ると言っても、宇宙線は隕石と違って物体レベルではなく、原子レベルの原子核として、1個1個が観測されるものです。地上で観測されるのは、一次宇宙線が大気の原子と衝突してできた二次宇宙線で、多い順に、ミューオン、電子、陽子などとなっています。この二次宇宙線の強度は、1cm2当たり毎分約1個なので、はがき大で毎秒約2.5個となります。

 この宇宙線を見えるようにしたのが霧箱で、正確には宇宙線が飛んだ跡(飛跡)を見ることができます。霧箱の原理は、アルコールの蒸気を冷却して飽和状態に置き、宇宙線が通過すると、飛跡に沿って飛行機雲のようなスジ状の霧が発生するものです。直線的で細い飛跡はミューオンで、曲がりくねった飛跡は電子、ときどき、短い直線で太く現れるのは陽子です。霧箱では電気を帯びた粒子(荷電粒子)しか観測されないので、γ線は観測できませんが、霧箱の中でγ線が作り出した電子ならば観測できます。また、霧箱の容器や表面のガラスで遮へいされるので、外部からのα線やβ線は観測されません。したがって、霧箱で見えるのは、ほとんどが宇宙線と考えられます。霧箱は立体的ですが、観測できる部分の厚さはあまりありません。平面的な広がりはあるが、厚みはないのです。それでも、宇宙線は地球の重力で落下してくるわけではないので、あらゆる方向から飛んできます。地球の裏側からは、地球が遮ってしまうので飛んできませんが、水平方向には飛んできます。霧箱では、主に水平方向に飛んで来る宇宙線を観測していることになります。

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2008年5月31日 (土)

原子力と科学館(5)

 「ベータちゃん」は、測定器本体と、自然界にあってβ線を出す放射線源が入ったキットになっていました。放射線源としては、「御影石(花こう岩)」、「湯の花」、「塩化カリウム」、「リン酸カリウム」、「乾燥昆布」などが入っていました。これらには、天然のカリウムに約1万分の1の割合で含まれるカリウム40という放射性同位元素が含まれています。科学館で使用したのは、「御影石」と「塩化カリウム」と「乾燥昆布」で、「御影石」は大地の代表、「乾燥昆布」は食品の代表、「塩化カリウム」は肥料ですが、カリウムそのものとして選んだものです。つまり、自然放射線として、大地にも、食品にも、生物にも普通に含まれていることを象徴したものです。また、子どもでも知っている放射線利用にX線(レントゲン)装置がありますが、放射線は豊かな暮らしを支えるために身近にも利用されている例として、蛍光灯の放電管である「グローランプ」と、耐火物として酸化トリウムを利用したアウトドア用の「ランタン芯」を独自に加えていました。しかし、最近では「グローランプ」や「ランタン芯」にも放射性物質を使用しない製品が増えています。また、従来タイプの「ベータちゃん」には放射性物質を利用した例として「夜行時計」がキットに入っていましたが、近年は放射性物質を夜光塗料に使用しなくなったため、最近では「夜行時計」が除かれています。

 実は、「ベータちゃん」の展示には工夫をしています。β線は金属やプラスチックのケースを透過しないので、検出器が露出しています。検出器の薄い膜を破られることが多いので、薄いOHPシートを両面テープで検出部に貼ってみました。しかし、フィルムを剥がそうとした形跡が頻繁にあったことから、「ベータちゃん」本体を固定して、検出部には手が入らないように改良しました。放射線源も、紛失や破損などのいたずら対策として、ケースに入れてターンテーブルにはめ込み、ターンテーブルを回転させることで測定ができるようにしてあります。

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 実習生には、少し難しい設問を用意しました。β線は金属板で遮ることができるので、「ベータちゃん」の検出部の下に鉄板を置くと、下方からのβ線がさえぎられて計数が少なくなりますが、ゼロにはなりません。では、何を測っているのか、という設問です。答えは、宇宙線です。厳密には、上方の建築物などからのβ線やγ線の影響もあるはずですが、「ベータちゃん」はGM計数管方式なので、宇宙線に対する感度が高く、主に宇宙線を計測していると考えられます。「ベータちゃん」の上部を遮へいしても、計数値は変わらないのがその証拠です。一般に、バックグラウンドといって、放射線源のないときの計数値を測定しておいて、その分を差し引くのが正しい使い方ですが、「ベータちゃん」の場合のバックグラウンドは、主に宇宙線と考えられます。

2008年5月30日 (金)

原子力と科学館(4)

 述べてきた「宇宙と原子力」について解説したパネル展示のレジメを、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

これまで、「人間は宇宙の一部であり、人体を作っている原子は宇宙でできた」、「宇宙の始まりに存在したのは放射線だった」、「宇宙を支える原理は原子力と同じである」と述べてきました。原子力に対する知的関心に応えるためには、まず、その本質を伝えることが重要と考えます。しかし、科学館でこのような話ができる機会は、年に2回あるかどうかです。そこで、せめて科学館に来た実習生には理解して欲しいと考えて、研修の機会を利用して要点を伝えていました。以下は、その内容の概略です。

 一般的に、放射線知識を対象とする場合には、放射線が自然界にもあること、放射線は微量でも測れること、放射線は大量に受けない限り健康に影響がないこと、などを説明するために、簡易測定器や霧箱などを用意しています。霧箱というのは、宇宙線などの自然にある放射線の飛跡を見ることができる装置で、飛跡が飛行機雲のように見えますが、当館にも設置されていました。一見すると、細い線状の雲があちこちに次から次へと沸いては消えて、何を見ているのか分かりません。「きれい」と言う人もいますが、「気持ち悪い」と言う人もいて、感想は様々です。

 放射線測定器には、「はかるくん」と「ベータちゃん」の2種類がありました。両方とも、一般的な簡易測定器ですが、測定対象が違うので、測定目的も違います。「はかるくん」はその場の放射線の強さを測る測定器で、「ベータちゃん」はそこに放射性物質があるかどうか、どれくらいあるか、を測る装置です。放射性物質から出る放射線が対象ですが、一般にも知られている、α線、β線、γ線のうち、「はかるくん」はγ線、「ベータちゃん」は主にβ線を測定します。α線の測定用には「アルファちゃん」という簡易測定器がありますが、壊されることが多いので展示はされていませんでした。放射線の本質はエネルギーですが、α線はヘリウムの原子核、β線は電子、γ線は光子で、いずれも高エネルギーの粒子です。光子は実体のない電磁波の一種ですが、γ線やX線など、放射線として扱う場合は、エネルギーが高く、粒子としての性質が顕著になるエネルギー領域にあります。

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 既に述べたように、放射線は、α線、β線、γ線に限定されるものではなく、もっと広範な概念ですが、一般には、放射線管理の観点から、放射性物質から出るこれらの放射線を主に扱っています。誰でも知っているX線はγ線と同じ光子ですが、γ線とは違う発生機構で、通常は発生装置から出る人工放射線をいいます。科学館にも「すけるとん」という低エネルギーのX線発生装置がありました。ただし、人工放射線と言うのは地上の話で、宇宙には自然放射線としてX線を出す星もあります。X線はエネルギーが低いため、上述の簡易測定器では測れません。

2008年5月27日 (火)

原子力と科学館(3)

 原子力に関する知的関心は、年齢や既存知識によって様々と思われますが、情報提供の側では、大別して原子力発電と放射線の2テーマに対応が分かれています。実施主体によって分担している形ですが、いずれも、利用技術に関連した、必要性と安全性が中心です。それが現実に即していることは分かりますが、押し付けがましいと思われる欠点もあります。もっとニュートラルでナチュラルなアプローチがあるのではないか、と考えました。

 ヒントは、科学館のビデオ・ライブラリーにありました。NHKで放映した「地球大進化」の最終回に、「人類は、DNAだけでなく、知識を伝えることで進化した」という趣旨のナレーションがあります。獲得した知識を次代に伝え、それを蓄積することで、DNAに拠らない進化を遂げることができた、ということです。ひょっとしたら、今日の原子力の知識はそうして獲得し、蓄積された好例ではないか、と考えました。「人類の叡智が今日を築いた」と理解すれば、原子力だけでなく、科学技術全般に対する見方も変わるように思われます。

 以前から、宇宙の起源と原子力の関係に興味がありました。少し前に出版された「僕らは星のかけら」(*)という本があります。この本は、人体を構成する原子がどのようにして作られたかの謎を解き明かしていく趣向で書かれています。ギリシャの昔から人類が追い求めてきた知識の蓄積を追って、どの元素がどこで、どのようにして作られたのかの謎解きをしていきます。ぜひ、手にとって読んでいただきたいと思いますが、要するに、全ての元素は宇宙が起源だという結論です。大雑把に言えば、宇宙の始まりのビッグ・バンで、水素とヘリウムができ、それが集まってできた恒星の中で、人体を構成する炭素や酸素などができ、恒星が燃え尽きたときの超新星爆発で、多くの重元素ができた、としています。これらの元素の生成は、すべて核反応の結果です。太陽を初めとする、輝く星(恒星)では、核融合反応で元素を生成するとともに、エネルギーを発生させています。つまり、宇宙を支えているのは原子力エネルギーです。また、本当の宇宙の始まりには、物質はまだ誕生せず、エネルギーだけがあって、その温度は100億度を超える、とされているので、この温度から換算すると、宇宙の誕生時には、実体がなく、1MeV(1,000,000eV)を超えるエネルギーそのものである光子だけがあった、ということになります。別の言い方をすれば、「宇宙の始まりは放射線だけの宇宙だった」のです。

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こうして見ると、宇宙(あるいは自然)を支配する原理は原子力と同じです。人間は地球から生まれますが、地球は宇宙から生まれました。人間も宇宙的存在であり、宇宙の一部であることに間違いはありません。人間も生物も、自然はすべて、原子力の原理で生まれた、と考えれば、親しみを感じませんか。さらに、原子力利用は人間が作り出したのではなく、自然が備えていた真理を人類の叡智で見付け出したものです。それは、ギリシャの昔から、人間が飽くなき探究心で知識を蓄積し続けた結果であって、人類の叡智、それこそが科学の本質ではないかと思います。技術は科学を人類のために生かす手段です。一方、人類のDNAは、人類が誕生して以来、ほとんど進化していません。人類には、大昔からの変わらない、いわば遅れた部分があるのも事実です。進化し続ける知識に、進化していないDNAが追いついていない現状も理解する必要があります。

(*)マーカス・チャウン、僕らは星のかけら 原子をつくった魔法の炉を探して、無名舎

2008年5月26日 (月)

原子力と科学館(2)

 原子力と言えば原子力発電をイメージする人が多いと思いますが、原子力利用には、エネルギー利用と放射線利用の2分野があります。しかし、エネルギー利用は、核分裂でできた原子核(核分裂片)の持つ高エネルギーが元なので放射線利用でもあり、放射線利用も、放射線の本質が高エネルギーの粒子であることを考えれば、実はエネルギー利用とも考えられるというアンビバレントな関係があって、なかなか難しいものです。一般には、エネルギー利用と言えば原子力発電のことで、それ以外を放射線利用と考えています。

 さて、科学館にも開館当時から放射線測定器などの展示物はあったようですが、原子力発電に関する展示物は、平成15年に設置された「原子炉運転シミュレーション・ゲーム機」が初めてです。「子どもでも楽しめて、大人は原子力発電の勉強ができる」というコンセプトだったので、制御棒を操作して核分裂による中性子を増減させるゲームと、原子力発電所の起動段階をイメージしたシミュレーション・ゲームでスタートしました。翌年には、シミュレーション・ゲームに原子炉の再循環流量調節を追加して、より現実味を持たせるとともに、原子力発電所の主要機器をベースにした原子力発電所の組み絵パズルを追加しています。この中には、主要機器のナレーション付き解説も含まれていました。

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 この「原子炉運転シミュレーション・ゲーム機」は、運転制御盤のようにボタンが並んだ操作盤で操作するのが特徴でしたが、本体はパソコンだったので、各ゲームのアクセス状況が分かるようになっていました。設置から3年半の間の総アクセス数は83862件でしたが、各ゲームに繰り返してチャレンジしてもカウントされない設定なので重複はなく、延べ約8万4千人が利用したことになります。単純に考えれば、平成15年度以降の入場者約43万5千人の約20%が利用した勘定です。一方、この間に主要機器の解説にアクセスした件数は、トップ画面の中央制御室が2978件、次いで原子力発電所745件となっていて、後はメニューによる選択で、原子炉279件、再循環ポンプ146件、格納容器120件、タービン154件、給水ポンプ110件、発電機98件、復水器83件、となっています。この数値が、首都圏における原子力への知的関心の度合いを物語っています。

 原子力発電知識の入門編は電力会社のPR館など随所にありますが、当館が閉館した今となっては、その上のレベルに相当するものが見付かりません。近年、原子力発電が地球温暖化対策もあって世界的に見直されている中で、一歩進んだ原子力知識を求めるニーズに応える仕組みの整備が望まれます。

2008年5月25日 (日)

原子力と科学館(1)

 この科学館は、平成7年12月2日に開館し、平成19年12月26日に閉館しました。平成19年9月15日には、累計入場者数100万人を達成しています。閉館後に発行された「回顧録」によれば、開館12年間の総来館者数は、1,002,889人、総開館日数は、3,859日で、1日平均来館者数は、265人となっています。

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 体験型(ハンズ・オン)科学館・博物館に関する著作(*)では、年間入場者数を施設の面積で割った数値が150人/m2を超えていれば優秀としています。当館の平均年間入場者数は、1,002,889/12=83,574人で、施設面積の約340m2で割ると、246人/m2となって、面積当りの集客力は群を抜いていました。また、同種の施設では、開館後3~4年後には陳腐化し、その後は年間入場者数が減少するという「ライフ・サイクル」論(*)に照らしても、当館では、休館日や開館時間の変更があって、単純に比較はできないものの、開館9年後まで年間入場者数の増加傾向が持続したことは、関係者の運営努力を物語っていると思います。

 さて、当館の設立目的は、平成17年12月の開館10周年を記念して発行されたパンフレットに、『原子力をはじめとする現代科学技術に関する情報を分かりやすく提供するとともに、主に青少年層に科学技術に対する興味と関心を喚起するために』開設した、とあります。原子力について、事業者でもなく、メーカーでもない、中立の立場から、誰でもが知りたいと思えば、その手助けができるサービス機関という位置付けがされていました。つまり、PRではなく、「ウエルカム」が目的だったのです。その一環として、国が公開している原子力情報の閲覧サービスを実施していたほか、原子力関連独立行政法人などの関係機関が発行したパンフレットなどの配布を行っていました。その利用状況は、原子力公開情報の閲覧サービスについては、利用記録を取っていないので確たるデータはありませんが、随時実施したアンケートの結果によれば、利用者の割合は入場者の1%程度と考えられます。開館12年間で総来館者数102万人の1%と言えば、約1万人です。また、原子力関連のパンフレットの配布部数は、年間7千部程度となっています。この利用実績が多いのか、少ないのかは別として、原子力情報に関する様々なニーズを想定して備えには努めていたつもりです。

(*)Tim Caulton原著、ハンズ・オンとこれからの博物館‐インタラクティブ系博物館・科学館に学ぶ理念と経営‐、東海大学出版会

2008年5月24日 (土)

本(!)浮沈子(2)

 「本(!)浮沈子」の作り方と使い方です。

 必要な材料は、
  ・ペットボトル(350mlの野菜ジュース角型容器でやや固めのもの)
  ・透明なストロー(長さ約100mmに切る) 2本
  ・太めのステンレス針金(長さ約50mm)  2本
  ・水(500ml程度、一晩、室温に放置する)
です。

 作り方は、
(1) 透明なストローを長さ約100mmに切る。
(2) 切ったストローの両端をグルーガンで密栓して「浮き」を作り、一端(下端)に針で孔を開ける。
(3) 「浮き」の孔を開けた端近くにステンレス針金を2巻き程度巻きつける。
(4) コップに水を一杯入れ、水の中に「浮き」の下端を入れたまま、親指と人差し指ではさんで押しつぶすと中の空気が抜け、指の力を抜くと水が「浮き」に入ってくる。
(5) さらに「浮き」の中の空気を加減して、1本は沈まずにやっと浮き、他の1本は浮かずにやっと沈むくらいの空気の量にする。
(6) 空気を抜き過ぎて沈むようになってしまったら、「浮き」をコップの外に出し、入った水を少し抜いてやり直す。
(7) 「浮き」の調節が済んだら、ペットボトルに一杯になるまで水を入れ、その中に「浮き」を入れてペットボトルのキャップを固く閉める。
以上で「本(!)浮沈子」の完成です。

Justtemp

 浮いている方の「浮き」を沈めるには、四角い断面のペットボトルの側面を押してへこませます。力を抜くと、また浮かんできます。沈んでいる方の「浮き」を浮かすには、ペットボトルの角を押します。浮きにくい場合は、片手ずつ違う対角線で同時に押すようにします。力を入れ過ぎるとへこんでしまうので、へこまないように注意して力を加え続けるのがコツです。

 試作品では、「浮き」に10mmごとのマークをフェルトペンで書き込みました。「浮き」の中の水位の変化がこれで一目瞭然です。容器の側面を押したときは水位の変化が大きく、容器の角を押したときはごくわずかの水位の変化であることが見て分かるようになりました。残った悩みは、容器を逆さまにされると「浮き」の中の空気が抜けてしまって、再調整が必要になることですね。誰か、浮沈子を逆さまにしても「浮き」の中の空気が漏れない工夫をしてみませんか。

2008年5月23日 (金)

本(!)浮沈子(1)

 最初のシリーズ「逆(!)浮沈子」の続編です。実は、ブログには掲載しなかった温度の影響について、ホームページに掲載した文章の記述が不十分であることが分かったので訂正します。温度の影響が分かったことで、「本(!)浮沈子」のアイディアに到達しました。

 ホームページ版には、浮沈子に対する温度の影響について、『室温付近で水温が変化した場合は、温度の上昇によって水の比重は減少するが、空気の体積は増大する(ボイル-シャルルの法則)ので、浮力の変化はその差となる。室温付近では、空気の体積の変化率(+0.34%/℃)の方が水の比重の変化率(-0.2%/℃)よりも大きい(*理科年表より算出)ので、水温が上昇すると浮力は増大する。』と記載しました。「水温が上昇すると(浮沈子の)浮力は増大する」のは間違いではないので、理屈としてはこれでいいと早合点していましたが、よく考えてみると、容器の体積が一定であれば、水は非圧縮性なので、浮沈子の中の空気層で体積が増大すると、圧力も増大するので、変化率は違ってくるはずです。この記述には、温度が変化したときに容器の体積がどうなるかの考察が欠けていました。

 水の体膨張率は、0.21×10の-3乗/K(*理科年表)とされています。一方、容器のPET(ポリエチレンテレフタレート)の線膨張率は、メーカーのデータによれば、6.5×10の-5乗/Kとされているので、PET容器の体積の膨張率は、(1+6.5×10の-5乗)の3乗=1+0.20×10の-3乗となって、水の体膨張率とほぼ等しいことになります。ということは、温度が変わっても、容器と内容物の水の体積は同程度に変化して、中の水の圧力にはほとんど変化がないことになります。「水温が上昇すると(浮沈子の)浮力は増大する」という事実から判断しても、温度が上がると「浮き」の中の空気の体積は増え、温度上昇による水の膨張は容器の膨張でほぼ吸収されるので、空気の体積増加率はほぼ維持されると考えられます。

 さて、温度が上がると「浮き」は浮き上がるとすると、ありがちな逆浮沈子の作り方では、室温より低い水道水を容器に入れるので、せっかく沈むように調節した「浮き」も、時間がたって水温が上がってくると浮き上がってしまうことになります。一般的な浮沈子では、もともと「浮き」を浮くように調節するので問題にはならず、逆浮沈子では問題になります。

Lowtemp

 そこで、水道水を一晩放置して、室温にしてから逆(!)浮沈子を作ることにしました。さらに、今回は逆(!)浮沈子を発展させて、「浮き」を2本入れ、1本は浮いていて、もう1本は沈んでいるように調整しました。その結果、容器の側面を押すと、2本とも沈み、容器の角を押すと2本とも浮く、本当の浮沈子、本(!)浮沈子ができました。

2008年5月22日 (木)

赤外線リモコン受信機(3)

 「赤外線リモコン受信機」のテキストと、アセンブラ解説、ソース・プログラム(合併)、信号解析の例は、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。「電子サイコロ(3)」で紹介した「表面プリント基板」は今回の2日目から登場しました。事前の手間はかかりましたが、部品の配置ミスや配置の確認の応対はなくすことができました。

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 さて、赤外線リモコン受信機を、モーター制御やリレー制御と組み合わせることも可能です。そのための回路を加える必要がありますが、それほど難しくはありません。PICの入出力制御については、既に掲載した「電子サイコロ」を参照してください。

 PIC自体では1ポート最大25mAまでしか電流が取れないので、駆動素子として、1~3Aが必要なモーターを制御するには大電力用トランジスタやモータードライバーICを、25mA以上が必要なリレーを制御するにはトランジスタを使用します。25mAから数Aの負荷であれば、汎用トランジスタを使用したスイッチング回路が利用できるので、リレーを使用しなくても済みます。また、モーター制御で反転や静止を含む場合は、モータードライバーICを使用すると回路構成が簡単になる利点があります。また、トランジスタを使用する場合は、モーターやリレーのコイルによる逆起電力でトランジスタが損傷するのを避けるため、逆起電力を逃がすためのダイオードをモーターやリレーと並列に(逆方向にして)入れます。また、トランジスタのベースに接続する抵抗の値を調整して、必要な駆動電流を確保するようにします。前回の「ベンハムのコマ」で述べたように、モーター制御には、オンとオフを周期的に繰り返す、パルス幅変調(PWM)方式を使いますが、オンの時間の割合を負荷率(デューティー・ファクター)といい、オンとオフの時間は待ち時間の長短で設定します。テキストには、これらの使用例を載せてあります。

 ホームページに掲載したプログラムは、全メーカーのフォーマットに対応するためにプログラムを合併した膨大なものです。このプログラムでは選択したメーカー以外はコメント・アウトしてあるので、必要に応じてメーカーを取捨選択してください。その場合、3フォーマット分以上のプログラムの部分が残っていると、PICのプログラムメモリー量を超過する恐れがあるので、必要でない部分は極力削除してください。なお、待ち時間のサブプログラム部分が、各フォーマットに対応して細かく分かれているので、必要なサブプログラムを間違って削除しないように注意が必要です。なお、赤外線リモコン受光モジュールは、製品によってはノイズを受けやすいものがあります。ノイズの影響で誤動作する場合は、対策を考えるよりも交換した方が早いかもしれません。

2008年5月21日 (水)

赤外線リモコン受信機(2)

 赤外線リモコンの信号解析は、赤外線リモコン受光モジュールで復調した信号出力を音声信号としてパソコンに入力してwavファイルを作成し、このwavファイルをスペクトル・アナライザーにかけて、信号のオンとオフの時間、周期、ビットの構成を分析しました。

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実際に赤外線信号を分析して見ると、大きく分けて4つのパターンに分類できるようです。ただし、このルールは公表されていないので、公式なものではありません。あくまでも、信号を解析した結果です。まず、コードの始まりを決めるスタート・ビットがある場合(NEC、SONY、Panasonic)とない場合(Sharp)に分けられ、それぞれオン・オフの周期が異なるとともに、コードを構成するビット数が異なっています。NEC型に属するのは、日立、東芝、サンヨー、NEC、富士通、AIWAで、SONY型はソニーだけ、Panasonic型は松下だけ、Sharp型はシャープだけです。また、NEC型の変形には、パイオニア、ビクター、Panasonic型の変形にはフナイ、LG、サムスン、Sharp型の変形には三菱電機がありますが、いずれも時間間隔やビット数が違うのでプログラムの共用はできません。

 プログラムでは、コードの開始を決めるスタート・ビットがあるものは、赤外線信号を検出(赤外線リモコン受光素子ではL、オフ)してから、一定の時間後にH(オン)、さらに一定の時間後にL(オフ)となるスタート・ビットを確認してから、その後のコード部分に対しては、短周期か長周期かを判断して、短周期ならば0、長周期ならば1と入力します。ただし、スタート・ビットがないシャープの場合は、簡素化のため、先頭の数ビットが共通になることを利用して、スタート・ビットの代用としています。

 赤外線信号の長さは各メーカーで違いがあって最大では32ビットとなっていますが、その場合でも先頭の16ビットはメーカー・コードや機種コードで変化がないため、後半の16ビットだけでキーのコードを区別できます。また、22ビットや12ビットの長さの場合は、赤外線信号を実際に解析してキーが区別できる部分を抽出するようにしました。また、赤外線信号はビット0から順に送信されるので、これを16進数として読み込む場合は、逆順で読み込む必要があります。さらに、キーを押し続けた場合に、信号が反復されるケースと反復信号が送信されるケースがあるほか、信号が反復されるケースでも、反転信号が一緒に送信される場合があります。そこまでの対応は複雑なので、今回は、単純に信号の送信周期である108msec(NEC型)を目安に、それを超える約148msecの間、赤外線信号が途切れなければキーが押し続けられているという判断をし、それを繰り返しています。この装置では、キー入力データをPICのEEPROMというメモリー部分に記憶させているので、電源をオフにしても記憶は消えません。

2008年5月20日 (火)

赤外線リモコン受信機(1)

 ワークショップのPICマイコン入門編で、第3回目に取り上げた「赤外線リモコン受信機」です。第1回は、入出力制御の例としてLEDを点滅させる「バーサラーター」、第2回目は、モーター制御の例としてモーターをトランジスタで駆動させ、パルス幅変調(PWM)方式で可変速する「走行モジュール」を取り上げました。第3回目は、メカトロ機器を遠隔操作するのに必要なテクニックとして、身近にある赤外線リモコンを送信機として利用する方法を学びました。

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 この「赤外線リモコン受信機」は、市販のテレビ用赤外線リモコンのキー入力に対して、予め記憶させたキーに対応するLEDを点灯させる機能を持ちます。今回は、4個のキー入力に対応するようにしました。キーを記憶させた後は、赤外線リモコンの該当するキーを押している間、対応するLEDの点灯が継続します。キーを記憶するには、まず、タクトスイッチを押すとパイロットランプ(LED)が消灯するので、記憶させたいキーを短時間だけ押し、パイロットランプが点滅するのを確認します。この操作を4個のキーについて反復すると、パイロットランプが常時点灯となって、キー入力待ちの状態になり、記憶操作は終了します。赤外線リモコンのメーカーによって赤外線信号のフォーマットが異なりますが、3種類のフォーマットをショートピンで切り替えることができます。この装置は、赤外線リモコンの信号を認識するだけの装置ですが、PICの出力を取り出してモーター制御やリレー制御に応用することもできます。

 メカトロ機器には自動制御や遠隔操作が必要で、遠隔操作では無線によるラジコンや、赤外線によるリモコンなどが一般的です。PICマイコンを利用して赤外線リモコン送信機を作ることも可能ですが、テレビ用の赤外線リモコン送信機ならばどこの家庭にもあるので、わざわざ作ることはないと考えました。

 さて、赤外線リモコンの信号とは、どのようなものなのでしょうか。赤外線リモコンは、テレビやビデオ、DVDなどの映像機器やオーデイオ機器のほか、エアコンや暖房機器、照明などの電化製品の遠隔操作に使用されています。ここでは、赤外線リモコンとして、もっとも普及している、テレビ(ビデオ、DVD)用リモコンの選局キーに限って解説します。赤外線リモコンは、赤外線のオン・オフ信号を38kHzの変調波に載せて送っているので、専用の受光モジュールで復調(元の信号に戻すこと)して信号を取り出す必要がります。赤外線リモコンの信号は、赤外線のオン・オフの組み合わせで意味を持たせていますが、メーカーによって信号のフォーマットや信号の周期が異なっています。中心となる規格はあっても、トップメーカーでもその規格に参加していない状況で、実態はバラバラです。

