2011年10月13日 (木)

自作『GM管』(20)

パルス波高を知るために、PICを利用して電圧パルスのAD変換を行い、チャンネル(5Vで1024チャンネル、1chが約5mVに相当)を液晶表示させるADコンバータを簡易的に試作しました。液晶表示は文字だけなので、カウント毎にチャンネルを筆記するという大変な作業です。

P_adc

以前に紹介した密閉度を高めた自作『GM管』を使用して、プラトー領域から印加電圧を下げていったときの塩化カリウム(カリウム40)のパルス波高分布「HV.pdf」をダウンロード では、かろうじて計数がある(飽和領域に近い)印加電圧(約2600V)でもピークが分離していますが、ピークはブロードで分解能が良くありません。印加電圧を下げていくと、波高が小さくなる(チャンネルが低くなる)ため、印加電圧が低すぎるとADコンバータの精度が制約になります。今回は、その中間領域(約2400V)で、分離した(ように見える)ピークが捉えられました。
このパルス波高分布を見ると、カリウム40のピークが3本に見えます。カリウム40が出す放射線は、1.312MeVのβ線が89.3%、1.461MeVのγ線が10.7%となっています。β線は、エネルギーの一部を電子ニュートリノが持ち出すので、最大エネルギーから低いエネルギーに向かって、最大エネルギーの約1/3をピークとする連続分布となります。一方、γ線は、単一エネルギーですが、管内でエネルギーを失って、低いエネルギーのピークも作ります。シンチレーション・カウンタのパルス波高分布を参考にすると、光電効果による入射γ線のエネルギーに相当するピークと、コンプトン散乱によるブロードな分布が見られ、さらに、カリウム40のγ線のエネルギーが1.022MeVを超えていることから、電子対生成による、1.461-0.511=0.95(MeV)の(生成した電子・陽電子のうち1個が管外に出る場合の)エスケープ・ピークと、1.461-1.022=0.439(MeV)の(生成した電子・陽電子がともに管外に出る場合の)ダブル・エスケープ・ピークが見られるはずです。したがって、カリウム40の3本のピークは、1.461MeV、0.95MeV、0.439MeVに相当すると考えられます。なお、1.461MeVの主ピークが小さく見えるのは、GM管の場合は1MeV以下のエネルギーの方が高感度のためではないか、と考えています。ただし、チャンネルとパルス波高値の関係について、ゼロ点や比例関係の有無は未確認なので、現状で分かるのは大小関係だけです。

塩化カリウムとガスランタン用マントルのパルス波高分布「ene_ana.pdf」をダウンロード を約2400Vで比較すると、ピークの位置が(微妙に)違うのが分かります。ガスランタン用マントルの放射線は、トリウム232の娘核種によるものなので、単一の放射性核種ではありません。鉛212やタリウム208やビスマス212のγ線が混在していると思われますが、判別は困難です。

約2400Vの塩化カリウムで、厚さ6mmのアクリル板を用いて1.312MeVのβ線をカットした場合と、カットしない場合のパルス波高分布「WB_NB.pdf」をダウンロード を見ると、3本のγ線由来のピークに重なって、カットしない場合は、1.312MeVを最大エネルギーとするブロードなピークが、低エネルギー側に広がっているように見えます。

教科書にも載っていない方法ですが、GM管でも印加電圧を下げてパルス波高を調べれば、(ある程度は)入射放射線のエネルギー分析が可能です。
問題点は、パルスの分解能です。装置的な改善を別にすれば、パルスのカウント数を多くして、統計的な変動を減らすしか方法がありません。印加電圧や増幅器の増幅率もパルス波高に関係するので、印加電圧と増幅率とを勘案しながら、時間と手間も考えてカウント数を最適化する必要があります。現状では、バックグラウンドのような極めて弱い線源では、500カウントに1時間程度を要するので、労力も時間も掛かる状況です。少なくとも、実験の精度をある程度確保しながら、時間をできるだけ短くする工夫が必要です。計測の自動化も可能ですが、実験教室の範囲に収まるかどうかが問題になります。

*参考:AD変換・文字液晶表示回路図「CHARLCDr.JPG」をダウンロード
*参考:AD変換・文字液晶表示プログラム例「counter_adc_lcd.pdf」をダウンロード

2011年10月12日 (水)

自作『GM管』(19)

