文化・芸術

2008年7月26日 (土)

また!平板ブーメラン(15)

 エクセルのマクロで今回のシミュレーション計算が簡単にできます。添付ファイルはエクセルのワークシート*と、ビジュアル・ベーシックのソース・ファイル**に分けてあります。ソース・ファイルはエディターで閲覧・編集ができます。

 使うときは、まず、[ファイル]→[名前の変更]で、ソース・ファイルの拡張子をtxtからbasに変更します。次に、エクセルを開いて、[ツール]→[マクロ]→[Visual Basic Editor]としてビジュアル・ベーシック・エディターを開き、[ファイル]→[ファイルのインポート]でソース・ファイルを選択します。その後は、ワークシートの初期条件を入力して、[ツール]→[マクロ]→[マクロ]→[実行]で計算します。

 初速を大きくしたり、迎え角の初期値を大きくしたり、逆にマイナスにすると、過大な初期条件となって発散します。また、時間ステップも大きくすると発散します。

 入力が必要なのは、迎え角の増大係数CA、揚力係数CL(3次式まで可能)、抗力係数CD(2次式まで可能)、時間ステップT、ブーメランの重量W、実翼面積S、重力加速度G、揚力倍率Fl、抗力倍率Fd、翼面積倍率でFs、初期値としては、迎え角αと面の法線角φのほか、表中の黒枠部分に、位置(x,y,z)と初速度(vx,vy,vz)を入力します。揚力倍率、抗力倍率、翼面積倍率は、通常は1のままで構いませんが、係数を変えて結果がおかしいときなどに、倍率を変えて様子を見ます。

Sheet1 Sheet2

 ワークシートには、平板ブーメラン用のflatと、回転揚力のあるブーメラン用のflapの2種類があります。flapの場合は、回転揚力Lfを入力する必要があります。

 計算結果は、時間ステップごとに表として出力されるほか、x-y断面とx-z断面、y-z断面、xn-yn断面とxn-zn断面で、軌跡が作図されます。表の出力は、時間t、位置成分(x,y,z)、速度成分(vx,vy,vz)、速度v、法線ベクトル成分(xn,yn,zn)、法線角φ、迎え角α、揚力係数CL、揚力L、抗力係数CD、抗力D、揚力成分(Lx,Ly,Lz)、抗力成分(Dx,Dy,Dz)、上限速度v0、速度比ce、座標変換角(θ、θ'、θ'')、位置増分(⊿x,⊿y,⊿z)、進行ベクトル原成分(x3,y3,z3)、法線ベクトル原成分(xn3,yn3,zn3)となっています。

 ソース・ファイルを書き換えれば、もっといろいろなことができるようになります。あるいは、自分の考えで、改造することも可能です。これをヒントにして、やりたいようにやってみてください。完成したプログラムではないので、いろいろと問題がでてきたり、バグがあったりするかもしれませんが、ご容赦ください。

添付ファイル:
*simulation3s6.xls「simulation3s6.xls」をダウンロード
**boo_sim3s6.txt「boo_sim3s6.txt」をダウンロード

2008年7月25日 (金)

また!平板ブーメラン(14)

 2005年12月から約2年半をかけて、一応、満足できる平板ブーメランの飛行シミュレーションが可能になりました。
 この、こだわりのきっかけは、ブーメランの飛行原理の通説に疑問を持ったからです。あちこちの科学館でも、「ブーメランはジャイロ効果で旋回する」と解説しています。ホームページでも、いろいろと解説されていましたが、難解との指摘があることも分かりました。一方、平板ブーメランは飛行原理そのものが不明だったので、新たに原理を構築する必要があります。平板ブーメランは、シンプルなので理論化が容易になるとも考えました。

 平板ブーメランの飛行原理を検討しているうちに、「平板翼では、気流の中では、面が気流に正対する性質がある」ことに気が付き、実験的に定式化して、飛行のシミュレーションができるのではないかと考えたのですが、シミュレーションの開発過程で、ジャイロ効果を表す式が、シミュレーションにはまったく役に立たないことが分かりました。飛行そのものは重心移動なので、ジャイロ効果が示す回転運動だけで旋回飛行の運動方程式は解けません。むしろ、ジャイロ効果を考慮しなくても、「面が気流に正対する」ことを定式化することで、シミュレーションが可能になりました。
Torque 
 このメカニズムが、平板ブーメランだけでなく、一般のブーメランに適用できることは自明です。ブーメランが旋回飛行をするのは、(自転によって等方化された)自転面に作用する揚力が作るトルクが支配的で、ジャイロ効果の影響は小さい、というのが今回の結論です。ブーメランが旋回するには、自転が不可欠なのはいうまでもありませんが、自転の効用は、主としてコマと同様な自転軸の維持というジャイロ効果にあります。つまり、ジャイロ効果は、ブーメランの飛行安定のための復元力として作用しているといえます。

2008年7月24日 (木)

また!平板ブーメラン(13)

 さて、このシリーズの(1)回で述べた、面白い現象とは、次のようなものです。ブーメランの自転落下実験を側面からではなく、正面から観測すると、ブーメランが水平方向にわずかに移動します。自転落下実験では、回転方向はすべて、正面から見て反時計回りに回転させています。
Run14yz 
 自転によって進行方向が曲がる現象では、「マグヌス効果」が知られています。例として挙げられる、野球のボールやゴルフボールの軌道の曲がりなどは、「マグヌス効果」では、揚力の方向は球の回転に一致する方向であるとして説明されています。つまり、上から見てボールが時計回りに回転すればシュートに、反時計回りに回転すれば(昔風の)カーブになります。ドライバーで打ったゴルフボールがホップするのは、縦に回転し、右側面から見た場合に反時計回りに回転するからです。

 しかし、観測されたブーメランの曲がり方は、「マグヌス効果」とは違って自転とは逆方向になっています。この解釈については、プリミティブには、落下の際に進行方向となる側での翼の「漕ぎ方」の方が、後方の逆向きの「漕ぎ方」よりも効果が大きくなるため、といった「後流効果」でも説明できそうですが、次のような解釈の方が、もっともらしいと考えています。
 翼は回転しているので、進行方向の速度に加えて、右の翼では自転による回転が速度として加わり、左の翼では、逆に、速度が減じます。迎え角は同じで、翼の断面形状も同じなので、翼の抗力係数が同じと仮定すれば、抗力は速度の二乗に比例することから、反時計回りの回転の場合は、正面から向かって左側の翼に働く抗力の方が右側よりも大きくなります。そのため、左右の翼に抗力の差が生じ、結果として向かって左方向に向かう力が働く、という解釈です。
 今回のシミュレーション改良版では採用していませんが、この効果を取り入れると、飛行初期の落下が抑えられるので、より現実に近づく可能性もあります。より現実に近いシミュレーションには、やはり、本格的な風洞実験が必要です。今回のような、簡易な自転落下実験には限界があります。

2008年7月23日 (水)

また!平板ブーメラン(12)

 さて、このように、手頃なツールができたので、いろいろと遊ぶことができます。そこで、前回と同様に、宇宙ステーションでブーメランを飛ばしたらどうなるか、を計算してみました。そのために、普通のブーメランと平板ブーメランとの違いは、面の法線方向に自転による揚力があるいかないかである、と考えてみます。普通の紙製ブーメランを模擬した「フラップ付き」の自転落下実験もやってみましたが、迎え角の増大も、揚力係数も、抗力係数も、平板よりは大きめに出てきます。傾向はほとんど同じなので、実験式を入れて計算してみると、なかなかうまく行きません。発散することが多いようです。そこで、実験式は平板ブーメランと同じにして、普通のブーメランの場合は、面の法線方向に一定の揚力を加えてみました。

 「フラップ付き」の計算例として、(11)回の旋回飛行のケースに準じて、高さ2mから、初速度をx軸の正方向に8m/s、迎え角の初期値を0度、面の法線の傾きを70度とし、面の法線方向に0.08Nの揚力を加えてみました。この0.08Nという値は自転落下実験のデータから見ても、無理な仮定ではありません。
Case5xyz 
 これは、(11)回で示したフラップなしの結果と比較して、一周して戻る傾向が強く出るようになりました。

 次に、面の法線方向に0.08Nの揚力を加えたうえに、面の法線の傾きを80度とし、宇宙ステーション内を模擬して重力加速度を0にしてみました。
Case6xyz 
 きれいに一周する結果となりました。前回のらせん状に上昇するシミュレーションとは異なる結果となりましたが、揚力の値を小さくすると、らせん状に上昇する結果にもなります。投げ方で変るということでしょうか。

 いろいろと条件を変えて計算することができますが、条件によっては発散したりします。また、時間ステップを変えると結果が微妙に変りますが、原因は不明です。
前回のシミュレーションでは、平板ブーメランでは重力による落下で迎え角を生ずるとしていましたが、今回は、迎え角の初期値を入力できるようにしたので、逆に迎え角の初期値を0とすると、なかなか旋回しない計算結果もあります。シミュレーションによれば、平板ブーメランでも迎え角を付して投げると、旋回性が良くなるようです。実際には、気付かずに迎え角を付して投げているのかもしれません。

2008年7月22日 (火)

また!平板ブーメラン(11)

 さて、平板ブーメランの飛行シミュレーション改良版の検証です。まず、典型的な例として、高さ2mから、水平に、初速度のx成分を8m/s、y成分を-1m/s、z成分を0.5m/sとして投げ、面の法線の傾きが70度、迎え角の初期値が4度の場合の、x-z断面とx-y断面の計算結果を示します。
Case1xyz 
 旋回直径が実態より小さめですが、飛行軌跡がほぼ再現できています。同じ条件での、y-z断面の計算結果では、
Case1yz 
中間部でやや降下が早いようですが、まずまずの結果と思います。

