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2008年3月11日 (火)

真空実験(5)

 3番目は、水をビーカーに入れて真空に引きます。これが、一番、面白い。もっとも、真空装置には悪い影響があるはずですが。

 これも、子どもたちに「どうなると思う?」と聞いても、まともに答えられません。大人でも難しいと思います。私もここで初めて見たのです。水が凍るのを。

 水を少量だけビーカーに入れて真空に引くと、断熱膨張の影響で、一瞬、ベル・ジャーが曇りますが、すぐに曇りは取れます。高度約25000mの真空度になると、室温でも水が沸騰し始めます。しばらく経つと、沸騰は収まりますが、今度は一瞬にして凍結します。子どもたちが相手の場合は、ここで取り出して氷に触ってもらいます。結構、驚いてくれます。

 最初はこのプロセスを見せるだけでしたが、中学生以上向けに、温度計を入れて水の温度変化を見てもらうことにしました。真空に引くと、室温の25℃付近に放置してあった水が、高度約25000mに相当する30hPaで飽和蒸気圧になって沸騰を始めます。沸騰を始めると、見る見る温度が下がり始め、そのうちに沸騰は収まりますが、温度はさらに下がって、0℃に近づきます。0℃になるか、若干、0℃を下回ると、一瞬にして凍結します。真空が気化熱を奪って水の温度を下げ、凍結に至ったわけです。水の蒸気圧曲線に沿って温度が低下した、という説明もできます。これは、高校の化学で習います。

 ところで、凍結しても取り出さないで、さらに真空に引き続けるとどうなるのでしょうか。水の蒸気圧曲線で、0℃は約6hPaです。前述のように、この真空装置では、0.05hPa程度は到達可能と考えると、氷の蒸気圧曲線は0.04hPaで-50℃ですから、かなり低温の氷ができることが予想されます。実際には、断熱過程でないことや、温度が低下するには時間がかかるために、そこまでの実績はありません。体験した最低温度は-20℃でした。冷凍庫の氷の温度以下にはなっています。

 さて、ブラック・ユーモアですが、人間が宇宙服を着ないで宇宙空間に出たらどうなるか、という話があります。空気がないのですぐ死ぬ、のは自明ですが、その後どうなるかが問題です。誰もやったことがないので、いろいろな憶測があります。体液が沸騰して失われ、ミイラになる、という説もあります。この答えとして、我々には一つの確信があります。それは、ミイラではなくて、アイスマンになるという説です。根拠は、上に述べたとおりです。急速に真空になると、沸騰よりは温度低下の方が著しいので凍ってしまう、と考えています。体温が維持されたとして、沸騰を続けるには、真空度約60hPa、高度20000m程度を維持する必要があります。

 実は、実際に実験をしてみました。人間ではなく、ミカンで。ミカンは確かに凍りました。でも、ミカンと人間では体温(?)が違います。そこで、ミカンを湯煎して、40℃にしてから真空に引いてみました。沸騰して爆発するのではないか、と心配もしましたが、そうはなりませんでした。やっぱり、そのまま静かに凍ったのです。

Mandarin

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