2008年5月19日 (月)

ベンハムのコマ&(5)

 最後は、ワークショップのPICマイコン入門編「ベンハムのコマ」です。PICマイコンを使ったモーター制御の例として実施したものです。前年にモーター制御の例として「走行モジュール」という工作物にチャレンジしました。メカトロ志向としては格好のテーマで、人気も上々だったのですが、結果は散々でした。

 「走行モジュール」は、モーターで自走する工作物です。自動車と言うには気が引けたので、このネーミングにしました。「走行モジュール」の失敗を受けて、考えたのが「ベンハムのコマ」でした。モーター制御の基本を押さえながら、機械工作に手間がかからないのが特徴です。しかも、モーターの可変速制御の定番である、パルス幅変調(PWM)方式を十分に活用できます。パルス幅変調方式とは、数kHzから数10kHzのサイクルで、モーターのオン、オフを繰り返すことによってモーターの回転速度を制御する方法で、1サイクル中でのオンの時間割合を負荷率といいます。負荷率を上げると早く回り、下げると遅く回るという仕組みですが、負荷率を下げすぎるとトルクが減少して負荷に負け、モーターが止まってしまいます。「走行モジュール」では、前進のみだったので、モーターのドライブにはトランジスタを使用しましたが、「ベンハムのコマ」は逆回転も必要なので、モータードライバーICを使用しました。モーター制御では、このモータードライバーICの使い方を覚えておけば、まず万能です。逆回転を含む場合は、トランジスタなら4個必要なので、モータードライバーIC1個の方が安上がりです。

Workshop

 「ベンハムのコマ」のテキストと、アセンブラ解説、ソース・プログラム(一部改良)は、コマの型紙と併せて、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

 この、ソース・プログラムは、パルス幅変調方式の調整がまだ十分ではありませんが、毎分250回転程度までの低速回転が可能です。また、モーターの端子の一方とケースの間に取り付ける0.1μF積層コンデンサは、モーターから発生する電気ノイズでPICマイコンが誤作動するのを防止するための、いわゆるパスコンです。「走行モジュール」の初回には、これに気が付かなくて、参加者の皆さんを悩ませました。その後、いろいろと試してみて、この方式で対策として十分という結論になりました。モーターとPICが10cm以上離れていれば、まず問題ありませんが、距離が取れない場合や、ノイズの影響が疑われる誤作動がある場合は、パスコンを入れてみてください。

2008年5月18日 (日)

ベンハムのコマ&(4)

 「ベンハムのコマ」がなぜ色付いて見えるかは、よく分かっていないようですが、ウィキペディアによると、『ベンハムの独楽を回すと、弧状の薄い色があちこちに見える。この色はフェヒナーの色と呼ばれるが、誰が見るかによって異なる色となる。なぜこのような現象が起こるのか完全には理解されていない。赤(正確には黄色からオレンジ)、緑、青に感受性が高い網膜内の光受容体(錐体)が応答する光の変化率がそれぞれ異なっているからではないかとも考えられている。』とされています。

 「ベンハムのコマ」のパターンもいろいろと紹介されていて、白地に適当に黒い線を引いてコマを回して色付いて見えるかどうか、という原始的な実験もできるようです。写真では色付いて写らないので、色が付く、付かない、はまったく主観です。こういう現象は、定量化が難しいので、原理の解明はつらいところです。しかし、いろいろな人が議論に参加すれば、少しずつでも本質が見えてくるかもしれません。そこで、微力ながら、議論に参加してみたいと思います。

 簡単な、オリジナルの「ベンハムのコマ」のパターンを見ると、円板の半分の180度分は黒く塗られています。白地の部分には、45度の角度の円弧が、半径をステップ状に減少させながら、ステップごとに1本の黒線として描かれています。この4本の円弧を1セットとして、3セット(ただし、もっとも内側のセットは3本だけ)が描かれていますが、コマを回したときの色の付き方は各セットで同じに見えます。円弧の長さは外側のセットと内側のセットでは異なっていて、円弧が動く速度は違うけれども、円弧の角度はすべて同じなので、見えている時間は同じであることから、白と黒の時間率に意味があると考えられます。

Benhamo

 既に、「ストロボスコープ・コマ」を使って、「ベンハムのコマ」が色付いて見える回転速度は低速ほど良いことが分かっています。コマを低速で安定して回すことは難しいので、仮に、最適な回転速度を毎分180回転としましょう。これは毎秒3回転に相当します。動体視力のいい人では、線が止まって見える程度の速度です。この「ベンハムのコマ」を右回転で回すと、円弧の各セットの外側から、黒、紫、緑、赤と見えます。各セットだけを取り出すと、円弧の長さは皆同じなので、白地と黒地の割合は変わりません。違いは、円弧の両側にある白地との時間差と考えられます。各セットで中の2本の円弧は、外側が、黒4・白2・黒1・白1で、内側が、黒4・白1・黒1・白2となっています。回したときに赤く見える内側は、黒5・白3で、黒っぽく見える一番外側と同じです。この違いは謎ですが、回転速度を毎分180回転と仮定すると、色付いて見える円弧は、外側から順に、黒0.17秒・白0.08秒・黒0.04秒・白0.04秒、黒0.17秒・白0.04秒・黒0.04秒・白0.08秒、黒0.21秒・白0.12秒、となっていて、視覚の応答時間としては、0.04秒程度の違いが色覚の差を生み出していると考えられます。コマの回転を逆にした場合でも、黒っぽく見える位置が変わる以外は見え方の順番が同じなので、矛盾はありません。

 さて、この議論は、単純に白地と黒地の時間率に注目したものですが、時間率では同じ外周と内周で色付き方が違うことから、円弧の周囲にある白地の影響も考える必要があるように思います。皆さんはどう思われますか。

2008年5月17日 (土)

ベンハムのコマ&(3)

 私が試作した「ベンハムのコマ」は次のようなものです。

(1) 3mm厚のベニヤ板を、ホールソーで、直径60mm程度に切り抜く。
(2) 型紙を、ベニヤ板より小さめの直径58mm程度に調整して印刷する。
(3) 印刷した型紙の裏に、両面テープを隙間なく貼る。
(4) 型紙を丸く切り抜き、中央の穴を直径6mmのポンチで打ち抜く。
(5) 切り抜いた型紙を、中央合せでベニヤ板に貼り付ける。
(6) 直径6mmの丸棒を30mm程度の長さに切る。
(7) ベニヤ板の孔に丸棒を通す。緩みがあればセロテープを巻いて調整する。
(8) 直径6mmのストローを長さ7mm程度に切って、丸棒の下にはめる。
(9) ストローの中に直径6mmのBB弾を押し込み、BB弾が少し出る程度にする。

Topbb

 BB弾を使ったのは、ひらめきです。最初は、丸棒の先を紙やすりで削って丸みを付けてみましたが、どうしてもコマの軸がぶれます。正確に芯出しをするのは難しいようです。プラスチック製のBB弾は、一応、真球なので、軸が出やすいと思って使ってみました。直径6mmの鋼球があれば、その方がベターです。さて、上述の方法でも、いろいろと道具や材料の準備が必要です。そこまでしたくない人は、型紙を厚紙に貼り付けて、コマの軸はつま楊枝にすれば、もっと簡単です。その場合は、型紙の直径を大きくした方が、コマがよく回ります。

 「ストロボスコープ・コマ」の作り方も同じです。型紙のパターンは、中央から、3本縞、4本縞、6本縞、8本縞、12本縞、16本縞、24本縞、32本縞となっていて、蛍光灯の下で回すと、中央の3本縞は毎分1000回転、後は順に、750回転、500回転、375回転、250回転、188回転、125回転、94回転で同期します。回し始めは、4本縞が止まって見えるので、毎分750回転程度、止まる直前は、外側から3番目の16本縞か、2番目の24本縞が止まって見えるので、200回転から100回転辺りに相当します。コマの軸のふらつきを比較すると、「ベンハムのコマ」に色が付いて見えるのは、この辺りなので、毎分300回転よりももっと低速の方がよく見えることが分かると思います。「ストロボスコープ」の説明は、前回の「空中コマ(5)」をご参照ください。なお、インバータ方式の蛍光灯や電球型蛍光灯では、50Hzの点滅がないので使えません。比較的古い蛍光灯を使うか、なければ電球でも構いません。

 ところで、この「ストロボスコープ・コマ」を蛍光灯の下で見ると、うっすらと色付いて見えます。「大王コマ」として紹介されているものと原理が同じで、蛍光灯の各波長の発光時間差によって色が付いて見えるとされています。「ベンハムのコマ」と違って、これは写真撮影しても色が付くので、視覚によるものではないことが知られています。

 最後の「ニュートンのコマ」は、「色の科学」で触れた加法混色を簡単に実験することができます。コマの作り方は同じなので、試してみてください。

2008年5月16日 (金)

ベンハムのコマ&(2)

 「ベンハムのコマ」のパターンはいろいろなものが紹介されています。基本的なパターンは共通で、円板の半分が黒く塗られ、残りの白い部分に、3分割または4分割した黒の円弧が単線または3重線で描かれています。前回に紹介した複雑なパターンは改良型のようですが、どのパターンでも見え方に大きな違いはありません。4分割した3重線のパターンが最も多く取り上げられているようです。ワークショップでもこのタイプでした。

 問題は、パターンではなく、円板の回転速度です。あるホームページで、毎分300回転程度が良い、とあったのを参考に、モーターの可変速プログラムを作りましたが、これがなかなか大変。と、言うのも、モーターの可変速制御は、パルス幅変調(PWM、Pulse Width Modulation)方式といって、モーターのオンとオフを細かく繰り返すものです。最近の電車は、この可変速制御を採用しているので、モーターの音を聞くとすぐに分かります。数kHz~10数kHzのサイクルで制御するので、それが音になって聞こえ、その周波数が変っていくのが分かります。模型モーターの定格回転速度は、毎分3000回転程度です。毎分300回転というと、かなりの低速回転になります。この辺りでは、モーターのトルクが不足気味で、なかなか一定速度で回転できずに、すぐに止まってしまいます。いろいろと悩んだ挙句に、回転速度の大きい方からスイッチで速度を切り替えていって、最低速度では悪くすると止まるような、不完全な方法になりました。ワークショップの本来の趣旨は、具合が悪ければ、プログラムを自分で改良してもらうことだったので、あえてパーフェクトでなくてもよいと考えたからです。結局、ワークショップの段階では、最低速度で回転する円板が徐々に回転速度を落としていく途中で、「ベンハムのコマ」に色が付いて見える、というものでした。それでも、科学館の展示物にはなかった逆回転ができたので、色の付き方の順番が右回転では、内側から、赤、緑、青、黒(?)となるのが、左回転では、外側から、赤、緑、青、黒(?)と、逆順に見えるのが主な違いでした。

 実は、この段階では実際の回転速度がどのくらいなのかは分かっていません。最近になって、手づくりの回転数計を試作して測定してみると、「ベンハムのコマ」に色が付いて見えるのは、もっと低速であることが分かりました。毎分150~200回転程度か、それ以下が良いようです。そこで、番外編として、オリジナル(に近い?)「ベンハムのコマ」の作り方をご紹介します。併せて、その回転速度が分かる「ストロボスコープ・コマ」と、回すと白く見える、加法混色を実感できる「ニュートンのコマ」をおまけに付けました。

Tops

 コマの型紙は、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に、後日、掲載します。

2008年5月15日 (木)

ベンハムのコマ&(1)

 「空中コマ」、「ハノイの塔」と展示物が続きました。ついでに、「ベンハムのコマ」に行きます。タイトルの後の「&」は、その他の意味です。展示物の「ベンハムのコマ」を話の枕にして、ついでにコマのアラカルトと、ワークショップのPICマイコン入門編として実施した「ベンハムのコマ」と続けます。科学館を知っている人には懐かしく、知らない人には訳が分からない組み合わせかもしれません。

 ワークショップでは、PICマイコンを使った工作を2年間で5回のシリーズとして実施しました。本来は、その順番に紹介した方が、理解しやすいと思いますが、ブログでは順不同で出てきています。「ベンハムのコマ」は、最終回の第5回にモーター制御の応用編として実施したもので、モータードライバーICを利用した可変速制御がテーマです。第2回では、トランジスタを利用した一方向の可変速制御に取り組みましたが、今回は逆回転を含むモーター制御がメインです。PICマイコン教室が主眼なので、工作品は何でもよかったのですが、正転と逆転で効果が異なり、工作そのものが簡単ということから、「ベンハムのコマ」を選びました。「コマ」と言ってもただの円板で、それを「コマ」というのもおかしな話ですが、展示物は「コマ」ではない円板を「ベンハムのコマ」と言っていたので、そのままのネーミングにしました。

 展示物の「ベンハムのコマ」は、正確に言えば、「ベンハムのコマ」のパターンの円板を可変速で回転させるものでした。パターンは2種類あって、一つは円板の半分を黒く塗り、残りの半分に45度の円弧を3本ずつ、半径を小さく変えながら4段に配置したもので、他の一つは、60度の円弧を、20度ごとにずらしながら、半径を小さく変えて、8本目で折り返すパターンを2往復する、やや複雑なものでした。いずれもスイッチを押すと回転して、ツマミを回すと回転速度が変化する仕掛けになっていました。円板はスポットライトで照らされていて、普通は比較的低速の回転で、白黒のパターンなのに色付いて見える、というものです。個人差があって、しかも、あまりはっきりと色が見えるわけでもないので、何となく、だまされたような気持ちで円板をながめています。色は主観ですから、他人がどう見えているのかは分かりませんが、私には、内側からオレンジ、緑、紫、黒(?)くらいに別れて見えました。オレンジは、無理すれば赤に、紫は、これも、青に見えるときもありました。

Benham3  Benham4
 
 「ベンハムのコマ」は、あちこちの科学館にもあり、インターネットでもいろいろと解説されているので、興味のある方は探してみてください。ここでは、タイトルの「&」に相当するものとして、本物(?)の「ベンハムのコマ」の作り方などをご紹介します。

2008年5月14日 (水)

ハノイの塔(4)

 こういう説明の難しいところは、説明する側が自分の分かりやすい方法で説明しがちなことです。説明される側は、必ずしも同じイメージが持てません。何度説明しても、やってみるとうまく行かないことが、しばしばあります。難しいものです。今までの説明で、ピンとこない方は、まず、やってみてください。「ハノイの塔」は教育玩具として市販されています。わざわざ買うほどでもない、と思う方は、大きさの違う厚紙を切り抜いても構いません。その場合は、色分けをしておくと、間違わずに済むでしょう。

 さて、「ハノイの塔」の最小手数のアルゴリズムを理解すると、7段を何分くらいでクリアできるでしょうか。今度は、総手数が問題です。答えは、255手(=2の7乗-1)です。1手を1秒で、なおかつ、間違わずに進められれば、255秒、つまり4分15秒で終わるはずです。この領域になると、数学パズルというよりは、単なる手の運動になってしまい、当然、若い人の方が有利です。さすがに、「数える」方法を編み出したアテンダントのレコードは4分20秒程度でしたが、私などでは4分50秒ほどかかってしまいます。しかも終わった後は、肩こりと腱鞘炎まがいの腕の痛みが残ります。

 この7段で255手、の考え方はいろいろあるようですが、今までの説明をベースにすれば、次のような考え方になります。一段の山、つまり1段目を右の柱に移すのに1手、2段の山を中央に作るのに2手、3段の山を右に作るのに4手かかります。この辺からは、やってみないと理解しにくくなりますが、4段の山を中央に作るのに8手、5段の山を右に作るのに16手、6段の山を中央に作るのに32手、7段の山を右に作るのに64手かかることが分かります。これだけの手数が必要なので、合計すると、1+2+4+8+16+32+64=255となります。2の7乗は256なので、2の段数乗から1を引くと、総手数になります。なぜ1を引くのかといえば、最初の状態を数えないからです。最初の状態を入れた全パターンが、2のn乗(nは段数)ということになります。試行錯誤でやると20分から30分かかるのが、最小手数のアルゴリズムを理解すれば4分ちょっとでできるわけです。

 さて、意地悪をして「ハノイの塔」を8段にしてみました。7段で30分かかる人は、8段では1時間以上かかることになります。なぜかというと、7段をまず作ってから、その7段の山を隣に移すことになるためです。7段の手数の2倍と、8段目を移す1手が必要になるわけです。したがって、2×255+1=511となって、確かに2の8乗-1になりました。また、1手1秒で計算すると、最小手数では、8分41秒となります。しかし、実際にトライしてみると、疲れが出てくるのか、とても計算通りの時間では終わりません。10分近くかかってしまいました。それでも、試行錯誤の60分に比べれば、50分も少なくて済みます。でも、これでは単なる手の運動に過ぎません。何分何秒でクリアするかという、新記録だけが目的になってしまいます。科学の行き着く先としては、どうなのかな、という結果になってしまいました。お疲れさまでした。

 「ハノイの塔」の最小手数のアルゴリズムを理解するためのヒントは、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

Scene

2008年5月13日 (火)

ハノイの塔(3)

 7段の「ハノイの塔」の最小手数の考え方は、次のようなものです。手順とは逆に、まず、最後に、右に7段の山を作るためには、中央に6段の山ができなければならない、と考えます。つまり、7段目を右に移すためには、右の柱を空けておかなければならないからです。左に7段目が残っていて、中央に6段の山ができていれば、次の手で7段目を左から右に移すことができます。逆に言えば、それ以外の方法はありません。その次に考えるのは、中央に6段の山を作るためには、右に5段の山ができないといけない、ということで、その後は、順に、中央に4段の山、右に3段の山、中央に2段の山、右に1段の山となりますが、1段の山とは1段目、つまり一番小さい板ということです。最初の1手は、1段目を左から右に移す、が正解です。何も考えないで、1段目を中央に移してしまうと、7段の山は中央にできてしまいます。それでも山を移したことにはなりますが、課題とは違う結果になってしまいます。

 さて、この説明を聞くと、なぜ、右と中央だけなのか、と思う人もいるでしょう。それは、元々の山が左にあるからです。元々の山の一部が常に左に残っているので、段を作ることができるのは右と中央だけということになります。これで分かったことと思いますが、「数える」という真意は、段数を逆に数えるということなのです。つまり、(1)右7段の山→(2)中央6段の山→(3)右5段の山→(4)中央4段の山→(5)右3段の山→(6)中央2段の山→(7)右1段の山(1段目)、となります。

 しかし、これだけでは、説明としては不十分です。中間の目標をたどっただけなので、この途中には、中途半端な山が、左、中央、右の柱に次々とできます。この中途半端な山、つまり、整然と積まれていない、中間の大きさの板が抜けた山が迷いの元なのです。中間の目標を忘れてしまうと、この中途半端な山を見ても、この先どうすれば良いのか、判断に苦しみます。ある中間の目標から次の中間の目標へは、一気にたどりつく必要があります。そのためにこそ、この「数える」方法が役に立つのです。例えば、中央に6段の山ができたとしましょう。次の手で左の7段目を右に移すことになりますが、その後はどうすればよいでしょうか。中央の6段の山を右に移すには、一時、7段目のことは忘れて、(1)右6段の山→(2)左5段の山→(3)右4段の山→(4)左3段の山→(5)右2段の山→(6)左1段の山(1段目)、となるので、1段目を中央から左に移すのが最初の手となります。何段かの山を間違えずに移動するためには、その山のある柱を除いた残りの柱を、移したい柱を起点にして山の段数まで交互に数え、最終点になった柱に一段目の板を移せばよいのです。途中で分からなくなっても、何段の山をどこへ、がはっきりしていれば、この方法が役に立ちます。

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 要するに、最終目標は一時忘れて、次の中間目標までを一気に進めること、がポイントです。そのためには、3段や4段の山の移動方法は覚えてしまった方がスムーズに行きます。それができるようになれば、後は「数える」方法が迷ったときのガイドになります。

2008年5月12日 (月)

ハノイの塔(2)

 最小手数のアルゴリズムに興味を持ったきっかけは、あるアテンダントの見事な手さばきでした。7段の「ハノイの塔」を苦もなく7分以内で仕上げます。「どうやるの?」と聞くと、「大体覚えています。迷ったら数えます。」という答えだったので、「どうして数えるとできるの?」と聞いた答えは、「分からないけど、できます。」でした。試してみると、その通りです。「数えるとできる」ことは分かりましたが、なぜ、が説明できないと科学とはいえません。「ハノイの塔」は数学パズルとしてはメジャーなので、解説もいろいろとあります。しかし、数学的な解説は一般には難し過ぎます。解説を参考にして、以下のような結論になりました。その前に、約束ごとです。

ブログで図形を説明するのは難しいので、ここでは、「ハノイの塔」の3本の柱を、左、中央、右、と表記します。また、最も小さい板からピラミッド型に続く、一連の山を段と言うことにします。2段の山、3段の山、などです。さらに、一枚一枚の板は、小さい方から何段目と言うことにします。一番小さい板は1段目で、一番大きい板は7段目です。

 さて、「左にある7段の山を、右に移せ」というのが課題としましょう。「ハノイの塔」のルールは2つで、「1回に移動できるのは1枚」、「より小さい板の上に、より大きい板は置けない」というのが制約です。小さい子が7段の山を持ち上げて、そのまま移すのはダメ、小さい方から1段ずつ移して、小さい板から順に大きい板を積み上げるのもダメ、ということです。初めての人がやると、1段目を右に移し、2段目を中央に移したところで、進まなくなります。3段目を移したくても、右の柱も中央の柱も3段目より小さな板が既にあります。その上に載せることはできません。ここであきらめる人も少なからずいます。では、どうすればいいか。そう、右の1段目を中央の2段目の上に移せば、右の柱が空きます。そこに3段目を移せばよいのです。これが分かれば、後はその要領で進められます。

Hanoi611

 子どもたちの多くも、そこから先は試行錯誤の繰り返しです。なかなか順調には進まず、堂々巡りを繰り返すこともありますが、修正を重ねるうちになんとかクリアしてしまうものです。子どもの方が記憶力がよいのでしょう、正しい方法を感覚的に覚えてしまうので、だんだん調子が良くなるようです。しかし、大人はそうは行かないみたいです。泥沼に入り込んで、無限(無間)地獄の苦しみを味わっています。それでも、少しでも進むことができれば、さらに進もうとするので、ますます泥沼に入り込むのを黙ってみているスタッフたち。どうにもならなくなると、目を上げてスタッフに救いを求めてきます。やっと我々の出番です。最初に教えてしまうのでは、意味がありません。苦しんだ挙句なので、説明がよく分かり、救いにもなる、という、よくあるパターンです。何かに似ていますね。

2008年5月11日 (日)

ハノイの塔(1)

Hanoitower

 科学館の展示物の中には、科学パズルも何点かありました。その一つが、「空中コマ」の隣にあった「ハノイの塔」です。他の展示物との違いは、何と言っても時間がかかることです。普通、展示物は大勢に使ってもらいたいので、長時間独占されるのは困ります。多くの展示物は、せいぜい数分で、長くても10分も占有されることはありません。例外が、「アルゴブロック」と、「空中コマ」と、この「ハノイの塔」でした。一応、「アルゴブロック」は、10分以内という制限を表示してありましたが、「空中コマ」と「ハノイの塔」は無制限でした。無制限でも、できない人は5分も続けると、あきらめてしまいます。平均的には、無制限でも構いませんでした。しかし、できるまで粘る人が現れると、「空中コマ」では1時間以上も、「ハノイの塔」では2時間も占有されることがありました。まあ、極めて稀なケースでしたが。

 面白いもので、混んでいるときでも、「ハノイの塔」には待ち行列ができません。誰かさんが悩んでいるのを見ると、難しいと思って敬遠するようです。それとは逆に、「空中コマ」では、誰かさんができないでいると、周りで見ている人に、がぜん挑戦欲がでてくるのか、「代わって」と言い出す人が大勢いました。別の言い方をすれば、どちらも混んでいないときには、格好の暇つぶしになっていたわけです。もっとも、個人的には「ハノイの塔」は単なるパズルと思っていたので、一回チャレンジして難渋し、20分以上もかかってしまったので、その後は敬遠していました。パズルと考えると、課題がクリアできさえすれば、手順や手数はどうでもいいので、子どもたちは悩むことなく、馬力でクリアしてしまいます。そのやり方でも、コツをつかめば30分程度でクリアできます。でも、もう一度やれ、と言われても、同じにはできません。

 実は、「ハノイの塔」は数学パズルなので、最小手数が決まっています。その最小手数のアルゴリズムを理解すれば、何度でも同じやり方でクリアできることになります。「ハノイの塔」に挑戦して、途中で行き詰っている人の大部分は、この最小手数のプロセスから外れている人たちです。単純に次の手が分からなくなっているのではなく、堂々巡りを始めてしまった人たちです。そういう状況では、分かっていても簡単には指導できません。そういう意味もあって、長らく「ハノイの塔」は、避けていました。

 しかし、あるとき、いたずら心が芽生えました。科学館の「ハノイの塔」は7段だったので、最小手数は255手です。7段であれば、子どもが試行錯誤しても30分もあればクリアします。でも、それは、単なるパズルを楽しんだのであって、科学にはなっていないのではないか、と考えたのです。8段にすると最小手数は7段の2倍の511手になります。7段の試行錯誤で30分ならば、8段では1時間かかるはずです。こうなると、試行錯誤でクリアするのは難しくなり、最小手数のアルゴリズムを自分で見つける必要が生じます。8段にしてやろう、といことで、1段追加しました。そうなると、最小手数のアルゴリズムに気がつくようなヒントが必要になります。自分なりに考えて、そのヒントを説明文に加えました。でも、子どもたちはそれには頓着しません。役に立ったのは、お父さんやお母さんだったようです。子どもができるのに、親ができないと面目丸つぶれなので。

2008年5月 7日 (水)

空中コマ(10)

 振り返ってみれば、「空中コマ」ほど皆さんを「やる気」にさせた展示物はありません。小さな子どもから大人まで、いや、大人の方が夢中になって「空中コマ」にチャレンジしていました。家族で来ていながら、子どもをほったらかしにして、熱中しているお父さんやお母さんも稀ではありません。簡単にできそうで、できない。原理は簡単なのに、やるとできない。でも、やれば、そのうちに、誰でもできるようになる。結構楽しめるおもちゃでした。やりたい、と言う人には、「誰でもできるけど、すぐできる人と、そうでない人がいます」といって、煽りました。すぐにできない人の方が圧倒的に多かったのが現実ですが。

 閉館前には、科学館にあった初代からの「空中コマ」が3代揃って展示されました。初代のU-CAS、U-CASバトルトップ、レビトロンの3世代が並んでいたのは、当館だけだったと思います。初代U-CASは金属のカバーで、堂々としていました。磁石の反発力がやや強いので、コマを回すのが難しいという欠点がありましたが、重さがあるのでよく回りました。3世代の中で、一番長く浮遊できたのではないかと思います。レビトロンはコマの磁石がアルニコ磁石になって、浮遊する高さが倍以上になりましたが、そのために台の傾斜の調整が難しくなり、下に落ちないで、外に外れていくことが多くなりました。浮遊する高さが増したために、落ちたときの衝撃音もびっくりするほどです。レビトロンは、初代U-CAS、U-CASバトルトップと同様に、台の傾きを楔で調整していましたが、最新のレビトロン・ゼロでは、3個所の調整ネジで簡単に傾きが調整できるようになっているようです。