 次に、今回の目標の一つである、「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」の例としては、高さ3mから、面の傾きを65度(初期迎え角としては、25度に相当)として、x軸の正方向に初速度0でリリースした場合の計算結果を示します。
Case2xyz 
 これも、落下地点までの距離が短いようですが、傾向は再現されています。

もう一つの目標である、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」については、かなり微妙な結果になりました。現実もそうだ、ということの反映ではないかと思いますが、具体的には、ブーメランを旋回させるときよりも初速度を大きくする必要があり、わずかな条件の違いで、山を登ってから向こうに下りていくようなケースと、反転して戻るケースと、宙返りをするケースが出てきました。

 反転して戻る例では、初速度14m/sで、面の傾きをほぼ0度にして、迎え角の初期値を5.5度とした場合の計算結果を示します。
Case3xyz 
 宙返りをする例としては、初速度12m/sで、やはり面の傾きをほぼ0度にして、迎え角の初期値を4.5度とした場合の計算結果を示します。
Case4xyz 
 このほか、初速度が小さい場合は、山を登りきってから向こうに下るケースになります。

 同じ実験式のセットを適用して、目標とした3パターンのシミュレーションが良好に検証できました。まだ、満点ではありませんが、一応、合格点と考えています。

 ここで重要なことは、これらのシミュレーションでは、ブーメランの自転に、揚力などの外力がトルクとして加わった場合の、際差運動、いわゆるジャイロ効果をアプリオリには考慮していないということです。つまり、際差運動を考慮しなくても、ブーメランの旋回がシミュレーションできることから、ブーメランの旋回運動にとってジャイロ効果は主要な因子ではない、ということになります。

2008年7月21日 (月)

また!平板ブーメラン(10)

 エクセルのマクロ(VBA)でプログラムを組むときに注意しなければいけないのは、角度の作り方です。例えば、xyz座標系からx'y'z'座標系に変換するための角度θは、tanθ=⊿y/⊿xの関係があるので、プログラム上は⊿y/⊿xのアークタンジェント(逆正接)として算出します。ところが、VBAのアークタンジェントで算出した角度は、-π/2からπ/2の間で定義されているので、今回のように、-πからπまで変化させるには、⊿yと⊿xの組み合わせを考えて、物理的に意味のある変換をしないと、正弦や余弦の値(とくに符号)がおかしくなります。突然に、プラスからマイナスに飛ぶような変化や、その逆の変化が現れた場合は、その可能性を疑う必要があります。

Xyz

 今回は、角度θに関しては、次のような変換をしています。
    If x = 0 Then th = 0 Else th = Atn(y / x)
    If x < 0 And y > 0 Then th = th + Pi
    If x < 0 And y < 0 Then th = th - Pi
ここで、thはθ、xは⊿x、yは⊿y、に相当します。なお、Piは、Pi = 4 * Atn(1) として定義した定数です。

 同様に、他の角度についても、それぞれの考え方で変換を行っています。x'y'z'座標系からx''y''z''座標系に変換するための角度θ'については、
    If x1 = 0 Then th1 = Pi / 2 Else th1 = Atn((-z1) / x1)
    If x1 < 0 And -z1 > 0 Then th1 = th1 + Pi
    If x1 < 0 And -z1 < 0 Then th1 = th1 - Pi
としました。ここで、th1はθ'、x1は⊿x'、z1は⊿z'、に相当します。

 また、x''y''z''座標系からx'''y'''z'''座標系に変換するための角度θ''についても、
    If zn2 = 0 Then th2 = 0 Else th2 = -Atn(yn2 / zn2)
    If zn2 < 0 And yn2 < 0 Then th2 = th2 + Pi
    If zn2 < 0 And yn2 > 0 Then th2 = th2 - Pi
となっています。ここで、th2はθ''、yn2は⊿yn''、zn2は⊿zn''、に相当します。角度θ''だけは、通常、負なので、他とは扱いが異なります。

 また、本来は、抗力は、推進力と揚力の結果として現れる力のはずですが、シミュレーションでは抗力係数と速度から自動的に算出されるので、過大になる可能性があります。そのため、ステップごとの速度には、前のステップの運動エネルギーと、落下によって加わった位置エネルギーの和を超えないというエネルギー上の制限を設けています。

2008年7月20日 (日)

また!平板ブーメラン(9)

 ブーメランに作用する力は、揚力L、抗力D、重力-Wgだけで、与えられた初速によって推進します。運動方程式から導かれる差分は、
Alphan 
図の定義に基づいてxyz座標系に変換した後、
Dynameq 
などのようになります。これで、迎え角αに対する揚力L、抗力Dから、位置の差分⊿x、⊿y、⊿zと、速度の差分が求められます。

 実験式は、このシリーズの(6)、(7)で述べたように、自転落下実験のデータから、エクセルの最小二乗近似式で求めています。今回、採用した実験式は以下のとおりです。簡単な直線近似から始めてたどりついた、現状でベストと思われるセットです。
Parametr 
 揚力Lと抗力Dの和Fと時間ステップΔtから、迎え角の増分Δαを算出し、次のステップの迎え角αを決めます。迎え角αが決まれば、実験式から揚力係数と抗力係数が決まるので、既に求められている速度vを前出の式に代入して、次のステップの揚力Lと抗力Dが求められます。その後は、これらの操作を繰り返します。

2008年7月19日 (土)

また!平板ブーメラン(8)

 次は、計算シミュレーションの方法です。前回と同様に、エクセルのワークシートとマクロ(VBA)を組み合わせました。運動方程式の解法については、全面的に改めて、素直に座標変換を行いました。図のように、1軸の回りの座標変換を3回繰り返します。
Xyz 
 まず、xyz座標系をブーメランの進行方向に合わせ、z軸の回りに回転させて、x'y'z'座標系に変換します。次は、このx'y'z'座標系をブーメランの進行方向にx'軸が一致するようにy'軸の回りに回転させて、x''y''z''座標系に変換します。最後は、x''y''z''座標系を、ブーメランの面の法線方向を含むようにy''-z''面に一致させて、x'''y'''z'''座標系に変換します。その結果、x'''y'''z'''座標系では、ブーメランを側面から見た形となるので、その面とx'''軸がなす角度が迎え角となり、z'''軸の正方向に揚力が、x'''軸の負方向に抗力が作用することになります。また、面の法線ベクトルを単位ベクトルとすれば、法線ベクトルはx'''-z'''面内で、z'''軸から迎え角だけ傾き、xn'''は-sinαと、zn'''はcosαと表現できます。
Alphan 
 ブーメランの進行ベクトル、面の単位法線ベクトルの座標を、xyz座標系から、x'y'z'座標系、x''y''z''座標系、x'''y'''z'''座標系と変換し、αの増分によって揚力L'''と抗力D'''を決定し、点N'''を決定した後に、逆の手順でxyz座標系に戻して表現します。
 一例として、xyz座標系をz軸の回りに角度θだけ回転した場合の座標変換は、
  x'=xcosθ+ysinθ
  y'=-xsinθ+ycosθ
  z'=z
で変換でき、逆には、
  x=x'cosθ-y'sinθ
  y=x'sinθ+y'cosθ
  z=z'
で変換できます。このルールを、固定軸に一致させて、回転軸の対応を都度決めれば、同じ形式で全部の変換が可能です。ただし、座標系は右手系で考えます。また、式の定義では角度θの正負は問いませんが、座標から角度を決める際には、角度の正負を物理的に考慮する必要があります。

 なお、このような座標変換では、基本的にブーメランの進行方向をx'''軸に一致させています。したがって、ブーメランの進行方向が上下、つまりz軸方向を向く場合は、そのままでは無理があります。今回は⊿z=0となる場合は、便宜的に、ケースを仮定して角度を読み替える解決をしています。そのケースとは、今回の目標としている「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」と、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」の場合です。

2008年7月18日 (金)

また!平板ブーメラン(7)

 揚力係数は、検討の結果、単純な2次式で近似することにしました。
Clalpha 
 上の近似式はデータの最小二乗式ですが、αが0とπ/2で揚力係数が0となることを仮定して、最大値を合わせた2次式に換算してあります。この式ではαがπ/4で最大値となりますが、揚力係数の一般的な傾向からは、実際にはαが0.5以下で最大になると考えられます。その意味では、この近似式を高角で使用するには、注意が必要です。なお、αが負の場合は負号で表現し、αがπ/2以上の場合はπ-αをαと読み替えて近似式を適用します。

 また、抗力係数も2次式で近似することにしました。
Cdalpha   
 αが負の場合は、-αをαと読み替え、αがπ/2以上の場合は、π-αをαと読み替えて使用します。

 なお、これらは、回転速度が毎秒約2回転のデータによるものです。実際には揚力係数も抗力係数も回転速度依存があるので、ずれが生じてきます。元来、ばらつきの大きいデータなので、その中からある程度の取捨選択をした結果ですが、結果的には妥当な線と思われます。

2008年7月17日 (木)

また!平板ブーメラン(6)

 自転落下実験は、約1mの高さのほかに、約2mの高さでも実施しました。高さ1mでは最速3m/s、高さ2mでは最速7m/s程度になります。また、側面以外に、正面から撮影したケースもあります。側面の場合の傾斜角度は、0度から70度までの10度刻みと、90度で実施しています。回転速度は、毎秒約2回転と4回転を目標にしましたが、電池駆動のため、回転数の測定中に回転数が低下するなどの原因で、多少、ずれがありました。
 この2月と8,9月にかけて、トータルで16シリーズ264回の実験を行っていますが、途中の装置改良やデータ処理の見直しもあって、最終的に採用したデータは、4シリーズ36回分のデータに止まりました。しかし、1回の落下で動画のコマ数は10ないし20なので、それでも結構な数になります。その結論は以下のとおりです。