このシリーズは、中高生向けの実験教室で、GMカウンターの製作と放射線測定の実験を行うための企画提案を目的としています。これまでに、従来からある『空気GM管』を参考にして、本来の原理に基づくGM管を自作したうえで、高電圧電源と検出・表示回路を試作し、実験用としては十分使えることを示してきました。まだ、実験教室のテキストの段階ではなく、その予備実験とドラフトの段階ですが、いろいろと新たな実験も提案しています。今回は、自作『GM管』を利用した放射線のエネルギー分析に挑戦してみました。

GMカウンターは、本来、放射性物質があるかないか、それが多いか少ないかを検知するのが主目的ですが、核種が分かれば放射線量率に換算することもできます。しかし、原理的に放射線のエネルギー分析はできないとされています。電離作用を利用する放射線測定器では、一般に、入射した放射線が管内のガス分子と衝突して新たな電離を起こし、発生した電子が大きな電位勾配で加速される際に、次々と電離を起こして「電子なだれ」となって電極に到達してできる電気的なパルスを捉えます。電位勾配が大きいほど、電子の増え方(増倍係数)が大きいため、GM管では連続放電に移行する直前の高い印加電圧(数千ボルト)の飽和領域(プラトー)を利用することから、入射した放射線のエネルギー(正確には、エネルギーを失うまでに作った総電荷)とパルスの大きさ(波高)が、もはや比例関係にないからというのがその理由です。
電子増倍係数の小さい電位勾配の範囲(印加電圧で1500V程度まで)で利用する電離箱や比例計数管などの放射線測定器では放射線のエネルギー分析が可能ですが、GM管式では無理と言うわけです。しかし、一般に、比例計数管では同心円状の電極を利用するので、構造上はGM管と大きな違いはありません。厳密なエネルギー比例は無理にしても、大小が分かれば、自作『GM管』でも放射線のエネルギー分析ができるのではないか、と考えて、自作『GM管』を、敢えて比例計数遷移領域で動作させる実験を行いました。当然、電子増倍係数が桁外れに小さくなるので、増幅器が必要になります。本物の比例計数管の増幅器では増幅率が数千倍にも及びますが、それが中学生や高校生で製作可能かどうか疑問です。実際、どの程度のことが可能なのかを探ってみました。

今回は、実験条件を把握するために、GM管の印加電圧をプラトー領域から下げながら、パルス波高がどう変化するかを調べて最適な印加電圧を求め、その後、塩化カリウムとガスランタン用マントルのパルス波高分布の違いや、塩化カリウムでβ線をカットしたときの違いを調べました。
比例計数管ではアノードからコンデンサーを介してパルスを取り出しますが、GM管の動作電圧では電圧が高すぎて不都合があります。一応、試してはみましたが、印加電圧の不足や、感電が心配です。考えてみると、アノードからは電子によるパルス、カソードからは陽イオンによるパルスが得られるわけですが、結局は両方が加算されて観測されます。そこで、カソードからのパルスを捉えることにしました。カソードからのパルスを抵抗で受けてから積分回路を通し、幅が数msecから20msec程度のパルスを作って増幅し、AD変換しています。

今回、自作『GM管』と高電圧回路はそのまま利用しています。

P_amp

増幅器はオペアンプを利用すれば簡単に数百倍の増幅率は得られますが、小さい波高のパルスは高圧電源のノイズに埋没するので、単純に増幅率を大きくしてもダメなことが分かりました。結局、試行錯誤で、100倍程度の増幅器であれば製作も容易で、数百mVのパルスが得られるので、放射線パルスの波高分析も可能との結論に至りました。

*×100前置増幅器回路図「preamp.JPG」をダウンロード
*×3~差動増幅器回路図「variamp.JPG」をダウンロード
*電源・オフセット調整回路図「OP.JPG」をダウンロード  

2011年8月18日 (木)

自作『GM管』(18)

後日談として、上級編を二つ。一つは、地面からの放射線の空間線量率計算法の改良、もう一つは、掃除機ダストの放射線源を特定する方法の提案です。
ところで、密閉性を高めた自作『GM管』は、まるまる2ヵ月間、メンテナンスなしで動作していましたが、66日目になって、ついにダウンしました。その後は、ブタンガスを再充填して、問題なく動作しています。