 でも、一番、チャレンジしやすく、また味のあるのはU-CASバトルトップではないか、と思います。これまでにお話したように、バトルトップには奥深い原理が詰め込まれていました。これを開発した方々がどこまでそれを承知していかは定かでありませんが、科学館としてはいろいろと科学の側面を見せてもらったように思います。科学教材もいろいろありますが、ここまで薀蓄が語れる科学教材は他にはありません。U-CASを開発した方々に感謝するとともに、ぜひこれからも薄っぺらでない科学教材を開発していただくことを期待します。

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 「空中コマ」の重量と温度のデータと重回帰分析の結果は、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

2008年5月 6日 (火)

空中コマ(9)

 3変数の重回帰分析には、最低でも4セットのデータが必要です。10月中には3セットしかデータが取れていなかったので、急遽、データを追加することにしました。その矢先でした。コマの軸を折られてしまったのです。力を入れて回したはずみで、机から落ち、その衝撃で軸が根元から折れた、というトラブルですが、仕方ありません。結局、軸を交換した後、コマの全重量を測定して、従来のデータとの整合性を保つことにしました。データでは、実重量ではなく、換算重量で一貫性を持たせることにしました。いろいろとあるものです。

 何とか4セットのデータが揃ったので、エクセルで重回帰分析をしてみました。4回分のコマの全重量W(g)の測定結果を、温度T(℃)と、ホームページから得た都内(大田区)における磁気センサーの垂直成分Z(μT)の、それぞれ、室温がほぼ一定となる正午から17時前後での平均値との重相関分析をした結果、W=-0.35689T+0.67417Z+22.55453 となり、8.57%で有意となりました。重決定係数は、0.99 なので、温度と全磁場だけでコマの重量変化がほぼ説明できるとの暫定的な結論になります。さて、問題は、データが少ないことと、大田区の磁気測定のデータが新宿の磁場の強さと同じなのかどうか、です。また、地磁気観測所(柿岡)の全磁場と大田区における垂直磁場の変化の傾向は一致していません。むしろ、日によって逆の相関があるようです。まだまだ、矛盾だらけの結果となりました。

 「空中コマ」の浮遊に、ビルの構造が影響することは、経験的に明らかです。例えば、鉄骨が入った柱の近くや鋼材を使った装置の近くでは、重さの釣り合いが微妙に変ります。科学館の天井は、鉄線を格子状にしたものだったので、一般的なビルや家屋の天井とは構造が異なります。このように科学館が磁気的に特別の環境であった可能性もないわけではありません。精密な磁気測定をする研究では、近隣を走る地下鉄などの運行に影響されることもあるそうです。重量の多い鉄が移動するためです。鉄が近くにあれば、磁場の強さを高める効果があります。フェライト磁石も材質がフェライトなので、透磁率を持ち、磁場の中では磁束密度が数10倍から100倍に増大するはずです。「空中コマ」に使用しているフェライト磁石がどの程度の透磁率なのかも調べる必要があります。

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 この「空中コマ」の”一つの謎”に結論を出すためには、実際に磁場を測定しながら、コマの重量変化を測定するのがよいのですが、当時は閉館間近で機会がなく、閉館した今となっては、どうしようもありません。結局、「空中コマ」の重さの釣り合いの変化には、温度と地磁気が影響しているらしい、としか言えないようです。

2008年5月 5日 (月)

空中コマ(8)

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 知り合いに高校で地学を教えているN先生がいるので、状況を説明し、この件についてコメントを求めると、地磁気の影響は考えにくい、むしろ温度の影響ではないか、というコメントが返ってきました。以前から、温度の影響については、磁石の残留磁束密度の温度係数が-0.18%/℃と小さいので影響は小さいと考えていましたが、この際、はっきりさせておこうと思って、温度変化と「空中コマ」の重さの釣り合いの関係を調べることにしました。

 科学館は、空調で年中、一定の温度に保たれていますが、よく考えると、閉館後から開館前までは空調を切っています。夏季であれば空調が入る前は室温が高く、空調が入ると徐々に下がって、いずれ一定になると考えられます。冬季は逆のパターンになるはずです。そう考えてみると、4月の測定では開館後から重さの釣り合いが減少し、9月の測定では開館後から重さの釣り合いが増大したのは、温度の影響が疑われます。室温が一定になるのは早いので、一日中、室温は一定と考えていましたが、コマと台は温度の変化が遅れることが考えられます。そこで、台の下に測定部が細いデジタル温度計を差し入れることで、台の温度を測定することにしました。当然、台の中にある磁石の温度変化とは、ずれがあると思われますが、磁石の温度は直接測れないので、この方法でも止むを得ません。

 10月も半ばになって、温度と「空中コマ」の重さの釣り合いの変化を同時に測定する実験を始めました。しかし、何分にも展示物として使用中の「空中コマ」を、使っている人がいない合間を見ての測定なので、うまくいきません。30分毎の定時の測定予定が使用と重なって測定に欠落が出るのは、しばしばで、挙句の果てには、机から落下したはずみにコマの軸を折られたり、錘を交換する際に錘を紛失してしまったりで、一貫性のある測定には遠く及びません。

 それでも、10月中に3回の測定ができました。データとしては少な過ぎますが、とりあえず、温度をパラメータにした直線近似をして、近似式から温度の影響を仮想的に取り除いて傾向をみると、温度の影響は確かにあるものの、温度だけでは説明できない部分があることが分かりました。その未知のパラメータが地磁気である可能性もあるので、地磁気の経時データと、温度の影響を計算で取り除いた「空中コマ」の重さの釣り合いの予測値を比較してみましたが、パターンだけでは微妙な感じです。そのままでは、地磁気データと定量的な比較をするのが難しいと考えて、別の方法を取ることにしました。それは、地磁気の変化を見るのではなく、ある時間帯における地磁気の平均値を取って、該当する「空中コマ」の重さの平均値と比較すれば、地磁気の影響があるか、ないかが分かるのではないか、というアイディアです。そのためには、3変数の重回帰分析が必要になります。

 実は、理系でも、今と違って昔は、確率・統計を、ほとんど学んでいません。一応、研究はやってきたので、統計の勉強はしていますが、重回帰分析を使った経験はありません。今頃になって、重回帰分析の勉強をやり直すはめになりました。数式はでてきますが、これを使うとなると、計算プログラムが必要です。面倒だな、と思っていると、エクセルの統計計算で簡単にできることが分かりました。

2008年5月 4日 (日)

空中コマ(7)

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 科学館は、4月後半から7月前半にかけての平日は、修学旅行の生徒たちでにぎわいます。7月後半から8月一杯は学校の夏休みで、毎日たいへんなにぎわいを見せます。この間は、「空中コマ」の自主研究ができるほど暇ではありません。9月の後半になって、やっと手すきになったので、また、「空中コマ」の重さの釣り合いの測定を再開しました。4月とは違って、「空中コマ」に必要な回転速度がはっきりしたので、データの信頼性は増したはずです。

 ところが、ある日、測定をしてみると、4月とは違って、開館前から昼前後にかけて重さの釣り合いが増大し、その後は減少と増大を2回繰り返す結果となりました。ちょうどその頃、インターネットで、都内のある地点の磁場の強さを、毎日、連続測定して公開しているホームページを見つけました。信頼できるデータかどうかは分かりませんが、他にはないので、増減の傾向だけでもと思って比較してみると、傾向が似ていなくもない、という印象でした。しかし、この都内のデータは、茨城県石岡市にある気象庁地磁気観測所の経時データとは、数値の大きさも、増減の傾向も、データの幅も違っていました。多少離れてはいますが、石岡と東京で地磁気の数値が違うことがあり得るのでしょうか。考えられるのは、一つはノイズの処理の問題であり、もう一つは、地磁気異常の可能性です。地磁気異常といっても、大規模なものがあれば既に知られていると思われるので、もっと規模の小さい外乱のようなものがあるのかどうかですが、手がかりもないので、さすがに分かりません。

 いったい、どの程度の地磁気の変化があれば、「空中コマ」の重さの釣り合いに影響が出るのかを考えてみました。しかし、磁石の文献を見ても、電磁気学の教科書を見ても参考になる記述はありません。磁場と電場の相互作用なら、教科書にも出ていますが、磁場と磁場の相互作用については定式がないようです。いろいろと調べるうちに、磁場と磁場の相互作用は、数値解析しか方法がないらしい、ということが分かりました。つまり、磁場がどれくらい変化したら、重さの釣り合いがどの程度変るのか、には簡単には答えが出ないということのようです。磁石に磁石を近づけると、引き合ったり、反発したりするのは、小学校でも習いますが、その引力や反発力を計算するのは、大学生でも無理なのです。さらに調べると、単体の磁石ならば、その材質や大きさから、表面磁束密度を計算するシミュレーションが利用できる、ということが分かりました。

 そこで、手近にあったフェライト磁石について、シミュレーション計算で、距離に応じた表面磁束密度を計算しておいて、その磁石を「空中コマ」に近づけたら、どの距離で影響を受けるのかを実験してみました。その結果では、約10cmまで近づけると、「空中コマ」のバランスが崩れるというものでした。距離10cmでの表面磁束密度の計算値は、100μT程度です。この結果から、「空中コマ」は100μT程度の磁場の変化があれば、重さの釣り合いに影響が出ると考えました。ただし、この方法では、コマだけに磁場の変化を与えているので、台の磁場には影響がありません。地磁気であれば、コマと台と両方の磁場に影響が出ると考えられるので、もっと小さい磁場の変化で影響が出るはずです。

2008年5月 3日 (土)

空中コマ(6)

Scene5

 この「ストロボスコープ」をしばらく使ってみましたが、問題があることが分かりました。縞模様が擦れて薄くなってしまうのです。何度も何度も子どもたちがトライした証拠です。対策として、表面に透明の保護シートを張ってみましたが、それでも1週間がせいぜいでした。結局、常時使用するのはあきらめて、指導の必要に応じて使うことにしました。コマを強く回すことだけを考えればいい、と分かったので、指導も楽になり、成功する率も高くなりました。加えて、コマを回す条件が揃ってきたという副産物もありました。つまり、「空中コマ」の”一つの謎”に挑戦する条件が整ってきたのです。

 この”一つの謎”には興味があったので、以前にも謎解きを考えたことがあります。「空中コマ」が浮遊するのは、磁石同士の反発力と重力の釣り合いによります。この釣り合いが変化する原因として考えられるのは、磁力の変化と重力の変化だけです。磁力の変化には、温度による磁場の変化も考えられます。一日のコマの重量変化は0.3~0.4グラム程度なので、コマの全重量約28グラムの1%強に相当します。まず、温度による磁力の変化については、あるメーカーの仕様によると、フェライト磁石の残留磁束密度の温度係数は、-0.18%/℃となっていました。そのときは、科学館の空調は年間を通して一定の25℃に設定されているので、温度変化による磁力の変化は1%に満たないと安易に考えたわけです。この結論は後日に。

 次に、磁力の変化要因として、地磁気の変動を疑ってみました。日本付近の地磁気の強さは、水平方向が約3000nT(3μT)、鉛直方向が35000~40000nT(35~40μT)となっていて、一日の変動幅は約50nTですが、磁気嵐のときには数100nTに達することもあるそうです。しかし、地磁気の変動幅が分かっても、それによって磁石の反発力がどの程度影響を受けるのかは見当がつきませんでした。また、地磁気の日変化のデータがあることも、このときには知らずにいました。

 最後は、重力の変動です。考え付くのは、月の引力の影響です。万有引力の式F=G×Mm/d2で、重力定数G=6.67259×10の-11乗m3/(kg/s2)、月の質量M=S×3.694×10の-8乗、ただし、太陽質量S=1.9891×10の30乗kg、コマの重量m=0.028kg、月と地球の距離d=384399100m
+-6378140mから、月が真上にあるときと、地球の反対側にあるときで、月の引力の影響は、月までの距離の二乗に反比例するので、約6.8%の変動となって、かなり大きいように思われました。しかし、コマに働く月の引力の絶対値を、月が真上にあるときを仮定して計算すると、約9.3×10の-7乗N程度となって、コマに働く地球の重力0.27Nと比べると約340万分の1に過ぎないことが分かったので、これは問題外としました。

 結局、この段階では、月の引力の影響は考えなくてもよい、というのが唯一の結論です。磁力の影響が可能性として残ったわけですが、定量的な検討をするにはデータが必要です。これまでは、「空中コマ」が浮遊しているときの重量に大きな幅があると考えていたので、信頼性に不安を持っていましたが、「空中コマ」が浮遊するための回転速度の条件が分かったので、「コマを強く回して」、「ぎりぎりで浮き上がる」重さを指標にすることにしました。そうすれば、重さの誤差は+-0.1グラム以内となることが期待されます。

2008年5月 2日 (金)

空中コマ(5)

 毎秒10回転というと、50Hzの蛍光灯の下では、50÷3=16.7、50÷4=12.5なので、白黒の縞模様は、3本から4本あたりが良さそうです。試しに、白いプラスチック製中空円板の内側を4本縞に、外側を3本縞に塗り分けてみました。最初は黒のマジックインクで縞状に塗ったものを使ってみましたが、正確に等間隔でないときれいに止まって見えません。そこで、パソコンで等間隔に作図し直して、裏糊のシートに印刷した後、プラスチック板に貼り付けてみました。

S

 「空中コマ」を回してみると、右回転の場合、最初は3本縞の部分がゆっくりと右に回転します。これは毎秒16.7回転よりも速いことを意味します。その後、徐々に右回転が遅くなり、停止して見えた後、今度は、逆にゆっくりと左回転を始めます。さらに、コマの回転速度が低下すると、内側の4本縞が右回転から静止し、静止から左回転に変わっていったあたりで、大きく揺れ始めて落下します。この観察から、「空中コマ」が浮遊するには、少なくとも毎秒10数回転以上が必要ということが分かりました。また、初期の回転速度が大きいほど長く浮遊できるので、やはりコマを強く回すことが第1のポイントである、との結論に達しました。測定はしていませんが、強く回した場合は、コマは毎秒20回転を超えていると考えられます。コマが徐々に減速して、毎秒10回転を下回ったあたりで落下することになります。コマを浮遊させるためには、まず、4本縞が静止して見える、毎秒12.5回転以上にするのが数値目標になりました。

 考えてみれば、コマはジャイロなので、強く回した方がより安定性が高まります。例えば、台の中心を多少ずれていても、強く回すことで、ずれた位置から磁場の分布に沿って中央に動いて安定します。軸が多少傾いていても、コマとしての機能が優先すれば、磁場同士の相互作用で、軸は垂直に修正されます。「台の中心で」、「軸を垂直に」というコツは、実は、「コマを強く回す」というコツでカバーできる条件だったのです。「コマを強く回す」という感覚的な表現が、「ストロボスコープ」を使えば、「4本縞が静止して見える」のが最低条件という具体的で定量的な目標に変りました。

 コマを回すというのは、近頃の子どもたちには不慣れな行動ですが、そればかりでなく、子どもの小さな手ではコマを強く回すのにも限界がある、ということになります。「空中コマ」を回したい、と思う小さい子も大勢います。これまでは努力が叶うかどうか断言できないでいましたが、「小学生以下ではできないと思うよ」と断言できるようになりました。当然、幼稚園児でもできる子はいますが、極めて稀です。少なくとも年中さん以下でできた子を見たことはありません。逆に言えば、手が大きくて、力もある大人であれば、誰でもできるはずですが、そうでもないようです。大人は子どもほど執着心がないようですね。「空中コマ」を回す究極のコツは、手の親指と人差し指でコマの軸の上の方の細い部分を持ち、できるだけ短時間に親指と人差し指を逆方向に平行移動させて、瞬間的にコマに回転を与えることです。手首を動かすとコマの軸がぶれます。手首は動かさずに、親指と人差し指だけを動かすことです。感覚的には、「パッと回す」のがコツです。また、コマの軸を台の上でつまむ人がいますが、磁石同士の反発力でうまく保持できません。予め台の外で軸を軽く持ってから台の中央に持っていくのが正しい方法です。台に押し付ける意識が強いと動作が硬くなります。コマを台の中央に持っていったら、すぐに、そのまま回す感じの方がうまくいきます。

2008年5月 1日 (木)

空中コマ(4)

Scene2

 これまでの話で、スタッフも結構苦労している、ということがお分かりかと思います。それを踏まえて、2話前に触れた「ある経験」の話に戻ります。

 スタッフは誰でも(?)「空中コマ」を回せますが、スタッフがする仕事は「空中コマ」の重さの釣り合いの監視です。技術指導も仕事のうちですが、技術指導といっても、方法を口で言って、模範演技をするだけです。そのうちにできるようになる人もいれば、一生懸命がんばってもダメな人もいます。家族や仲間の誰かができるようになれば、一緒に来た人もできるようになりたいと思うのは当然です。でも、そうはいきません。むきになって、やればやるほど、うまくいかないことが多いようです。長い人では1時間近くもがんばる人もいます。一回やってダメで、あきらめたかと思うと、また来てやっていたりします。近頃の子どもには珍しい、粘りを見せたりするのには感心します。

 ある日、小学校の高学年でしょうか、私のところにやってきて、「教えてください」と頼むのです。それは始めての経験でした。「どうやってやるの?」とか、「やってみて」と言われるのは毎度ですが、これにはびっくりしました。方法を説明したり、やってみせたりするのは簡単です。しかし、教えるとなると、できるようにしてあげないといけない、とプレッシャーを感じました。一通り方法を説明して、それまでに体得していた、「台の真ん中で」、「コマの軸を垂直に」というコツを伝授しましたが、なかなかできるようになりません。台の外で回す練習もさせ、何度か模範演技もしましたが、それでもダメです。40分くらい続けて、コマの回り方はだんだん良くなってきて、上達は感じられるものの、それでもコマはすぐ倒れてしまいます。その日は、結局、あきらめてもらいました。また今度、ということで。

 教えてもダメだと責任を感じます。できるのと、できないの違いは何だろう、何か指標があるはずだ、と思って考えました。思い当たったのは、コマの回転速度です。見た目には、回ってさえいれば、空中に浮かすことができます。回転速度の大小はかなり幅があるよう見えます。でも、コマはジャイロですから、回転速度が大きいほど倒れにくいはずです。コマの回転速度を定量化できないだろうか、と考えました。

 最初に試したのは、デジタルビデオカメラを使ったコマの回転速度の計測です。白いプラスチック製中空円板の半分をマジックインクで黒く塗り、残りの半分は白いままで「空中コマ」に載せ、デジタルビデオカメラで撮影して、コマ送りで回転速度を測ってみました。コマの回転速度がどれくらいなのか、検討もつきませんでしたが、その結果、毎秒10回転程度であることが分かりました。しかし、毎回この方法で確認するのは面倒です。簡単に回転速度が測れないかと考えて、思いついたのが「ストロボスコープ」です。「ストロボスコープ」ってご存じですか。今はアナログ・ディスクというようですが、昔、レコード盤と言っていた時代に、ターンテーブルの回転調整をする白黒の等間隔の縞模様がありました。それが「ストロボスコープ」です。原理は、交流の照明の下で回転する白黒の等間隔の縞模様を見ると、周波数に同期して模様が停止して見えるというものです。

2008年4月30日 (水)

空中コマ(3)

Scene1

 「空中コマ」の本体は、外径28.6mm、内径10mm、厚さ4.8mmのフェライト磁石で、このフェライト磁石とプラスチック製の軸を合わせた重さが約20グラムです。付属の調整用の錘はφ6のワッシャーで、精密天秤で測ってみると、真ちゅう製の(大)が3.15グラム、(小)が1.03グラム、プラスチック製の(大)が0.39グラム、(中)が0.21グラム、(小)が0.06グラムとなっていました。つまり、調整下限は0.06グラムなので、0.1グラム目盛のデジタル天秤で測っても差が分かりません。

 2007年の4月半ばの頃です。試しに、開館前から閉館後まで、30分おきを目標に「空中コマ」の釣り合う重さの変化を測定してみました。3日の測定で、開館から昼前後にかけて釣り合う重さが減少し、その後はほぼ平坦ですが、日によって不規則に増減があるデータが得られました。一日のコマの重量変化は0.3~0.4グラム程度なので、コマの全重量約28グラムの1%強に相当します。

 さて、「空中コマ」を大気中で回した場合、条件がよければ約3~3.5分間は空中で回り続けます。「空中コマ」の浮遊時間を決める要因が何かはよく分かっていませんが、空中では大気にしか接していないので、まず、空気抵抗が減速の要因として考えられます。では、真空中ではどうでしょうか。真空装置のベルジャーの中で回してみたことがありますが、無限に回り続けるわけではないようです。真空中で回せるわけではないので、大気中で回して浮上させた後で、ベルジャーを被せて真空に引く手順になるので、結構複雑な手順です。厳密ではありませんが、浮遊時間はせいぜい10分程度のようです。

 では、空気抵抗のほかに減速の要因として何があるのでしょうか。真ちゅう製の錘は導電性があるので、磁場の中で動けば渦電流を生じます。それが減速要因になるのではないか、と考えて、真ちゅうの代わりに、比抵抗が大きいステンレスを使用してみました。ステンレス製のφ6ワッシャーの中で一番大きなものは、外径が25.5mm、重さは6.56グラムなので、真ちゅう製の(大)2枚分の重さになります。試して見た結果では、あまり効果はなかったようですが、便利なのでその後はステンレス製を使用しています。また、中間的な重さが欲しいので、外径が小さいステンレス製の0.64グラムと、透明プラスチック製の0.11グラムを加えてみました。このように、錘の重さを測っておくことで、「空中コマ」の重さを最小0.06グラムまで調整することができるようになりました。

 さて、一日のうちにどの程度、重さの釣り合いが変化するかと言うと、回し方と台の傾きを加減して調整できる重さの釣り合いの範囲は約0.1gですが、日最大重量と日最小重量の差は、通常、0.3~0.4gで、極めて稀に1gを超えることもありました。また、短時間のうちに重さの釣り合いが変化して、重さの釣り合いが上下するために、何度調整してもうまくいかないこともしばしばあります。その場合は、挑戦者たちに、「今は条件が悪いから、難しいですよ」といって、あきらめてもらったりしていました。

2008年4月29日 (火)

空中コマ(2)

 ポイントとはコマの軸の傾きでした。人にはそれぞれ癖があります。私の癖は、身体の正面でコマを回すと、腕と手首の関係でコマの軸が傾いてしまうというものでした。いろいろやり方を変えてみて、それに気が付きました。つまり、身体の正面ではなく、やや斜に構えた方が、確率が高くなったのです。コマの軸は台に対して正立していないと、磁石の反発力によって不安定にあります。それは反発力の分布が台の中心に対して回転対象だからです。台の中心でコマを回さないといけないうえに、軸は正立していないといけないわけです。それに気が付いたのでできるようにはなりましたが、それ以上の「理論」は持ち合わせていませんでした。ある経験をするまでは。

 その話の前に、「空中コマ」の“一つの謎”について紹介します。実は、「空中コマ」の謎はたくさんあります。例えば、台の中はどうなっているのか、とか、何分くらい空中に浮いていられるのか、とか、それを決める要因はなにか、とか、いろいろあります。科学館で展示していた「空中コマ」は、初代のものではありません。多分、その改良型ではないかと思います。初代のものよりは、やさしくなっていました。商品名は、「バトル・トップ」といって、「トップ」はコマのことですが、滞空時間を競うと言う意味が、「バトル」に込められています。取り扱い説明書にも、3分以上とか、4分とかのレコードが記載されているとともに、そのための改造にも触れていました。落下するまでには回転数が徐々に低下していくのが感覚的には分かります。コマの性質から考えても、回転数が多いほど安定性が高まると考えられます。ただし、回転数を上げようとするあまり、整然とした回転が妨げられて、軸がふらつくようでは返って逆効果になります。高速で、かつ安定に、という矛盾する要求を満たすことが求められます。

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 さて、この「空中コマ」の“一つの謎”は、知る限りではこれまで誰にも指摘されていません。初代の「空中コマ」が発売された頃は、理科の先生方が興味を持って、解体調査したり、磁場の分布を考えてみたり、空中コマを自作してみたり、いろいろ研究されていたようですが、この“一つの謎”についての言及は見付かりません。しかし、「空中コマ」のパーツとして各種の錘があり、取り扱い説明書にも重さの調整についての記述があるので、「空中コマ」が浮いて回るためには、磁石の反発力と重力を釣り合わせる必要があることは自明でした。では、“一つの謎”とは何かと言うと、それは時間が経つと重さの釣り合いが変化する、それも不規則に、ということです。開館前の朝一番に「空中コマ」の重さの釣り合いを調節しますが、昼頃にはそれが崩れ、再調整する必要がありました。その後も、うまく浮かないケースでは、調べると釣り合いが変っていることを発見することがしばしばありました。これまで言及がなかったのは、科学館のように、一日中「空中コマ」を回しているような使い方がなかったということなのでしょう。この“一つの謎”は科学館でも以前から知られていましたが、ずっと謎のままでした。

 最初に気になったのは、どうすれば最適な重さの調整ができるか、ということでした。それが、そう簡単ではなく、重さの調整範囲は0.1グラム以下だったので、普段使っていたデジタル天秤の、最小目盛0.1グラムでは差が分かりません。確かあるはず、と聞いて、科学館の倉庫を探すと、0.01グラムが最小目盛の精密天秤が見付かりました。

2008年4月28日 (月)

空中コマ(1)

 話は変わって、当館を訪れた方なら、どなたもご存じの「空中コマ」が話題です。正しくは、「空中浮遊コマ」なのでしょうが、当館では「空中コマ(空中ゴマ)」と言っていました。仕掛けは簡単で、小学生にでもすぐ分かる天然磁石を利用した磁気浮上の応用です。でも、初めてこれを見た人は、「おっ」とか、「何これっ」とか言って目を丸くします。なにしろ、コマが回りながら空中に浮いているのですから。

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 科学館で使用していたのは、増田屋コーポレーション製「U-CASバトルトップ」ですが、U-CASの初代は1994年の発売で、当時は話題を呼んだそうです。現在は、テンヨー製の「レビトロン・ゼロ」という同種の製品が発売されていますが、U-CAS自体は製造が中止され、インターネットのオークションでしか入手できないようです。このU-CASは、「ユーキャス」と読むのでしょうが、「うかす(浮かす)」の“もじり”かもしれません

 誰もが、まず、浮いているコマの下に手を入れてみて、何か仕掛けがないか、調べて見ます。手を下に入れても、コマは何事もなく回り続け、タネも仕掛けもないことが分かります。しばらく回り続けた後、コマは回転が不安定になって、ポトっと落ちて止まります。手に持ってよく見ると、コマの本体がフェライト磁石であることが分かるので、やっと納得することになります。原理は簡単ですが、実際にコマを浮かすのは、それほど簡単ではありません。稀に、一度でできる人もいますが、普通は、なかなかうまく行かず、そのうちにあきらめる結果となります。

 実は、かく言う私も、ある程度の確率で回せるようになるまで、2週間ほどかかりました。なにしろ、科学館に勤め始めて早々に、「これができないとスタッフとして一人前ではありません」と言われて、がんばったにもかかわらず、ダメでした。ぽっと来てすぐ回せるような代物ではない、といいたいところですが、結局は運動神経の問題のようです。その後も、うまく回せたり、回せなかったり、それが何で決まるのかも分からないので、2年以上も敬遠していました。教えてくれ、と言われても、教えられないのですから。