 まず、シミュレーションの際に、揚力係数や抗力係数を算出するには、迎え角を決める必要があります。迎え角の増大は、揚力が翼の揚力中心に作用し、一般に揚力中心は重心よりも翼断面の前方にあるために、トルクを生じて回転する結果、生ずる現象です。厳密には回転の運動方程式を解く必要がありますが、回転の運動方程式は回転角の2階微分が外力によるモーメントに等しいとするので、自転落下実験において、迎え角の増分⊿αを微小時間⊿tの二乗で除した値が、ブーメランに作用する揚力と抗力の和に比例すると考えました。揚力と抗力は直交するので、それらの和は揚力と抗力がつくる矩形の対角線に相当します。その結果が次の図です。
Alphat2 
図のFが揚力Lと抗力Dの和です。

2008年7月16日 (水)

また!平板ブーメラン(5)

 自転落下実験装置と実験の方法は以下のようなものです。

 まず、自転落下実験装置ですが、モーターの回転を遊星ギアで減速した軸に、ミシンのボビンにホルマル線を巻いたコイルと、それを囲む鉄心を固定し、コイルにはブラシで通電できるようにしました。モーターの回転制御はPICとモータードライバーICで行います。回転数は、フォトインタラプターで検出して、PICを介して8個のLEDで2進数として表示します。さらに、システム全体を板に載せて傾斜できるようにし、所定の角度で板を固定するための尺を付けています。
Head_2 
 平板ブーメランの試験体は、単翼長90mm×翼幅20mmの十字形で、厚さ0.66mmの板目紙から、切り抜いて製作しました。中央にはトタン板を直径20mmに切り抜いて両面テープで貼り付けてあります。落下の際に、翼端が変形するのを防ぐために、翼端は半径10mmの円形に切り落としました。その結果、翼面積Sは0.00811平方m、重量Wは0.00517kgとなりました。ブーメランは、視認性を高めるために、全面をマジックインクで黒く塗ってあります。
Equipmnt 
 自転落下装置を長机3段の上に載せて落下実験を行いました。高さは約1mです。クリーム色の模造紙に、10cm間隔の格子を描いたものを背景として落下実験を行います。正面前方から、動画撮影が可能なデジタルカメラで撮影し、撮影後は動画ソフトを用いて、PCディスプレイ上で、ものさしと分度器を使って測定します。ブーメランの側面からの測定が大部分なので、ブーメランが見えにくくなるために、精度は望めません。連続動画では見えるのに、動画1コマになるとほとんど消えてしまうこともしばしばです。その場合は、心眼(?)で測定することになります。

Experimt

2008年7月15日 (火)

また!平板ブーメラン(4)

 参考までに、前回掲載した模式図を再掲載しておきます。

Droptest
 自転落下実験の結果から、1/30秒の微小区間ごとに、x、zを測定して、x方向とz方向の速度を算出すれば、落下の運動方程式において、微小区間では揚力Lと抗力Dが一定と仮定することにより、揚力Lと抗力Dが求められます。

Equation

 ここで、添え字の0は前の区間の意です。揚力Lと抗力Dが求められれば、揚力係数と抗力係数は、前出の、
Clcd 
の関係式から求めることができます。この場合の速度vは、x方向とz方向の速度を合成した速度で、全移動距離dを時間で割ったものです。

 なお、前回のシミュレーションでは、落下距離の約1mを微小区間と考えて平均した揚力と抗力を採用しましたが、実際は、その間の速度や迎え角の変化量が過大になるので、今回は、1コマに当たる1/30秒ごとを微小区間として扱いました。

2008年7月14日 (月)

また!平板ブーメラン(3)

 ここで、ブーメランの揚力係数や抗力係数などを実験的に求める考え方を説明しておきます。基本的な考え方は、航空力学の考え方を準用します。

 航空力学では、翼に働く揚力や抗力を評価して、必要な推力を求めます。
Dynamics 
 複雑な流体力学の式を解かなくても、迎え角に対する揚力係数と抗力係数が分かれば、次式で必要な翼面積や飛行速度を算出することができます。
Clcd   
 したがって、揚力係数と抗力係数は、翼の断面形状が決まれば、迎え角の関数として求められますが、一般的には風洞実験や数値解析が必要です。

 そこで、設備がなくてもできる方法を、と思案して、考案したのが自転落下実験です。迎え角を設定し、所定の回転速度で、ブーメランを(電磁石方式で)リリースして、側面から動画撮影を行って、動画画面上で、面の角度の変化、落下距離、水平移動距離をコマ送りで測定する方法です。速度が一定でない、高速や高回転速度の試験が難しい、1/30秒以下の時間精度がない、など、欠点だらけの方法ですが、簡単にできるのが利点です。

 具体的には、重力を推力として、迎え角αに対して発生する揚力Lと抗力Dを、
Droptest 
落下距離-⊿zと水平移動距離⊿xから求め、上述の関係式から逆算して、区間平均値としての揚力係数と抗力係数を決定するものです。

2008年7月13日 (日)

また!平板ブーメラン(2)

 今回のシミュレーション法の改良に際して、「平板ブーメラン」の飛行を撮影した動画を分析して、回転直径や回転数、飛行速度などを再確認しました。その結果、前回使用した数値とは若干の違いがあります。狭い室内での撮影であり、しかもカメラは1台なので、正確な数値化は困難ですが、一応、コマ送りで動画を計測して、数値化を試みました。その例を、以下に示します。
 試験体は4枚翼の十文字形紙製ブーメランで、典型的な平板ブーメランです。作り方は、0.66mm厚の板目紙から、長さ20.5cm、幅2cmの長方形を2枚、カッターで切り抜き、この2枚をそのまま組み合わせて、中央部を十文字形に両面テープで貼り付けました。投げ方は、平板ブーメランの表裏と一翼を任意に選び、右利きの場合、右手の親指と人差し指で挟んで、そのまま右手を斜め上に挙げ、後ろから見た場合に、頭上から右、時計回りに約20度(面の法線の傾きとしては、約70度)傾けた状態で立てて、手首のスナップを効かせて前方にほぼ水平に放出した結果です。なお、前回と同様に、ブーメランを投げる方向をx軸の正方向、曲がっていく左手をy軸の正方向、上方をz軸の正方向として説明します。

 まず、x-z断面です。点と点の間隔は、1コマで1/30秒に相当します。
Case4xz 
 この図から、x軸方向の最遠点が3~4m程度、初速が8~9m/s程度、終速が2m/s程度であることが分かります。

 次は、別のケースのy-z断面です。
Case3yz 
 この図からは、旋回直径が4m程度、中間速が、4~5m/sであることが分かります。

 x-y断面は、天井が低いので撮影できませんが、上の2図を合成すると、x-y断面の大体の様子が分かります。
Case34xy 
 このようにして見ると、少なくとも「平板ブーメラン」の場合は回転による積極的な揚力がないので、「手元に戻る」といっても、離れたところに落下するのが通例のようです。シミュレーションの検証も、これを参考にしました。

 また、同様にして、投げた直後で、回転速度は毎秒3.5~4回転程度、ブーメランの面の法線がz軸の正方向からなす角度は75~80度であり、65度の場合には、最遠点付近で上昇することも分かりました。

 残念ながら、今回のシミュレーションの改良で目標とした、「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」や、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」は撮影していません。平板ブーメランを作るのは簡単なので、関心のある方は、試してみてください。

2008年7月12日 (土)

また!平板ブーメラン(1)

 2月に掲載した「平板ブーメラン(1)~(5)」の続編ですが、スマートになって再登場です。
Boo 
 前回のシミュレーションでは、「平板ブーメラン」の旋回飛行を計算するのが主目的だったので、2次元的な運動方程式による簡易な解法にしてありました。運動方程式は、一応、3次元で解いていましたが、上下方向は旋回に伴う落下だけを想定していました。落下とともにブーメランの面が徐々に水平に近づくと考えて、傾き角が移動距離によって減少するという関係式を仮定し、迎え角は傾き角から計算で算出する方法でした。

 それでも、「平板ブーメラン」が旋回して戻る軌道の計算は可能で、一般の(軽い)ブーメランを想定して、翼にひねりを入れた「フラップ付きブーメラン」での実験式を取り入れて、比較計算を行っています。その結果は、「フラップ付きブーメラン」では、「フラップなしの平板ブーメランと比較して、旋回範囲がより小さくなり、落下距離も小さくなっているが、旋回飛行の傾向が大きく変わることはないことから、フラップの有無、すなわち翼自体の迎え角の有無で旋回飛行のメカニズムが異なるものではない。」というものでした。また、ブーメランを宇宙ステーションで飛ばしたらどうなるかというシミュレーションも、重力加速度を0にして行ってみました。計算では、「平板ブーメラン」の場合は旋回せずに直進し、「フラップ付きブーメラン」の場合は、らせん状に旋回する、という結果になりました。簡易な解法でも、無重力であってもブーメランは旋回する、という予測ができたわけです。

 一方、課題として、例えば、ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて降下し、同時に回転軸が立ち上がっていくような軌道とか、ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道とかは、計算できないという限界を指摘しました。このような課題を解決するためには、揚力が起こす平板翼のトルクを扱う必要があるほか、きちんと3次元的に運動方程式を解く必要があります。