さて、上級編その一です。自作『GM管』(10)で、有限大円板放射線源からの線量率を求める式を算出しました。これは、屋外での放射線測定に応用できますが、空気による放射線の減衰を考慮していなかったので、等価半径を大きくすると、際限なく線量率が大きくなるという課題がありました。
空間線量率は主にγ線によるため、放射線の減衰は距離の指数関数で表されますが、減衰を含めて解析的に求めるのは難しいので、逐次積分で計算してみました。また、距離ゼロから逐次積分で計算するのは面倒なので、等価半径10mの解析計算値を初期値として入力し、10m以遠について放射線の減衰を考慮することにしました。放射線は、セシウム137のγ線(正確には、セシウム137と放射平衡にあるバリウム137mのγ線)0.662MeVを考慮すれば十分なので、20℃空気に対する線減衰係数を、0.009324/m(直線補間による)として計算します。
逐次積分による計算結果「DER_myu.pdf」をダウンロード では、等価半径が200~300mになると線量率の増加がなくなり、線量率は有限の値に落ち着きました。地上高さを変えた場合は、地上高さ5cmと1mでの線量率の比の下限値は1.72となっていることから、地上高さを変えても線量率が、それほど変わらない場合は、周囲の建物や立ち木、あるいは地形など(ひょっとしたら近隣のホットスポット)の影響を受けているか、測定値の信頼性に問題があるものと考えられます。
なお、計算ではセシウム137の面積密度を均一に10Bq/cm2と仮定しているので、この計算結果が実際の数値を示しているわけではありませんが、放射能の面積密度と線量率が比例関係にあることから、線量率の実測値から放射能の面積密度を推定することも可能です。

次はその二です。自作『GM管』(13)で自宅内の掃除機ダストの放射線測定を話題にしましたが、先日、改めて採取・測定をしてみたところ、やはりセロではない結果でした。そこで、何とか、この放射線源を特定できないものか、と考えて、放射線遮蔽実験の応用編を思いつきました。
一般には、放射線源を特定するには放射線のエネルギー分析が必要で、GM管の親戚の比例計数管ならばエネルギー分析が可能ですが、電子回路が格段に複雑かつ難しくなります。しかし、GMカウンターであれば、β線を巧妙にカットすることで、大まかな線源の識別ができそうです。現状では、掃除機ダストの放射線源としては、昔からあるカリウム40と新参のセシウム137を考えればよいので、識別は不可能ではありません。その方法は、次のようなものです。

P_dustfilter

カリウム40もセシウム137もβ線源ですが、γ線を伴います。GM管ではβ線とγ線の区別はできませんが、適当な遮蔽によってβ線をカットすることが可能です。β線の場合は、ベーテ・ブロッホの式で、最大エネルギーに対して必要な遮蔽厚さ(最大飛程)が求められます。2種類のβ線源がある場合に、遮蔽厚さを変えることで、エネルギーに応じたβ線のフィルターとすることができます。単なるフィルターなので、完全な分別はできませんが、エネルギーの高低で、どちらが多いかは識別できそうです。一方、β線は、同時に放出されるニュートリノにエネルギーの一部が持ち出されるので、平均エネルギーは最大エネルギーの約1/3とされています。そのため、フィルターの厚さを考える場合は話が複雑です。

まず、手始めに、カリウム40だけの場合を考えてみます。カリウム40が出す放射線は、最大エネルギー1.312MeVのβ線が89.3%で、電子捕獲による1.461Mevのγ線が10.7%となっています。最大エネルギー1.312MeVのβ線のアルミニウム中最大飛程は2.15mmなので、厚さ2.15mmのアルミ板で完全にカットできます。なお、この厚さでは付随するγ線の透過率は約98%なので、ほとんど透過することができます。つまり、フィルターなしの計数では、β線とγ線の両方の寄与がカウントされ、フィルターありの計数では、γ線の寄与だけがカウントされることになります。ただし、対象外のβ線の寄与を排除するために、GM管は厚さ3mmのステンレス鋼で周囲を遮蔽して測定しました。
その結果では、カリウム40較正線源のネット計数率において、厚さ2.15mmのアルミ板なしで53.4mV、アルミ板ありで4.7mVでした。これによれば、53.4-4.7=48.7(mV)となることから、β線の寄与は全体の91%、残りのγ線の寄与は全体の9%となって、上述の89.3%対10.7%に極めて近い値になりました。

