原子力と科学館(8)
実習生に話す内容はもっと詳細ですが、要点はこの程度です。ところで、なぜ、放射線の話を最初にするかといえば、それが原子力利用にとって避けられない課題だからです。放射線の理解が進まなければ、原子力利用への真の理解はありえないと考えています。なぜ、理解が必要かといえば、賢明な選択のために必要だからです。
科学館では、中学生や高校生に、「科学」とは、「なぜだろう(知りたい)と想う心が生み出す活動」であり、「技術」とは、「あるといいな(欲しい)と想う心が生み出す活動」であると説明してきました。目指すところは、いずれも「人類の幸せな未来」ではないかと思います。「未来」とは、これまでの「科学」や「技術」に満足しない心が生み出す時空であり、子どもたち自身のことでもあります。「未来の科学技術はどうなりますか?」という子どもたちの質問に、スタッフは「未来の科学技術は、なる、のではなくて、創る、ものです。皆さんが創りたいと念じて努力することで、実現します。」と回答してきました。
既に紹介した「人類は、DNAだけでなく、知識を伝えることで進化した」というフレーズは、人類という生物の特徴が、知識の獲得と蓄積にある、ということを伝えています。「叡智」と言った方が適切かもしれません。考えることの重要性は当然ですが、考えるという活動にも一定の知識ベースが必要です。「宇宙と原子力」で述べたことも、常に前人の獲得した知識を踏み台にして新たな知識を獲得することの繰り返しの結果です。知識はますます高度になり、進化の速度はますます増大しています。今の子どもたちは、我々50年前の子どもたちよりも、ずっと難しいことを、できるだけ短時間に吸収することが求められています。同じレベルをぐるぐる回っていればいいのであれば話は別ですが、進化には、らせん状に上昇していくことが求められます。同じレベルに止まるのではなく、上昇を続けるためには、既存の知識の習得や考え方の獲得は以前よりも早く済ませる必要があります。また、考え方も知識の一種と考えれば、知識の獲得がスタートラインだ、と言えます。
知識は学校だけで学ぶものではありません。科学館は、学校の枠組みを超えた知識の獲得に役立ってきたと確信しています。科学館で育った子どもたちと、その子どもたちが創る未来が楽しみです。