 「空中コマ」をご存じない方のために説明しますと、「空中コマ」は、125mm角、高さ20mmの正方形の黒い台の上に、透明の薄いプラスチック板を置いて、その上で外径28.6mm、内径10mm、厚さ4.8mmのフェライト磁石を本体とするコマを回し、コマが安定に回ったら、プラスチック板ごとコマを持ち上げると、台から3センチくらいの高さでコマが浮遊を始めます。そこでプラスチック板を下げると、コマだけが空中で回り続けるという仕掛けです。台の中には強力な磁石が仕込んであるようで、磁石であるコマを台の中央付近に持っていくと、磁石同士の反発力で、コマは横を向いてしまいます。その反発力に逆らってコマを台に押し付けながら回わさないといけない、のが難しい理由の一つですが、やり方を言うのは簡単なのに、できる人はでき、できない人は何度やってもできないのだから不思議と言えば不思議です。私ができるようになったきっかけは、あるポイントを見付けたことでした。

2008年4月25日 (金)

花火の科学(6)

 このパーティーキャンドルが優れているのは、パッケージに使用薬剤の名称が記載されていることです。紫色ならカリウム、赤色ならリチウム、緑色ならバリウムなど、「炎色反応」の勉強にはもってこいの製品と言えます。ただし、どこでも扱っているわけではないようです。某有名100円ショップとは、実は、ダイソーですが、まず、店舗の大小とは関係なく、花火を扱っているところと扱っていないところがあります。当然、時期によっては扱っていません。花火を置いてあっても、パーティーキャンドルがあるとも限らないようです。どうしても欲しい方は、電話で確認した方がいいと思います。過去3年間は同じ製品がありましたが、今年もあるかどうかは分かりません。

 さて、当初のシナリオにはあったけど、一度も実施できなかった演示があります。それは、「炎色反応」の発光を簡易分光器で観察する、という演示です。「色の科学」では簡易分光器を紹介しました。元素によって発光のスペクトルが違うことを、簡易分光器で観察できれば、分光分析の原理を説明することもできます。やりたかったけれども、できなかった理由は、スプレイ方式では発光が一瞬で終わってしまうことです。前回紹介した、家庭でできる「炎色反応」では、明るい場所だったので発光が弱すぎて観察が困難でした。もし、家庭で「炎色反応」の実験をすることがあれば、ぜひ、暗いところで「炎色反応」の発光を簡易分光器で観察してみてください。「炎色反応」の理解が一段と進むと思います。

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 「炎色反応」は分光分析の古典ともいえる方法ですが、現在は、同様の原理で、物質をより高エネルギーに励起して発光・吸光スペクトルを調べる分析方法によって、あらゆる物質を構成する元素名やその量が分かるようになっています。さらに、励起の方法によっては、可視光線の範囲を超えて、紫外線やエックス線の範囲での分光分析も行われ、より広範かつ精密な分析が可能になりました。また、光の波長を分析するだけで、元素を特定できるので、遠く離れた太陽や恒星の元素構成もこの方法で調べられています。とくに、太陽光を分光分析して、その当時には、まだ発見されていなかったヘリウムが太陽には大量にあることが分かった話は有名で、ヘリウムの発見は、太陽の莫大なエネルギー源が核融合反応であるという現在の知見に結びついています。太陽や恒星から届く光から、太陽も恒星も、地球と同じような元素でできていることが分かりました。

 「花火の科学」のエンディングは、いつも決まって、『夜空に輝く花火の話に始まって、最後は夜空に輝く星の話になりました。』でした。

2008年4月24日 (木)

花火の科学(5)

 消毒用アルコールは、エチルアルコールが主成分で、日本薬局方では濃度76.1%~81.4%となっています。一方、ウイスキーやブランデーは、やはりエチルアルコールが主成分で、濃度は40%以上です。ブランデーをキューブシュガーにかけて火をつける、カフェロワイヤルもあって、アルコール度数の高い酒は火が着くのはよく知られています。できるかもしれないと思って、手元にあったアルコール濃度40%のラム酒と食塩で「炎色反応」の実験をしてみました。結果は、失敗でした。なぜでしょう。火は着きますが、実は、先に食塩が水に溶けてしまうのです。火もしょぼしょぼなので、すぐに消えてしまいました。疑問に思ったときに、確認するのは大切な姿勢ですが、新たな発見は難しいものですね。

 本番の実験タイムは、次のように進めました。事前に、塩化ストロンチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸銅の各少量を、それぞれ別のポリ容器に入れ、メタノールを加えて、よく振って溶かしておきます。そして、その上澄みを別々にスプレイ容器に入れます。溶け残りの塩がスプレイ容器に入ると、スプレイが詰まるので注意してください。次に、大き目のバットに小砂利または砂を入れておきます。さらに、別のバットにてんぷらガードを開いて立てておきます。

 最初に、口上を述べ、「花火をやりたい人!」と言って、最初に手を上げた子に、小砂利または砂入りバットの上で、「花線香」花火をやってもらいます。初めの短時間は色が出ますが、すぐに線香花火に移行するので、その間を利用して「炎色反応」による発色と鉄が燃えてできる高温での白色光の説明をします。このときに、お母さん方に向かって、「味噌汁や塩茹での水がこぼれて、ガスの炎にかかったときの色は何色でしたか?」と尋ね、ナトリウムの「炎色反応」についてインプットしておきます。次に、「炎色反応」に移ります。子どもに色をリクエストさせながら、てんぷらガード付きバットの中央に置いたアルコール・ランプに点火し、それに向かってスプレイし、その都度、色を確認したうえで、何の「炎色反応」か、を説明します。

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 次が、家庭でもできる「炎色反応」の実演です。アルミケース4個にそれぞれ化粧用コットンを入れ、その上に、食塩、カリウム・ミョウバン、消石灰、ホウ酸(結晶)を別々に振りかけた後に、メチルアルコールをひたひたに注ぎ、着火して、色を確認します。薄い色なので、照明は消した方がいいでしょう。最後に、「炎色反応」を利用した某有名100円ショップのブランドのパーティーキャンドルに着火し、燃えている時間の約3分間を利用して、大人向けに「炎色反応」の分析応用や、太陽でヘリウムを発見した話や、宇宙の星の組成がこれで分かることなどの説明をして終わります。このパーティーキャンドルは、子どもたちの目を引きつけておくための小道具の役目もします。

2008年4月22日 (火)

花火の科学(4)

 家庭でもできる「炎色反応」は次のようなものです。科学館の「炎色反応」では、塩化ストロンチウム(深紅色)、塩化カリウム(淡紫色)、塩化ナトリウム(黄色)、硫酸銅(青緑色)などの薬品を使いましたが、一般家庭では入手しにくいものです。入手できても、わずかしか使わないので、残薬品の処分に困ってしまいます。まず、家庭にもありそうな薬品を使うことにします。いずれも受け売りですが、食塩(ナトリウム→黄色)、海苔やせんべいの乾燥剤(カルシウム→レンガ色)、カリウム・ミョウバン(カリウム→淡紫色)などは、家庭にもありそうです。華やかさには欠けますが、「炎色反応」のさわりは楽しめます。ただし、乾燥剤には不純物が入っているので、ビンなどに入れて振って、蓋やビンの内面に付く粉を集めて使います。また、ミョウバンには、カリウム・ミョウバン以外にアルミニウム・ミョウバンもあるので表示に注意してください。通常、カリウム・ミョウバンは粗い粒状なので、事前にすり鉢などで細かく砕いておきます。

 科学館でやったように、アルコール・スプレイでぼっとやるのが最高ですが、さすがに家庭では火災の危険があるのでお勧めできません。代わりに、お菓子の型(アルミ・ケース)と化粧用のコットンと燃料用アルコールを使う方法を説明しました。容器は食器でもできますが、ちょっとね、という人にも使い捨てのアルミ・ケースなら大丈夫でしょう。化粧用のコットンは、薄くはいで使えるので便利です。燃料用アルコールなら薬局やドラッグストアで扱っています。燃料用アルコールは変性アルコールなので、メタノール(メチルアルコール)とエタノール(エチルアルコール)の混合物です。消毒用のアルコールはエタノールですが、水で薄めてあります。あまり良くはありませんが、できないことはありません。消毒用アルコールでもできることは確認してあります。そのほかに、キャンプ用や鍋料理用の固形燃料も主成分はアルコールなので、それでもできますが、やや高価な上に使い切るのに苦労します。

 方法は、まず、アルミ・ケースに少量の化粧用コットンを入れ、次に、細かくした薬剤をコットンの上に降りかけ、さらに燃料用アルコールを、薬剤が顔を出す程度の深さまで注いでから、着火します。アルコールだけが燃えているので、内炎はほとんど無色です。「炎色反応」は、外炎の先がうっすらと着色する程度なので、暗いところの方がよく見えます。しばらく続けると、アルコールが燃え尽きて、コットンが燃え始めるので、その前にアルミ・ケースがすっぽり入る大き目のマグカップなどを被せて火を消します。ただし、火傷しないように注意すること。また、火事にならないように、ステンレスやホーローのバットの中などで実験してください。念のため、水や濡れ雑巾の用意も忘れずに。

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 ところで、消毒用アルコールでできるなら、ウオッカなどの度数が高い酒でもできるように思いませんか。やってみましたね。その結末は次回。

2008年4月21日 (月)

花火の科学(3)

 さて、学校の「炎色反応」の実験では、火炎にはガスバーナーを使い、白金線の先にアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩を付けて火炎に入れるのが普通です。しかし、科学館にはガスが来ていませんでした。代わりに使ったのは、アルコールランプです。白金線も備えがありません。ステンレス線で試してみましたが、あまりパッとしません。次に、塩をアルコールに溶かして、アルコールランプに入れて点火してみました。どの本を見ても、アルコールランプの火炎は無色(ないし淡い青色)と書いてありますが、そんなことはなく、ろうそくと同じような黄色っぽい火炎です。芯が燃えているため、のようです。これではナトリウムの黄色が判別できません。

 結局、本を調べて、スプレイでやることにしました。アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩をメチルアルコールに溶かして、上澄みをスプレイに入れます。着火は必要なので、方法をあれこれ考えましたが、間に合わず、最後はただのアルコールランプを着火源にして「炎色反応」を演示しました。これが、なかなかの迫力です。要するに、火炎放射器ですから。スプレイの場合は、全てが酸化炎になるので、きれいに発光します。広がった霧がぼっと燃える瞬間は、一斉に「おっ」という歓声があがります。「炎色反応」の演示はこれに限りますね。ただし、スプレイは広がるので、空中ではできません。ステンレスバットの上にアルミ製の「てんぷらガード」を立てて、その前にアルコールランプを置き、それに向かってスプレイしました。メチルアルコールを使うのは、エチルアルコールよりも引火点が低く、着火性がいいからです。

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 ところで、「色の科学」で、スペクトル色の範囲は、赤760~650、橙600~590、黄585~575、緑570~510、青480~455、藍(青紫)450~425、菫(紫)420~400(単位:nm)、可視光線のエネルギーの範囲は、1.6~3.1eV(エレクトロン・ボルト、1eV=1.602×10の-19乗J)と書きました。可視光線のエネルギーの下限である1.6eVは、(多少、誤解を招く言い方ですが)温度に換算すると、1857Kとなります。緑色はエネルギーが2.4eVと高く、温度換算では2767Kです。一方、アルコールランプの火炎の温度は約1700℃(=1973K)とされています。なぜ、アルコールランプで「炎色反応」ができるのか、スタッフで議論になったことがあります。結論は、黒体放射(熱放射)についてのプランクの放射法則によれば、火炎の温度に対して放射エネルギーは高低の広がりを持つので、高いエネルギー部分での励起がかろうじてあるから、ということに落ち着きました。これが本当かどうかは分かりませんが、「炎色反応」で青色や紫色といった高エネルギーの発光がないののも事実です。

2008年4月20日 (日)

花火の科学(2)

 「炎色反応」というのは、バーナーやアルコールランプなどの火炎の熱エネルギーによって、いくつかの元素では原子核の周りの電子がより高いエネルギーの状態(励起状態)に移りますが、不安定な励起状態から元の状態(基底状態)に戻るときに、その差のエネルギーを光として放出する現象です。これらの火炎の温度は1800℃~2500℃程度であって熱エネルギーが低いため、「炎色反応」がみられるのは、最外殻電子が励起されやすいアルカリ金属、アルカリ土類金属、銅などに限定されます。ただし、分析などに利用されているプラズマ加熱などの方法ではより高い熱エネルギーが与えられるので、これらの元素に止まらず、全元素で固有の発光あるいは吸光が見られるようになります。電子構造は元素によって違うので、励起状態での発光・吸光スペクトルは元素によって異なります。この特徴を利用した分光分析によって元素を調べることができます。

 花火の場合、発光に係わる元素は、この「炎色反応」の範囲に収まっています。例えば、炭酸ストロンチウム(深紅色)、硝酸バリウム(緑色)、シュウ酸ナトリウム(黄色)、酸化銅(青緑色)などの焔色剤です。ただし、このほかに、白色の発光があって、打上花火ではアルミニウム、線香花火では鉄が使われています。この白色を出す仕組みは「炎色反応」ではなく、「黒体放射(熱放射)」です。「色の科学」で説明したように、太陽や白熱電球などの高温の物体はあらゆる色を含んだ連続スペクトルを放射するので白く見えます。アルミニウムや鉄が酸化して高温になるので、白く発光するという仕組みです。「花火の科学」で、地味な線香花火を取り上げているのも、この観点からです。打上花火では、焔色剤のほかに、自ら燃焼するイオウや木炭(炭素)などの可燃剤と、可燃剤に酸素を供給する過塩素酸ナトリウムなどの酸化剤が使用されています。花火を燃やしたときの大量の煙は、可燃剤から出てくるものです。

 子どもたちには、「なぜ、花火は暗い夜でも見えるのでしょうか?」と質問します。禅問答のようですが、要するに光を出しているからです。その光には2種類あって、一つは白色光で、もう一つが「炎色反応」による色の着いた発光です。いずれも自発光ということですね。色の着いた光には、白色光にフィルターを被せた透過光もあります。古いタイプの交通信号や、舞台のスポットライトなどがそうです。カラーテレビでも、液晶テレビはこのタイプで、バックライトが必要です。一方、ブラウン管テレビやプラズマテレビは、自ら発光するタイプで、ブラウン管テレビやプラズマテレビは蛍光体が発光しています。蛍光体の発光も、「炎色反応」に似て励起状態から基底状態へのエネルギー遷移で発光します。

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2008年4月19日 (土)

花火の科学(1)

 家庭でもできる実験をシリーズで取り上げています。今回は、家庭にもある薬剤を使った「炎色反応」の実験です。「炎色反応」は、原子の電子エネルギー準位間の遷移によるものなので、内容は高校化学で習う範囲ですが、それを子どもにでも楽しめるようにするのが工夫のしどころです。

 実験タイムのテーマは「花火」です。季節外れで恐縮ですが、前々回のテーマの「色の科学」の姉妹編です。夏に定番の実験タイムで、3年連続で、7,8月に実施しています。最終年の実験タイム「花火の科学」も例年と基本的に同じ内容でしたが、家庭にもある薬剤を使った「炎色反応」の演示がスペシャルでした。「炎色反応」は難解でも、花火自体は子どもでもなじみがあり、華やかでもあり、夏にはうってつけの話題でもあるので、実験タイムとしては毎回大好評でした。

 「家庭でもできる」という意味では、当然、「花火」そのものでも済むはずですが、科学館には特殊な事情があって簡単ではありません。それは、「室内で」、「昼間に」、という点です。皆さんは、昼間に花火をやってみたことがありますか。まず、誰もいないでしょう。やって見たことのある人は、すぐ分かるはずです。昼間の花火は、煙しか見えません。しかも、ものすごい煙です。花火というのは、線香花火の類を除けば、実は、大量の煙を出す、やっかいなものなのです。これを、室内でやるとどうなるでしょう。火災報知器が作動して、大変な騒ぎになること請け合いです。しかも、煙が立ち込めて実験タイムどころではなくなるでしょう。

 本番では「色線香」という、短時間の発色で線香花火に移行するタイプの花火を使用しました。「煙の少ない」と称する花火をいくつも試してみましたが、普通の花火では室内ではまず無理です。また、線香花火だけでは、「花火の科学」の発光のしくみに迫ることができません。結局、色が付いていて煙の量が許容範囲の花火は、「色線香」しか見付かりませんでした。もっとも、パーティーキャンドルの一部に炎色反応を応用した製品がありますが、花火とは違います。一応、炎色反応の例なので、実演して紹介はしましたが。
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 「花火の科学」のレジメは、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

2008年4月16日 (水)

雨の科学(5)

 さて、水滴の大きさは、「霧」では直径1000分の1~5ミリメートル、「雲」では直径1000分の20ミリメートルだそうです。雨粒となると、その100倍以上にも成長して、「霧雨」は約0.1ミリメートル、普通の「雨」は1~2ミリメートルですが、「雷雨」では3~5ミリメートルにもなります。

 ところで、雨の落ちてくる速さはというと、普通の「雨」で毎秒4メートル、「雷雨」では毎秒8メートルだそうです。この速度は、数100メートルから数1000メートルの上空から落下するにしては遅いようにも思えます。実は、雨は雨粒の大きさによって決まった速度で落ちてきます。高校物理では、自由落下を学習しますが、空気の抵抗がある場合についても習います。雨粒の落下は、「真空実験」でも取り上げた空気の抵抗がある場合の落下に相当します。さて、空気の抵抗は、雨粒の大きさと速度に比例します。落下の加速度がゼロになったときが、速度が一定の場合に相当するので、その一定の速度vは、雨粒の質量をm、半径をr、重力加速度をg、とすると、v ∝ mg/r となりますが、雨粒を球と仮定すると、m ∝ r*r*r(r の3乗)なので、結局、v ∝ r*r*g となって、雨粒の落下速度は雨粒の大きさの2乗に比例することになります。「雷雨」の大きさは、普通の「雨」の大きさの2倍程度なので、落下速度は4倍になりそうですが、実際は2倍程度に止まるようです。上の式は、雨粒の大きさが変わらないという前提ですが、大きい雨粒は落下の途中で分裂して小さくなることもあるので、そう簡単ではないようです。また、雨粒の形状は必ずしも球形ではなく、一般に底部が扁平になった液滴形なので、質量が大きさの3乗には比例しないことも考えられます。
Raindrop 
 上の写真では、雨の軌跡が線状に写っています。シャッタースピードは、1/60秒なので、画面上での雨の軌跡が数センチから5センチ程度であることから、雨の落ちてくる速度は高々毎秒3メートル(=60×5センチ)となります。小雨程度の状況だったので、納得できる結果と思います。この写真は一例ですが、雨の強さや、カメラのシャッタースピードをパラメーターにして実験すると、自由研究になりますね。同時に降水量を測定すると雨の強さを定量化することもできます。いろいろと工夫してみてください。最近は、デジタルカメラが手軽に使えるので、パソコンと組み合わせてディスプレイ上で計測すると、かなりの精度の実験もできるようになりました。

 いずれにしても、大きいほど落下速度が大きいということは、ピンポン玉くらいの大きさの雹(ひょう)にもなると、ものすごく早いということになりますね。降雹の害が大変なことがよく分かります。

2008年4月15日 (火)

雨の科学(4)

 そこで、「過冷却」の実験です。難しいように言われていますが、そんなことはありません。かなり、再現性があります。水を少な目に入れた試験管に温度計を挿して、予め作っておいた寒剤に入れて温度変化を見ます。中が見えるように透明デュワー瓶を使いました。徐々に温度は下がりますが、普通は0℃になっても凍結しません。ただし、寒剤の調整がうまくない場合で、上下に温度差がついている場合などは0℃で凍ることもあります。さらに少し待って、-3℃以下で試験管を取り出し、強く振ると、一瞬に氷結して、その瞬間に温度が0℃になります。水が凝固するときに凝固熱を出すので温度が上がり、水と氷が共存する温度の0℃になるわけです。

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 難しいのは、温度の維持です。氷が融けると試験管が下がっていくので、試験管の支持が必要です。あまりおおげさにしたくなかったので、テイクアウトのコーヒーの蓋に穴を開けて、試験管が止まるようにし、水を入れた試験管を穴に挿してから氷の上に置きました。そうすることで、氷が融けても、試験管だけずるずると下がることはなくなります。試験管の長さの半分くらいが「寒剤」の中に入るようにすると、いいと思います。温度計はゴム栓に孔を開けて通し、0℃以下の目盛が外から見えるようにしておいて、近くで見ている人に温度を読んでもらって、インチキではないことを証明してもらいます。

 雲から雨になるのは、雲の水滴がそのまま大きくなるわけではありません。水滴の成長は極めて遅いからです。雨の元は、実は氷の粒(氷晶)です。そのために、水から氷への変態を見てもらったわけです。また、「過冷却」も雲の中で起こる一般的な現象で、氷晶はかなり温度が低い上空でできます。氷晶の成長の方が、はるかに早いので、雲の中では上昇気流による上昇と、重力による降下が繰り返されて、どんどん大きくなります。最後には、上昇気流で支えきれなくなって落下し、地上に到達する前に融けて水になってしまったのが雨、融け残ったのが雪というわけです。また、氷晶が大きくなりすぎると、雹(ひょう)や霰(あられ)のように、氷のままで落ちてきます。

 最後に、氷の成長の演示です。ロックアイスを1個取り出して、ロックアイスの表面に水で湿らせた木綿糸を載せると、水が凍って、ロックアイスを吊り上げることができます。氷の表面で水が凍って、氷が成長したことになります。実際に雲の中で起こる現象とは見かけが違いますが、氷の表面に水滴が付いて成長していくことの例示です。ただし、表面がしっとりと濡れてしまったロックアイスではダメです。氷の表面が水で濡れてくる前の、「乾いた氷(0℃以下の氷)」のうちに演示します。

2008年4月14日 (月)

雨の科学(3)

 「雨の科学」というのは、要するに、水の状態変化の解説です。液体の水、気体の水蒸気、固体の氷の、いわゆる物質の三態について、面白く見てもらうのが趣旨です。「氷の科学」は、氷と水の関係だけでしたが、「雨の科学」は水蒸気も重要です。水には、他の物質と異なり、固体である氷の方が液体である水より密度が小さいので、固体が液体に浮くという特徴があります。また、液体の水にも、氷点ではなく、約4℃で密度が最大になるという不思議な性質もあります。そのほか、水は、気化熱が大きいとか、固体になっても蒸気圧が大きいとか、ほかの物質にない性質をいくつも備えていて、とても面白い物質です。

 「雨の科学」では、まず、水蒸気が冷えると、水になることを見てもらいます。前年は高圧スチーム洗浄器を使いましたが、危険が伴うので今回は止めました。その代わりに、氷を入れたステンレスボールを三脚に載せ、下に置いたアルコールランプに着火すると、ステンレスボールの表面が曇ることで、水滴ができたことを説明します。アルコールが燃えると、二酸化炭素と水になることを利用していますが、その説明が必要になります。高温で水ができるので、いきなり水蒸気になります。その水蒸気が冷やされて水滴になるわけです。そのままアルコールランプで加熱を続けると、ステンレスボールに入れた氷が融けて水になります。誰でも知っていることですが、氷が融けると水になることを演示します。これで、水蒸気から水、氷から水の変態を確認したことになります。

 次は、断熱圧縮と断熱膨張の演示です。ペットボトルに水を吸わせたスポンジと液晶温度計を入れ、加圧器(フィズキーパー)で加圧すると、ペットボトル内の温度が上昇することが分かります。その状態では、見た目に変化はありません。ある程度加圧した後、ペットボトルを急に減圧すると、霧が発生して、調べると温度が低下していることが分かります。水を吸わせたスポンジを入れたのは、中を水蒸気で飽和させるためです。水をスプレイしてもいいのですが、中に水滴が残ってしまいます。何もないところで、霧ができることにインパクトがあるので、スポンジを使いました。この演示から、雲の成因を説明します。空気中の水蒸気が上昇すると断熱膨張で温度が下がり、過飽和になると細かい水滴ができて、霧になります。実際の現象に即した水蒸気から水の変態です。今回は、「シュポシュポくん」という市販の教材を使用しました。
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 「真空実験」でも取り上げましたが、上空では高いところほど気温が低くなります。これは、空気の断熱膨張が主な原因とされています。1000メートル上がるごとに6.5℃ずつ低くなり、地上5000メートルでは-20℃近くになっています。しかし、雲の中では、-15℃でも水滴のままでいます。これは、「過冷却」という現象です。

2008年4月13日 (日)

雨の科学(2)

 さて、氷+食塩の「寒剤」の作り方です。まず、氷と食塩を用意します。氷は細かい方が早く冷えますが、冷凍庫のブロックアイスでも構いません。科学館では、大量の氷が作れないので、近くのコンビニでロックアイスを買ってきて、適当な大きさに小づちで砕いて使いました。食塩(塩化ナトリウム)は精製塩でも粗塩でも何でも使えます。手元にあるもので構いませんが、安いとはいえ大量に使うので、買ってくるなら安い方がいいでしょう。重さで、氷3に対して食塩1の割合にします。それで、-20℃近くまで温度が下がります。そのほかに、ボールなどの容器が必要です。長持ちをさせるには、保温ができる容器の方がいいので、魔法瓶や保温ポットを使います。1リットル程度の大きさのプラスチック容器なら、保温をしなくても30分程度は大丈夫です。

 まず、キッチンスケールで、氷の重さを量ります。その1/3の重さの食塩を量って容器に入れた氷に加えます。氷が細かい場合は、食塩を加えてから竹べらなどでかき混ぜますが、ブロックアイスの場合で食塩に精製塩を使うときは、かき混ぜると精製塩が下に落ちてしまって、冷えなくなります。さっと混ぜる程度で、少し時間を置いた方がいいでしょう。自然と氷が融けだして、食塩は水とともに下に移動していきます。この水は、「超冷水」といって、-15~-20℃の水(正確には食塩水)です。不用意に手を入れると、凍傷になりますので、注意してください。キッチンスケールがない場合は、容器の容量の約2/3がブロックアイスの重さになります。例えば、300ミリリットルの容器であれば、中に入る氷の重さは約200グラムです。また、食塩(粗塩)は大さじ1杯で、約20グラムです。氷も食塩も重さは正確でなくてもよいので、目安にしてください。

 「寒剤」は、何かを冷やすための道具です。例えば、缶ビールを冷やすことにしましょう。室温の缶ビールを早く冷やすには、空気などの気体で冷やすよりも、水などの液体で冷やすと熱が伝わりやすいので、はるかに早くなります。同じ低温であっても、冷凍庫に入れると缶ビールが飲み頃になるのに20分以上かかってしまいますが、超冷水では3分で冷えます。ただし、そこで取り出さないと、すぐに凍ってしまうので、タイミングが難しいという難点もあります。実際にやってみたので、3分は請合います。ただし、氷に食塩を混ぜてから超冷水ができてくるのに10分程度の時間がかかります。トータルでは、「寒剤」を作り始めてからでは、冷凍庫とそれほど変わらないというお粗末でした。ちなみに、缶ビールを冷やすには、冷凍庫に入れるよりも、氷水に浸けた方が早く冷え、7~8分で飲み頃になります。氷水ならばビールが凍ることもないので、こちらの方がお勧めです。

Beer

2008年4月12日 (土)

雨の科学(1)

 家庭でもできる実験をシリーズで取り上げています。今回は、氷と食塩で作る「寒剤」を使った実験です。

 実験タイムのテーマは「雨」です。今はまだ、梅雨には早いので気が引けますが、本番は梅雨の時期でした。雨の時期に「雨」をテーマにするのがいいのかどうかは、考えようがありますが、話の枕にはうってつけです。その日が雨でも晴れでも、梅雨の時期なら雨が気になります。「雨」をテーマにするといっても、気象や天候の話をするわけではありません。物理的な「雨」の側面について解説をします。気象や天候であれば、新聞やテレビでも取り上げていますが、「雨」そのものの科学となると、なかなかお目にかかりません。そこに意外性があって、参加者に受けるという狙いです。