 今回のシミュレーションの改良では、この、「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」と、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」の計算ができることを目標としました。その過程では、従来は重視していなかった、高迎え角、例えば90度に近い迎え角での揚力係数や抗力係数についても実験式を拡張しました。このシミュレーション法では、航空力学の手法を取り入れています。一般の航空力学では、迎え角が20度を超えると翼の揚力が急減して、失速するので、高角度の迎え角は扱われない領域ですが、ブーメランでは、最終的に迎え角が90度に近づくので、どうしても考えておかなければならない領域です。もっとも、迎え角90度では揚力としては現れず、すべて抗力として扱うことになります。

 また、揚力係数や抗力係数を求めるために、ブーメランの自転落下実験を考案しましたが、今回の追加実験の中では、面白い現象にも気付きました。ブーメランを側面からではなく、正面から観測すると、ブーメランが水平方向にわずかに移動することが分かりました。自転によって進行方向が曲がる現象は「マグヌス効果」として知られており、野球のボールやゴルフボールの軌道の曲がりなどはそれで説明できますが、このブーメランの曲がり方は、「マグヌス効果」とは違って自転とは逆方向になっています。この解釈についても、後で述べたいと思います。

2008年6月 4日 (水)

実験教室のテキスト集が

 原子力・エネルギー教育支援情報提供サイト『あとみん』にアップされました。未来科学技術情報館で実施した、実験教室50選+工作教室16選+ちょこっとサイエンス16選を収録した「実験教室テキスト集(PDFファイル58MB)」が、閲覧・ダウンロードできます。このブログで扱ったタイトル以外にも、小学生から高校生まで、自由研究や自由工作に適したタイトルがたくさんあります。

 URLは、こちら (http://www.atomin.go.jp/atomin/data/pdf/book_src/exp_text.pdf) です。関心のある方は、ご覧ください。

2008年6月 2日 (月)

これまでのまとめ

 科学館で開発した実験教室のタイトルや展示物の解説を中心にブログを展開してきましたが、ほぼ、一段落しました。これまでに掲載したタイトルは次のようなものです。

 科学館の閉館で
1.逆(!)浮沈子
2.電動ヘリコプター
3.クッキング・サイエンス
4.電子サイコロ
5.平板ブーメラン
6.真空実験
7.電池と電気のあれこれ
(1)木炭(備長炭と活性炭)電池
(2)スライムとスライム電池
(3)水素自動車
8.風力モーターカー&
9.色の科学
10.雨の科学
11.花火の科学
12.空中コマ
13.ハノイの塔
14.ベンハムのコマ&
15.赤外線リモコン受信機
16.本(!)浮沈子
17.原子力と科学館

 ブログでは、開発の経緯を失敗談を含めて紹介してきましたが、テキストやレジメは別のホームページ (http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に載せました。ブログの一段落で、これまでのブログをタイトルごとにまとめてホームページに転載しましたので、自由研究や自由工作などにご活用ください。

 なお、このブログは、充電のため、しばらく休載します。

原子力と科学館(8)

 実習生に話す内容はもっと詳細ですが、要点はこの程度です。ところで、なぜ、放射線の話を最初にするかといえば、それが原子力利用にとって避けられない課題だからです。放射線の理解が進まなければ、原子力利用への真の理解はありえないと考えています。なぜ、理解が必要かといえば、賢明な選択のために必要だからです。

 科学館では、中学生や高校生に、「科学」とは、「なぜだろう(知りたい)と想う心が生み出す活動」であり、「技術」とは、「あるといいな(欲しい)と想う心が生み出す活動」であると説明してきました。目指すところは、いずれも「人類の幸せな未来」ではないかと思います。「未来」とは、これまでの「科学」や「技術」に満足しない心が生み出す時空であり、子どもたち自身のことでもあります。「未来の科学技術はどうなりますか?」という子どもたちの質問に、スタッフは「未来の科学技術は、なる、のではなくて、創る、ものです。皆さんが創りたいと念じて努力することで、実現します。」と回答してきました。

 既に紹介した「人類は、DNAだけでなく、知識を伝えることで進化した」というフレーズは、人類という生物の特徴が、知識の獲得と蓄積にある、ということを伝えています。「叡智」と言った方が適切かもしれません。考えることの重要性は当然ですが、考えるという活動にも一定の知識ベースが必要です。「宇宙と原子力」で述べたことも、常に前人の獲得した知識を踏み台にして新たな知識を獲得することの繰り返しの結果です。知識はますます高度になり、進化の速度はますます増大しています。今の子どもたちは、我々50年前の子どもたちよりも、ずっと難しいことを、できるだけ短時間に吸収することが求められています。同じレベルをぐるぐる回っていればいいのであれば話は別ですが、進化には、らせん状に上昇していくことが求められます。同じレベルに止まるのではなく、上昇を続けるためには、既存の知識の習得や考え方の獲得は以前よりも早く済ませる必要があります。また、考え方も知識の一種と考えれば、知識の獲得がスタートラインだ、と言えます。

 知識は学校だけで学ぶものではありません。科学館は、学校の枠組みを超えた知識の獲得に役立ってきたと確信しています。科学館で育った子どもたちと、その子どもたちが創る未来が楽しみです。

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原子力と科学館(7)

 このようにして、放射線とはどんなものかが分かってきますが、次は、放射線が物質に飛び込むとどうなるか、ということです。放射線は高エネルギーの粒子です。極めて小さい粒子で、大きいものでも原子核サイズです。1個の原子を野球場の大きさとすれば、原子核はボールの大きさです。つまり、原子核の大きさである放射線から見ると、物質はスカスカに見えます。だから、電気を帯びていない放射線であるX線は、身体を通り抜けることができます。しかし、このスカスカの空間には、電子がある密度で分布しています。電気を帯びている放射線は、この電子と衝突してエネルギーを失います。さらに、原子の真ん中にある原子核と衝突する放射線もあります。結局、放射線は物質の中で電子や原子核と衝突して徐々にエネルギーを失う結果となります。

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 さて、エネルギーを失ったら放射線はどうなるのでしょうか。α線はヘリウムの原子核なので、エネルギーを失うと、普通のヘリウム原子になります。β線は電子なので、物質の原子に取り込まれます。γ線はエネルギーそのものなので、エネルギーを失うと、消えてなくなってしまいます。放射線がエネルギーを失うと、放射線でなくなる、というのが答えです。放射線を遮る(遮へい)方法がありますが、ある厚さの物質で遮ることで、放射線のエネルギーや数を減らすことができます。大まかに言えば、この厚さは物質の原子の数と考えればよいので、その物質の密度が高ければ薄くてすみます。そのために、遮へいとして、密度が高い鉛(11.34g/cm3)や鉄(7.86g/cm3)が使われますが、逆に言えば、密度が低い土(2~3g/cm3)や水(1g/cm3)でも、十分な厚さがあればよいことになります。大雑把に言えば、厚さ10cmの鉛と、深さ1m強の水は、同程度の遮へい性能があるわけです。

 放射線が人体に飛び込んだ場合は、分子レベルでの損傷が発生します。放射線の強度が大きければ、損傷部位が広がって火傷のようになり、全身に広がれば、死に至ることがあります。一方、自然界にも常に放射線があるので、人体は放射線による損傷を受け続けています。それでも、健康が維持できるのはなぜでしょうか。それは、放射線の強度が小さいので、身体の修復機能が勝っているからです。人体には修復機能があります。例えば、火傷をしても、軽ければ跡を残さずに治りますが、重くなると治っても跡が残り、全身に火傷を負うと死ぬこともあります。放射線の場合も同様で、傷害の発生や程度は、放射線があるか、ないかではなく、放射線の強度が問題です。

 ところで、放射性物質はなぜ放射線をだすのでしょうか。それは、その原子がエネルギー的に不安定だからです。安定になるために、余分なエネルギーを放射線として放出するというわけです。つまり、放射性物質は放射線を出して安定な物質に変っていきます。この変る早さは物質によって異なりますが、放射性物質は減っていくものなのです。いずれ、時間が経てばなくなってしまうのが放射性物質の本質です。

2008年6月 1日 (日)

原子力と科学館(6)

 「はかるくん」と「ベータちゃん」の違いは、検出器、測定対象、測定目的、表示単位など、いろいろありますが、面白いことに、地上からトンネルに入ったときの応答が正反対になります。「はかるくん」ではトンネル内で線量率が増加するのに対して、「ベータちゃん」では逆に、計数率が減少します。これは、検出器が違うので放射線に対するエネルギー依存性が異なるためです。「はかるくん」は、ウランやトリウムなどの大地に含まれる比較的エネルギーの低い放射線に感度が高く、「ベータちゃん」の方は、エネルギーが高い宇宙線に感度が高いのが理由です。トンネルに入ると、周りの岩石から出る放射線は増えますが、岩石が宇宙線を遮るので、宇宙線は減少することになります。

 宇宙線というのは、地球外から飛び込んでくる高エネルギーの粒子(素粒子と原子核)です。その発生源は太陽と銀河系で、90%が陽子(水素の原子核)、残りがヘリウム以下の原子核となっていて、これらの一次宇宙線のエネルギーは、1MeV以下から10の20乗eV(10の11乗GeV)を超えるものまでが観測されています。宇宙線には、あらゆる元素の原子核が含まれていて、遠い宇宙で散った超新星爆発の残骸が、宇宙中を飛び回っています。また、宇宙には、これらの粒子を加速する機構もあるとされています。宇宙を飛び回ると言っても、宇宙線は隕石と違って物体レベルではなく、原子レベルの原子核として、1個1個が観測されるものです。地上で観測されるのは、一次宇宙線が大気の原子と衝突してできた二次宇宙線で、多い順に、ミューオン、電子、陽子などとなっています。この二次宇宙線の強度は、1cm2当たり毎分約1個なので、はがき大で毎秒約2.5個となります。

