2008年7月19日 (土)

また!平板ブーメラン(8)

 次は、計算シミュレーションの方法です。前回と同様に、エクセルのワークシートとマクロ(VBA)を組み合わせました。運動方程式の解法については、全面的に改めて、素直に座標変換を行いました。図のように、1軸の回りの座標変換を3回繰り返します。
Xyz 
 まず、xyz座標系をブーメランの進行方向に合わせ、z軸の回りに回転させて、x'y'z'座標系に変換します。次は、このx'y'z'座標系をブーメランの進行方向にx'軸が一致するようにy'軸の回りに回転させて、x''y''z''座標系に変換します。最後は、x''y''z''座標系を、ブーメランの面の法線方向を含むようにy''-z''面に一致させて、x'''y'''z'''座標系に変換します。その結果、x'''y'''z'''座標系では、ブーメランを側面から見た形となるので、その面とx'''軸がなす角度が迎え角となり、z'''軸の正方向に揚力が、x'''軸の負方向に抗力が作用することになります。また、面の法線ベクトルを単位ベクトルとすれば、法線ベクトルはx'''-z'''面内で、z'''軸から迎え角だけ傾き、xn'''は-sinαと、zn'''はcosαと表現できます。
Alphan 
 ブーメランの進行ベクトル、面の単位法線ベクトルの座標を、xyz座標系から、x'y'z'座標系、x''y''z''座標系、x'''y'''z'''座標系と変換し、αの増分によって揚力L'''と抗力D'''を決定し、点N'''を決定した後に、逆の手順でxyz座標系に戻して表現します。
 一例として、xyz座標系をz軸の回りに角度θだけ回転した場合の座標変換は、
  x'=xcosθ+ysinθ
  y'=-xsinθ+ycosθ
  z'=z
で変換でき、逆には、
  x=x'cosθ-y'sinθ
  y=x'sinθ+y'cosθ
  z=z'
で変換できます。このルールを、固定軸に一致させて、回転軸の対応を都度決めれば、同じ形式で全部の変換が可能です。ただし、座標系は右手系で考えます。また、式の定義では角度θの正負は問いませんが、座標から角度を決める際には、角度の正負を物理的に考慮する必要があります。

 なお、このような座標変換では、基本的にブーメランの進行方向をx'''軸に一致させています。したがって、ブーメランの進行方向が上下、つまりz軸方向を向く場合は、そのままでは無理があります。今回は⊿z=0となる場合は、便宜的に、ケースを仮定して角度を読み替える解決をしています。そのケースとは、今回の目標としている「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」と、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」の場合です。

2008年7月18日 (金)

また!平板ブーメラン(7)

 揚力係数は、検討の結果、単純な2次式で近似することにしました。
Clalpha 
 上の近似式はデータの最小二乗式ですが、αが0とπ/2で揚力係数が0となることを仮定して、最大値を合わせた2次式に換算してあります。この式ではαがπ/4で最大値となりますが、揚力係数の一般的な傾向からは、実際にはαが0.5以下で最大になると考えられます。その意味では、この近似式を高角で使用するには、注意が必要です。なお、αが負の場合は負号で表現し、αがπ/2以上の場合はπ-αをαと読み替えて近似式を適用します。

 また、抗力係数も2次式で近似することにしました。
Cdalpha   
 αが負の場合は、-αをαと読み替え、αがπ/2以上の場合は、π-αをαと読み替えて使用します。

 なお、これらは、回転速度が毎秒約2回転のデータによるものです。実際には揚力係数も抗力係数も回転速度依存があるので、ずれが生じてきます。元来、ばらつきの大きいデータなので、その中からある程度の取捨選択をした結果ですが、結果的には妥当な線と思われます。

2008年7月17日 (木)

また!平板ブーメラン(6)

 自転落下実験は、約1mの高さのほかに、約2mの高さでも実施しました。高さ1mでは最速3m/s、高さ2mでは最速7m/s程度になります。また、側面以外に、正面から撮影したケースもあります。側面の場合の傾斜角度は、0度から70度までの10度刻みと、90度で実施しています。回転速度は、毎秒約2回転と4回転を目標にしましたが、電池駆動のため、回転数の測定中に回転数が低下するなどの原因で、多少、ずれがありました。
 この2月と8,9月にかけて、トータルで16シリーズ264回の実験を行っていますが、途中の装置改良やデータ処理の見直しもあって、最終的に採用したデータは、4シリーズ36回分のデータに止まりました。しかし、1回の落下で動画のコマ数は10ないし20なので、それでも結構な数になります。その結論は以下のとおりです。