さて、本題の掃除機ダストはというと、簡単ではありません。セシウム137が出す主な放射線は、最大エネルギー0.514MeVのβ線が94.4%で、放射平衡にあるバリウム137mが出す0.662MeVのγ線が85.1%となっています。ところが、この0.514MeVという値はカリウム40の出すβ線の平均エネルギー0.437MeVを上回っているので、最大飛程の0.60mmではカリウム40のβ線の半分以上をカットしてしまうことになります。そこで、セシウム137もカリウム40も、β線の平均エネルギーを目安にフィルターを考えることにして、今回は、セシウム137の寄与は厚さ0.15mmで、カリウム40の寄与は厚さ0.45mmで評価することにしました。その結果、掃除機ダストのネット計数率において、フィルターなしでは20.8mV、0.15mmフィルターありでは7.7mV、0.45mmフィルターありでは1.1mVでした。0.45mmフィルターありはγ線の寄与、0.15mmフィルターありはカリウム40の寄与、残りは主にセシウム137の寄与と考えれば、それぞれ、6.6対1.1対13.1となり、百分率では、32%対5%対63%となります。このことから、カリウム40の寄与はセシウム137の寄与に比べて十分小さいことがわかります。結局、掃除機ダストの放射線源は主にセシウム137であることが分かりました。
少し難しいかもしれませんが、これも、GMカウンターだからこそ可能なウラ技です。「comp.pdf」をダウンロード

さて、前回同様、カリウム40較正線源の125Bqと計数率で比較すると、今回の掃除機ダストは4グラムで47.4Bqとなり、1ヶ月前とほとんど変わらない結果となりました。

2011年7月30日 (土)

『自然エネルギー体験ランド』工作教室で(12)

Inside_sun

地球の内部構造については小学校でも習いますが、太陽の内部構造については、学校ではほとんど習う機会がありません。今回は、地球の内部構造との対比で、太陽の内部構造を紹介しましたが、考えてみれば、太陽は地球と違って気体でできているので、地球のような(比較的)明確な内部境界があるとは思えません。通説では、太陽の中心から半径の20%までが核、20%から70%までが放射層、70%から表面までが対流層とされています。放射層とは、中心核で発生した熱が主に放射(輻射)によって伝わる領域で、対流層は、熱が主に対流で伝わる領域です。分かりやすく言えば、気体の透明度が高ければ放射で伝わりやすく、透明度が低ければ対流で伝わりやすいことになります。

身近に手掛かりがないかと考えていたところ、理科年表に太陽の内部構造という表があったのを思い出し、それをグラフにしてみました。表とグラフは添付ファイル「inside_sun.pdf」をダウンロード を参照ください。なお、横軸はすべて、太陽の中心から表面までの距離を1とする距離比で表されています。

温度のグラフを見ると、太陽の中心温度は1580万度で、水素の原子核同士の核融合が起こる温度の目安を1000万度とすると、距離比20%辺りが境界と考えられます。水素含有率が距離比20%以下で低下することと、累積の輻射量比が距離比20%辺りで飽和することも、その外側とは違う中心核の存在を示唆しています。
一方、距離比70%から80%の辺りには、(対数)圧力や(対数)密度に屈曲点が現れていることが分かります。しかし、放射層と対流層の違いは熱の伝わり方なので、その境界は温度分布から決めているようです。温度のグラフをよく見ると、距離比70%辺りに屈曲点があるのが分かります。より厳密には、放射層と対流層の境界では温度分布に変化があり、それを太陽の固有振動を観察する日震学で観察した結果、距離比71.5%が境界とされています。(シリーズ現代の天文学 第10巻 太陽、日本評論社、2009、p19)
要するに、太陽の内部構造は、地球の内部構造とは違って、物質の組成や態の違いで決まるものではなく、主に分担している作用で決まるもののようです。

太陽が放射するエネルギーは、385兆TWと言われており、地球の地殻熱流量の44TWと比べると、約10兆倍という莫大なものです。このエネルギーの発生に伴って、毎秒40億kgの質量が失われています。水素原子の質量は1.00782503207、ヘリウム原子の質量は4.0026032415なので、4個の水素原子核から1個のヘリウム原子核ができる、太陽の中心核での核融合反応では、1反応あたり4.77×10-29kgの質量がエネルギーに変る計算になることから、毎秒3.60×1038個の水素原子核が消滅している勘定になります。太陽の現在の質量は1.989×1030kgとされており、73.5%が水素でできているとすれば、水素の原子数は8.74×1056個なので、現在のペースで水素の核融合反応が続く場合、2.43×1018秒、すなわち約770億年分の燃料(としての水素)があることになります。(添付ファイル「heat_sun.pdf」をダウンロード