 この宇宙線を見えるようにしたのが霧箱で、正確には宇宙線が飛んだ跡(飛跡)を見ることができます。霧箱の原理は、アルコールの蒸気を冷却して飽和状態に置き、宇宙線が通過すると、飛跡に沿って飛行機雲のようなスジ状の霧が発生するものです。直線的で細い飛跡はミューオンで、曲がりくねった飛跡は電子、ときどき、短い直線で太く現れるのは陽子です。霧箱では電気を帯びた粒子(荷電粒子)しか観測されないので、γ線は観測できませんが、霧箱の中でγ線が作り出した電子ならば観測できます。また、霧箱の容器や表面のガラスで遮へいされるので、外部からのα線やβ線は観測されません。したがって、霧箱で見えるのは、ほとんどが宇宙線と考えられます。霧箱は立体的ですが、観測できる部分の厚さはあまりありません。平面的な広がりはあるが、厚みはないのです。それでも、宇宙線は地球の重力で落下してくるわけではないので、あらゆる方向から飛んできます。地球の裏側からは、地球が遮ってしまうので飛んできませんが、水平方向には飛んできます。霧箱では、主に水平方向に飛んで来る宇宙線を観測していることになります。

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2008年5月31日 (土)

原子力と科学館(5)

 「ベータちゃん」は、測定器本体と、自然界にあってβ線を出す放射線源が入ったキットになっていました。放射線源としては、「御影石(花こう岩)」、「湯の花」、「塩化カリウム」、「リン酸カリウム」、「乾燥昆布」などが入っていました。これらには、天然のカリウムに約1万分の1の割合で含まれるカリウム40という放射性同位元素が含まれています。科学館で使用したのは、「御影石」と「塩化カリウム」と「乾燥昆布」で、「御影石」は大地の代表、「乾燥昆布」は食品の代表、「塩化カリウム」は肥料ですが、カリウムそのものとして選んだものです。つまり、自然放射線として、大地にも、食品にも、生物にも普通に含まれていることを象徴したものです。また、子どもでも知っている放射線利用にX線(レントゲン)装置がありますが、放射線は豊かな暮らしを支えるために身近にも利用されている例として、蛍光灯の放電管である「グローランプ」と、耐火物として酸化トリウムを利用したアウトドア用の「ランタン芯」を独自に加えていました。しかし、最近では「グローランプ」や「ランタン芯」にも放射性物質を使用しない製品が増えています。また、従来タイプの「ベータちゃん」には放射性物質を利用した例として「夜行時計」がキットに入っていましたが、近年は放射性物質を夜光塗料に使用しなくなったため、最近では「夜行時計」が除かれています。

 実は、「ベータちゃん」の展示には工夫をしています。β線は金属やプラスチックのケースを透過しないので、検出器が露出しています。検出器の薄い膜を破られることが多いので、薄いOHPシートを両面テープで検出部に貼ってみました。しかし、フィルムを剥がそうとした形跡が頻繁にあったことから、「ベータちゃん」本体を固定して、検出部には手が入らないように改良しました。放射線源も、紛失や破損などのいたずら対策として、ケースに入れてターンテーブルにはめ込み、ターンテーブルを回転させることで測定ができるようにしてあります。

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 実習生には、少し難しい設問を用意しました。β線は金属板で遮ることができるので、「ベータちゃん」の検出部の下に鉄板を置くと、下方からのβ線がさえぎられて計数が少なくなりますが、ゼロにはなりません。では、何を測っているのか、という設問です。答えは、宇宙線です。厳密には、上方の建築物などからのβ線やγ線の影響もあるはずですが、「ベータちゃん」はGM計数管方式なので、宇宙線に対する感度が高く、主に宇宙線を計測していると考えられます。「ベータちゃん」の上部を遮へいしても、計数値は変わらないのがその証拠です。一般に、バックグラウンドといって、放射線源のないときの計数値を測定しておいて、その分を差し引くのが正しい使い方ですが、「ベータちゃん」の場合のバックグラウンドは、主に宇宙線と考えられます。

2008年5月30日 (金)

原子力と科学館(4)

 述べてきた「宇宙と原子力」について解説したパネル展示のレジメを、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

これまで、「人間は宇宙の一部であり、人体を作っている原子は宇宙でできた」、「宇宙の始まりに存在したのは放射線だった」、「宇宙を支える原理は原子力と同じである」と述べてきました。原子力に対する知的関心に応えるためには、まず、その本質を伝えることが重要と考えます。しかし、科学館でこのような話ができる機会は、年に2回あるかどうかです。そこで、せめて科学館に来た実習生には理解して欲しいと考えて、研修の機会を利用して要点を伝えていました。以下は、その内容の概略です。

 一般的に、放射線知識を対象とする場合には、放射線が自然界にもあること、放射線は微量でも測れること、放射線は大量に受けない限り健康に影響がないこと、などを説明するために、簡易測定器や霧箱などを用意しています。霧箱というのは、宇宙線などの自然にある放射線の飛跡を見ることができる装置で、飛跡が飛行機雲のように見えますが、当館にも設置されていました。一見すると、細い線状の雲があちこちに次から次へと沸いては消えて、何を見ているのか分かりません。「きれい」と言う人もいますが、「気持ち悪い」と言う人もいて、感想は様々です。

 放射線測定器には、「はかるくん」と「ベータちゃん」の2種類がありました。両方とも、一般的な簡易測定器ですが、測定対象が違うので、測定目的も違います。「はかるくん」はその場の放射線の強さを測る測定器で、「ベータちゃん」はそこに放射性物質があるかどうか、どれくらいあるか、を測る装置です。放射性物質から出る放射線が対象ですが、一般にも知られている、α線、β線、γ線のうち、「はかるくん」はγ線、「ベータちゃん」は主にβ線を測定します。α線の測定用には「アルファちゃん」という簡易測定器がありますが、壊されることが多いので展示はされていませんでした。放射線の本質はエネルギーですが、α線はヘリウムの原子核、β線は電子、γ線は光子で、いずれも高エネルギーの粒子です。光子は実体のない電磁波の一種ですが、γ線やX線など、放射線として扱う場合は、エネルギーが高く、粒子としての性質が顕著になるエネルギー領域にあります。

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 既に述べたように、放射線は、α線、β線、γ線に限定されるものではなく、もっと広範な概念ですが、一般には、放射線管理の観点から、放射性物質から出るこれらの放射線を主に扱っています。誰でも知っているX線はγ線と同じ光子ですが、γ線とは違う発生機構で、通常は発生装置から出る人工放射線をいいます。科学館にも「すけるとん」という低エネルギーのX線発生装置がありました。ただし、人工放射線と言うのは地上の話で、宇宙には自然放射線としてX線を出す星もあります。X線はエネルギーが低いため、上述の簡易測定器では測れません。

2008年5月27日 (火)

原子力と科学館(3)

 原子力に関する知的関心は、年齢や既存知識によって様々と思われますが、情報提供の側では、大別して原子力発電と放射線の2テーマに対応が分かれています。実施主体によって分担している形ですが、いずれも、利用技術に関連した、必要性と安全性が中心です。それが現実に即していることは分かりますが、押し付けがましいと思われる欠点もあります。もっとニュートラルでナチュラルなアプローチがあるのではないか、と考えました。

 ヒントは、科学館のビデオ・ライブラリーにありました。NHKで放映した「地球大進化」の最終回に、「人類は、DNAだけでなく、知識を伝えることで進化した」という趣旨のナレーションがあります。獲得した知識を次代に伝え、それを蓄積することで、DNAに拠らない進化を遂げることができた、ということです。ひょっとしたら、今日の原子力の知識はそうして獲得し、蓄積された好例ではないか、と考えました。「人類の叡智が今日を築いた」と理解すれば、原子力だけでなく、科学技術全般に対する見方も変わるように思われます。

 以前から、宇宙の起源と原子力の関係に興味がありました。少し前に出版された「僕らは星のかけら」(*)という本があります。この本は、人体を構成する原子がどのようにして作られたかの謎を解き明かしていく趣向で書かれています。ギリシャの昔から人類が追い求めてきた知識の蓄積を追って、どの元素がどこで、どのようにして作られたのかの謎解きをしていきます。ぜひ、手にとって読んでいただきたいと思いますが、要するに、全ての元素は宇宙が起源だという結論です。大雑把に言えば、宇宙の始まりのビッグ・バンで、水素とヘリウムができ、それが集まってできた恒星の中で、人体を構成する炭素や酸素などができ、恒星が燃え尽きたときの超新星爆発で、多くの重元素ができた、としています。これらの元素の生成は、すべて核反応の結果です。太陽を初めとする、輝く星(恒星)では、核融合反応で元素を生成するとともに、エネルギーを発生させています。つまり、宇宙を支えているのは原子力エネルギーです。また、本当の宇宙の始まりには、物質はまだ誕生せず、エネルギーだけがあって、その温度は100億度を超える、とされているので、この温度から換算すると、宇宙の誕生時には、実体がなく、1MeV(1,000,000eV)を超えるエネルギーそのものである光子だけがあった、ということになります。別の言い方をすれば、「宇宙の始まりは放射線だけの宇宙だった」のです。