 まず、シミュレーションの際に、揚力係数や抗力係数を算出するには、迎え角を決める必要があります。迎え角の増大は、揚力が翼の揚力中心に作用し、一般に揚力中心は重心よりも翼断面の前方にあるために、トルクを生じて回転する結果、生ずる現象です。厳密には回転の運動方程式を解く必要がありますが、回転の運動方程式は回転角の2階微分が外力によるモーメントに等しいとするので、自転落下実験において、迎え角の増分⊿αを微小時間⊿tの二乗で除した値が、ブーメランに作用する揚力と抗力の和に比例すると考えました。揚力と抗力は直交するので、それらの和は揚力と抗力がつくる矩形の対角線に相当します。その結果が次の図です。
Alphat2 
図のFが揚力Lと抗力Dの和です。

2008年7月16日 (水)

また!平板ブーメラン(5)

 自転落下実験装置と実験の方法は以下のようなものです。

 まず、自転落下実験装置ですが、モーターの回転を遊星ギアで減速した軸に、ミシンのボビンにホルマル線を巻いたコイルと、それを囲む鉄心を固定し、コイルにはブラシで通電できるようにしました。モーターの回転制御はPICとモータードライバーICで行います。回転数は、フォトインタラプターで検出して、PICを介して8個のLEDで2進数として表示します。さらに、システム全体を板に載せて傾斜できるようにし、所定の角度で板を固定するための尺を付けています。
Head_2 
 平板ブーメランの試験体は、単翼長90mm×翼幅20mmの十字形で、厚さ0.66mmの板目紙から、切り抜いて製作しました。中央にはトタン板を直径20mmに切り抜いて両面テープで貼り付けてあります。落下の際に、翼端が変形するのを防ぐために、翼端は半径10mmの円形に切り落としました。その結果、翼面積Sは0.00811平方m、重量Wは0.00517kgとなりました。ブーメランは、視認性を高めるために、全面をマジックインクで黒く塗ってあります。
Equipmnt 
 自転落下装置を長机3段の上に載せて落下実験を行いました。高さは約1mです。クリーム色の模造紙に、10cm間隔の格子を描いたものを背景として落下実験を行います。正面前方から、動画撮影が可能なデジタルカメラで撮影し、撮影後は動画ソフトを用いて、PCディスプレイ上で、ものさしと分度器を使って測定します。ブーメランの側面からの測定が大部分なので、ブーメランが見えにくくなるために、精度は望めません。連続動画では見えるのに、動画1コマになるとほとんど消えてしまうこともしばしばです。その場合は、心眼(?)で測定することになります。

Experimt

2008年7月15日 (火)

また!平板ブーメラン(4)

 参考までに、前回掲載した模式図を再掲載しておきます。

Droptest
 自転落下実験の結果から、1/30秒の微小区間ごとに、x、zを測定して、x方向とz方向の速度を算出すれば、落下の運動方程式において、微小区間では揚力Lと抗力Dが一定と仮定することにより、揚力Lと抗力Dが求められます。

Equation

 ここで、添え字の0は前の区間の意です。揚力Lと抗力Dが求められれば、揚力係数と抗力係数は、前出の、
Clcd 
の関係式から求めることができます。この場合の速度vは、x方向とz方向の速度を合成した速度で、全移動距離dを時間で割ったものです。

 なお、前回のシミュレーションでは、落下距離の約1mを微小区間と考えて平均した揚力と抗力を採用しましたが、実際は、その間の速度や迎え角の変化量が過大になるので、今回は、1コマに当たる1/30秒ごとを微小区間として扱いました。

2008年7月14日 (月)

また!平板ブーメラン(3)

 ここで、ブーメランの揚力係数や抗力係数などを実験的に求める考え方を説明しておきます。基本的な考え方は、航空力学の考え方を準用します。

 航空力学では、翼に働く揚力や抗力を評価して、必要な推力を求めます。
Dynamics 
 複雑な流体力学の式を解かなくても、迎え角に対する揚力係数と抗力係数が分かれば、次式で必要な翼面積や飛行速度を算出することができます。
Clcd   
 したがって、揚力係数と抗力係数は、翼の断面形状が決まれば、迎え角の関数として求められますが、一般的には風洞実験や数値解析が必要です。