参考文献:シリーズ現代の天文学 第10巻 太陽、日本評論社、2009

*『自然エネルギー体験ランド』(http://ene-land.com/)

2011年7月29日 (金)

『自然エネルギー体験ランド』工作教室で(11)

計算の結果、地球内部の放射性物質による発熱量は、41TW(テラワット)となりました。なお、計算の過程と結果は添付ファイル「decay_heat.pdf」をダウンロード にまとめてあります。

この値は、地球の地殻熱流量の平均値87mW/m2に地球の表面積を乗じて得られる44.2TWに極めて近い値です。(出典:岩波講座 地球惑星科学1 地球惑星科学入門、1996、p96)
実は、地球科学の本でも、地球内部の放射性物質による発熱量について触れている本はほとんどありません。古い論文を紹介した例(地球科学選書 地球、1992、p176-181)では、C1コンドライトの組成を前提に、放射性物質による発熱量を9.5×1020J/年としており、この値は30.1TWに相当することから、地殻熱流量の30TWと一致するとしています。ただし、この本では、地殻熱流量の平均値を63mW/m2としていてデータが古いと思われるほか、放射性物質の発熱量も手計算の結果と合わないなどの問題点も指摘できます。

計算結果からは、放射性物質の中では、カリウム40の寄与が最も大きく(31.4TW)、次いで、トリウム系列(4.65TW)、ウラン系列(4.51TW)、アクチニウム系列(0.196TW)、ルビジウム87(0.185TW)となっていて、これらで全体の99.86%を占めています。この結果は、あくまでもC1コンドライトの組成が地球の組成を代表しているという前提に立っているので、真偽の程は分かりませんが、放射性物質の発熱量を考える場合に、地球内部にあるカリウム存在量の確かさが最重要であることは間違いありません。また、カリウム40の半減期は12億8千万年と、地球の年齢の46億年と比べて短いので減衰も大きく、逆に言えば、46億年前の地球の誕生期には、現在の約12倍、379TWの寄与があったことになります。

ところで、この地殻熱流量とは、宇宙に放出されている地球内部の熱のことですが、地熱エネルギーと比べるとどうなっているのでしょうか。地球のエネルギー収支を見ると、噴火などの火山活動のエネルギーは、地殻熱流量の約3%、温泉などの地熱エネルギーは、地殻熱流量の約0.2%となっています。(地球科学選書 地球、1992、p181)
火山地帯に限れば、地殻熱流量の平均値の100倍もの熱流量で熱が放出されていますが、地球全体ではわずかな熱に過ぎません。わが国が地熱エネルギーを利用できる地帯にあることは、ある意味で幸運なのでしょう。

Giopower
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2011年7月28日 (木)

『自然エネルギー体験ランド』工作教室で(10)

工作教室が終わってから、改めて地熱と放射性物質の崩壊熱との関係について考えてみました。放射性物質の種類と量が分かれば計算ができる道理ですが、そう簡単ではありません。地殻や上部マントルであれば、直接調べることも可能ですが、下部マントルから核に至っては調べようがありません。そこで、一般的に隕石の成分から推定する方法が使われています。元素の組成については、C1コンドライトという隕石の成分が宇宙の普遍的な値とされているので、地球に適用してみました。

Inside_earth

放射性物質には自然に減っていくという性質があります。言い換えれば、放射性物質はエネルギー的に不安定なので、余分なエネルギーを放出して安定なエネルギーレベルになろうとします。その余分なエネルギーを放射線などの形で放出しますが、発生したエネルギーは、(ニュートリノを除いて)最終的には熱エネルギーになります。また、放射性物質は、それぞれ固有のルールにしたがって整然と減っていきます。一般に、元の量(原子数)から半分の量(原子数)に減るまでの時間を半減期といいますが、放射性物質は固有の半減期に従って指数関数的に減少していきます。また、この半減期は温度や圧力などの環境条件に無関係なので、宇宙のどこにあっても同じ半減期で減っていきます。当然、地球の年齢の46億年と比べて、ずっと短い半減期の放射性物質は、新たにできてくる核種を除けば、地球の誕生期に存在したとしても、とっくになくなっています。したがって、考慮すべき放射性物質は、天然の放射性物質として知られる、18の核種です。そのうち、トリウム(Th)232、ウラン(U)238と235は、それぞれ10数種の放射性核種の親核種で、最終的には安定な鉛(Pb)の同位体になりますが、それぞれのグループを壊変系列といいます。残りの15の核種は壊変系列を構成しないので、壊変(崩壊ともいう)して安定な核種に変ります。