 実は、最終年の実験タイム「雨の科学」は、その前年に実施した「雨の科学」と「氷の科学」を一つにして整理したものです。今回紹介する「寒剤」は、両方で取り上げているので、共通項は「寒剤」というわけです。「寒剤」とは低温が得られる材料のことで、氷に塩類を混ぜたり、ドライアイスにエチルアルコールを混ぜたりして作ります。氷と塩類を混合すると、氷は融解して融解熱を吸収し、塩類は氷が融けた水に溶解して熱を吸収します。その結果、徐々に温度が低下して、氷と塩類の共融点に近づくことになります。共融点の組成は決まっているので、氷と塩類の重量比を共融点の組成としたときに、その組み合わせでの最低温度が得られます。塩類には、食塩のほかに、塩化カルシウムなどが利用されますが、どこの家庭にもある食塩を使って、手軽に-20℃が得られます。今は冷凍庫が普及して簡単に-10~-15℃が得られるので、アイスクリームやアイスキャンデーを作るのに「寒剤」を使うこともなくなりました。もっとも、科学館では、ドライアイスで、手づくりアイスクリームを作る工作教室をやったりしていましたね。ドライアイスがあれば、簡単に-80℃が得られます。氷+食塩の「寒剤」は、-20℃程度です。
Icesalt

 ドライアイスは、二酸化炭素が固体から気体になるだけなので、あとに何も残らず手間がかかりませんが、氷と食塩の寒剤は、結構手間がかかりました。でも、氷と食塩の寒剤のいいところは、家庭にある氷と食塩で気楽にできることでしょう。氷と食塩を思いのほか大量に消費することになりますが。

 「雨の科学」のレジメは、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

2008年4月 9日 (水)

色の科学(5)

 実験タイムでは、白熱電球と電球型蛍光灯(電球色)の比較から始めて、緑色発光ダイオードを使った単色の分光、フルカラー発光ダイオードを使った加法混色、シアン、マゼンタ、イレローを全面に印刷したOHPシートを使った減法混色、天井蛍光灯の前面に取り付けた緑色のフィルター(全面を緑色に印刷したOHPシート)を通過した光の分光の演示を行いました。スペクトルの観察には、参加者に配った簡易分光器を使います。

 最初に、簡易分光器で、天井近くの白熱電球と電球型蛍光灯を観察してもらい、使い方の学習は済んでいるので、次に、単色の例として、緑色発光ダイオードの光がどのように分光されるかを観察してもらいます。真ん中あたりに、緑色が見えるだけです。赤と青は見えません。緑色発光ダイオードは、発光が緑色だけなので、その他の色の成分はありません。

 その次は、加法混色の演示です。フルカラー発光ダイオードに供給する電流を可変できるツール(自作)で、電流を変えると色が変わることを見てもらいました。赤、緑、青の発光ダイオードが内蔵されていて、それぞれ2色の組み合わせで、赤+緑=イエロー(黄)、緑+青=シアン(青緑)、赤+青=マゼンタ(赤紫)に発光し、3色を組み合わせると白色光となることを確認します。
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 このツールにも苦労があります。フルカラー発光ダイオードは、赤、緑、青の発光ダイオードが内蔵されていて、加法混色でフルカラーを作ります。緑と青の発光ダイオードの供給電圧は、3.6ボルトと高いので、単三電池3本で4.5ボルトを供給します。1キロオームの保護抵抗を直列に入れて、半固定抵抗で電流を調節することにしました。定格電流は50ミリアンペアなので、5キロオームの半固定抵抗で0.18ミリアンペアにすれば消灯すると考えて、試してみると発光しているのが分かりました。手持ちの半固定抵抗でもっとも大きい200キロオームに代えても完全には消灯しません。たった4.5マイクロアンペアでも点くことは点くと分かりました。最初は、半固定抵抗を加減して、どの色でも出せることを演示しようとしたのですが、結局、あきらめました。赤、緑、青の発光ダイオードをスイッチで入り切りして、それぞれの単色と2色の加法混色、3色の加法混色だけの演示に変えています。

 減法混色の演示は、プリンターで印刷したOHPシートを、シアン、マゼンタ、イエローのフィルターにして、それぞれ2色を組み合わせると、シアン+マゼンタ=青、マゼンタ+イエロー=赤、シアン+イエロー=緑となることを確認します。3枚を組み合わせると黒になるはずですが、濃いグレーにしかなりません。

 最後は、天井蛍光灯に取り付けた緑色のフィルターを通った光を簡易分光器で観察してもらい、どう見えたかを聞きました。蛍光灯の光から、緑色があるはずの部分が黒っぽく見えて、緑色が欠けていることが分かります。

 色の科学は、華やかなので実験タイムにはピッタリです。しかも、かなり高度な内容を含んでいて、現代物理学のさきがけにもなりました。色は、原子や分子や結晶のエネルギー状態を知る手がかりですが、そのままでは一般には難し過ぎます。一応、光の色の違いはエネルギーの違いだという説明はしますが、それ以上は触れずに、分光、加法混色、減法混色、光の吸収、という高校物理の範囲で参加者に楽しんでもらっています。

2008年4月 8日 (火)

色の科学(4)

 最近では、電球色蛍光灯の光が白熱電球とほとんど同じに見えるようになり、蛍光灯の光が嫌いな人でも電球色の蛍光灯に代えれば、省エネに貢献できます。電球型蛍光灯で電球色というタイプもあって、最近では、大きさもほとんど同じになっています。白熱電球を電球型蛍光灯に代えると、40ワット型の場合で電力消費は約1/5となり、電気代は約1/5になるそうです。電球型蛍光灯の値段は白熱電球の約10倍ですが、寿命が約6倍なので、1年か2年で十分元が取れます。少し前の電球型蛍光灯は、明るくなるのに時間がかかり過ぎる、密閉型器具に使えない、などの課題もありましたが、今は改善されています。
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 実験タイムでも、白熱電球と、電球色の電球型蛍光灯を当てるクイズをやってみました。白熱電球と電球型蛍光灯は見た目には区別が付きにくいので、白熱電球と電球型蛍光灯を天井に並べて点灯し、参加者には簡易分光器で見て、当ててもらいました。その結果が「色の科学(3)」の写真です。簡易分光器を使わないと違いが分からないという「落ち」です。

 電球色蛍光灯の光が、簡易分光器で、赤、緑、青に分かれて見えるのは、3波長形といって、3種類の蛍光体を組み合わせているからです。各色の強度を組み合わせて、昼白色、昼光色、電球色など、色合いの違う蛍光灯ができています。今でも見かける古い蛍光灯は、1波長で白色に近い発光をしていますが、赤側の成分が不足しているので、見た目が青っぽく、冷たく感じます。光の3原色とか、加法混色といって、赤、緑、青の3色を組み合わせて、すべての色を出すことができます。カラーテレビやパソコンのディスプレイは、小さな点を発色させて、光を足し合わせることで、フルカラーを作っています。

 さて、光とは、波長が、赤外線、可視光線、紫外線の範囲にある電磁波で、エネルギーを持った粒子としての性質を強調する場合は光子と呼びます。色の種類を決めるのが、スペクトル色の主波長です。スペクトル色の範囲は、赤760~650、橙600~590、黄585~575、緑570~510、青480~455、藍(青紫)450~425、菫(紫)420~400(単位:nm)とされています。【出典:理化学辞典】
 波長の短い方が高エネルギーで、エネルギーで表わせば可視光線の範囲は、1.6~3.1eV(エレクトロン・ボルト、1eV=1.602×10の-19乗J)です。 

2008年4月 7日 (月)

色の科学(3)

 この簡易分光器の特徴はコンパクトなことです。簡易分光器として紹介されている中では、もっとも小型で、スマートです。

 三角形をしていますが、底辺側が下で、丸い孔はのぞき穴です。反対側にあるスリットを白熱電球や蛍光灯の方向に向けて、のぞき穴に目を当ててのぞき、簡易分光器をゆっくりと上下させると、どこかで赤・緑・青に分かれて見えるところがあります。このタイプでは、上方から来る光に対して、簡易分光器の上の辺が水平に近い姿勢で見ることができます。のぞき穴からのぞくと、スリットの直線状の光が白く見えますが、この光は元の白色光です。その下の方に赤・緑・青が縦の帯状に広がって見えるのが、スペクトル(光の成分)です。光源は明るい方が分光も明るく見えますが、太陽を直接見るのは危険なので止めてください。すりガラスなどの窓越しでも十分明るいので、室内で外を見るようにしてください。光源が明るい場合は、よく見ると、赤と緑の間には黄色が、緑と青の間にはシアンがいずれもやや細目に見えます。また、青の上方には紫があります。「色の科学(1)」には、窓越しの太陽のスペクトルを掲載しましたが、白熱電球と蛍光灯のスペクトルを比較してください。下の、左が白熱電球、右が蛍光灯です。
W1_2 F1_2
 このように、白熱電球の場合はスペクトルが太陽の場合と同様に連続で、蛍光灯の場合は、赤、緑、青と不連続になっていることが分かります。初めての人が簡易分光器を正しく使っているかどうかは、傍から見ても分かりません。この写真は、このように見えればよい、という一種の見本です。

このように、白色光は、赤から紫までのいろいろな色を含んでいますが、太陽や白熱電球のようにスペクトルが連続している光源と、蛍光灯のようにいくつかの色の組み合わせで白色に見える光源があります。最近は白色の発光ダイオードもよく見かけますが、赤・緑・青の3色を混合するタイプのほかに、青色ダイオードの発光に黄色の蛍光体を組み合わせたタイプもあります。青色に黄色が加わると、スペクトルが補完されて白色に近くなります。また、単色の光源もあって、例えば、高速道路の黄色い照明はナトリウムランプで、黄色だけの光源です。発光ダイオードでも、着色していない透明のもので、発光すると色が付くものは単色の光源です。

2008年4月 6日 (日)

色の科学(2)

 まず、簡易分光器の作り方です。黒画用紙、要らなくなったCD、両面テープ、はさみ、カッター、ものさし、を用意してください。DVDでも簡易分光器は作れますが、レジメの図面のままではできません。のぞき窓とスリットの位置を調整する必要があります。

 最初にCDを切断します。1枚を8等分すれば、簡易分光器が8個作れます。小さいはさみでは切るのが大変なので、大きいはさみか、金属が切れるようなはさみを使います。CDは、片面にレーベルがあって、その裏面が虹色に光って見えます。裏面を汚すとCDは読めなくなりますが、実は裏面は透明なプラスチックです。触っても光沢面が壊れることはありません。逆に、レーベルに傷を付けると、薄いレーベルの裏が、実は、光沢面なので、大事な光沢面がはがれてしまいます。レーベルは薄い金属で、簡単にはがれます。注意してください。CDの切断面がぎざぎざだったり、多少、ひびが入っていたりしても、分光器の性能には関係ないので、無理に手入れをしないでください。逆に、光沢面に触っても大丈夫と言いましたが、汚れると分光器の性能に影響します。できるだけ触らないようにして、指紋が付いたりした場合は、アルコールを浸した綿棒でそっと拭いておきます。

 次は、黒画用紙を、レジメに掲載した図面に従って切り抜きます。直線が多いので、カッターの方がきれいに切れます。中央付近の丸い孔はのぞき窓で、右上の直線は光が入ってくるスリットです。スリットはカッターで切れ目を入れた後、カッターの刃の背を入れてわずかに拡げておきます。切り抜いたら、予め折れ線を折っておきます。最初に、切断しておいたCD片のレーベル面に両面テープをはみ出さないように貼って、保護紙をそっとはがします。注意しないとレーベルがはがれて、ダメになります。ひっくり返して、CDの光沢面が上を向くようにして、所定の位置に貼り付けます。そのとき、光沢面を汚さないように、余分な紙などで保護して、その上からそっと押し付けるようにします。後は、順番に組み立てていきます。順番は違っても組立ちますが、この順番は組み立てやすく、光が漏れないように工夫してあります。貼り合わせるのに糊を使ってもできますが、糊を使うと乾いたときにゆがみが出るので、両面テープの方がきれいにできます。組み立ての順番を間違えないように貼ってください。注意することは、中に光が漏れないようにすることです。できるだけ隙間がないようにしてください。また、両面テープを貼るときに、押し付け過ぎるとへこんでしまうので、力を加減します。

 組み立て終わったら簡易分光器の完成です。ただし、使い方には注意が必要です。次回は使い方を説明します。
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2008年4月 5日 (土)

色の科学(1)

 家庭でもできる実験をシリーズで取り上げます。これらは、科学館の最終年に、過去に実施した実験タイム(「ちょこっとサイエンス」と言っていました)のテーマをアンコールで実施したものですが、今年度は、実験を科学館で演示として見てもらうだけでなく、家庭でも簡単にできる実験を交えてみたものです。既に、「クッキング・サイエンス」は掲載しましたので、興味のある方は、そちらもご覧ください。

 実験タイムのテーマ選定には苦労しましたが、一応、ある考え方で選定しています。例えば、季節感や記念日などのタイミング、見て楽しめること、意外性が含まれていること、安全であること、原理が説明できること、などです。子どもでも楽しめる実験ですが、内容は高度なものも含まれるので、解説の対象は基本的に大人です。お父さんやお母さんに理解してもらって、子どもにも分かるように伝えてもらおう、という狙いでした。でも、面白くないと子どもはいなくなってしまいます。そうすると親も一緒にいなくなるので、一番、苦心したのは子どもの関心を引きつけておくことでした。

 実験タイムの場合は、既に掲載した「真空実験」とは違って、シナリオもテーマ毎に新しく開発します。基本的には保護者がターゲットなので、大人でないと理解できない内容が含まれています。解説は大人が聞いてもためになるものですが、そのままでは、子どもには難しすぎるし、関心を持ちません。子どもにも関心を持ってもらうために、まず、目を引くことに留意しました。話だけでは聞いていないので、何かをやって見せながら、その間を利用して解説をするという手法です。手で触ってもらったりするのも有効ですが、参加者も多いので、できるものは限られます。通常、約15分の実験タイムに、演示は5点程度を用意しています。平均3分に1点の演示ということになります。また、子どもに話を聞いてもらえる限界は1分半程度なので、問いかけたり、手を上げさせたり、何か参加してもらうようにします。目を引く演出も、参加意識を維持してもらうのが目的です。

 この「色の科学」の特徴は全員参加です。実は、「色」というのは主観的なものです。言葉では言えても、色覚が伝わらなければ意味がありません。ほぼ全員に行き渡るように、簡易分光器を用意して、それぞれ自分の目で見てもらいました。その簡易分光器が、家庭でも簡単に作れて、自分でできる実験です。レジメの最後には、簡易分光器の作り方と使い方を載せました。

 「色の科学」のレジメは、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。
S1


2008年4月 2日 (水)

風力モーターカー&(4)

 この「フー君」は市販の教材ですが、オリジナルのままではありません。2点ほど修理と改良をしています。

 第1点はモーター(発電機)の支持板の取り付け方です。もともとは台も支持板もプラスチックだったので、何回も机から落下して、ついに根元から折れてしまいました。もちろん、「フー君」がひとりでに落下するわけはなく、誰かさんが落としたものですが、まあ、故意ではありません。前にも述べたように、風車を回すのは結構、難しいので、一生懸命にうちわであおいでいる間に、勢い余ってうちわで叩いてしまったりするからです。風を強く当てようと思って、台ごと机の端に持ってきたりするのでなおさらです。ただ落下するのではなく、叩き落されているので、たまったものではありません。結局、L型金具を少し曲げて、支持板の傾斜を合わせてネジで固定しました。その後は、落とされても大丈夫でした。金具が曲がることはあっても、折れたりはしません。

 2点目は、プロペラです。もともと付いていたのは、「風力モーターカー&」の写真にあるような細身の3枚羽根のプロペラでした。「風力モーターカー&」のテキストにあるように、風力エネルギーの利用としてはプロペラは大きいほどよいのですが、うちわであおぐ場合はそう簡単ではありません。風が局所的で、強い風は狭い範囲にしかありません。大小、いろいろのプロペラを試してみましたが、小さいプロペラの方が楽に回るようです。次は、プロペラの幅です。風力発電の理論からは、プロペラ型の風車の場合は、風が通り抜けやすいように細身の方が高速回転可能で有利と言われていますが、回転数が十分であれば、幅広の方が得られるトルクは大きくなります。結局、細身よりは幅広の方が楽に回るので、写真のような「フー君」になりました。風が抜けやすい、といえば、支持板の形状も改良の余地がありそうです。現状はモーターの直径よりも幅が広いので、風が抜けやすくはなっていません。モーターの固定は2個のネジなので、もっと細くても構わないはずです。そこまでの改良はしませんでしたが、まだ、改良の余地はあります。

 また、プロペラの角度も発電性能に関係します。「フー君」を机の上に置いたときに、プロペラの角度は大人が腰の位置でうちわをあおぐのに適しています。小さい子どもは力でハンディがあるのに、角度でも不利になっています。実際、角度が変わっていたのに気付かず、なかなか回ってくれないこともありました。微妙なものです。

 風力発電は、思ったほど簡単ではないのです。 

 ところで、これまで風車のことをプロペラと言ってきました。プロペラは「推進器」という意味なので、動かないものに付いているものをプロペラと言うのは正しくはありませんが、一般的にはプロペラと言い習わされているので、そのように記述しましたが、正しくは風車です。「風力モーターカー&」の場合は、プロペラで構いません。ただし、飛行機のプロペラとは逆のねじり(ピッチ)になっています。風を押すように作ってあるので、逆に回転させた場合は効率が悪くなります。
Fan


2008年4月 1日 (火)

風力モーターカー&(3)

 科学館のデスクトップ・トイのコーナーに、「フー君」という風力発電模型がありました。市販の教材ですが、当初は風の送り方がうまくなかったのか、動かない、ということでお蔵入りになっていたそうです。下敷きであおいだと聞いて、それよりはいいだろうと思って、竹製のうちわを使ってみたらうまく動いたので、その後はずっと展示されていました。
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 でも、これが結構、難しい。甘く見てかかると、大人でも苦労します。「できないけど、やってみて。」と言われて、模範演技をしたことも度々です。要するに、うちわで軽くあおいだ程度ではダメで、一生懸命あおがないと回り出しません。その先も、コツがあります。回り出した後は、力一杯あおいでもうまくいかないことがあります。むしろ、風車の回転を妨げないように、回転に合わせてリズミカルに風を送るのがコツです。「フー君」には、発光ダイオードと電子メロディーが付いていたので、発光ダイオードの点灯具合を見ながら、電子メロディーの「エリーゼのために」を1曲続けられるかどうか、が腕の見せ所でした。

 うちわも竹製の方が、適度な弾力があっていいのですが、最近、ただでもらえるうちわは、ほとんどがプラスチック製です。プラスチック製のうちわは、柔らかすぎて、強く風を送るのに苦労します。また、夏などは、うちわが頻繁に行方不明になります。あおいだついでに、手に持ったまま、館内を歩き回る誰かさんのせいです。本人は持っていったという意識はないので、どこかの展示物で手を使うときに、何気なくそばに置いて、そのまま置きっぱなしにします。うちわが外に出てしまうことはめったになく、たいていは館内で見付かります。

 風力発電模型の発電機も、太陽電池用モーターです。低速回転でも発電ができるように巻き線が多く巻かれています。この実験教室の演示を考えていたときに、発電した電気を電気二重層キャパシターに直接、溜めてみたことがあります。さて、充電中は、電気二重層キャパシターが負荷になるので、無負荷よりは風車の回転が減りますが、蓄電の電圧が高くなっていくと、風車の回転はどうなるでしょうか。だんだん、回転が減って、そのうちに止まってしまうのかな、などと考えてみましたが、外れでした。蓄電電圧にかかわらず、回転速度は一定なのです。実は、電気が溜まると、その電気で発電機をモーターとして回転させるようになります。風を送るのを止めても、風車は溜めた電気で同じ方向に回転を続けます。要するに、常に発電と負荷がバランスして回転速度は変わらないわけです。考えてみれば、当たり前ですが、やってみないと分からなかったりしますね。

2008年3月31日 (月)

風力モーターカー&(2)

 「風力モーターカー&」のテキスト、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

 ところで、テキストの前半はワークシートになっています。工作は簡単なので、風力エネルギーについて勉強をしてもらいました。ワークシートについて以下、解説します

 最初は、「風力とは」です。風力とは、空気が動いて起こす力(またはエネルギー)のことです。空気には重さ(正確には質量)があります。空気の重さは、直径1メートルのゴム風船の大きさで、約677グラムです。空気は見えないけれども重さがある一種のモノなので、当たった物体に力を及ぼします。その力は、例えば、風速10メートル(/毎秒)の空気が面積10平方メートルの壁を(垂直に)押すとき、その力は、約1.3トン(正確には、約132ニュートン)にもなります。普通の住宅も、風が吹くと意外と大きな力を受けます。台風や竜巻の風速はずっと大きいので、受ける力も桁外れになります。

 モノである空気が動けばエネルギーを生じます。風速10メートル(/毎秒)の空気が持つエネルギーは、面積1平方メートルあたり、約647ジュール/秒(=647ワット)です。しかし、この風力エネルギーをすべて利用することはできません。最大でもこの59%、約380ワットが理論上の限界です。また、風力エネルギーは、風速の3乗に比例し、風を受ける面積に比例します。日本の住宅地の年間平均風速は約3メートル/毎秒ですから、直径1.12メートルの風車(面積1平方メートルに相当)では、平均10ワット程度にしかなりません。風力エネルギーの欠点は、希薄で変動が大きいことです。さて、風は目に見えませんが、風があることは分かります。その例としては、旗やのぼりがなびく、煙がなびく、木がゆれる、電線が鳴る、肌で感ずる、などがあります。

 次は、「風力の利用」です。風力の利用には、自然の風を利用するものと、風を起こして利用するものがあります。自然の風を利用した例には、風車、帆船、グライダー、などがあります。ところで、自然の風はどうして起こるのでしょうか。その理由は、気圧が高いところから低いところに向かって空気が動くから、などと考えられます。一方、(人工の)風を起こしてその風を利用する例としては、扇風機、エアコン、換気扇、ドライヤー、などがあります。さて、自然の風と人工の風の違いは何でしょうか。人工の風を作るには動力が必要だ、空気を押す板が必要だ、など、いろいろありますね。板(平板など)に斜めに風が当たると、風によって風の下流に押される力(抗力)のほかに、風の向きに直角の方向に押される力(揚力)が生じます。この揚力を利用した例には、凧揚げ、飛行機、などがあります。

 風力発電では、風力で風車を回し、風車につながった発電機を回して発電します。風力エネルギーは風を受ける面積に比例するので、風車の直径の2乗に比例することになります。その意味では、風車は大きいほど発電量が多いことになります。ただし、模型の風車の場合はうちわで風を送ったりするので、風に広がりがなく、プロペラを大きくしてもあまり効果はありません。
Windmill


2008年3月30日 (日)

風力モーターカー&(1)

 エネルギーの二番手は風力です。この工作は、小学校低学年でも作れるようにアレンジしました。多分、保護者の指導があれば、まだ小学校に行っていない子どもたちでもできると思います。

 以前にも何度か「風力モーターカー」を実験教室で取り上げています。2回目は初回の残材を使ったようなの、工作自体は同じものです。車輪を、発泡スチロールの板から円板状に切り出しています。今回は、残材がなかったので、車輪は作り直しましたが、板から円板を切り抜くのは無駄が多いので、円柱を切断して作りました。家などで作る場合は、一人ならば車輪を4個作ればいいので、どちらの方法でも構いません。

 さて、タイトルの後の「&」は何でしょう。小学生では読めませんが、「アンド」と読んで、並列とか、追加とかを意味します。実は、今回の「風力モーターカー&」は水陸両用です。つまり、「風力モーターカー&ハイドロプレーン」だったのです。同じものでは面白くないという、へそ曲がり精神で一工夫したものです。これまでは車体をダンボールで作っていましたが、今回は濡れてもいいように発泡スチロールのトレーにしました。リサイクル工作にもなります。

 車軸は竹ヒゴで、細めのストローに通して使います。ストローは、濡れてもはがれにくい台所用アルミテープで止めました。そのままでは、竹ヒゴを挿した車輪が緩んで外れてしまうので、外側から虫ゴムを短く切って被せて脱落防止にします。車輪は駆動輪ではないので、車輪が空回りしていてもまったく問題ありません。

 模型用モーター、風力発電用のプロペラ、単三電池1個用でスイッチの付いた電池ホルダーは購入します。それと単三電池1個が必要です。モーターにプロペラを取り付けて回すと、そのままではプロペラが車体に当たるので、台が必要です。実験教室では発泡スチロールの板で台を作りましたが、軽いものであればプラスチックの箱か何かで構いません。電池ボックスも台に載せていますが、車体が水に浸かっても電池が濡れないようにしたためです。

 モーターと電池ボックスはリード線で結線する必要があります。実験教室ではハンダ付けにしましたが、単純にリード線をねじって止めても構いません。ただし、リード線の結線を間違えると、進行方向が逆になります。致命的なミスではありませんが、普通はプロペラが後ろ向きになるようにします。それは、ボートにしたときに、前が浮いて進みやすくなるからです。
Motorcar


2008年3月29日 (土)

電池と電気のあれこれ(15)

 低い供給電圧で高速に回るモーターは、実は、太陽電池用モーターです。無負荷で毎秒3000回転にはなります。毎秒3000回転というと、単相でも50Hzになります。コイルが1個で済むことになります。そこで、太陽電池用モーターを動力源にした単相の交流発電機を作りました。コイルが1個では、さすがに出力電圧は1ボルト以下ですが、50Hzであれば、トランスでの昇圧・降圧は自在なので、トランスさえ選べば良いことになります。負荷が、電子メロディーや発光ダイオードであれば、せいぜい数ミリアンペアあればよいので、小型のトランスで十分です。

 コイルの直流抵抗は数10オームだったので、巻き線比とインピーダンスを手がかりに、いろいろと試してみましたが、実際に使用したのはST-30というインプットトランスでした。巻き線比は1:2ですが、その程度の昇圧・降圧は可能です。発電機の出力は、発光ダイオードにつないで点滅させ、同時に2倍に昇圧して、整流ダイオードで直流に変えてから電子メロディーを鳴らすようにしました。昇圧した交流はそのまま工場とビルに送電し、降圧してから家庭に配電します。工場は青色ダイオード、ビルは白色ダイオード、家庭は黄色ダイオードを点灯します。太陽電池用モーターの駆動は乾電池2個にしました。スイッチを押している間だけ、発電するので、それほど電気を使いません。発電と負荷の違いを見てもらうために、発電と負荷のそれぞれのスイッチを同時に押さないと、負荷側のダイオードは点灯しません。家庭の黄色ダイオードだけは降圧しているので、供給電圧が低下してくるとほとんど点灯しなくなります。それが電池の交換時期を知らせます。

 電子メロディーを付けたのは、交流を直流に変えて使うという意味だけではなく、ユニバーサル・デザインと言うか、電気が発生していることを音でも伝えようということでしたが、最初の電子メロディーは「エリーゼのために」だったので、なぜだか、1曲終わるまでスイッチを押し続ける子どもが続出しました。電池が消耗するので、電子メロディーを曲が短い「ハッピーバースデー」に代えた始末です。
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 最近はパワー半導体の技術が進歩して、直流の利用が進んでいます。交流機器であってもモーターは直流で制御している電化製品も多くあります。電気も交流にこだわる必要はありませんが、交流の電気を大切にして忘れないようにする努力も必要と思います。