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こうして見ると、宇宙(あるいは自然)を支配する原理は原子力と同じです。人間は地球から生まれますが、地球は宇宙から生まれました。人間も宇宙的存在であり、宇宙の一部であることに間違いはありません。人間も生物も、自然はすべて、原子力の原理で生まれた、と考えれば、親しみを感じませんか。さらに、原子力利用は人間が作り出したのではなく、自然が備えていた真理を人類の叡智で見付け出したものです。それは、ギリシャの昔から、人間が飽くなき探究心で知識を蓄積し続けた結果であって、人類の叡智、それこそが科学の本質ではないかと思います。技術は科学を人類のために生かす手段です。一方、人類のDNAは、人類が誕生して以来、ほとんど進化していません。人類には、大昔からの変わらない、いわば遅れた部分があるのも事実です。進化し続ける知識に、進化していないDNAが追いついていない現状も理解する必要があります。

(*)マーカス・チャウン、僕らは星のかけら 原子をつくった魔法の炉を探して、無名舎

2008年5月26日 (月)

原子力と科学館(2)

 原子力と言えば原子力発電をイメージする人が多いと思いますが、原子力利用には、エネルギー利用と放射線利用の2分野があります。しかし、エネルギー利用は、核分裂でできた原子核(核分裂片)の持つ高エネルギーが元なので放射線利用でもあり、放射線利用も、放射線の本質が高エネルギーの粒子であることを考えれば、実はエネルギー利用とも考えられるというアンビバレントな関係があって、なかなか難しいものです。一般には、エネルギー利用と言えば原子力発電のことで、それ以外を放射線利用と考えています。

 さて、科学館にも開館当時から放射線測定器などの展示物はあったようですが、原子力発電に関する展示物は、平成15年に設置された「原子炉運転シミュレーション・ゲーム機」が初めてです。「子どもでも楽しめて、大人は原子力発電の勉強ができる」というコンセプトだったので、制御棒を操作して核分裂による中性子を増減させるゲームと、原子力発電所の起動段階をイメージしたシミュレーション・ゲームでスタートしました。翌年には、シミュレーション・ゲームに原子炉の再循環流量調節を追加して、より現実味を持たせるとともに、原子力発電所の主要機器をベースにした原子力発電所の組み絵パズルを追加しています。この中には、主要機器のナレーション付き解説も含まれていました。

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 この「原子炉運転シミュレーション・ゲーム機」は、運転制御盤のようにボタンが並んだ操作盤で操作するのが特徴でしたが、本体はパソコンだったので、各ゲームのアクセス状況が分かるようになっていました。設置から3年半の間の総アクセス数は83862件でしたが、各ゲームに繰り返してチャレンジしてもカウントされない設定なので重複はなく、延べ約8万4千人が利用したことになります。単純に考えれば、平成15年度以降の入場者約43万5千人の約20%が利用した勘定です。一方、この間に主要機器の解説にアクセスした件数は、トップ画面の中央制御室が2978件、次いで原子力発電所745件となっていて、後はメニューによる選択で、原子炉279件、再循環ポンプ146件、格納容器120件、タービン154件、給水ポンプ110件、発電機98件、復水器83件、となっています。この数値が、首都圏における原子力への知的関心の度合いを物語っています。

 原子力発電知識の入門編は電力会社のPR館など随所にありますが、当館が閉館した今となっては、その上のレベルに相当するものが見付かりません。近年、原子力発電が地球温暖化対策もあって世界的に見直されている中で、一歩進んだ原子力知識を求めるニーズに応える仕組みの整備が望まれます。

2008年5月25日 (日)

原子力と科学館(1)

 この科学館は、平成7年12月2日に開館し、平成19年12月26日に閉館しました。平成19年9月15日には、累計入場者数100万人を達成しています。閉館後に発行された「回顧録」によれば、開館12年間の総来館者数は、1,002,889人、総開館日数は、3,859日で、1日平均来館者数は、265人となっています。

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 体験型(ハンズ・オン)科学館・博物館に関する著作(*)では、年間入場者数を施設の面積で割った数値が150人/m2を超えていれば優秀としています。当館の平均年間入場者数は、1,002,889/12=83,574人で、施設面積の約340m2で割ると、246人/m2となって、面積当りの集客力は群を抜いていました。また、同種の施設では、開館後3~4年後には陳腐化し、その後は年間入場者数が減少するという「ライフ・サイクル」論(*)に照らしても、当館では、休館日や開館時間の変更があって、単純に比較はできないものの、開館9年後まで年間入場者数の増加傾向が持続したことは、関係者の運営努力を物語っていると思います。

 さて、当館の設立目的は、平成17年12月の開館10周年を記念して発行されたパンフレットに、『原子力をはじめとする現代科学技術に関する情報を分かりやすく提供するとともに、主に青少年層に科学技術に対する興味と関心を喚起するために』開設した、とあります。原子力について、事業者でもなく、メーカーでもない、中立の立場から、誰でもが知りたいと思えば、その手助けができるサービス機関という位置付けがされていました。つまり、PRではなく、「ウエルカム」が目的だったのです。その一環として、国が公開している原子力情報の閲覧サービスを実施していたほか、原子力関連独立行政法人などの関係機関が発行したパンフレットなどの配布を行っていました。その利用状況は、原子力公開情報の閲覧サービスについては、利用記録を取っていないので確たるデータはありませんが、随時実施したアンケートの結果によれば、利用者の割合は入場者の1%程度と考えられます。開館12年間で総来館者数102万人の1%と言えば、約1万人です。また、原子力関連のパンフレットの配布部数は、年間7千部程度となっています。この利用実績が多いのか、少ないのかは別として、原子力情報に関する様々なニーズを想定して備えには努めていたつもりです。

(*)Tim Caulton原著、ハンズ・オンとこれからの博物館‐インタラクティブ系博物館・科学館に学ぶ理念と経営‐、東海大学出版会

2008年5月24日 (土)

本(!)浮沈子(2)

 「本(!)浮沈子」の作り方と使い方です。

 必要な材料は、
  ・ペットボトル(350mlの野菜ジュース角型容器でやや固めのもの)
  ・透明なストロー(長さ約100mmに切る) 2本
  ・太めのステンレス針金(長さ約50mm)  2本
  ・水(500ml程度、一晩、室温に放置する)
です。

 作り方は、
(1) 透明なストローを長さ約100mmに切る。
(2) 切ったストローの両端をグルーガンで密栓して「浮き」を作り、一端(下端)に針で孔を開ける。
(3) 「浮き」の孔を開けた端近くにステンレス針金を2巻き程度巻きつける。
(4) コップに水を一杯入れ、水の中に「浮き」の下端を入れたまま、親指と人差し指ではさんで押しつぶすと中の空気が抜け、指の力を抜くと水が「浮き」に入ってくる。
(5) さらに「浮き」の中の空気を加減して、1本は沈まずにやっと浮き、他の1本は浮かずにやっと沈むくらいの空気の量にする。
(6) 空気を抜き過ぎて沈むようになってしまったら、「浮き」をコップの外に出し、入った水を少し抜いてやり直す。
(7) 「浮き」の調節が済んだら、ペットボトルに一杯になるまで水を入れ、その中に「浮き」を入れてペットボトルのキャップを固く閉める。
以上で「本(!)浮沈子」の完成です。

Justtemp

 浮いている方の「浮き」を沈めるには、四角い断面のペットボトルの側面を押してへこませます。力を抜くと、また浮かんできます。沈んでいる方の「浮き」を浮かすには、ペットボトルの角を押します。浮きにくい場合は、片手ずつ違う対角線で同時に押すようにします。力を入れ過ぎるとへこんでしまうので、へこまないように注意して力を加え続けるのがコツです。

 試作品では、「浮き」に10mmごとのマークをフェルトペンで書き込みました。「浮き」の中の水位の変化がこれで一目瞭然です。容器の側面を押したときは水位の変化が大きく、容器の角を押したときはごくわずかの水位の変化であることが見て分かるようになりました。残った悩みは、容器を逆さまにされると「浮き」の中の空気が抜けてしまって、再調整が必要になることですね。誰か、浮沈子を逆さまにしても「浮き」の中の空気が漏れない工夫をしてみませんか。

2008年5月23日 (金)

本(!)浮沈子(1)

 最初のシリーズ「逆(!)浮沈子」の続編です。実は、ブログには掲載しなかった温度の影響について、ホームページに掲載した文章の記述が不十分であることが分かったので訂正します。温度の影響が分かったことで、「本(!)浮沈子」のアイディアに到達しました。

 ホームページ版には、浮沈子に対する温度の影響について、『室温付近で水温が変化した場合は、温度の上昇によって水の比重は減少するが、空気の体積は増大する(ボイル-シャルルの法則)ので、浮力の変化はその差となる。室温付近では、空気の体積の変化率(+0.34%/℃)の方が水の比重の変化率(-0.2%/℃)よりも大きい(*理科年表より算出)ので、水温が上昇すると浮力は増大する。』と記載しました。「水温が上昇すると(浮沈子の)浮力は増大する」のは間違いではないので、理屈としてはこれでいいと早合点していましたが、よく考えてみると、容器の体積が一定であれば、水は非圧縮性なので、浮沈子の中の空気層で体積が増大すると、圧力も増大するので、変化率は違ってくるはずです。この記述には、温度が変化したときに容器の体積がどうなるかの考察が欠けていました。