 そこで、設備がなくてもできる方法を、と思案して、考案したのが自転落下実験です。迎え角を設定し、所定の回転速度で、ブーメランを(電磁石方式で)リリースして、側面から動画撮影を行って、動画画面上で、面の角度の変化、落下距離、水平移動距離をコマ送りで測定する方法です。速度が一定でない、高速や高回転速度の試験が難しい、1/30秒以下の時間精度がない、など、欠点だらけの方法ですが、簡単にできるのが利点です。

 具体的には、重力を推力として、迎え角αに対して発生する揚力Lと抗力Dを、
Droptest 
落下距離-⊿zと水平移動距離⊿xから求め、上述の関係式から逆算して、区間平均値としての揚力係数と抗力係数を決定するものです。

2008年7月13日 (日)

また!平板ブーメラン(2)

 今回のシミュレーション法の改良に際して、「平板ブーメラン」の飛行を撮影した動画を分析して、回転直径や回転数、飛行速度などを再確認しました。その結果、前回使用した数値とは若干の違いがあります。狭い室内での撮影であり、しかもカメラは1台なので、正確な数値化は困難ですが、一応、コマ送りで動画を計測して、数値化を試みました。その例を、以下に示します。
 試験体は4枚翼の十文字形紙製ブーメランで、典型的な平板ブーメランです。作り方は、0.66mm厚の板目紙から、長さ20.5cm、幅2cmの長方形を2枚、カッターで切り抜き、この2枚をそのまま組み合わせて、中央部を十文字形に両面テープで貼り付けました。投げ方は、平板ブーメランの表裏と一翼を任意に選び、右利きの場合、右手の親指と人差し指で挟んで、そのまま右手を斜め上に挙げ、後ろから見た場合に、頭上から右、時計回りに約20度(面の法線の傾きとしては、約70度)傾けた状態で立てて、手首のスナップを効かせて前方にほぼ水平に放出した結果です。なお、前回と同様に、ブーメランを投げる方向をx軸の正方向、曲がっていく左手をy軸の正方向、上方をz軸の正方向として説明します。

 まず、x-z断面です。点と点の間隔は、1コマで1/30秒に相当します。
Case4xz 
 この図から、x軸方向の最遠点が3~4m程度、初速が8~9m/s程度、終速が2m/s程度であることが分かります。

 次は、別のケースのy-z断面です。
Case3yz 
 この図からは、旋回直径が4m程度、中間速が、4~5m/sであることが分かります。

 x-y断面は、天井が低いので撮影できませんが、上の2図を合成すると、x-y断面の大体の様子が分かります。
Case34xy 
 このようにして見ると、少なくとも「平板ブーメラン」の場合は回転による積極的な揚力がないので、「手元に戻る」といっても、離れたところに落下するのが通例のようです。シミュレーションの検証も、これを参考にしました。

 また、同様にして、投げた直後で、回転速度は毎秒3.5~4回転程度、ブーメランの面の法線がz軸の正方向からなす角度は75~80度であり、65度の場合には、最遠点付近で上昇することも分かりました。

 残念ながら、今回のシミュレーションの改良で目標とした、「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」や、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」は撮影していません。平板ブーメランを作るのは簡単なので、関心のある方は、試してみてください。

2008年7月12日 (土)

また!平板ブーメラン(1)

 2月に掲載した「平板ブーメラン(1)~(5)」の続編ですが、スマートになって再登場です。
Boo 
 前回のシミュレーションでは、「平板ブーメラン」の旋回飛行を計算するのが主目的だったので、2次元的な運動方程式による簡易な解法にしてありました。運動方程式は、一応、3次元で解いていましたが、上下方向は旋回に伴う落下だけを想定していました。落下とともにブーメランの面が徐々に水平に近づくと考えて、傾き角が移動距離によって減少するという関係式を仮定し、迎え角は傾き角から計算で算出する方法でした。