 以上で、「電池と電気のあれこれ」は終わりです。「電池の歴史」をテーマにした実験教室と並行して、実験タイムで電池を取り上げたことがあります。電池の解説を、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

2008年3月27日 (木)

電池と電気のあれこれ(14)

 科学館には、以前から直流モーターを使った発電原理模型が2種類ありました。1個は直流モーターの動力で直流モーターを回して発電をするもので、同じ直流モーターが2個、プーリーでつながれていました。当然、出力電圧は供給電圧よりもやや低くなりますが、ニッケル水素電池2個を直列につないで、2.4ボルトを供給していたので、2ボルトの出力は得られていました。太陽電池用モーター、豆電球、電子メロディー、発光ダイオードの4種類の負荷を切り替えて使用できましたが、プーリーに掛けた輪ゴムが外れたり、切れたりするのが悩みでした。もう1個は、モーターの供給電圧が可変で、同じモーター同士では2ボルトが得られないので、一回り大きいモーターを動力側にしていましたが、プーリーで駆動しているのは同じでした。

 いまどき、本物の発電機はプーリーなど使っていないし、大容量の発電所では、タービンと発電機は直結されています。直結にできないか、は最初から考えていましたが、電源がニッケル水素電池に限られるので難しいと考えていました。

 あるとき、ふと、発電機側のモーターを代えてみたらどうか、と気がついたのです。その前に、風力発電の模型を修理していました。風力発電用のプロペラは、飛行機のプロペラとは逆ネジです。飛行機のプロペラのひねりは推力を高めるためのものですが、風力発電の場合は、板で構いません。いろいろとプロペラを変えても、普通の模型モーターではうまくいきません。風力発電模型では、必ず太陽電池用のモーターを組み合わせています。つまり、太陽電池用モーターは低電圧用のモーターですが、逆に低速でも高い電圧が得られる発電機になります。そこで、太陽電池用モーターを発電機側に交換してみました。

 RE-280という大き目の模型モーターを動力側にし、RF-510Tという太陽電池用モーターを発電機側にして直結し、ニッケル水素電池2個を直列にして駆動すると、実に、無負荷では13ボルトが得られます。40ミリアンペア負荷でも約10ボルトです。供給電圧を可変にしても、十分な電圧が得られることが分かりました。RE-280で、ごく普通のFE-130を回しても、40ミリアンペア負荷で1.7ボルトは得られます。これらの組み合わせで、発電原理模型のモーターと発電機を直結にすることができました。輪ゴムの悩みからは解放されたわけです。
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2008年3月26日 (水)

電池と電気のあれこれ(13)

 さて、最初に出てきた交流発送電の原理模型の話に戻ります。科学館には「足こぎ発電機」という人気の展示物がありました。自転車型のペダルをこぐと発電して、模型の電車を動かしながら、電力ワットと電力量ワット・秒を学習する仕組みです。親子や子ども同士で発電量を競争したりして楽しんでいました。しかし、この展示物は、直流モーターを発電機として使った直流の発電装置でした。

 実は、以前に交流の手回し発電機を試作したことがあります。普通の手回し発電機は直流モーターを使っています。そのため、電圧を高くするために回転数を上げる必要があります。ギアを組み合わせて高速回転を作り出すので、力が必要です。ちょうど、風力発電機と同じです。負荷がないときに、空回りする発電機を作りたくて、空心のコイルを使った交流発電機を作ろうとしたのです。電磁誘導を利用した模型です。最近は、ネオジム磁石という超強力な磁石ができたので、かなり楽になりました。それでも空心では、鉄心の約10倍の巻き数が必要です。また、ネオジム磁石は高価なので、手頃なものは大きくありません。ミシンのボビンくらいのコイルがちょうど良い大きさになります。ミシンのボビンでも、細いエナメル線を使えば500ターンは巻くことができます。出力電流が数100ミリアンペアでよければ、細くても大丈夫です。

 最初の試作は、4個のコイルを平面に並べ、4個のネオジム磁石を同相で動くようにしたものでした。4個のコイルを直列につなぐと、発光ダイオードが瞬間的に点灯します。4個のコイルを並列につなぐと、手回しでは10Hz程度の交流になりますが、発光ダイオードが点灯する電圧は得られません。ちなみに、発光ダイオードは極性があって、直流で使用するものですが、逆電圧でも点灯しないだけです。交流の場合は、点滅することになります。ただし、逆電圧が耐電圧を超えると壊れてしまうので、注意してください。

 交流なので、トランスを使えば昇圧できるのではないか、と考えて、小型のトランスをつないでみましたが、昇圧率はいまいちでした。周波数が低すぎで、ダメなようでした。同じ機構で周波数を高くするには、多相にする方法がありますが、商用並みの50Hzにするには20個のコイルが必要です。平面では大きくなるので、筒型にすると本物の発電機のようで、楽しいな、などと考えていましたが、作るとなるとたいへんで、しばらく、そのままになっていました。
Coilmag

 別のアイディアが浮んだのは、ちょっとしたことがヒントになりました。

2008年3月24日 (月)

電池と電気のあれこれ(12)

 1回目の実験教室では、爆鳴気の演示をしてもほぼ全員が水素自動車を完成して、試走にまで行きました。9V電池で約3分間電気分解を続け、その後で、水素酸素電池を動力にして走らせます。実験教室の部屋はタイル・カーペットなので、液をこぼすと大変です。また、車を走らせるのは抵抗が大きいので、広い方の展示スペースの一部を占有して、自動車レースです。ただし、競うのは速度ではなく、距離です。速度はカメのように遅いので、話になりません。10メートルの直線コースをどこまで行けるか、巻尺で測って記録しました。コースは広く取れないので、一人ずつです。順番を待って出走します。

 車が動かない子もいますが、車を持ち上げるとモーターは回ったりするのが分かります。そのうちに、電気分解が足りないと長く走れない、ということが分かってきました。段々に記録が伸びていきます。最初は10メートルも行かなかったのに、折り返すことができるようになりました。確か、最高記録は10メートルを一往復以上したと記憶しています。ただ、前にも述べたように、輪ゴムで車軸を引き付けているので、微妙にハンドルを切っているような状況になっています。まっすぐには進まずに、徐々に曲がっていきます。コースから外れないように、ときどき元に戻しながら、走らせないとどこかにぶち当たってしまいます。なぜか、1回目の方が開発途上だったわりには好成績でした。
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 2回目は1回目の反省を生かした自信作のはずでしたが、うまく行きませんでした。駆動系を変えたのが裏目に出て、車台を切り抜く作業にも時間がかかりました。2回目は車台にプラスチック・ダンボールを使って、濡れてもいいようにしたのですが、紙より硬くてカッターでの切抜きが難しくなったのです。また、ダンボールの性質上、車軸を通す位置を端から何センチと決められません。「何センチくらい」という指示が、子どもたちには理解しにくいようです。切り抜く位置がずれていたり、大きかったりして、難渋しました。小さい場合は大きくできますが、逆は無理です。さらに、輪ゴムを掛けてモーターを回す段になって、トラブルが続出しました。輪ゴムがモーターの軸に絡まったり、逆に外れたりするのです。その違いは、モーターの回転方向でした。絡みやすい方向と外れやすい方向がありました。対策が取れるのは、外れる方で、輪ゴムをきつめにすると改善します。ただし、きつくし過ぎるとモーターに余分な負荷がかかることになります。結局、対策に追われて、2回目は自動車レースまで行きませんでした。

 難しいものです。当然、試作はして動作を確認していたのですが、試作では問題がなかったので気がつきませんでした。後で考えれば当然ありうる話です。やはり、失敗は成功のもと、成功は失敗のもと、です。失敗は貴重な経験で、成功に結びつくための原動力ですが、子どもたちには申し訳ない気持ちで一杯です。

 実験教室で取り上げた水素自動車Ⅱを、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。ホームページには、ご参考までに木炭-木炭電池の充放電特使の例も載せておきました。

2008年3月23日 (日)

電池と電気のあれこれ(11)

 水素自動車も、1回目と2回目では変わったところがあります。駆動系の改良については前に述べましたが、木炭電極も改良しています。2回目の木炭電極は1回目の余りなので、見かけは変わっていません。変わったのはリード線の取り付け方です。1回目は細いステンレス線を輪切りの木炭に巻きつけて「捩って」もらいました。この「捩って」が難しかったのです。まず、「よじる」が今の子どもたちに分かるかどうかが、スタッフで議論になりました。昔なら、「捩って」作る「こより」を誰でも知っていました。今は、ないでしょうね。「よじる」を言い換えることも考えました。でも、「ひねる」とも違うし、「ひねる」動作には違いはないのですが、「ひねる」は1回の動作ですが、「よじる」は動作を繰り返します。結局、違うのだから、やっぱり「よじる」で行こう、「よじる」を覚えてもらおう、ということになりました。

 でも、子どもたちには言葉は分かっても、動作の経験がない悲しさです。ステンレス線を「捩って」木炭に密着させることができません。「捩って」いても、弱くてゆるゆるなのです。電気分解の段階で、この接触不良に悩まされました。木炭電極ではなく、ステンレス電極で電気分解をする子が続出しました。鉄イオンがとけだして、液が茶色になってしまい、水素酸素電池にならないのです。緩いので、木炭がするりと抜けて落ちてしまう子もいました。

 さて、2回目です。まず、木炭にステンレス線を通す孔を予め開けておきました。孔は木炭の端にあります。ステンレス線は、孔に通してから「捩って」もらいますが、今度は、ステンレス線は液に漬けないようにします。多少緩く「捩って」も問題ありません。木炭電極だけが液の中になるので大丈夫ということです。見た目もスマートになったし、「捩った」ステンレス線を倒しておくと、容器を浅いものに代えたこともあって、容器の縁でちょうど止まって木炭電極の回転防止にもなりました。容器を浅くしたことで溶液の量も減って重量減にもなったわけです。
H2car2


2008年3月22日 (土)

電池と電気のあれこれ(10)

 実験教室では、木炭-木炭電池が水素酸素電池である、ということを理解してもらう必要があります。木炭-木炭電極で水を電気分解したときに、マイナス側に水素が、プラス側に酸素が発生しますが、水素を水上置換で捕集し、火を点けてポンと音が出れば水素と確認できます。しかし、科学館は学校ではないので、実験器具の用意がありません。何か代わりになるものを、と考えて、標本ビンを試験管代わりにし、鉛筆の芯を木炭電極として使い、電極の保持は園芸用の鉢底ネットを細く切ったもので代用しました。ままごとのような、かわいい化学実験キットができました。

 水素の捕集法もいろいろ考えました。ヒントは「大型しゃぼん玉装置」です。科学館でも人気の展示物でした。大人でもすっぽりと入れるくらい大きなしゃぼん玉ができます。しゃぼん玉の中から見る景色はなかなかのものです。不思議な体験といえます。このしゃぼん液の調整がスタッフの一仕事です。中性洗剤とPVA洗濯のりをある割合に混ぜて使います。中性洗剤が水の表面張力を低下させてしゃぼん玉ができますが、そのままでは小さいしゃぼん玉しかできません。しゃぼん膜を強化する目的でPVA洗濯のりを加えます。

 結論を言うと、標本ビンの試験管に、2本の鉛筆の芯を細くきった鉢底ネットの目に挿して固定し、硫酸ナトリウムの飽和水溶液を8分目まで入れてから水で薄めた中性洗剤を1滴たらします。9Vの電池で電気分解すると、小さな泡が両方の電極にできてきて、水面に移動して細かいしゃぼん玉が無数にできます。細かいしゃぼん玉が合体して大きくなったしゃぼん玉に、ターボライターで着火すると、小さいけどポンと音を立てます。これを子どもたちに見てもらいました。道具は小さくて見えにくいけれども、音だけは聞こえます。効果としては十分でした。

 中性洗剤だけでPVA洗濯のりを加えなかったのには理由があります。泡が大きい方が迫力のある爆鳴がしますが、泡が大きくなるのに時間がかかるからです。泡は小さくてよいので、中性洗剤だけにしました。また、水素と酸素を分離していないので、捕集されたのは爆鳴気そのものです。ターボライターを使ったのは、炎が細く集中しているからです。普通のライターでは鉛筆の芯を焦がしたり、間違えて標本ビンを割ったりしてしまいます。ターボライターなら泡だけに炎を当てることができます。

 実験教室らしいのは、この演示だけでしたね。後は工作教室でした。 

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2008年3月21日 (金)

電池と電気のあれこれ(9)

 技術的な課題は2点ありました。まず、学校であれば、水の電気分解は薄い硫酸か、水酸化ナトリウム水溶液で行うのが普通です。これらの強酸や強アルカリを使えば、木炭-木炭電池の性能も良くなりますが、科学館では扱わないようにしています。排水処理の問題もありますが、それ以上に絶対安全とは言えないからです。実験教室では、強酸や強アルカリでなくても、溶液をこぼしたり、それに気づかずに触ったりしてしまうことはよくあります。ハンダごてやカッターは、危険があるといっても触れると熱かったり、痛かったりして気がつきますが、強酸や強アルカリは付着してもすぐには気づかず、少し後になって傷害が出てくるのも怖いところです。今回は、危険のない硫酸ナトリウム水溶液を使いました。そのために、電池の性能がやや低くなったのは止むを得ません。

 次の課題は、自動車にしても飛行機にしても、モーターが回るだけではダメです。重量に対して十分なトルクがないと、動きません。つまり、自動車の場合は駆動系のロスを少なくし、車体はできるだけ軽く作る必要があります。動く工作物の難しさは、本来のテーマとは別の次元の課題をクリアすることにあります。自動車にしても飛行機にしても、軽く作ることの重要さは本質的なものなので、「モノづくり」の観点からは、やはり重要と考えるべきでしょう。そうは言っても、子どもたちは講師の努力の結果しか見られないので、苦労のプロセスはブラックボックスであって、教育にも何もなっていないのが残念ではあります。さらに、軽くする努力が、結果として工作物を簡素化するために、ちゃちに見えたりするのも本意ではありません。

 そう言った後では言い訳に聞こえるでしょうが、車体はダンボールになりました。軽いのに丈夫だからです。モーターの取り付けも、軽量化のため、両面テープだけにしました。しかし、車輪と車軸、プーリーは重要な要素なので、これは市販の教材を使います。木炭電極は、表面積だけが必要なので、輪切りにしました。備長炭は硬いので、金のこで切ろうとしても骨が折れます。ステンレス鋼並みに硬く、その割にはもろいので、切断中に備長炭が欠けてしまいます。労力の問題もあって、備長炭の切断は専門家に頼みました。輪切りの備長炭を使ったのが、軽量化のミソなので、これがないと始まりません。そのほか、車輪、車軸、プーリーなどの教材類は、通販で購入できます。太陽電池用モーターも、通販で大丈夫です。

Photo

 「水素自動車」は2回やりました。2回目は最終年で、アンコールとして実施したものです。2回目の方が改良されていますが、駆動系にはまだ問題があります。1回目は、モーターを横置きにして、後輪の片側近くに取り付けたプーリーを駆動する方法でしたが、ベルトとして使用した輪ゴムがきついと、車軸の摩擦が増すうえに、車軸の片方が引かれるために、車がまっすぐに進まないという問題がありました。2回目は、その改良として、モーターを縦置きにして車体の中央に配置し、車軸のプーリーも車軸の中央に配置して、輪ゴムは90度ひねって掛ける方法にしました。試作ではうまく動いたのですが、本番では輪ゴムが外れて大変でした。原因の一つが輪ゴムをひねる方向です。ひねる方向によっては、回転したときに外れやすくなります。もう一つの原因は、輪ゴムを張る強さです。弱くすると外れやすくなります。これからトライされる方には、モーターを車体の中央に横置きにすることをお勧めします。

2008年3月20日 (木)

電池と電気のあれこれ(8)

 科学館に勤めるようになって、初めて担当した実験教室のテーマも電池でした。

 エネルギーを語るうえで、今日的な電池といえば、光電池(太陽電池)と燃料電池です。この二つは地球環境保全の観点からも欠かせません。しかし、光電池は、厳密に言えば(化学的な)電池ではなく、しかも、セル自体が実験教室の教材としては高価であるうえ、低電圧の光電池に対応した光電池用のモーターも、巻き線の多い特別の仕様となっていて、普通の模型用モーターよりは高価であるという難点があります。燃料電池も、セル本体が数千円から数万円もするうえに、燃料の水素も気楽に使えるほど安価ではありません。では、どうしたらよいか、が考えどころです。

 ヒントは、以前に実施した木炭電池です。そのときの経験で、木炭-木炭電極で水を電気分解すると、発生した水素と酸素が再結合する際に電気を取り出すことができることが分かっていました。しかも、電気分解の電圧を高くすれば、短時間の通電でも比較的高い電圧が得られます。基本的に水素酸素電池なので、燃料電池と原理は同じものですが、単純に木炭電極に水素と酸素を供給しても電気は得られません。通常の燃料電池は、白金などの電極自身の触媒作用で水素と酸素の反応を促すものです。木炭には触媒作用はないので、電気分解で作った水素と酸素でなければ反応が進みません。したがって、木炭-木炭電池を燃料電池ということは問題がありますが、水素と酸素で電気を作る点には違いがありません。

 一方、実験教室のアンケートでは、動く工作物の希望が多く見られます。過去にも、風力モーターカーやホバークラフト(エアークッションカー)などの、いわゆる乗り物系や、扇風機や旋回塔といった、動く模型がありました。これらは、模型用のモーターと単三乾電池を使うのが普通で、材料費はそこそこながらも、動作はまず確実です。単三乾電池といえども、パワーは強力です。それに比べると、手づくりのボルタ電池や備長炭電池は非力です。それらで動く工作物をまともに作ろうとすると、いろいろと苦労します。

 結局、多少、チャレンジングではありましたが、水素で動く自動車を取り上げることにしました。しかし、実験教室の事前案内を出す時期になっても、まともに動く自動車は未完成でした。太陽電池用のモーターは回転しても、なかなか車は動いてくれません。仕方なく、実験教室のタイトルを、「水素自動車にチャレンジ!」としましたが、苦しまぎれです。当日までに動くようになればよし、動かなければごめんね、の世界です。 

H2car

2008年3月19日 (水)

電池と電気のあれこれ(7)

 木炭電池の次はスライム電池です。

 実験教室のアンケートを見ると、希望するテーマとしてスライムがよく出てきます。子どもたちはスライムが好きなようです。

 スライムをご存じない方々のために、簡単に説明しますと、スライムとは、洗濯のり(ポリビニルアルコール、PVA)とホウ砂(四ホウ酸ナトリウム、ボラックス)で作る、粘土に似た一種の「おもちゃ」です。「おもちゃ」ではなく、教材と言いたいところですが、高分子化合物であるポリビニルアルコールをホウ酸イオンの水素結合で架橋したゲル状の物質と聞くと、子どもたちには理解が難しいと考えざるを得ません。しかし、子どもたちは、単純にスライムの触感を楽しんでいます。色水で着色したり、鉄粉を入れて磁石を近づけると形の変わるスライムにしたり、いろいろなバリエーションがあります。丸めたり、伸ばしたり、広げたりできるといっても、粘土ほど自由にはなりません。丸めて置いておくと、徐々に流動して平らに広がります。粘土と違って、長期間、使えるわけではありませんが、乾かないようにラップに包んでおけば、一週間程度は大丈夫です。

Jell

 でも、スライムを作るだけでは実験教室にはなりません。あっという間に終わってしまいます。何かスライムでできないかな、と探していると、スライムが電池になる、という報告を見つけました。銅-亜鉛電極でも、炭素-アルミニウム電極でも可能とありました。スライム電池の長所は、スライムがゲル状なので取り扱いやすいということです。溶液を電解質にした電池は、溶液をこぼさないように注意しなければなりませんが、スライム電池はゲルなので、その心配がありません。また、やや高度な応用になりますが、電池は原理的に2種の金属で電極電位の差が起電力となるので、それぞれの金属だけの電極電位を仮想的に考えることができます。半電池という考え方ですが、スライムに金属を挿せば、それがその金属の半電池になるので、異なる金属のスライム半電池を接触させるだけで、任意の金属を組み合わせた電池ができるという利点があります。

 ただ、スライム電池は内部抵抗が高いので、電流を取り出すのは困難です。電池の原理を教えるのが目的で、テスターやデジタルマルチメーターなどで測定ができる高学年に向いたテーマと思います。試行でもうまくいかず、内部抵抗を下げようと思って、苦しまぎれに食塩水をホウ砂水溶液に混ぜてみました。内部抵抗は下がりましたが、スライムではなく、硬い、白いダンゴになってしまいます。なぜかお分かりですか。そうです、塩析でポリビニルアルコールが固体となって析出してしまったのです。スライムを作るつもりが、スーパーボールになってしまいました。まあ、それはそれで楽しみ方もあるのですが、失敗でした。

 実験教室で取り上げたスライム電池の例を、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。なお、ホウ砂水溶液にはホウ酸が含まれるので、粘膜や皮膚を刺激します。ホウ酸は、弱いといっても消毒薬なので、小さい子どもが誤って口にしたりしないように、また、スライムに触った後は、よく手を洗うように、注意・指導してください。

2008年3月18日 (火)

電池と電気のあれこれ(6)

 実際に実験教室で取り上げた木炭電池の例を、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

 このときの木炭電池はオーソドックスですが、変わった木炭電池として活性炭電池を取り上げています。活性炭というのは、冷蔵庫の脱臭剤として市販されているもので、実体は粒状の木炭です。重さに比べて表面積が大きいので、大量の気体を吸着することができます。アンモニアなどの臭い気体を吸着して、取り込んでしまうので、脱臭剤にうってつけです。活性炭も電気を通すので、備長炭と同様に電池の電極として使えます。ただし、備長炭と違って粒状なので、ぎっしり詰めないと電気が通りにくくなって、うまく行きません。活性炭自体の特性や、粒の大きさによって電池の性能が、大きく変化します。なかなかうまく行かない、難しい木炭電池です。

 しかし、備長炭よりは活性炭の方が家にある可能性が高いかな、と思って取り上げて見ました。期限切れになった脱臭剤でも十分です。不要になったものを捨てる前に活用するというアイディアです。電池に使った後でも、よく洗えば、最後は庭の土壌改良剤になります。実は、市販の冷蔵庫用脱臭剤には活性炭以外の成分が含まれていることがあって、そういう製品は活性炭電池に適しません。むしろ、100円ショップなどで扱っているものの方が、単純な活性炭が多いようです。また、電池にしたときの性能は良し悪しがあるので、試してみてうまく行かない場合は、活性炭を買い直した方がいいかもしれません。

 実験教室では、木炭にこだわって、活性炭側のリード線を鉛筆の芯にしましたが、ステンレスの針金でも構いません。実験教室では、鉛筆の芯を活性炭に挿すときに折れてしまって、かなり無駄にしてしまいました。鉛筆の芯は、黒鉛と粘土を混ぜて作ります。鉛筆に芯も、立派に木炭電池になります。ただし、鉛筆に芯は細いので電極面積が小さく、電流を取り出すのには向いていません。測定器で電圧を測るような、教材としての利用に適しています。

 結局、活性炭電池は、使った活性炭の性能が良くなくて、十分な性能が出ないままで終わりました。活性炭が選べる場合は、電気抵抗が小さく、粒が細かくて充填密度が高くなるものを選ぶべきです。ただし、活性炭は、普通、袋詰めで売られていて、買わなければ中身を確認できません。当たり外れがあるものと思って、あきらめましょう。

Activec

2008年3月17日 (月)

電池と電気のあれこれ(5)

 電池に電気が起きていることを確認するための道具にも、注意が必要です。適切な道具を選ばないと、目的を果たせません。テスターやデジタル・マルチメーターで測るという直接的な方法もありますが、小学生の場合は難しいのと、測定器の数を揃えるのが大変なので、別の方法を取ります。以下の方法は、比較的安価なので家庭でも導入が容易です。

 昔は豆電球しかありませんでしたが、最近はもっと便利なものがあります。実は、豆電球はかなりヘビーな負荷です。定格電圧は1.1ボルトから2.5ボルトまでが一般的ですが、定格電流は0.3アンペア程度となっています。いわゆる豆電球は、100ミリアンペア以上の電流を流さないと点灯しないことになります。

 点灯といえば、最近は発光ダイオード(LED)が広く使われていて、定格電流は数10ミリアンペアが一般的ですが、実際は、数マイクロアンペアでも点灯が確認できます。ただし、発光ダイオードは、通常、1.5ボルト以上でないと発光しないので、木炭電池1個では点灯しません。また、多くの発光ダイオードの定格電圧は2ボルト以上なので、1.5ボルト仕様の発光ダイオードは、探さないと入手できません。発光の色で言えば、赤色、黄色、橙色がもっとも低電圧で動作します。緑色、青色、白色の場合は、動作電圧が3ボルト以上になります。

 これらに代わって使われるのが、電子メロディーと太陽電池用モーターです。電子メロディーは、0.6ボルトでも、ゆっくりながら、一応はメロディーになります。0.5ボルトでも、音はでます。電圧が1ボルトでも、電流は100マイクロアンペア程度しか必要としません。ただし、音程によって必要な電流が変化するので、電流値が刻々と変動します。供給電圧が高くなると、メロディーが鮮明になるとともに、速くなります。太陽電池用モーターは、普通の模型モーターより巻き線が多くなっていて、低い電圧でも使用できるのが特徴ですが、値段は高くなります。無負荷の場合、電流は数10ミリアンペアと、電子メロディーよりはやや大目ですが、電圧が0.3ボルトでも回転が確認できます。ただし、動力として使用すると、電流は急増するので、低電圧では無理です。

 結局、電子メロディーが、低電圧でも動作し、電流も少ないので、負荷状態で電圧が低下しやすい、内部抵抗の高い電池でも使えることになります。木炭電池のように内部抵抗が低い電池の場合は、太陽電池用モーターもよい選択肢です。また、直列つなぎを前提にすれば、発光ダイオードも使えます。

Tools

2008年3月16日 (日)

電池と電気のあれこれ(4)

 木炭電池(備長炭電池)に必要なのは、備長炭、アルミフォイル、ペーパータオル、それに食塩だけです。ただし、電気が起きていることを確認するためには、道具が必要です。1.5ボルト、0.3アンペア程度の豆電球とソケット、電子メロディー、太陽電池用のモーターとプロペラ、以上のいずれかと、ミノ虫クリップの付いたコード1対です。アルミフォイルと食塩、それにペーパータオルはどの家にもあるでしょう。ペーパータオルでなくても、半紙などの水にぬれても破れにくい薄手の紙なら使えます。備長炭は、長いほど表面積が大きくなるので、短いものよりも性能がよく、探せば100円ショップでも手に入ります。それ以外は、模型屋さんに行くか、通販で手に入れます。

 注意点は2点。まず、食塩水は濃い方がいいので、食塩が溶け残るようにします。目安は、食塩1対水3です。容器に入れてよく振ってから、上澄みを使います。また、ペーパータオルは、木炭とアルミフォイルの接触を防ぐ役目を兼ねているので、アルミフォイルより大きめに使うことです。

 素材が準備できたら、まず、備長炭はタワシでよく洗って、表面に付いた白い灰を落としてください。その後、濃い食塩水にペーパータオルを浸し、それを木炭に巻きつけた上にアルミフォイルを巻きつけます。木炭がプラス側、アルミフォイルがマイナス側になります。リード線は接触させるだけでよいのですが、木炭とアルミフォイルに、それぞれ別の針金を巻きつけて捩り、その針金をミノ虫クリップで挟んだ方が接触不良を防げます。