放射性物質による発熱量の計算方法は、次のように考えました。まず、それぞれの放射性核種の原子数を推定し、毎秒の壊変原子数を半減期から求めて、それに1原子あたりの発熱量(熱エネルギー)を乗ずることで核種ごとの発熱量が求まるので、それらを合算して全発熱量を得ます。1原子あたりの発熱量は、放射性核種の表のQ値から求めます。α壊変と電子捕獲はQ値をそのまま使用しますが、β壊変の場合は、ニュートリノがエネルギーを持って出る分はロスと考えて、β線の平均エネルギーに習って、Q値の1/3を地球内部に残る発熱量と仮定します。また、壊変系列の一部に分岐を伴う系列がありますが、1%に満たない分岐は無視しても3桁目の値が変るだけなので、その計算を省略しました。
壊変系列を構成しない天然放射性核種と壊変系列の親核種については、地球の質量に、C1コンドライトの元素存在比と、各核種の存在度(%)を乗じて原子数を求めます。壊変系列を構成する娘核種については、分岐率を考慮した永続平衡を仮定して、親核種の原子数/半減期が、各娘核種の原子数/半減期に等しいとして各娘核種の原子数を算出します。

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2011年7月27日 (水)

『自然エネルギー体験ランド』工作教室で(9)

太陽エネルギーの源泉は、太陽の中心核で起きている一連の核融合反応です。この核融合反応とは、水素から重水素、ヘリウム3を経て、ヘリウム4(の、いずれも原子核)を作る連鎖反応で、反応には1000万度以上の高温が必要とされています。1000万度から1500万度に及ぶ高温の中心核が、この反応の場です。気体(とプラズマ)で構成されている太陽に、中心核、放射層、対流層という内部構造があるのも、地球との対比で面白いのではないか、と考えました。
一方、地球の内部構造は、中心から、核、マントル、地殻となっていて、核の上部(外核)は液体です。核は、鉄を主成分とする合金で、マントルや地殻を構成する岩石に比べると融点が低いので、マントルや地殻は固体でも、核の一部が溶けているのは理解できます。内核が固体なのは、圧力がさらに高いためです。
もっとも、地熱は地中からの熱流束の平均値ではなく、海嶺や火山地帯などの特別の場所で利用されるものです。海嶺はマントルが上昇する場所なので、地球中心部の熱が直接関係するイメージがありますが、プレートの沈み込みに伴う火山活動はプレート同士の摩擦熱が成因と考えられていることから、マントルの流れに付随する熱発生が火山地帯では重要な要素となります。

このように考えてくると、太陽と地球を対比しながら理解することができます。地球の内部も、ごく薄い地殻を取り除けば、1000℃から6000℃の温度で、光り輝いている、というイメージは必ずしも一般的ではありません。地熱の源泉についても、ウランやトリウムなどの放射性物質の崩壊熱であるというのが定説ですが、これも広く知られていません。また、地球中心部の6000℃という温度が太陽の表面温度に近いことに何か因縁のようなものを感じますが、実はお互いに無関係な現象です。まったく違うもの同士なのに似たところがある、という捉え方も理解の一つではないでしょうか。

Sun_spectra

『自然エネルギー』といっても、風力も水力もバイオも、その元は太陽エネルギーであり、核融合反応によるものです。他方、地熱は放射性物質の崩壊熱が主なので、結局、『自然エネルギー』はすべて原子力エネルギー(正確には核エネルギー)だ、ということになります。しかし、これは意外なことではなく、原子力エネルギーが宇宙の普遍的な原理によるものだ、という事実の裏返しでしかありません。

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2011年7月26日 (火)

『自然エネルギー体験ランド』工作教室で(8)