 水の体膨張率は、0.21×10の-3乗/K(*理科年表)とされています。一方、容器のPET(ポリエチレンテレフタレート)の線膨張率は、メーカーのデータによれば、6.5×10の-5乗/Kとされているので、PET容器の体積の膨張率は、(1+6.5×10の-5乗)の3乗=1+0.20×10の-3乗となって、水の体膨張率とほぼ等しいことになります。ということは、温度が変わっても、容器と内容物の水の体積は同程度に変化して、中の水の圧力にはほとんど変化がないことになります。「水温が上昇すると(浮沈子の)浮力は増大する」という事実から判断しても、温度が上がると「浮き」の中の空気の体積は増え、温度上昇による水の膨張は容器の膨張でほぼ吸収されるので、空気の体積増加率はほぼ維持されると考えられます。

 さて、温度が上がると「浮き」は浮き上がるとすると、ありがちな逆浮沈子の作り方では、室温より低い水道水を容器に入れるので、せっかく沈むように調節した「浮き」も、時間がたって水温が上がってくると浮き上がってしまうことになります。一般的な浮沈子では、もともと「浮き」を浮くように調節するので問題にはならず、逆浮沈子では問題になります。

Lowtemp

 そこで、水道水を一晩放置して、室温にしてから逆(!)浮沈子を作ることにしました。さらに、今回は逆(!)浮沈子を発展させて、「浮き」を2本入れ、1本は浮いていて、もう1本は沈んでいるように調整しました。その結果、容器の側面を押すと、2本とも沈み、容器の角を押すと2本とも浮く、本当の浮沈子、本(!)浮沈子ができました。

2008年5月22日 (木)

赤外線リモコン受信機(3)

 「赤外線リモコン受信機」のテキストと、アセンブラ解説、ソース・プログラム(合併)、信号解析の例は、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。「電子サイコロ(3)」で紹介した「表面プリント基板」は今回の2日目から登場しました。事前の手間はかかりましたが、部品の配置ミスや配置の確認の応対はなくすことができました。

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 さて、赤外線リモコン受信機を、モーター制御やリレー制御と組み合わせることも可能です。そのための回路を加える必要がありますが、それほど難しくはありません。PICの入出力制御については、既に掲載した「電子サイコロ」を参照してください。

 PIC自体では1ポート最大25mAまでしか電流が取れないので、駆動素子として、1~3Aが必要なモーターを制御するには大電力用トランジスタやモータードライバーICを、25mA以上が必要なリレーを制御するにはトランジスタを使用します。25mAから数Aの負荷であれば、汎用トランジスタを使用したスイッチング回路が利用できるので、リレーを使用しなくても済みます。また、モーター制御で反転や静止を含む場合は、モータードライバーICを使用すると回路構成が簡単になる利点があります。また、トランジスタを使用する場合は、モーターやリレーのコイルによる逆起電力でトランジスタが損傷するのを避けるため、逆起電力を逃がすためのダイオードをモーターやリレーと並列に(逆方向にして)入れます。また、トランジスタのベースに接続する抵抗の値を調整して、必要な駆動電流を確保するようにします。前回の「ベンハムのコマ」で述べたように、モーター制御には、オンとオフを周期的に繰り返す、パルス幅変調(PWM)方式を使いますが、オンの時間の割合を負荷率(デューティー・ファクター)といい、オンとオフの時間は待ち時間の長短で設定します。テキストには、これらの使用例を載せてあります。

 ホームページに掲載したプログラムは、全メーカーのフォーマットに対応するためにプログラムを合併した膨大なものです。このプログラムでは選択したメーカー以外はコメント・アウトしてあるので、必要に応じてメーカーを取捨選択してください。その場合、3フォーマット分以上のプログラムの部分が残っていると、PICのプログラムメモリー量を超過する恐れがあるので、必要でない部分は極力削除してください。なお、待ち時間のサブプログラム部分が、各フォーマットに対応して細かく分かれているので、必要なサブプログラムを間違って削除しないように注意が必要です。なお、赤外線リモコン受光モジュールは、製品によってはノイズを受けやすいものがあります。ノイズの影響で誤動作する場合は、対策を考えるよりも交換した方が早いかもしれません。

2008年5月21日 (水)

赤外線リモコン受信機(2)

 赤外線リモコンの信号解析は、赤外線リモコン受光モジュールで復調した信号出力を音声信号としてパソコンに入力してwavファイルを作成し、このwavファイルをスペクトル・アナライザーにかけて、信号のオンとオフの時間、周期、ビットの構成を分析しました。

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実際に赤外線信号を分析して見ると、大きく分けて4つのパターンに分類できるようです。ただし、このルールは公表されていないので、公式なものではありません。あくまでも、信号を解析した結果です。まず、コードの始まりを決めるスタート・ビットがある場合(NEC、SONY、Panasonic)とない場合(Sharp)に分けられ、それぞれオン・オフの周期が異なるとともに、コードを構成するビット数が異なっています。NEC型に属するのは、日立、東芝、サンヨー、NEC、富士通、AIWAで、SONY型はソニーだけ、Panasonic型は松下だけ、Sharp型はシャープだけです。また、NEC型の変形には、パイオニア、ビクター、Panasonic型の変形にはフナイ、LG、サムスン、Sharp型の変形には三菱電機がありますが、いずれも時間間隔やビット数が違うのでプログラムの共用はできません。

 プログラムでは、コードの開始を決めるスタート・ビットがあるものは、赤外線信号を検出(赤外線リモコン受光素子ではL、オフ)してから、一定の時間後にH(オン)、さらに一定の時間後にL(オフ)となるスタート・ビットを確認してから、その後のコード部分に対しては、短周期か長周期かを判断して、短周期ならば0、長周期ならば1と入力します。ただし、スタート・ビットがないシャープの場合は、簡素化のため、先頭の数ビットが共通になることを利用して、スタート・ビットの代用としています。

 赤外線信号の長さは各メーカーで違いがあって最大では32ビットとなっていますが、その場合でも先頭の16ビットはメーカー・コードや機種コードで変化がないため、後半の16ビットだけでキーのコードを区別できます。また、22ビットや12ビットの長さの場合は、赤外線信号を実際に解析してキーが区別できる部分を抽出するようにしました。また、赤外線信号はビット0から順に送信されるので、これを16進数として読み込む場合は、逆順で読み込む必要があります。さらに、キーを押し続けた場合に、信号が反復されるケースと反復信号が送信されるケースがあるほか、信号が反復されるケースでも、反転信号が一緒に送信される場合があります。そこまでの対応は複雑なので、今回は、単純に信号の送信周期である108msec(NEC型)を目安に、それを超える約148msecの間、赤外線信号が途切れなければキーが押し続けられているという判断をし、それを繰り返しています。この装置では、キー入力データをPICのEEPROMというメモリー部分に記憶させているので、電源をオフにしても記憶は消えません。

2008年5月20日 (火)

赤外線リモコン受信機(1)

 ワークショップのPICマイコン入門編で、第3回目に取り上げた「赤外線リモコン受信機」です。第1回は、入出力制御の例としてLEDを点滅させる「バーサラーター」、第2回目は、モーター制御の例としてモーターをトランジスタで駆動させ、パルス幅変調(PWM)方式で可変速する「走行モジュール」を取り上げました。第3回目は、メカトロ機器を遠隔操作するのに必要なテクニックとして、身近にある赤外線リモコンを送信機として利用する方法を学びました。

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 この「赤外線リモコン受信機」は、市販のテレビ用赤外線リモコンのキー入力に対して、予め記憶させたキーに対応するLEDを点灯させる機能を持ちます。今回は、4個のキー入力に対応するようにしました。キーを記憶させた後は、赤外線リモコンの該当するキーを押している間、対応するLEDの点灯が継続します。キーを記憶するには、まず、タクトスイッチを押すとパイロットランプ(LED)が消灯するので、記憶させたいキーを短時間だけ押し、パイロットランプが点滅するのを確認します。この操作を4個のキーについて反復すると、パイロットランプが常時点灯となって、キー入力待ちの状態になり、記憶操作は終了します。赤外線リモコンのメーカーによって赤外線信号のフォーマットが異なりますが、3種類のフォーマットをショートピンで切り替えることができます。この装置は、赤外線リモコンの信号を認識するだけの装置ですが、PICの出力を取り出してモーター制御やリレー制御に応用することもできます。

 メカトロ機器には自動制御や遠隔操作が必要で、遠隔操作では無線によるラジコンや、赤外線によるリモコンなどが一般的です。PICマイコンを利用して赤外線リモコン送信機を作ることも可能ですが、テレビ用の赤外線リモコン送信機ならばどこの家庭にもあるので、わざわざ作ることはないと考えました。

 さて、赤外線リモコンの信号とは、どのようなものなのでしょうか。赤外線リモコンは、テレビやビデオ、DVDなどの映像機器やオーデイオ機器のほか、エアコンや暖房機器、照明などの電化製品の遠隔操作に使用されています。ここでは、赤外線リモコンとして、もっとも普及している、テレビ(ビデオ、DVD)用リモコンの選局キーに限って解説します。赤外線リモコンは、赤外線のオン・オフ信号を38kHzの変調波に載せて送っているので、専用の受光モジュールで復調(元の信号に戻すこと)して信号を取り出す必要がります。赤外線リモコンの信号は、赤外線のオン・オフの組み合わせで意味を持たせていますが、メーカーによって信号のフォーマットや信号の周期が異なっています。中心となる規格はあっても、トップメーカーでもその規格に参加していない状況で、実態はバラバラです。

2008年5月19日 (月)

ベンハムのコマ&(5)

 最後は、ワークショップのPICマイコン入門編「ベンハムのコマ」です。PICマイコンを使ったモーター制御の例として実施したものです。前年にモーター制御の例として「走行モジュール」という工作物にチャレンジしました。メカトロ志向としては格好のテーマで、人気も上々だったのですが、結果は散々でした。