Charcell

 木炭電池の電圧は木炭の導電性や大きさに依存し、通常は約0.7~1ボルトとなるので、豆電球はやっと点くか点かないかですが、電子メロディーや太陽電池用モーターは作動します。ただし、電子メロディーには極性があるので、逆につなぐと鳴りません。鳴らなかったらリード線を反対につないでみてください。いずれも、結構、長い時間、作動しますが、木炭電池は、木炭の表面に吸着した酸素が反応しているので、酸素が消費されると電圧が低下していきます。その場合は、一度、アルミフォイルとペーパータオルを取り外してから、木炭を水で洗い、再度組み立てると、復旧します。電池は、化学反応で電気を作っているので、酸素の外にアルミニウムが消費されています。しばらく、電気を取り出した後で、アルミフォイルを外して光にかざすと、小さな穴が無数に開いているのが分かります。アルミニウムが溶けた分だけ、電気ができたことになります。一方、木炭自体は反応には関与していないので変化はありませんが、木炭の表面では、酸素が消費され、水素と反応して水ができています。その意味では、木炭電池は空気電池の一種です。

2008年3月15日 (土)

電池と電気のあれこれ(3)

 さて、電池といえば「ボルタの電堆」がルーツですが、科学館レベルではいろいろな電池が花盛りです。身近な素材を使った電池といって、レモン電池や果物電池が喧伝されています。たしかに、身近にある意外な素材でも電池になる、という発見はインパクトがあるかもしれません。でも、食品を電池にして、金属が溶け出すので食べてはいけません、捨ててください、というのは、いかがなものかと思います。レモンを1個使って、電極を挿して電気ができることを確認したら、それで終わりというのは、いかにも無神経な方法です。レモン電池であれば、レモンを輪切りにすれば、1個で何人分にでもなるはずです。また、高いレモンを使わなくても、レモン果汁の主成分はクエン酸なので、簡単に手に入るクエン酸を使う代案もあるはずです。食糧難の時代に育った年代としては、食品であるバナナや果物や大根にまで電極を挿して、ポイと捨ててしまうのは、いかにももったいないと思います。物を粗末にするような方法がまかり通っていることは嘆かわしいことです。

 また、身近な素材ということで、1円玉と10円玉の間に食塩水をしみ込ませた紙を挟んだ、いわば新版「ボルタの電堆」も、よく紹介されています。1円玉はアルミニウム、10円玉は銅が主成分なので、亜鉛と銅の「ボルタの電堆」に似ていますが、この電池はなかなかうまく行きません。無負荷での電圧は高くても、負荷をつなぐと電圧が極端に低下してしまうので役に立ちません。直列にしても、並列にしても、手を焼きます。電池の内部抵抗が高いうえに、水素が発生して電極を覆う分極反応があるためです。

 電池もなかなか難しいのですが、誰にでもできて失敗がないのが、木炭電池です。備長炭という木炭(白炭とも言います)を使うので、備長炭電池とも言います。備長炭は電気を通す木炭で、硬く、たたくと拍子木のような音がします。柔らかくて崩れやすい普通の炭や竹炭とは違います。普通の炭や竹炭は電気を通しません。黒い炭なのに、なぜ、白炭と言うかは、高温で蒸し焼きにした後、急冷するために灰に埋めるので、表面に白い灰が付いているからです。

Charcoal

 木炭は主に炭素でできています。炭素には、ダイヤモンドとグラファイト(黒鉛)という2つの結晶系があります。ダイヤモンドは硬く、グラファイトは柔らかい結晶です。なぜ、備長炭が硬いかというと、ダイヤモンドの構造を持っているからだそうです。また、炭素は簡単に燃えて酸素と反応し、二酸化炭素や一酸化炭素になりますが、酸やアルカリには強く、化学的に安定です。高校の化学では、イオン化傾向を習いますが、その中に炭素は含まれていません。イオンにならないので、あえて言えば、白金よりも貴(イオンになりにくい)ということです。グラファイト構造の炭素は電気を通すので、ダイヤモンドとグラファイトの中間にある備長炭は、電極材としても優れています。

 難を言えば、木炭電池(備長炭電池)は原理的に多少分かりにくいところがありますが、実用に近い電気が作れる点でお勧めです。

2008年3月14日 (金)

電池と電気のあれこれ(2)

 遠い昔、エジソンとヘルツが直流と交流の優位性で争い、結局、交流の利便性が勝って、今は交流の時代になっています。正確に言えば、現在の大規模電源は、交流で発電し、送電し、配電して、交流のまま利用したり、直流に変えて利用したりしています。将来は、基幹送電線は、送電ロスの少ない、高電圧直流送電や超電導直流送電が主流になると思われますが、配電以降は今と変わらない交流でしょう。交流の利点は、電圧を上げたり下げたりすることが簡単にできるので、電圧を上げることで送電ロスを少なくするとともに、大容量の送電を可能にしています。

 さて、どこの科学館でも発電の仕組みを示す展示物がありますが、交流の特徴である電圧の変換について触れているのは、ごく一部です。そこで、交流発送電の仕組みを示す展示物を作ってみよう、という思いは最初から抱いていましたが、それが実現できたのは、かなり後になってからでした。思い込みは恐ろしいもので、最初のアイディアが手回しの交流発電機だったからです。以前に試作品を作ったことがありますが、回転数が不足して周波数が低いため、トランスでの昇圧がうまく行きません。負荷による反力を体験させたいと思って、コイルに鉄心を使わないで空心にしたので、電圧も上がりません。多極にする必要がありましたが、工作が難しいので、開発が停滞していました。結局、別のアイディアによる交流発送電の原理模型に代えたのですが、その完成は後日のことです。

 さて、交流発送電模型の話は後回しにして、次は電池の話です。

 今はモーターを自作する機会は皆無ですが、小型モーターは自動車や家庭の電化製品に豊富に活用されています。モーターを動かす電池も簡単に手に入りますし、小型モーターと電池は、おもちゃの動力としても普通に使われるようになっています。そういう時代を反映してか、小学校でも電気は、電池から学習を始めます。「電池のつなぎ方」が電気と出会う最初の機会です。電池の直列つなぎと並列つなぎは小学校で習います。今の子どもたちは、電気を使う道具ではなく、もっとも身近な電気を作る道具である電池から電気を学び始めています。といっても、電池の原理である電気化学を学ぶのではなく、電池の使い方から始めるということです。そこで、科学館としては、多少は電池の原理を意識してもらいたいと思って、実験教室の最初のテーマに電池を取り上げてみました。

Motor

2008年3月13日 (木)

電池と電気のあれこれ(1)

 一番、最初に担当した実験教室は、木炭電池をテーマにしました。当館のミッションは、青少年に、「エネルギー・環境を始めとする科学技術」に対する興味と関心を持ってもらうことなので、テーマとして、まず、エネルギーの中心である電気が念頭に浮んだからです。

 さて、電池の前に、少し電気の話題です。

 昔、今から50年近い昔は、電気の学習はモーターの自作から始まったと記憶しています。私が通った小学校は、自然豊かな環境でした(婉曲な言い方です)が、そんな小学校でも、クラス全員が教材費を出してキットを購入し、モーターの励起子と回転子のコイルを手で巻いてモーターを作ったことがありました。コイルをていねいに、きれいに巻かないとうまく回りません。今、思えば、先生に指名されて、他の子のうまく動かないモーターのコイルを巻き直す作業を手伝ったのが、技術者を志すきっかけになったのかもしれません。

 現在は、性能の良い天然磁石が簡単に手に入るので、電磁石式のモーターは見向きもされませんが、軟鉄を磁化した非力な磁石しかない時代には、電磁石が幅を利かせていました。モーター以外にも、電磁石式のブザーや、ベル(電鈴と言っていました)も定番だった時代です。その頃は、電気を使う道具から電気の学習を始めたと言えるでしょう。その後、家庭電化が急速に進み、電気があるのがあたりまえの世の中になっていて、電気を使う道具も、電子回路を中心に半導体化が進んでインテリジェントになったためか、どんどんブラックボックスになっています。昔は、電気を使う道具を最初に意識させることで、電気の大切さ、ありがたさを教育していたのでしょう。でも、最近はモーターを自作する機会は、全くと言っていいほど、なくなりました。なにしろ、ずっと性能の良い模型用のモーターが安く市販されていますから。

 まあ、昔は昔です。でも、今、電気を使う道具から入るのが難しいとして、逆のアプローチ、電気を作ることから始めようとしても、普通の電気、つまり商用電源は交流なので、小中学校の理科のレベルでは理解が困難です。まず、磁石をコイルに出し入れして、電磁誘導で電気が起きることを確認しますが、その先のステップとして実用的な交流発電の仕組みを模型的に再現するのは簡単ではありません。交流発電機の代わりになる交流モーターは身近にもありますが、多くは100ボルトで使うものです。触っても安全に使える低電圧の交流モーターは、かなり高価です。普通は、その代わりに、直流の模型モーターを発電機にして、直流の電気を作って見せるのが、一般的です。実は、当館にも発電の原理を示す模型がありましたが、直流モーターで、直流モーターを発電機として回して、直流の発電をしていました。また、よく使われる教材に手回し発電機がありますが、中には直流モーターが入っていて、直流の電気を作っています。身近にある交流発電機といえば、自転車のダイナモくらいでしょう。

Dynamo

2008年3月12日 (水)

真空実験(6)

 さて、最後は真空中の落下実験です。比較のため、最初は空気中で落下させます。「どっちが先に落ちる?」と聞きます。2択ですから、答えは簡単です。そして、空気中での落下実験を見てもらいます。ビーズは、あっという間に落ちて、その後を、紙吹雪がひらひらと落ちてきます。

 次が、真空中の落下実験です。今度は簡単に、「どっちが先に落ちる?」とは聞きません。実は、筒型真空容器が大きいので、真空に引くのに時間がかかります。時間を持たせる必要があります。話術の出番です。「4通りの答えがあります。」となぞをかけます。「ビーズが先に落ちる」と「紙吹雪が先に落ちる」は、すぐに分かります。「3番目は?」と聞いて、答えを待ちます。禅問答のようですが、「同時に落ちる」という答えが、そのうちに出てきます。難しいのは、最後です。「4番目は?」と聞いても、なかなか出てきません。ヒントを出します。「真空って、宇宙と同じだよね?」 そうすると、「両方とも落ちない」という論理的な答えが返ってきます。4つの選択肢が出揃ったら、4択です。本気なのか、からかわれているのか、いろいろなパターンがあります。結構、「両方とも落ちない」は、人気があります。

 真空が引けた頃に、おもむろに真空中の落下実験を見てもらいます。ビーズも紙吹雪も同時に、見事にあっという間に落ちます。「空気の抵抗がなくなったから」と説明します。空気中では、ビーズと紙吹雪では空気の抵抗が大きく違うので、紙吹雪がゆっくり落ちた、というわけです。

 さて、落下実験というとガリレオ・ガリレイを思い出します。ガリレオは、ピサの斜塔で重い球と軽い球が同時に落下することを実験的に証明した、と昔の伝記や偉人伝には必ず書いてありました。でも、これは二重に正しくありません。一つは、どうもそのような史実はない、ガリレオ自身も述べていない、ということです。弟子が伝聞で残した、というのが真相のようです。もう一つは、空気中では、大きさが同じ重い球と軽い球は同時には落ちない、ということです。結構、これには引っかかる人が多いようです。中学の理科で、自由落下を学習します。そのときに、空気の抵抗を無視する、という大前提があるのを、皆、忘れてしまっています。空気の抵抗を考えると、実は、大きさが同じであれば、重い球の方が軽い球よりも先に落ちる、というのが正しい答えです。直径6mmの鉄の球と、発泡スチロールの球で落下実験をしてみました。重量比は100倍ほどありますが、2m落下で、15cmほど鉄の球の方が先に落ちます。

 でも、これはガリレオが間違っていた、ということではありません。ガリレオが考えていたのは、もしも空気がなかったら、あらゆる物体は同時に落ちる、ということだったとされています。つまり、真空中では、ビーズと紙吹雪が同時に落ちるのを、ガリレオは予見していたのです。

 水の蒸気圧曲線、氷の蒸気圧曲線、空気抵抗がある場合の落下の考え方については、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) にまとめて掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。
Bb

2008年3月11日 (火)

真空実験(5)

 3番目は、水をビーカーに入れて真空に引きます。これが、一番、面白い。もっとも、真空装置には悪い影響があるはずですが。

 これも、子どもたちに「どうなると思う?」と聞いても、まともに答えられません。大人でも難しいと思います。私もここで初めて見たのです。水が凍るのを。

 水を少量だけビーカーに入れて真空に引くと、断熱膨張の影響で、一瞬、ベル・ジャーが曇りますが、すぐに曇りは取れます。高度約25000mの真空度になると、室温でも水が沸騰し始めます。しばらく経つと、沸騰は収まりますが、今度は一瞬にして凍結します。子どもたちが相手の場合は、ここで取り出して氷に触ってもらいます。結構、驚いてくれます。

 最初はこのプロセスを見せるだけでしたが、中学生以上向けに、温度計を入れて水の温度変化を見てもらうことにしました。真空に引くと、室温の25℃付近に放置してあった水が、高度約25000mに相当する30hPaで飽和蒸気圧になって沸騰を始めます。沸騰を始めると、見る見る温度が下がり始め、そのうちに沸騰は収まりますが、温度はさらに下がって、0℃に近づきます。0℃になるか、若干、0℃を下回ると、一瞬にして凍結します。真空が気化熱を奪って水の温度を下げ、凍結に至ったわけです。水の蒸気圧曲線に沿って温度が低下した、という説明もできます。これは、高校の化学で習います。

 ところで、凍結しても取り出さないで、さらに真空に引き続けるとどうなるのでしょうか。水の蒸気圧曲線で、0℃は約6hPaです。前述のように、この真空装置では、0.05hPa程度は到達可能と考えると、氷の蒸気圧曲線は0.04hPaで-50℃ですから、かなり低温の氷ができることが予想されます。実際には、断熱過程でないことや、温度が低下するには時間がかかるために、そこまでの実績はありません。体験した最低温度は-20℃でした。冷凍庫の氷の温度以下にはなっています。

 さて、ブラック・ユーモアですが、人間が宇宙服を着ないで宇宙空間に出たらどうなるか、という話があります。空気がないのですぐ死ぬ、のは自明ですが、その後どうなるかが問題です。誰もやったことがないので、いろいろな憶測があります。体液が沸騰して失われ、ミイラになる、という説もあります。この答えとして、我々には一つの確信があります。それは、ミイラではなくて、アイスマンになるという説です。根拠は、上に述べたとおりです。急速に真空になると、沸騰よりは温度低下の方が著しいので凍ってしまう、と考えています。体温が維持されたとして、沸騰を続けるには、真空度約60hPa、高度20000m程度を維持する必要があります。

 実は、実際に実験をしてみました。人間ではなく、ミカンで。ミカンは確かに凍りました。でも、ミカンと人間では体温(?)が違います。そこで、ミカンを湯煎して、40℃にしてから真空に引いてみました。沸騰して爆発するのではないか、と心配もしましたが、そうはなりませんでした。やっぱり、そのまま静かに凍ったのです。

Mandarin

2008年3月10日 (月)

真空実験(4)

 次は、目覚まし時計です。昔ながらの、上部にベルが2個付いていて、ハンマーが交互にベルを叩くタイプです。つまり、時計が動いているのが見て分かるのが、ミソです。

Clock

 「目覚まし時計を真空に入れるとどうなる?」と聞くのですが、どう答えたら分からないようです。「壊れる!」なんて答えもあります。あまり詮索しないで、やって見せます。ベル・ジャーに入れた段階でも、目覚ましのベルの音は小さくなります。周囲の音もあるので、注意して聞かないと、よく分かりません。結構、騒がしい館内で、音の出る実験をするのは、あまり適していないのではないか、と思うことがあります。「よく聞いていてね!」といいながら真空に引くと、すぐに音は聞こえなくなります。

 音が伝わるには、媒体、つまり、音を伝える物質が必要です。それは、固体でも、液体でも、気体でもいいのですが、例えば、糸電話の糸、とか、金属の棒、とかと言って説明します。この場合は、ベル・ジャーの中の空気がなくなったので、音が伝わらなくなった、ということです。また、最後に音として聞くのは人の聴覚ですから、空気という気体が、耳の鼓膜を振動させることが不可欠です。人が音として聞き取るためには、どうしても空気がなければならない、ということにもなります。

 ここで、液体が音を伝えるという経験は、普通ではできないのではないか、と思います。一度、科学館の実験タイムで「音」をテーマにしたことがあります。そのときに、オルゴールを透明な密閉容器に入れ、沈むように中に重しを入れたうえで、水を張った桶に沈めてみせたことがあります。水で音が減衰するので、音はかなり小さくなりますが、聞こえることは聞こえます。まったにない経験ではないかと思います。

 さて、音が聞こえなくなる別の可能性として、「時計が壊れた」ということも考えられます。そうではないことを、見てもらうために、ハンマーが動いていることの分かる古風な目覚まし時計が役に立つわけです。最後に、空気を入れると音が聞こえてくることで、目覚まし時計が壊れていなかったことを再確認します。

2008年3月 9日 (日)

真空実験(3)

 最初は風船の実験です。少し空気を入れた風船をベル・ジャーに入れて、風船の外を真空にします。「どうなるか?」が設問なので、子どもたちに聞きます。「ふくらむ!」とか「破裂する!」が、一般的な答えです。実際、風船は膨らんで、割れそうになりますが、割れない程度にしか空気を入れていないので、割れません。子どもの年齢によっては、別バージョンがあります。その場合は、風船の代わりにマシュマロを入れます。マシュマロも大きくなって、子どもたちは目を輝かせます。何か得した気持ちになるようです。

 次に、「風船の周りに空気を入れたら、風船は元に戻るか?」と聞きます。ほぼ全員が、「戻る!」と答えますが、「割れる!」という子も中にはいます。空気を入れると、確かに見かけは元に戻ります。大きさだけは元に戻る、という意味です。実は、正確に言えば、すぐ元には戻らないのです。その意味はすぐに分かります。ベル・ジャーから取り出した風船を子どもたちに触ってもらいます。「どう?」と聞くと。「あったかい!」と答えます。取り出した直後の風船は、生暖かくなっています。つまり、温度は元には戻っていないのです。

 中学生以上には、風船の中にデジタル温度計を差し込んで実験します。風船の中の温度は、最初は室温です。真空に引くと、温度が室温から0.5℃程度下がります。頃合いを見て空気を入れると、今度は1℃程度温度が上がって、元の室温より高くなります。厳密に言えば問題もありますが、下がったのは「断熱膨張」のためで、上がったのは「断熱圧縮」のため、と説明します。「断熱膨張」は冷蔵庫やエアコンの冷やす仕組みです。「断熱圧縮」は、ディーゼル・エンジンに応用されていますが、「自転車のタイヤに空気入れで空気を入れると、空気入れが熱くなるね!」といって説明した方が分かりやすいでしょう。問題の一つが、風船自体の作用です。温度の変化で、低下と上昇の幅が同じでないのは、風船のゴムが伸びたときに熱を出すからです。ゴムの発熱が温度の低下を小さくします。短時間の実験なので、温度の上昇にも、案外、ゴムの発熱の影響が残っているのかもしれません。また、高地では低地より気温が低く、1000m登るごとに気温は約0.6℃ずつ下がると言われていますが、断熱膨張は、その理由の一つだそうです。

 さて、マシュマロの場合、周りに空気を入れると、マシュマロは元より小さく縮んでしまいます。何か、悲しそうな子どもたちです。子どもたちの目は、さっきは大きかったのに!、損した!、といっているようです。

Balloon

2008年3月 8日 (土)

真空実験(2)

 昔からあった装置なので、シナリオも以前に出来上がっていました。ワークシートの設問も変わっていません。最初は、そのまま、説明していましたが、少しずつ変えたり、小道具を追加したりしました。ワークシートの設問に沿ってそれらをご紹介します。

 その前に、まずは、「真空」とは、です。最初に必ず、子どもたちに聞きます。「真空ってなーんだ?」 大抵は、「何もない!」とか、「空気がない!」とか言う答えが返ってきます。また、聞きます。「それじゃ、空気がないところって、どこにある?」 大概は、「宇宙!」と言ってくれます。これで、「真空」という抽象に、「宇宙」という具体が結びつきます。正確には「宇宙空間」ですが、何か分かったような気がします。でも、これが実は難しい。さらに聞きます。「じゃ、地球からどれだけ離れたら宇宙だ?」 まず、答えられません。大人でも答えられないものを、子どもが答えられるわけがありません。

 なぜ、こういう問答をするかと言えば、この真空装置が「宇宙」を実現しているか、というチェックなのです。「宇宙」という響きには、ロマンがあり、子どもたちも憧れます。その気持ちを大事にしたい、という気遣いで、「真空」=「宇宙」という、言わば演出です。真空装置は、空気を薄くする装置なので、地上からある高さまでの空気の薄さを再現できます。真空度という言い方もありますが、要するに気圧を測っています。地表からの高さを実感してもらうために、気圧計に高度の目安を併記しました。例えば、富士山の高さは、気圧が地上の約2/3、エベレスト(チョモランマ)だと地上の約1/3になります。ジャンボジェット機の飛ぶ高さ10000mでは、約1/4気圧です。気圧計の1目盛は10hPaなので、最後の1目盛が高度約30000mに相当します。そこから先は、もう気圧計では読めません。

 普通、回転式真空ポンプの場合で到達真空度は、0.01hPaのオーダーです。0.01hPaは、高度80000m(=80km)に相当するので、そこまで行けば、まあ、「宇宙」と言ってもいいかと思います。実は、いろいろ調べてみても、地上からどれだけ離れたら「宇宙」かという明確な定義はないようです。成層圏の上限である約50kmという説もあれば、その上の中間圏の上限である約80kmという説もあります。広辞苑によれば、「宇宙空間」を、航空機が飛ぶ上限の約30km、と記述しています。また、宇宙条約でも空(領空)と宇宙の境界は未定義で、条約の主旨から、宇宙は人工衛星の飛ぶ高さ以上と解釈されているそうです。そうであれば、宇宙は地上100km以上でしょうか。

 悩んだあげく、個人的には、真空装置の性能もあって、約50km以上といって説明してきました。地上50kmというと、気圧は約0.8hPaです。それならば、この装置でも大丈夫だろうと。それがいい加減でない証拠に、後日、ベル・ジャーに入る電池式の高電圧装置を自作して、真空放電で真空度を確認しています。グロー放電が消えるところまではいくので、0.05hPaには到達していると思われます。それならば、地上約70kmに相当します。

 真空実験でも、真空度ではなくて高度で示すというアイディアはいかがですか。真空度(気圧)で言われても普通の人には分かりません。地上何kmというのであれば、何か分かった気になりませんか。その効用は、次々回にも現れます。
Barometer_2

2008年3月 7日 (金)

真空実験(1)

 次は、真空実験です。科学館の施設を使った実験なので、どこでもできるわけではありません。でも、何事によらず、工夫をすればいろいろな楽しみ方がある、という一つの例として紹介します。また、科学館で見ていただいた方々には、さらに理解を深めていただく機会です。

 さて、科学館は、とくに子ども向けの体験館としては草分け的存在です。展示物に触れて、動かして、自分で体感する、それがコンセプトの目玉でした。以前にご紹介したデスクトップ・トイも、その延長です。ところが、展示で二つだけ、スタッフが操作することになっていたものがあります。その一つは、静電気実験。もう一つが、この真空実験です。

 真空実験は、毎日見ることができる実験ショーで、一日2回ないし3回、普通はアテンダントが操作して見せていました。毎日といっても、シナリオは一つですから、演じるアテンダントによって多少の違いはあっても、見るものは毎回同じです。一度見てしまうと、ネタは分かってしまうので、二度見ても面白くはありません。それでも人気がありました。多分、大多数は初見だったのでしょう。

 もう一つ、真空実験を見たがる理由があります。体験型展示館というのは、言わば遊園地です。規模から言えば、遊園地は大げさで、児童公園かもしれません。子どもたちは、ただただ楽しく遊んでしまいます。まあ、その中から何か「科学」を感じ取ってもらえれば、それでもいいのかも知れません。でも、スタッフとしては無策と言われかねないので、ある工夫をしていました。それは、一種のワークシートで、展示物ごとに感じて取ってもらいたいポイントが設問になっていて、すべて体験しないと記入できません。しかも、全問クリアすると記念品がもらえるという仕掛けでした。その中に、真空実験を見ないと回答できない設問が4つありました。挑戦者たちが真空実験をリクエストするので、それ以外の人にも呼びかけて真空実験に参加してもらうという寸法です。

 真空実験のシナリオは、その4つの設問に対する回答を与えるものでした。15分くらいかけて、順番に見せていくというものです。設問は、「真空中に少し空気が入った風船を入れるとどうなるか」、「真空中で目覚し時計を鳴らしたらどうなるか」、「真空中に水の入った容器を入れたら水はどうなるか」、「真空中でビーズと紙吹雪を同時に落としたらどっちか先に落ちるか」の4つです。

 真空実験装置は、学校にもあるタイプで、真空容器としてのベル・ジャー(つりがね型の容器という意味です)と回転式真空ポンプと気圧計がついた装置本体のほかに、学校にはない、落下実験用の高さ2mの筒型真空容器が付属していました。

 私には、メーカーの研究所で、高真空が必要な実験に従事した経験があります。真空装置は慣れたものですが、水を入れて真空にするのにはびっくりしました。高真空にするには、装置の中に入った水分を徹底的に除かないといけません。真空中で水は凍ってしまって、なかなか抜けないので、装置全体をリボンヒーターで覆って加熱したりします。また、真空ポンプに水が入ると真空度が上がらないからといって、水分を除くためのトラップを付けたりもします。また、ベル・ジャーのフランジ部には真空グリースを塗って、リークを防ぐようにするのも、真空技術の常識です。でも、ここでは何もしませんでした。真空度が高くなくてよいのは楽なものです。毎回、ビーズと紙吹雪を補充するのと、週1回程度、落下したビーズと紙吹雪を、高さ2mもある筒型真空容器を外して回収するのが手間といえば手間でしたが。

Vacup

2008年2月21日 (木)

平板ブーメラン(5)

 「平板ブーメランの飛行について」というレポートは、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

 比較計算のシミュレーションでは、翼にひねりを入れたフラップ付きもありますが、結論は、「フラップなしの平板ブーメランと比較して、旋回範囲がより小さくなり、落下距離も小さくなっているが、旋回飛行の傾向が大きく変わることはないことから、フラップの有無、すなわち翼自体の迎え角の有無で旋回飛行のメカニズムが異なるものではない。」というものです。

 また、遊び心で、ブーメランを宇宙ステーションで飛ばしたらどうなるかというシミュレーションもしました。重力加速度を0にしただけですが、平板ブーメランは旋回せずに直進し、フラップ付きのブーメランは、らせん状に旋回する、というものでした。正しいかどうかは分かりません。シミュレーションの結果がそうなった、というだけです。また、迎え角の初期値が0という仮定なので、実際は、ブーメランにわずかにそり(上反角)があったり、翼が曲がっていたり、投げるときに角度が付いていたりすることが多いため、直進の実現は難しいかもしれません。実験式を求めるための回転落下実験は、幅2cm、長さ20.5cmの板目紙を十文字に貼り付けた単一のタイプでしか行っていませんので、大きさや形、あるいは重さを変えた場合は想定外です。また、ブーメランを立てて投げるという、ごく普通のやり方でないと計算できません。寝かせて投げるなど、初期の傾きを大きく変えると計算が発散してしまいます。