1回目が終わるとすぐに2回目の準備です。工作の方では、太陽電池の傾きを変える機構の改良試作を繰り返していましたが、最終的に「コの字」形の金具を互い違いに組み合わせて、ビス・ナットで止めることにしました。要するに蝶番ですが、手頃な市販品が無かったので自作です。材料は0.8mm厚のアルミ板を使いましたが、電動のこ盤もボール盤もないので、金属切断用のハサミと電動ドリルで済ませましたが、工作精度はひどいものでした。それでも、金具の出来栄えを見て組み合わせを変えることで、ある程度の組立て精度は確保できました。

Solarpower_back

ファンモーターの固定法についても、当初は金具で固定することを考えていましたが、モーターに合うビスが入手できないため、窮余の策として、台となる木の板に直径7mmの穴を3個開けて、モーターの裏の凸部を差し込むことにしました。ファンモーターは上向きでよいので、これで問題ありません。

もう一つの難題は、発泡スチロール板です。以前に1mm厚の発泡スチロール板を使ったことがあるので、今回も、と思っていたら、1mm厚の板はどこでも扱っていません。他の発泡材も検討しましたが、発泡スチロールの耐熱温度が高いので捨てがたく、結局、20mm厚の発泡スチロール板から、2mm厚となるように冶具を作って、ホットカッターで切り出して用意しました。昔は売っていたけれど、今はもう売っていないものもあって、代替品探しに苦労することがあります。

いろいろ考えて、太陽光の出し物は簡易分光器に、地熱の出し物は『石焼いも』にしました。太陽エネルギーとは、太陽が放出する電磁波のエネルギーに他なりません。電波の領域からX線の領域にまで及びますが、目に見えるのは可視光だけです。それでも色の違いこそ、エネルギーの違いで、7色の『虹』がそれを象徴します。さらに、太陽が光を放出する原理は、白熱電球と同じ、黒体放射なので、太陽の代わりに白熱電球を使っても本質は変りません。ついでに、蛍光灯のスペクトルを見て、連続スペクトルでないという太陽光や白熱電球との違いも理解できます。これは家に帰って人工光で太陽電池を使う場合に、蛍光灯と白熱電球の違いを知っておいた方がいいので加えました。実は、黒体放射は地熱でも出てきます。地球の中心温度は約6000℃と言われているので、太陽とほぼ同じ温度の光を出しているわけです。地熱はマグマの熱なので、温度は約1000℃に下がりますが、それでも赤い光を出しています。6000℃の実演は無理でも、上部マントルの温度程度の2500℃なら白熱電球のフィラメントの最高温度です。『石焼いも』にこだわったのは、電熱器のニクロム線の温度がちょうど1000℃程度なので、マグマの温度が実感できると考えたからです。石は岩石の代表で、マグマの熱で水が蒸気になるのを、サツマイモが焼けるのでモデル化する、という趣向でした。IHの時代に電熱器でもないのですが、IHでは石焼は不可能です。40年前の電熱器を持ち出して、予備実験をしたところ、600W、約1時間の加熱で焼き上がることが分かりました。ただし、OFFにした後の冷却が遅いので、石や電熱器が冷えるのを待つ時間を考慮する必要があります。

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2011年7月25日 (月)

『自然エネルギー体験ランド』工作教室で(7)

講義の演示・実演は問題なく終わり、工作後の実験では、手回し発電機で発電した電気を電気二重層キャパシターに溜めてから使うハイドロプレーンもスクリュー船もうまく動きました。1分間充電すれば約2分間動いて止まるので、ちょうどよい具合でした。風力発電模型では、やはり、団扇の使い方の上手でない子がいて苦労していました。出力が電子メロディーなので、風をコンスタントに送らないと曲にならない、という難しさがあったようです。
水力発電模型は、手押しポンプの水流で始めてみましたが、脈動なので水車の回転が不規則になり、トータルの発電量も稼げないという、苦労した割には残念な結果でした。そのままではミニカーを動かすのは難しいと判断して、バックアップのバスポンプに変えて、何とか切り抜けました。バスポンプの吐出量は毎分8リットルなので、能力としては毎分9リットルの手押しポンプの方が大きいのですが、流量の変動のない方が発電には適していたわけです。
さて、ミニカーの方は、というと、プラスチック・レールの周回路を何周もできるほどの上出来で、子どもたちも結構楽しんでいました。