 それでも、「平板ブーメラン」が旋回して戻る軌道の計算は可能で、一般の(軽い)ブーメランを想定して、翼にひねりを入れた「フラップ付きブーメラン」での実験式を取り入れて、比較計算を行っています。その結果は、「フラップ付きブーメラン」では、「フラップなしの平板ブーメランと比較して、旋回範囲がより小さくなり、落下距離も小さくなっているが、旋回飛行の傾向が大きく変わることはないことから、フラップの有無、すなわち翼自体の迎え角の有無で旋回飛行のメカニズムが異なるものではない。」というものでした。また、ブーメランを宇宙ステーションで飛ばしたらどうなるかというシミュレーションも、重力加速度を0にして行ってみました。計算では、「平板ブーメラン」の場合は旋回せずに直進し、「フラップ付きブーメラン」の場合は、らせん状に旋回する、という結果になりました。簡易な解法でも、無重力であってもブーメランは旋回する、という予測ができたわけです。

 一方、課題として、例えば、ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて降下し、同時に回転軸が立ち上がっていくような軌道とか、ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道とかは、計算できないという限界を指摘しました。このような課題を解決するためには、揚力が起こす平板翼のトルクを扱う必要があるほか、きちんと3次元的に運動方程式を解く必要があります。

 今回のシミュレーションの改良では、この、「ブーメランを高いところから傾けて落下すると、スロープを描いて軸が立ち上がるような軌道」と、「ブーメランを水平に投げると、上昇した後、突然、反転して戻ってくるような軌道」の計算ができることを目標としました。その過程では、従来は重視していなかった、高迎え角、例えば90度に近い迎え角での揚力係数や抗力係数についても実験式を拡張しました。このシミュレーション法では、航空力学の手法を取り入れています。一般の航空力学では、迎え角が20度を超えると翼の揚力が急減して、失速するので、高角度の迎え角は扱われない領域ですが、ブーメランでは、最終的に迎え角が90度に近づくので、どうしても考えておかなければならない領域です。もっとも、迎え角90度では揚力としては現れず、すべて抗力として扱うことになります。

 また、揚力係数や抗力係数を求めるために、ブーメランの自転落下実験を考案しましたが、今回の追加実験の中では、面白い現象にも気付きました。ブーメランを側面からではなく、正面から観測すると、ブーメランが水平方向にわずかに移動することが分かりました。自転によって進行方向が曲がる現象は「マグヌス効果」として知られており、野球のボールやゴルフボールの軌道の曲がりなどはそれで説明できますが、このブーメランの曲がり方は、「マグヌス効果」とは違って自転とは逆方向になっています。この解釈についても、後で述べたいと思います。

2008年6月 4日 (水)

実験教室のテキスト集が

 原子力・エネルギー教育支援情報提供サイト『あとみん』にアップされました。未来科学技術情報館で実施した、実験教室50選+工作教室16選+ちょこっとサイエンス16選を収録した「実験教室テキスト集(PDFファイル58MB)」が、閲覧・ダウンロードできます。このブログで扱ったタイトル以外にも、小学生から高校生まで、自由研究や自由工作に適したタイトルがたくさんあります。

 URLは、こちら (http://www.atomin.go.jp/atomin/data/pdf/book_src/exp_text.pdf) です。関心のある方は、ご覧ください。

2008年6月 2日 (月)

これまでのまとめ

 科学館で開発した実験教室のタイトルや展示物の解説を中心にブログを展開してきましたが、ほぼ、一段落しました。これまでに掲載したタイトルは次のようなものです。

 科学館の閉館で
1.逆(!)浮沈子
2.電動ヘリコプター
3.クッキング・サイエンス
4.電子サイコロ
5.平板ブーメラン
6.真空実験
7.電池と電気のあれこれ
(1)木炭(備長炭と活性炭)電池
(2)スライムとスライム電池
(3)水素自動車
8.風力モーターカー&
9.色の科学
10.雨の科学
11.花火の科学
12.空中コマ
13.ハノイの塔
14.ベンハムのコマ&
15.赤外線リモコン受信機
16.本(!)浮沈子
17.原子力と科学館

 ブログでは、開発の経緯を失敗談を含めて紹介してきましたが、テキストやレジメは別のホームページ (http://www.icnet.ne.jp/~nandemo_lab/index.html) に載せました。ブログの一段落で、これまでのブログをタイトルごとにまとめてホームページに転載しましたので、自由研究や自由工作などにご活用ください。

 なお、このブログは、充電のため、しばらく休載します。

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