 現状のシミュレーションでは、傾きの増分が次の迎え角を決定することになっています。傾きとは重力の反対方向から測った角度です。傾きの増加、つまり水平に近づくことが、ありき、なのです。例えば、ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってきますが、このような軌道の計算は現状ではできません。きちんと揚力が起こす平板翼の回転運動を解決する必要があります。また、上下方向の結果が実態とあっていないという課題もあります。現在、シミュレーションの改良に向けて努力しています。

 ところで、平板ブーメランとは、要するに平らな板です。極端に言えば、回転さえすれば、どんな形でも戻ってくるわけです。試しにうちわをブーメランのように投げてみてください。手元まではちょっと無理ですが、旋回して向き直ります。多分、軽ければ座布団でも戻るでしょう。国技館の相撲で座布団が飛ぶのをよく見てください。座布団が旋回していませんか。

Zabuton

2008年2月20日 (水)

平板ブーメラン(4)

 結局、平板ブーメランの旋回飛行は、進行方向に対して生ずる迎え角が作る揚力が支配する、と仮定して、数値的なシミュレーションができれば、仮説の妥当性が立証できると考えました。

 仮説とは、「自転によって等方化された平板翼が、水平方向の初速による飛行から重力によって落下を始める際に、気流に対して迎え角が生じて揚力を発生させるが、その後は揚力によって迎え角が徐々に増大し、最終的には気流に正対する方向に向かうことから、平板ブーメランは旋回飛行する。」というものでした。さらに、平板ブーメランの水平落下の観察から、「自転の効果で等方化された平板翼では、翼の間隙を抜ける気流が減少することから生ずる翼面積の見かけの増大がある。」としました。

 数値シミュレーションに当たって、実験式をいくつか採用しました。落下中の傾きの増分、迎え角と揚力係数、揚力係数と抗力係数、自転による翼面積の増大係数、の4つです。揚力が平板翼を回転させるのですが、流体力学の方程式が解析的に解けないので、回転運動の方程式に代えて傾きの増分を実験式から与えています。並進運動の方程式には、推進力は初期値として与え、重力と揚力と抗力をステップごとに与えて3次元の差分で解いています。12月末には、平板ブーメランの旋回飛行がシミュレーションで再現できるようになりました。

 実は、それまでの実験では回転速度がコントロールできていないという問題があったので、2007年の2月に、新たに回転落下実験装置を開発しました。回転速度と落下の傾きを規定できる装置です。電磁石の電流を切るとブーメランは落下します。落下の様子を動画カメラで撮影し、パソコンのディスプレイに映しては、コマ送りで位置と角度を計測しました。実験式の確度はかなり向上したことになります。ほとんどが平板ブーメランの回転落下実験でしたが、比較のために平板翼の翼端を三角形に折り下げた、つまり翼にひねりを入れたフラップ付き試験体の回転落下実験も行っています。フラップ付きでも、結果に大きな違いはありません。いくつか追加のパラメータも検討して、レポートにまとめました。(2007年8月28日)

Topview  Head

2008年2月19日 (火)

平板ブーメラン(3)

 これは流体力学の問題です。それからは、科学館にある図書を調べ、書店や図書館にも行って、流体力学の本を手当たり次第、調べましたが、ぴったりの記述はありませんでした。どの本にも同じようなことが書かれていますが、平板に気流が当たったときの揚力の記述はあっても、その結果、平板にどのような回転が生ずるのか、の記述はありません。気流の中にある平板は平板翼として扱えるので、航空力学はどうかと思って調べましたが、何となく違うようです。あれこれ調べまわったあげく、ある科学館の図書室で手にした本に、ぴったりの記述をやっと見つけました。日野幹雄先生の「流体力学」(朝倉書店)という本です。それには、簡単に言えば、平板翼の場合、揚力の作用点は前縁より全板長の1/4にある、とされ、プラカードを持って風に向かって歩くと、意に反してプラカードは風に正対する、という例まで載っていました。つまり、揚力が作用する点は重心よりも前にあるので、平板翼は気流に正対する方向にモーメントが生じて回転するのです。これで、直感に理論的な根拠が得られました。(2006年11月19日)

 自由研究発表会が終わった11月上旬から、定量的な説明の根拠を作るために、ビデオ撮影による平板ブーメランの飛行状況の詳細観察と特徴の数値化や、落下実験による揚力係数などの測定を始めました。風洞などはないので、平板ブーメランに角度を付けて自由落下させ、角度の増大から揚力係数を求めようとした苦肉の策です。その過程で、「平板ブーメランは、前方へリリースしても、気流に対して正対する性質から旋回を促す力が生じて旋回を始めるが、抗力によって前進する力が弱まると、垂直方向への落下が支配的となるので水平になりながら直線的に手元に戻ってくる。」という仮説にたどり着きました。

Falltest

 科学館には、「ジャイロの運動」という展示物がありました。車輪を回して回転椅子に座り、車輪の軸を傾けると椅子が回転を始める、という体験型の展示物です。原理は回転角運動量の保存で説明されています。際差運動とか、ジャイロ効果ともいいます。例えば、コマや走っている自転車が倒れにくいのは、その応用です。理屈は分かっていたので、細かいことまで気にしてはいませんでした。しかし、ブーメランの旋回は、一般に際差運動で説明されています。きちんと理解しなくては、と思って勉強しましたが、なかなか理解できません。式があるのだから計算ができるはずだ、と思っていました。また、あちこちで図書を調べ、最後に大学時代の力学の教科書を引っ張り出して見直していたとき、間違いに気付きました。力学では、物体の運動は、物体の重心を中心とする回転運動と、物体の重心が移動する並進運動は別個の方程式で記述されるのです。ブーメランの旋回飛行は基本的に並進運動なので、回転運動だけで説明できるわけはないのです。いろいろ勉強したお蔭で、「ジャイロの運動」は完全に理解できました。

 さて、ブーメランに際差運動が作用しているという説明は間違いではありません。問題は、それがブーメランを旋回させる支配的な要因か、ということです。こういう実験をしてみました。平板ブーメランの中央に孔を開け、楊枝を挿して先端を切り落とし、コマのようにします。このブーメラン・コマを回転させて、角度を付けて2.5mの高さから落下させると、軸は徐々に起き上がって水平に近づいて着地します。右か左に傾くとしてもわずかです。こういう実験もしてみました。ブーメラン・コマの各翼端を三角形に同じ方向に折り下げてフラップとします。回転によって揚力が発生する方向に回転させて、同じように落下させます。どうなると思いますか。平板ブーメランとほとんど変わらないのです。起き上がるのがやや早くなり、水平を行き過ぎたときに、右か左にカーブしやすくなるという程度の違いです。

 これらの観察から、少なくとも紙製のブーメランでは回転角運動量が小さいので、際差運動よりは、落下に伴って受ける揚力がブーメランの自転軸を起こすトルクの影響の方が圧倒的に大きいと考えられます。確かに、ブーメランにとって、回転していること自体は必須です。しかし、その効果は、コマのように微小な外力に対して飛行姿勢を安定させる復元力として作用すると考えた方がよいように思います。その理由は後にもでてきます。

2008年2月18日 (月)

平板ブーメラン(2)

 「紙ブー」は、翼にひねりがないので、回転に対する抗力が極めて小さく、子どもの弱い力でも回転が容易です。紙製なので、当たったときにも危険はないし、何しろ安くできます。少し小さくすれば、家庭の狭い室内でも飛ばせるのでは、と考えました。まず、元々の発想のノベルティーと考えると、例えばハガキ大ならば、郵送もできます。4畳半程度の広さでも旋回して手元に戻るならば、家庭でも楽しめます。そこで、「紙ブー」を小型化して、長さ15cm、幅を長さの1/10の1.5cmにしたモデルで試してみました。大人には小さ過ぎるのか、回転させるのがやや難しいけれども、何とか旋回して手元には戻ります。小さい子にはこの方がいい、と思ってこれで行くことにしました。

 ちょうど原形ができた頃です。11月の最初の週に「自由研究発表会」というイベントがありました。夏休みの自由研究の成果を子どもたちからの応募で発表してもらう企画です。折角なので、特別参加ということで、「室内ブーメランの研究」という発表をさせてもらいました。紙製の平板ブーメランで、様々な形状のものを比較したレポートです。円盤形、円環形、正三角形、正四角形、X形、Y形、不等辺三角形など、手当たり次第にやってみた結果でした。形によっては手元まで戻るのは難しいのですが、全部旋回します。11月3日の研究発表会の席では、幅1.5cm、長さ15cmの長方形の板目紙を十文字に両面テープで張り合わせた、平板ブーメランの工作指導と技術指導を初めて行いました。確かに、幼児でも簡単に作れ、投げ方もすぐに覚えて、戻ってくるのを楽しんでいました。(2006年11月3日)

Lightboo

 しかし、科学館ではやはり、「なぜ?」の答えがないといけません。この段階では、原理についてはよく分かっていませんでした。名倉先生の記述にも原理の説明はありません。一般のブーメランには原理として紹介されているものがありますが、翼のひねりがあること、つまり回転で揚力が生ずることが大前提で、翼にひねりのない平板ブーメランには適用できません。何か新しいことを考える必要がありました。あれやこれや考えている中で、ふと気付いた、紙を水平に自由落下させると水平のまま落ちる、傾けて落下させると水平になる傾向がある、ことがヒントになるのではないか、と直感しました。つまり、一般のブーメランの原理では、「無視する」とされている落下の影響を考えたらどうか、ということでした。

 試しに、直径20cm程度の円盤を厚紙で作って、落下させてみてください。水平に保持して手を離すと、水平のまま落下します。多少傾けて落下させると、傾けた方向にヒラヒラしながら落下します。ヒラヒラというのは、例えば、徐々に水平になっては、行き過ぎて戻り、また、水平になっては、今度は逆に行き過ぎて戻る、それを繰り返すということです。大きく傾けると、行き過ぎて何回転かすることもあります。この観察から、平板は気流に向かう、つまり正対しようとする性質があると考えました。

2008年2月17日 (日)

平板ブーメラン(1)

 話が変わって、今度は工作教室にも使われたテーマです。科学館では、スタッフは実験グループと工作グループに分かれていて、実験グループへのアドバイスが私の仕事なので、工作グループにはほとんどタッチしていません。ということで、工作教室のテーマはここにはない、と言いたいところですが、実験教室の中で工作をしたり、工作教室の中で実験もしたり、で、実態は何でもありでした。違うところと言えば、応募・抽選方式か当日参加方式かの違いと、定員くらいでしょうか。

 発端はノベルティーの開発です。来館者への記念品として、シールやメモ帳、ボールペンやシャープペンシルなど、ありふれたものはありました。何か面白いものはないか、と探していた頃のことです。科学館では、2005年12月に開館10周年を迎え、10周年の記念行事としてサイエンス・ショーが開催されました。そのときに見たペーパー・ブーメランに興味を持ち、科学館のノベルティーとして使えるのではないか、と考えました。しかも、同じものではなく、何か違ったものを、と。

 開発を始めた最初は、工事のために仮設開館中とあって天井の高いスペースが使えたので、カタパルト式の小型のブーメランを検討していました。ブーメランには回転が不可欠ですが、案外、小さい子どもには回転させながら投げるという動作は難しいものです。子どもでも簡単に回転させられるのであれば、面白い工作物になるのではないかと思ったからです。棒の先に輪ゴムをくくり付けて、いろいろな形をしたブーメランを試作しては、弾き飛ばしてみました。でも、旋回はするのですが、結構、飛ばすのが難しく、手に当たったり、輪ゴムに引っかかって後ろに飛んだり、飛行姿勢も千差万別で、さっぱりコツがつかめません。どこかを変えようにも、原理も分からず、手探りで、なかなか良い答えは見つかりませんでした。今にして思うと、回転し過ぎて、回転軸を維持する傾向が強すぎたのではないでしょうか。直進する傾向が強く出ていました。

 そのうち、天井の高いスペースが使えなくなったこともあって、しばらくは、ブーメランを忘れていました。夏休みが過ぎた2006年9月23日のことでした。新しいネタを探すために、科学館の図書を片端から調べていたときに、興味ある記述を見つけました。「ものづくりハンドブック 2」という学校の先生方が実験や工作のネタを紹介している本に、名倉 弘先生が、「とべ!紙ブーメラン」というタイトルで、幅2cm、長さ22.5cmの長方形の紙を十文字に張り合わせた「紙ブー」という特殊なブーメランを紹介していました。どこが特殊かというと、ブーメランに必須と考えていた翼のひねりがない、ただの平板なのです。それでも、旋回して戻る、と書いてあります。本当かね、と思いながら、やってみると簡単に曲がるのです。興奮しながら、スタッフにも声をかけて、試してもらいました。上手下手はありますが、誰にでもできます。これだ、と合点しましたね。

Protoboo

2008年2月16日 (土)

電子サイコロ(追伸)

 以下は、マイコン教室の初回に向けたホームページでの予告文です。

 『PICマイコンは、家庭の電化製品や自動車、通信機器にも組み込まれ、暮らしに役立っています。また、PICマイコンは、LED電飾やLCD表示、デジタル計測器やロボットにも活用でき、実用につながる電子工作としても人気があります。
 しかし、PICマイコンを活用するには、ハンダ付けなどの電子工作の技術と、プログラムを組むためのアセンブラやCなどの言語を知る必要があります。
 ワークショップでは、PICマイコンの入門編として、簡単なLED電飾である「バーサライター」を製作し、プログラムを書き換えることで、表示を変えることを学習します。(中略)
 基本のプログラムを書き込んだPICをお渡ししますが、PICのプログラムの書き込みや、技術相談・技術指導には、後日でも(事前申し込み)対応します。(後略)』

 つまり、参加者の自発的な活動の誘発を期待した企画でした。

P16f84a

 結局、ワークショップは5回の開催で、延べ159名の参加があり、そのうち、複数回参加者は、5回と4回が1名、3回が10名、2回が18名で、延べ参加人数では約半数がリピーターという結果になりました。高校生から大人までの延べ参加人数は39名、中学生が100名、小学生が20名で、最年少は小学4年生でしたが、ハンダ付けは慣れたものでした。中学生以上に新たな参加の機会を提供した、という意味では手応えを感じましたが、リピーターでもハンダ付けが上手になったといえるまでにはなりませんでした。。

 高校生をターゲットにした企画でしたが、その狙いが外れて中学生が中心となったためか、期待したプログラムの相談もマイコンの書き換えも、希望者は皆無に終わりました。ここにも、与えられた課題には熱心に取り組むけれども、そこから飛び出そうとはしない最近の子どもたちの風潮が見て取れます。普通よりも、多分、優秀な子どもたちと思われるのに、それでも、ということです。科学館の活動も、まだまだ、ということなのかもしれませんが、家庭や学校など、青少年を取り巻く環境との連携の難しさと個々活動の限界を感じます。

2008年2月15日 (金)

電子サイコロ(4)

 電子サイコロは、電子工作だけなので興味が分散しません。モーター制御の場合は、メカもあるので、機械工作の要素が加わって、難しくなります。電子サイコロは、電子工作としても簡単な部類に入ります。この電子サイコロの難しいところは、実は、プログラミングです。サイコロですから、乱数が必要になります。

 このシリーズで使用したPIC(ピックと読みます)マイコンは、C言語やBasic言語を利用することもでき、その場合は乱数がライブラリーに用意されています。このシリーズでは、フリーで利用できるアセンブラ言語で通しました。アセンブラ言語は35の命令語の組み合わせで記述されますが、実際はその1/3程度を覚えれば済んでしまいます。PICにプログラムを書き込むライターは必要ですが、アフターサービスとしてPICの書き込みも引き受けることにして、参加者には費用負担なしでできるような仕組みにしました。アセンブラ言語はライブラリーが貧弱なのですが、一応、8ビットの乱数のプログラムは公開されています。8ビットの乱数とは、0から255までの256通りの乱数のことです。

 電子サイコロは、1から6の乱数が必要で、表示用のLEDも6個になります。6個のLEDのうち、1個から6個までがでたらめに点灯するという一種のサイコロです。最初は、1から6の値が分かればいい、として、端からその値だけ、つまり、1なら1個、2なら2個点灯するようにしたのですが、面白くないので、6以外は、点灯するLEDもランダムになるようにプログラムを改良しました。したがって、6は1通りですが、5と1は6通り、4と2は15通り、3は20通りの点灯パターンが存在します。それだけ、プログラムが長くなりました。

 8ビットの乱数から任意のn個の乱数を作るには、一般に、その乱数をnで割った余りを乱数とします。6の乱数は、0から255の範囲の乱数を6で割った余りが、0から5の6個となることを利用します。今回は、LEDの組み合わせ表示のために、サイコロの目の6とは別に、6、15、20の3つの乱数を発生させています。

 電子サイコロのテキスト(抜粋・一部修正)と、アセンブラ解説、ソース・プログラムは別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、ご覧ください。小学4年生でもできた電子工作です。難しくはないと思います。スイッチを押すごとに、1から6の目がランダムにでます。やってみませんか。ただし、パソコンにつないで使うPICプログラマーという書き込み装置がないとできません。

Die

2008年2月14日 (木)

電子サイコロ(3)

 もともとマイコン教室のつもりだったので、最初は敢えてハンダ付けの指導はしませんでした。回路図があって、一応、標準的な実体配線図も用意してあったので、それを参考にしながら好きにやりなさい、というスタンスでした。でも、これは裏目に出ました。結局、相当慣れた人以外は、ハンダ付けに手間取る実態が分かりました。また、個人個人の判断でハンダ付けされると、うまく動作しないときにスタッフが診断に手間どる、という問題があることも分かってきたのです。

Workshop

 LEDを使った出力制御のバーサライターの後、トランジスタによるモーター制御、赤外線受光素子を使った赤外線リモコン受信機、を経て、マイコン教室の指導法のスタンダードが完成したのが、今回のテーマの電子サイコロです。その間の改善点は4点あります。

 まず、ハンダ付けの工程で、裏面でクロスする配線を止め、必要な場合は表面に配線を配置したことです。この改善で、配線のチェックが一目瞭然になりました。配線のクロスがあると、絶縁チューブが必要になるほか、下の部分をチェックするには、一度、ハンダ付けを外す必要があります。それが不要になりました。

 次は、基板の表面に、部品の配置をマジックで書き込んだことです。実体配線図だけでは、部品配置の間違いが防げません。ぎりぎりの大きさの基板なので、1列ずれてもダメなことがあります。かなり進んでから気がついたときのショックは並大抵ではありません。ハンダを外してやり直すのですが、その際にホールをはがしてしまうことが多く、その場合は、部品の配置をやり繰りしないといけなくなるうえ、後で配線をチェックするのにも難儀します。自信のない子が何度も配置の確認をしに来て、講師がそれにかかり切りになることを防ぐ効果もあります。このアイディアを、「表面プリント基板」なんて呼んでいました。

 三番目は、ハンダ付けを実体プロジェクターで実演しながら、講師が淡々と模範指導を進めることにしたことです。大部分の参加者はハンダ付けが下手だ、という現実もありました。また、参加者の経験、知識、技量はばらばらなので、全員ができるまで待っていては、一番遅い人に合わせることになってしまいます。平均的な進度にあわせて進め、遅れた人にはスタッフが個別に対応するという方式です。そうすることで、全体の完成度は高くなりました。遅い人は、自己責任で他の人より多く時間をかけてもらう、ということです。最後まで面倒を見るのは言うまでもありません。

 四番目は、細かいことですが、抵抗やコンデンサをハンダ付けした後に残ったリード線を最大限に活用して、ハンダ付けの回数を減らしたことです。それは、ハンダ付けを1点で重ねるほど、ハンダの溶け込み不足による接触不良の機会が増えるからです。注意して聞いていないと間違えることが多いので、1工程ずつ確認していくことで、徹底を図りました。

 時間も、早く終わった人は帰ってよいことにして、4時間に延長しました。

2008年2月13日 (水)

電子サイコロ(2)

 時間もかかるだろう、と通常の実験教室が1.5時間なので、倍の3時間とし、1日1クラスを午後に開催することにして、土日で2クラスの開催としました。さらに、指導を徹底するために1クラスの定員を15名としたので、参加できる人数は実験教室の1/3に減ってしまいました。まあ、手を上げる人は限られているから、それでもいいだろう、と考えたのです。

 マイコンは、最近では通信機器や自動車ばかりでなく、家庭の電化製品にも使われています。光や温度などのセンサーをつなげば、まともな自動化システムができあがります。プログラムを自分で開発して、書き込むことも比較的簡単にでき、ロボット・コンテストなどでも多く利用されています。難を言えば、英語風のプログラミングが必要なので、普通の小学生にはちょっと辛いところがあります。でも、文字の意味は不明でも、使い方を覚えてしまえば、小学生でもできる程度の技術です。

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 最初にテーマにしたのは、マイコンでLEDを入出力制御するだけの「バーサライター」でした。棒の上に一列に並べたLEDがプログラムで点滅して、棒を振ると文字や模様となって見える、目の残像効果を利用した一種の電飾です。ホームページにも載せて募集したところ、応募の条件が、「ハンダ付けの経験がある」、「マイコンに関心がある」というものだったので、小学2年生から大人まで、約5倍に当たる140名余の応募がありました。高校生もいましたが、少数で、結局、中学生以上を無作為抽出して当選者を決めました。

 ハンダ付けは、以前は中学校の技術家庭で実習があったので、大人なら経験者も多いはずですが、最近は、やっていないようです。ハンダ付けはヤケドが心配、ということが敬遠される理由の一つです。科学館では、電子ホタルなどの電子工作に小学校低学年も参加しています。大勢のスタッフでハンダ付けを見守り、ヤケドなどをしないように気を配っています。小学2年生でも当館での経験者がいるわけです。しかし、マイコンの電子工作は、ユニバーサル基板という1/10インチ刻みの細かい碁盤の目を対象にします。プリント基板なら楽ですが、自分で自由に考える場合はユニバーサル基板の方が適しています。あえて、プリント基板にしないことにしました。ユニバーサル基板の難点は、小さくて細かいことですが、逆にハンダ付けによる部品の過熱は少なくなります。ハンダ付けをするホールが小さいからです。電子ホタルは、ラグ板というパーツにハンダ付けしますが、ハンダがてんこ盛りでパーツが過熱で壊れるトラブルはざらでした。

 一応、ハンダ付けがしやすいように、ハンダごての先は細いものに替え、ハンダも細い1mmにしました。ハンダ付けのやり直しができるように、専用の工具も揃えました。応援のスタッフもハンダ付けの得意な人たちです。用意万端でしたが、参加者の経験・技量はまったく分かりません。一抹の不安を抱えながら、当日となりました。

2008年2月12日 (火)

電子サイコロ(1)

 テーマの対象が、小学校高学年以上、お母さんと続きました。次は、高校生以上が対象です。

 この科学館は、「青少年に対して、科学技術への興味を喚起する」のがミッションでした。他の科学館でも、内容を理解できる小学校高学年から中学生以上を対象とした展示や体験学習がメニューとして一般的ですが、聞くところによれば、最近は来館者の多くが低年齢層にシフトしているそうです。小学校高学年ともなれば、中学受験やスポーツを中心とした部活動で、科学館に来るための時間が取れなくなっています。子どもは誰でも理科が好きと言われていますが、実態はその機会が奪われています。修学旅行や校外学習での中学生の来館は、結構ありますが、何か考えないと高校生以上はなかなか来てくれません。そこで、新メニューを考えたのが、マイコン教室でした。

 最近はロボットが流行です。ロボットはどうか、と考えても、材料費が数千円もかかるロボットには手が出せません。ロボットなら高校生でも、大学生でも呼び込めますが、とても無理と思っていました。ところが、新規の展示物として、ウランの核分裂をイメージしたダーツの電飾を検討していたとき、最近の電飾はマイコンを使っているらしい、マイコンもかなり普及していて、値ごろ感もあり、使用例もかなりある、ということが分かりました。結局、ダーツは参考書を見ながら作りましたが、その後、ロボットは無理でも、その要素技術なら何とかなるのではないか、と思うようになりました。つまり、ロボット本体は無理でも、動かすための個々の技術なら可能だ、ということでした。また、マイコンは簡単にマスターできる技術ではないので、「友の会」のように継続的な活動として高いレベルで関心のある子どもたちを育てられないか、という魂胆もありました。

 新メニューのポイントは、中学生から高校生以上を対象、マイコンを利用したメカトロニクス初級の入門編、ということにしました。とりあえず、1年間で、入出力制御、モーター制御、遠隔操作、をやってみる、やってみて、その後については、さらに発展させるか、同じ内容を繰り返すか、判断しよう、と。実験教室の枠内でしたが、特殊性を強調するために、ワークショップと名付けました。ワークショップの本来の意味は、参加者全員が相互に啓発する、ということなので、その狙いもありました。講師自身もマイコンの初心者であり、まだまだ経験不足なので、経験者は大歓迎というつもりでした。

Workshopl

2008年2月11日 (月)

クッキング・サイエンス(追実験2)

 次は、真空実験です。減圧によって食塩水の浸透が加速される、というのが当日の主旨でした。

 今回も、約61℃までお湯が沸騰することを確認しました。気圧は1/4気圧程度に相当します。例によって、インスタント・コーヒーを着色に使いましたが、今回はコーヒーフィルターでろ過しました。溶けたように見えても、かなり残渣があるようです。インスタント・コーヒーを溶かしてろ過した微温湯を2分し、一方には食塩を加えて10%の食塩水を作りました。もう一方は、食塩を入れません。

 直径が約7cmの大根を厚さ約1cmの輪切りにし、さらに4等分のイチョウ切りにしました。各1個の大根片を別々の容器に入れて、(1)10%食塩水+減圧なし、(2)10%食塩水+減圧、(3)0%食塩水+減圧なし、(4)0%食塩水+減圧、の4条件で比較しました。0%食塩水とは、食塩を入れなかったインスタント・コーヒー着色水のことです。さて、ここが当日と違うところですが、塩分の有無で浸透の加速に違いがあるかどうか、を気にしました。当日の実験では、(3)と(4)は、時間の都合で実施していません。

 大根片は水面に浮くので、上面は水に浸かりません。途中で、上下を入れ替えることもしませんでした。保持時間はいずれも3分間です。3分経過後に取り出し、ペーパータオルで水分を拭き取って、それぞれ、さらに半分に切って、外側の旧断面と、内側の新断面を並べて写真撮影し、着色の深さを比較しました。つまり、外側の断面は水に浸かっていた面で、内側の断面は水に浸かっていなかった面ということになります。写真は、左から、(1)、(2)、(3)、(4)で、いずれも左側が外側断面、右側が内側断面です。なお、内側断面では、左側が上面、右側が下面です。大根片の内側断面を見ると着色剤の浸透の具合が比較できます。

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 観察結果は、減圧なしの条件では、内側断面にはほとんど浸透が見られず、10%食塩水の場合に厚さの1/10程度のわずかな浸透がみられます。一方、減圧の条件では、10%食塩水も0%食塩水も、ほぼ全断面の浸透が見られます。違いとしては、10%食塩水ではほぼ全面が均一であるのに対して、0%食塩水ではまだらに白い部分が残っていることです。

 この結果からは、食塩の添加は浸透を加速させる効果はあるが、浸透の主要因は減圧ということになります。ただし、大根にはいわゆるスがあるので、スを通って水が浸透している可能性もあります。必ずしも細胞膜を通って細胞内に浸透しているかどうかは、これだけでははっきりしません。いずれにしても、減圧にするだけで、食塩の有無にかかわらず水が大根の内部に浸透することは、間違いないようです。