 「走行モジュール」は、モーターで自走する工作物です。自動車と言うには気が引けたので、このネーミングにしました。「走行モジュール」の失敗を受けて、考えたのが「ベンハムのコマ」でした。モーター制御の基本を押さえながら、機械工作に手間がかからないのが特徴です。しかも、モーターの可変速制御の定番である、パルス幅変調(PWM)方式を十分に活用できます。パルス幅変調方式とは、数kHzから数10kHzのサイクルで、モーターのオン、オフを繰り返すことによってモーターの回転速度を制御する方法で、1サイクル中でのオンの時間割合を負荷率といいます。負荷率を上げると早く回り、下げると遅く回るという仕組みですが、負荷率を下げすぎるとトルクが減少して負荷に負け、モーターが止まってしまいます。「走行モジュール」では、前進のみだったので、モーターのドライブにはトランジスタを使用しましたが、「ベンハムのコマ」は逆回転も必要なので、モータードライバーICを使用しました。モーター制御では、このモータードライバーICの使い方を覚えておけば、まず万能です。逆回転を含む場合は、トランジスタなら4個必要なので、モータードライバーIC1個の方が安上がりです。

Workshop

 「ベンハムのコマ」のテキストと、アセンブラ解説、ソース・プログラム(一部改良)は、コマの型紙と併せて、別のホームページ(http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。

 この、ソース・プログラムは、パルス幅変調方式の調整がまだ十分ではありませんが、毎分250回転程度までの低速回転が可能です。また、モーターの端子の一方とケースの間に取り付ける0.1μF積層コンデンサは、モーターから発生する電気ノイズでPICマイコンが誤作動するのを防止するための、いわゆるパスコンです。「走行モジュール」の初回には、これに気が付かなくて、参加者の皆さんを悩ませました。その後、いろいろと試してみて、この方式で対策として十分という結論になりました。モーターとPICが10cm以上離れていれば、まず問題ありませんが、距離が取れない場合や、ノイズの影響が疑われる誤作動がある場合は、パスコンを入れてみてください。

2008年5月18日 (日)

ベンハムのコマ&(4)

 「ベンハムのコマ」がなぜ色付いて見えるかは、よく分かっていないようですが、ウィキペディアによると、『ベンハムの独楽を回すと、弧状の薄い色があちこちに見える。この色はフェヒナーの色と呼ばれるが、誰が見るかによって異なる色となる。なぜこのような現象が起こるのか完全には理解されていない。赤(正確には黄色からオレンジ)、緑、青に感受性が高い網膜内の光受容体(錐体)が応答する光の変化率がそれぞれ異なっているからではないかとも考えられている。』とされています。

 「ベンハムのコマ」のパターンもいろいろと紹介されていて、白地に適当に黒い線を引いてコマを回して色付いて見えるかどうか、という原始的な実験もできるようです。写真では色付いて写らないので、色が付く、付かない、はまったく主観です。こういう現象は、定量化が難しいので、原理の解明はつらいところです。しかし、いろいろな人が議論に参加すれば、少しずつでも本質が見えてくるかもしれません。そこで、微力ながら、議論に参加してみたいと思います。

 簡単な、オリジナルの「ベンハムのコマ」のパターンを見ると、円板の半分の180度分は黒く塗られています。白地の部分には、45度の角度の円弧が、半径をステップ状に減少させながら、ステップごとに1本の黒線として描かれています。この4本の円弧を1セットとして、3セット(ただし、もっとも内側のセットは3本だけ)が描かれていますが、コマを回したときの色の付き方は各セットで同じに見えます。円弧の長さは外側のセットと内側のセットでは異なっていて、円弧が動く速度は違うけれども、円弧の角度はすべて同じなので、見えている時間は同じであることから、白と黒の時間率に意味があると考えられます。

Benhamo

 既に、「ストロボスコープ・コマ」を使って、「ベンハムのコマ」が色付いて見える回転速度は低速ほど良いことが分かっています。コマを低速で安定して回すことは難しいので、仮に、最適な回転速度を毎分180回転としましょう。これは毎秒3回転に相当します。動体視力のいい人では、線が止まって見える程度の速度です。この「ベンハムのコマ」を右回転で回すと、円弧の各セットの外側から、黒、紫、緑、赤と見えます。各セットだけを取り出すと、円弧の長さは皆同じなので、白地と黒地の割合は変わりません。違いは、円弧の両側にある白地との時間差と考えられます。各セットで中の2本の円弧は、外側が、黒4・白2・黒1・白1で、内側が、黒4・白1・黒1・白2となっています。回したときに赤く見える内側は、黒5・白3で、黒っぽく見える一番外側と同じです。この違いは謎ですが、回転速度を毎分180回転と仮定すると、色付いて見える円弧は、外側から順に、黒0.17秒・白0.08秒・黒0.04秒・白0.04秒、黒0.17秒・白0.04秒・黒0.04秒・白0.08秒、黒0.21秒・白0.12秒、となっていて、視覚の応答時間としては、0.04秒程度の違いが色覚の差を生み出していると考えられます。コマの回転を逆にした場合でも、黒っぽく見える位置が変わる以外は見え方の順番が同じなので、矛盾はありません。

 さて、この議論は、単純に白地と黒地の時間率に注目したものですが、時間率では同じ外周と内周で色付き方が違うことから、円弧の周囲にある白地の影響も考える必要があるように思います。皆さんはどう思われますか。

2008年5月17日 (土)

ベンハムのコマ&(3)

 私が試作した「ベンハムのコマ」は次のようなものです。

(1) 3mm厚のベニヤ板を、ホールソーで、直径60mm程度に切り抜く。
(2) 型紙を、ベニヤ板より小さめの直径58mm程度に調整して印刷する。
(3) 印刷した型紙の裏に、両面テープを隙間なく貼る。
(4) 型紙を丸く切り抜き、中央の穴を直径6mmのポンチで打ち抜く。
(5) 切り抜いた型紙を、中央合せでベニヤ板に貼り付ける。
(6) 直径6mmの丸棒を30mm程度の長さに切る。
(7) ベニヤ板の孔に丸棒を通す。緩みがあればセロテープを巻いて調整する。
(8) 直径6mmのストローを長さ7mm程度に切って、丸棒の下にはめる。
(9) ストローの中に直径6mmのBB弾を押し込み、BB弾が少し出る程度にする。

Topbb

 BB弾を使ったのは、ひらめきです。最初は、丸棒の先を紙やすりで削って丸みを付けてみましたが、どうしてもコマの軸がぶれます。正確に芯出しをするのは難しいようです。プラスチック製のBB弾は、一応、真球なので、軸が出やすいと思って使ってみました。直径6mmの鋼球があれば、その方がベターです。さて、上述の方法でも、いろいろと道具や材料の準備が必要です。そこまでしたくない人は、型紙を厚紙に貼り付けて、コマの軸はつま楊枝にすれば、もっと簡単です。その場合は、型紙の直径を大きくした方が、コマがよく回ります。

 「ストロボスコープ・コマ」の作り方も同じです。型紙のパターンは、中央から、3本縞、4本縞、6本縞、8本縞、12本縞、16本縞、24本縞、32本縞となっていて、蛍光灯の下で回すと、中央の3本縞は毎分1000回転、後は順に、750回転、500回転、375回転、250回転、188回転、125回転、94回転で同期します。回し始めは、4本縞が止まって見えるので、毎分750回転程度、止まる直前は、外側から3番目の16本縞か、2番目の24本縞が止まって見えるので、200回転から100回転辺りに相当します。コマの軸のふらつきを比較すると、「ベンハムのコマ」に色が付いて見えるのは、この辺りなので、毎分300回転よりももっと低速の方がよく見えることが分かると思います。「ストロボスコープ」の説明は、前回の「空中コマ(5)」をご参照ください。なお、インバータ方式の蛍光灯や電球型蛍光灯では、50Hzの点滅がないので使えません。比較的古い蛍光灯を使うか、なければ電球でも構いません。

 ところで、この「ストロボスコープ・コマ」を蛍光灯の下で見ると、うっすらと色付いて見えます。「大王コマ」として紹介されているものと原理が同じで、蛍光灯の各波長の発光時間差によって色が付いて見えるとされています。「ベンハムのコマ」と違って、これは写真撮影しても色が付くので、視覚によるものではないことが知られています。

 最後の「ニュートンのコマ」は、「色の科学」で触れた加法混色を簡単に実験することができます。コマの作り方は同じなので、試してみてください。

2008年5月16日 (金)

ベンハムのコマ&(2)

 「ベンハムのコマ」のパターンはいろいろなものが紹介されています。基本的なパターンは共通で、円板の半分が黒く塗られ、残りの白い部分に、3分割または4分割した黒の円弧が単線または3重線で描かれています。前回に紹介した複雑なパターンは改良型のようですが、どのパターンでも見え方に大きな違いはありません。4分割した3重線のパターンが最も多く取り上げられているようです。ワークショップでもこのタイプでした。

 問題は、パターンではなく、円板の回転速度です。あるホームページで、毎分300回転程度が良い、とあったのを参考に、モーターの可変速プログラムを作りましたが、これがなかなか大変。と、言うのも、モーターの可変速制御は、パルス幅変調(PWM、Pulse Width Modulation)方式といって、モーターのオンとオフを細かく繰り返すものです。最近の電車は、この可変速制御を採用しているので、モーターの音を聞くとすぐに分かります。数kHz~10数kHzのサイクルで制御するので、それが音になって聞こえ、その周波数が変っていくのが分かります。模型モーターの定格回転速度は、毎