工作教室では、ハイドロプレーンとスクリュー船の工程に、寸法取りを入れました。船の工作なので、重心や浮心を正確に決める必要があるからです。今の子どもたちは、ものさしを使うのが下手です。もっとも、数センチを測るのに、30センチのステンレス製ものさしを使うことにも問題があるかもしれません。重くて支えるのが大変な様子でした。ステンレス製のものさしは、後の工作でカッターを使用するために用意したもので、今回はその転用です。目的に応じて道具を用意できればよいのですが、そうもいきません。使い方も工夫のうちですが、経験がないと難しいものです。また、スクリュー船の工作では、千枚通しを使わせましたが、難しくはなかったようです。
ところで、スクリュー船の底に付けた発泡スチロール板は、浮材(浮き)です。スクリューを水面下に入れる都合で、どうしてもスクリューが斜め下を向いてしまうために、速度が大きい場合は、浮材なしでは船首が沈んで船体に水が入ってしまいます。その防止のために、船体底部の船首寄りに浮材を入れてバランスを取ることにしました。

Float

工作教室の進行で、一番難しいのは、進度の調整です。同時に進めても、結局、一番遅い子に合わせることになってしまいます。科学館では、講師は全体の進度を見ながら進めても、遅い子は助手のスタッフが支援することができました。また、今回は撮影なので、講師が手本を示すのと子どもたちの工作が同時進行にならないというハンデもあります。ダメ出しもあったり、カメラアングルを変える中断もあったりで、通常の工作教室と比べると数倍の時間がかかりました。

*『自然エネルギー体験ランド』(http://ene-land.com/)

2011年7月24日 (日)

『自然エネルギー体験ランド』工作教室で(6)

講義と工作教室の実際は、ホームページの方をご覧いただくとして、本番には、また、別の難しさがあります。何度経験しても、後で反省することの方が多いのが実態です。

今回の工作教室では、『自然エネルギー』の本質について、小学生でも興味がもてるように工夫したつもりですが、実のところ、理解するのは小学生には難しいと思います。内容は、ほとんどが中学3年の理科以上で、一部は高校物理でも習いません。小学生には、ポイントのいくつかが記憶に残れば、それで十分と考えました。そこで、親しんでイメージを持ちやすいように、出し物を工夫しています。

風力から始めましたが、水力の方が理解しやすく、水力とは、素直に『水』が動いて起こす力(またはエネルギー)です。では、風力は、というと、『風』が動いて、とすると間違いです。なぜかと言うと、『風』は物体ではなく状態だからで、『風』を構成する物体は、実は『空気』であって、風力とは『空気』が動いて起こす力(またはエネルギー)です。風力から始めた理由は、身近に利用例が多いからでした。風力を利用する例も、動力で風力を作って利用する例も、身近に多くあります。それに比べると、水力は利用例が身近にはあまりありません。厳密に言えば、空気圧を利用するジェット風船や、揚力を利用する竹トンボは、風力の利用としては拡大解釈ですが、『空気』が動いて起こす力、には当てはまるので、同列に扱いました。

Motorboat

工作教室についても、難易度や時間の都合で、かなりの部分を事前加工にしましたが、基本的なテクニックについては、ひと通り体験できるようにしたつもりです。ただし、すべてが電気工作なので、ハンダ付けは毎回行うようにしました。ハンダ付けをしない電気工作も見かけますが、結んだり、からげたりしただけでは、接触不良は免れず、よけいな心配をすることになりがちです。最近は、中学校でもハンダ付けを体験する機会がなくなったと聞いています。誰でもできる簡単な作業なので、電気工作では必ずハンダ付けを体験させるようにしています。しかし、リード線を押さえていないといけないようなハンダ付けは、初心者には難しいので、穴に通したり、端子にからげたりすることで、必ずハンダとハンダごてを両手で持つだけでハンダ付けができる範囲に止めたいものです。今回もほとんどが、その制約内でしたが、1ヶ所だけ、ハンダ付けしてある部分に、さらにリード線をハンダ付けする工程があります。正確には、端子にリード線を2本重ねてハンダ付けする工程ですが、リード線の1本を、端子にからげてハンダ付けしておく事前加工により、ハンダ付け1回の工程に止めたものです。今回は、電気工作なので、ハンダ付けはほとんどの回で2ヶ所だけでしたが、1回だけ6ヵ所になりました。結果的に、ハンダ付けの不良(溶け込み不足)は、1人の1ヵ所だけでした。ただ、火傷の注意や、ハンダごての扱い方は、毎回確認して、身に付くようにしたつもりです。

*『自然エネルギー体験ランド』(http://ene-land.com/)

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